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第4章 ネシア国〜
大会6日目 3
しおりを挟む出口へと戻る間のアナウンスの内容から、既に2人が舞台中央に立っていることが分かった。
やばい、またリッキーの時みたいに間に合わなくなったらどうしよう!
俺は急いで舞台出口へと走った。
出口に着いた時にはまだ始まっておらず、2人はそれぞれの武器を構えていた。
案の定というか、ヒューザは爪装備、対するスコットさんは普段使っている大剣を構えている。
ゴーダさんが言うように、ヒューザの爪の間の間隔は狭く、スコットさんの大剣が入り込むことは出来なさそうだ。
あとはどれだけスコットさんが素早く大剣を扱えるか、それによって勝敗が決まりそうな気がする。
ヒューザはスコットさんの大剣を見て、少し考えているようだ。
どうやら武器を変えるかどうかで悩んでいるみたい。
でも結局、ヒューザは武器を変えずにそのままでいくことにしたようだ。
「さて、本日大会6日目の第2試合、Bグループの優勝決定戦ですが……皆さんもご存知、前大会の総合優勝者、ヒューザ選手が出場いたします!彼は今のところ 総合優勝を5連覇中の超強豪です!そんな彼に挑むのは、先ほどの試合で勝ちましたシエル選手と同じ冒険者チームに所属しているスコット選手です!彼もまた、今大会では本気の実力を出したところを見せていません!彼はいったいどこまでヒューザ選手に迫れるのか!?とても楽しみな試合ですねぇ!あっ、え~……2人とも準備が整いましたので、それでは……試合開始!」
試合が開始されると、2人同時に動き出した。
スコットさんは向かう間に全身が一瞬淡く光ったので、もしかすると身体強化をかけたのかもしれない。
いつもは離れて戦っているので、スコットさんが身体強化を使えることを俺は知らなかったから少し意外だった。
いつも常々「魔力が少ないから魔法は使わない」っていたので全く使えないのかと思ってた。
2人が接近したところで、まずはスコットさんからヒューザへと攻撃を仕掛ける。
さっき身体強化をかけていたからか、大剣の重さを全く感じさせない動きで連続の剣戟を繰り出している。
おぉ~、確かに大剣だと剣の長さが長いから全く爪の攻撃範囲外から攻められるんだね!
ヒューザはその事に少し苦い顔をしている。
多分懐に入りさせすれば自分のものだと思っているんだろうけど、剣戟が素早すぎて懐に入るどころか自分が押され気味だ。
暫くスコットさんが攻撃、ヒューザがそれを受けていたが一旦切り結び、少し距離を取る。
お互いに呼吸も全く乱れておらず、疲れも顔には出ていない。
多分身体強化のおかげで、あんなに大きな剣を振り回していてもほとんど負担がないんだろう。
「すげぇな、そんなでかい剣を振り回しておきながら全く疲れてないなんて。どんだけ体力あんだよ!」
「まぁ身体強化をかけたからな。羽のように軽く感じるぞ?」
スコットさんは悔しがっているヒューザに向かってそう言うと、にやりと笑って今度は自分の方からヒューザに向かっていく。
そして大剣から繰り出されたとは思えない速さで何度も斬りかかり、ヒューザを翻弄した。
大剣の重さをプラスされた一撃は相当重いらしく、次第に受けきれなくなっていった。
それを見たスコットさんは最後の仕上げとばかりに、今までで一番速いスピードで横薙ぎに大剣を振る。
そして大剣の刃がない方で、日本刀の「峰打ち」のようにヒューザの横っ腹を打った。
ヒューザは「しまった!」といった顔をしたが、あまりの重い一撃のために堪えきれず、薙ぎ払われた状態でそのまま遠くへと飛ばされた。
そして舞台ギリギリの所に落ち、追撃のためにスコットさんが向かったが、ヒューザの近くへと着くと大剣を下ろした。
それを見て審判が向かうと、大きな声で叫んだ。
「ヒューザ選手の意識喪失の為、スコット選手の勝利!」
俺の時と同じく静まり返っていた会場がその瞬間、大歓声に包まれた。
ヒューザの状態は大丈夫なんだろうか?
俺はそう思って向かおうかと思った時、急に舞台が光り、次の瞬間には例の『巫女』が現れていた。
「今回は間に合ったようですわね。こちらの獣人を治療いたしますから、貴方は武器をしまってください。」
「わかりました。これをよろしくお願いします。」
『巫女』とスコットさんがそんな事を話している間にアナウンスがあった。
「お~っと!今回の大会ではネシアにおける『巫女様』が治療のために来ていただけることになっていましたが、今回で2度目の登場です!1度目はシエル選手が回復した後でしたので実際には今回が初めての治療となりますが……素晴らしい早さでの治療でしたね!もう完了したようです!」
なるほど、確かにもう治療は終わったようだ。
俺の時とは違い、ヒューザはもう意識を取り戻している。
そんな『巫女』を見て、ヒューザはバツが悪そうな顔をした。
「……まさか『巫女様』に治療してもらう羽目になるとは。申し訳ありません。」
「いえ、良いんですよ。今回、彼らが大会に参加する事の条件の一つなんですもの。」
それを聞いたヒューザは驚いた顔で『巫女』を見て、それからスコットを見た。
「お前達……もしかして参加したくて参加したわけじゃないのか?」
ヒューザが思わずといった感じで呟くと、スコットさんは苦笑した。
「ああ。前の大会後に俺達の所に来たことあっただろ?あの後この大会関係者とクーガーが来て『お前達は大会に参加しろ』との一点張りでな。断るのが無理だと分かって渋々参加したんだ。その時の条件が向こうからの提示で『巫女様に来てもらって瀕死でも死なさずにすむ』というものだ。別に俺たちから頼んだわけでも、大会に参加したくて参加してわけでもないんだ。」
「……。」
「そうなのよ?可哀想なのは彼らの方なの。まぁ、私はあの子に会ってみたかったから役得だけどもね?」
スコットさんとヒューザの会話に『巫女』が入ってきてそんな事を言う。……俺、あんた知らないんだけど?
すると『巫女』はこちらを見て俺と目線を合わせると「あらぁ、心外だわ?」と言った。
……心を読んだね?
俺はハァ……と1つため息をつくと、肩を竦める。
「どうやらヒューザ選手ももう動けるようですし、第2戦目に参加の両選手の退場です!盛大な拍手を!」
そのアナウンスに従って3人が歩いてくる。
……あれ?『巫女』は帰らないの?
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