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第4章 ネシア国〜
大会4日目 1
しおりを挟むそれから周りの座席にバタバタと人が戻ってくると、またアナウンスが流れた。
「座席が埋まってきましたので、そろそろ本日の第1試合を始めたいと思いま~す!この試合には昨日クーガー選手と対戦したリッキー選手、最終戦で戦ったシエル選手の仲間のスコット選手が出場します!前回の戦いからの予想でもかなりの強さだと想像できますので、対戦相手の方は頑張ってほしいですね!……あ、そろそろ準備が整ったようです!両選手、入~場~!!」
アナウンスと同時に入り口の扉が開き、スコットさんが対戦相手と一緒に出できた。
今回の対戦相手はゴリラのような見た目の獣人らしい。
顔がゴリラなだけではなく、体格もそれに匹敵するほどのでかさだ。
スコットさんよりも2まわりほどデカく見える。
エルフの隠れ里のマッシさんよりもかなり大きいのではないかな?
……彼も、エルフにしては異例のマッチョだったけどね!
2人が舞台中央に来るとアナウンスで武器を構えるように指示が出た。
どうやら今回は両者ともに素手のようだ。
この『素手』というのは曲者だと思うんだよね。
どこまでの殴り合いで勝敗を決めるのか?って思うけど、さすがにリッキーみたいなことになるまでやるのは違うと思う。
「おや~?今回の対戦は両者ともに素手での格闘戦になりそうですね!これは楽しみですね!どういう展開になるのか!両者の体格からの力の差はかなりありそうですが……これはスコット選手に不利な状況か!?……それでは、試合開始です!」
その瞬間、ものすごいスピードでスコットさんが相手選手に肉薄した。
相手選手は力はありそうだが、体を動かすスピードはないようだった。
あまりの素早さの差で、対戦相手はスコットさんを殴りつけようと拳を振るのだが、それが全然当たる気配がない。
そんな状態で相手が大振りをした時に大きな隙ができるので、その時にスコットさんは拳を打ち込むのだが、今度は相手の筋肉という鎧がダメージを拒むようだ。
スコットさんのパンチが腹に決まっても決定打とはならないようで、地味に相手の体力を削っていくしかないみたい。
そのうち俺は、ふと気づいた。
どうやらスコットさんはずっと同じ場所を叩き続けているようで、だんだん相手の顔が痛そうな顔に変わっていった。
相手もスコットさんが同じ場所にパンチを打ち込んできていることに気づいているようで、なんとか違う場所に当てさせようと体を捻るのだが、スコットさんのフェイントに引っかかって結局は同じ場所にパンチを食らっている。
そのうち相手が痛みでさらに体の動きが鈍くなってきた頃、スコットさんは最後の仕上げとばかりに、相手の大振りパンチを避けた際にその腕を抱え、素早く身を捻ると一気に背負投をかました。
相手は背中から思い切り硬い床にたたきつけられ、動けなくなったところでうつ伏せにされ腕をひねり上げる。
相手はあまりの痛みに「わかった、降参だ!」と叫んだ。
スコットさんは締めていた相手の腕を解き、その手を引っ張り上げて立たせた。
相手の言葉を聞いた審判がそばまで駆け寄り、宣言する。
「対戦相手の降参により、スコット選手の勝利です!」
次の瞬間、観客席が沸いた。
盛大な拍手で、スコットさんの勝利を祝ってくれた。
「この試合、勝者はスコット選手で~す!いやぁ~、鮮やかな投げ飛ばしでしたね!あんな技は初めて見ました!それにしても相手をあまり傷つけずに最小限の痛みで降参に追い込む手腕は素晴らしいですね!」
そうアナウンスが告げると、会場の拍手が大きくなった。
その拍手の中、両選手は退場口から退場していった。
しばらくするとスコットさんが観客席へとやってきた。
「お疲れ様!鮮やかな一本背負いだったね!」
俺が嬉しそうに駆け寄ると、スコットさんも破顔して俺の頭を撫でた。
「シエルが見ていると思ったら、無様な格好を晒せないだろう?」
「そんなことないよ。兄さんはいつだって強いよ!」
「フフフッ、ありがとな。」
そんな俺たちのやり取りを見ていたリリーさんが、目を吊り上げてスコットさんに詰め寄った。
「んもうっ!兄さんばかりずるいわ!私もシエルと戯れたいんだけど!何で試合は男性のみなの?不公平だわ!私も出ることができれば堂々とシエルに褒めてもらえるし、そうやって頭も撫でられるのにぃ!」
い……いや、姉さん、みんなの前で「撲殺聖女」姿を見せるつもりかい?
俺は、あれはないと思うんだけど?
それに魔法が使えない姉さんは獣人に力で勝てないと思うけど……。
そう思いつつも俺は姉さんには逆らえないので、頷くしかない。
呆れた顔をしたスコットさんは1つため息をつく。
「お前なぁ……。いつまでそうやってブラコンやってるんだ?ほら見ろ、リッキーも呆れてるぞ?」
そう言われてリッキーを見ると、確かに苦笑いをしている。
「スコット、大丈夫だ。もう慣れてるよ。なんせ55年も夫婦だったからな。その間もコイツ、いつまでも『紫惠琉大好き!』って感じだったんだぞ?なんせこっちに来ればいつまでも若い紫惠琉がいるからな。」
「……。酷いな、それ。お前と結婚してから友梨佳とは正月しか会ってなかったからな。まさかそんなことになっていたとは思ってなかったぞ?てっきりお前と結婚したからブラコン卒業したのかと思っていたくらいだ。」
2人は呆れた顔でリリーさんを見る。
リリーさんはついっと2人から目を逸らした。
「まぁ……しょうがないわよ、だってあんなに目に入れても痛くないほどに可愛がっていた弟でしょ?それがいつまでも若いままなら、芸能人に対するファンみたいな気持ちだったんじゃない?」
3人のやり取りを見て、苦笑いしたエミリーさんがリリーさんの弁護に入った。
……っていうか、俺、いつまでもこんな姿なの!?
えっ、まさか成長しないの!?
俺、もしかして大人になれないのかい!?
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