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第4章 ネシア国〜
大会最終日 1
しおりを挟む今日は大会最終日。いつもと違い、お昼からの試合になる。
今回は出場者が少なかったのもあり、最終日の今日は試合は1試合しかないんだそうだ。
この大会に出るようになってからずっと朝早くに闘技場に通っていたが、今日の朝はゆっくりと過ごすことにした。
それにしても今日の試合は、俺と兄さんとの戦いになってしまった。
日本では模擬試合はよくしていたが、勝てた記憶はほとんどない。
こちらに来てからは『レベル』というものが存在することによって俺と兄さんの『力』の差ほ相当なものだと思うが……剣技の修行としてみるなら、俺は日本での24年間しかないのに対して、兄さんはその何倍も修行していたことになる。
その差はとても大きいと思うんだ。
昨日の試合を見ても、やはり兄さんは凄いと思ったし。
それを踏まえて、今日の武器を考える。
もし兄さんがあの大剣を使うとなった場合、俺の刀は使いたくても使えない。
何故ならあの大剣は重さも加わるので、俺は強い力で剣を受け止めなければならないから刀に負担がかかり、刀の刃毀れが酷い……下手すると折れてしまうだろう。
かといって俺の力に耐えられるように魔力コーティングをすれば、今度は兄さんの大剣の方が刃毀れや折れてしまうだろう。
俺が朝からそれで悩んでいると、兄さんとリッキー、そしてゴーダさんが俺の周りに座った。
「シエル、何の武器を使うか悩んでいるんだろ?」
リッキーが俺にそう聞いてきた。
「ああ、そうなんだ。……スコットさんは今日、何の武器を使う予定?」
「ん?そうだなぁ……いつもの大剣、と言いたいところだが、お前はそれで悩んでいるんだろ?逆に聞くが、俺が何で戦えばお前を悩ませずに済む?」
「……それが悩みの種なんだよ。」
俺の返答に、スコットさんは肩をすくめた。
それを見てリッキーとゴーダさんは目を合わせた。
「じゃあ俺からの提案だが……リキ坊、お前とシエルの為に打ってきた剣が二振りあるんだが、お前の分をスコットに貸してやっちゃあどうだ?」
そうゴーダさんは言うと、ローテーブルの上に2つの箱を置いた。
「開けてみろ」と言われたので、俺とスコットさんはそれぞれ箱を開ける。
中からは二振りの刀が出てきた。
「その2つの剣は、お前らがスノービークに向かってから打った物だ。いつか戻って来るリキ坊達の為に打っておいた。1つはシエルのサイズで、もう1つはリキ坊サイズなんだが……スコットならリキ坊の剣でも扱えるだろう?それならどちらも真新しいし、予備の武器だから万が一壊しても気にしなくて済む。……どうだ?」
なるほど……それなら同条件で、予備だからそこまで気にしなくて済むね!
その後、スコットさんとも話して、この二振りの刀で試合に臨むことになった。
この大会最後の試合を観たいと言っていたルーシェさんとライクさんは、午前中に今日の分の仕事をこなしてからこちらに転移して合流することになっている。
だから昨日はこちらに泊まらないで、自分たちの家に戻ったんだ。
- - - - - - - - - -
俺達は結局お昼まで各自の時間を過ごし、ルーシェさん達が転移してきてお昼を一緒に食べるとさっそく闘技場へと向かった。
今日はラブさん達とは別行動でだ。
ラブさん達は明日俺達と一緒に王都へと帰るので、この国にいる間にやりたいことをやるんだそうな。
さすがに゙見た目が弱そうなフォードさんと妊婦さんの2人なので、護衛としてパニアさんが一緒にいてくれることになっている。
現地に着くとさすが最終日ということもあって、闘技場の周りはものすごい人だかりになっている。
……しまったなぁ、この分だと座席取れないかもしれないな。
そう思っていると、案内係の人が「今日は相当な混み様なので、多分座席チケットはもう購入できないかもしれません。ですので、立ち見でよければ昨日のシエルさんのように出口のところで観戦なさいますか?」と気を利かせてくれた。
「今日の試合はシエルさんとスコットさんのみですので、闘技場の選手控室には他の方が来ることはありません。ですから時間までゆっくりしていてください。」
案内係の人はそう言うと俺たちを控室に残し、一旦どこかへ行ってしまった。
「控室の中ってこんな感じになっているのね!真ん中には何にもないのねぇ。そして、何で壁際にしか椅子がないのかしら?」
控室の中に入っての第一声はリリーさんのその言葉だった。
確かに、それは俺も思った。
何で壁際だけにしか椅子がないのか?……理由は聞いてないからわからないけどね!
とりあえずこれだけ椅子があるし、みんな固まらないでバラバラに座りながら大きな声で話すことにした。
「やっぱりこの椅子、こうやって話すためには置いてねぇな!さすがにこんなデケェ声で話せば、部屋全体に聞こえらぁ!」
「確かにね!」
「だからだろう、こうやって壁際に椅子が置いてあるのって!それぞれの場所で数人固まって話せて、他の人に話が聞こえないからな!」
「……。」
みんな、大きな声を出すことを楽しんでいるようだ。
良い笑顔で笑いながら話している。
そんなふうに遊んでいる間に再度案内係の人がやってきた。
「それでは時間になりましたので、皆さん行きましょう。」
どうやら案内係の人は俺達の大きな声が聞こえていたらしく、クスクス笑いながらそう言った。
案内係について舞台入り口に到着すると、俺とスコットさんを残して皆は出口の方へと向かった。
出口は意外と遠いから、試合を見るなら早めに行かないとちゃんと見れないからね。
2人きりになった俺達は、係の人がいないのでアナウンスをよく聞いていなければならない。
流石に出ていくタイミングを逃すわけにいかないからね!
「さあ~、皆さん!とうとう今大会の最終戦、総合優勝決定戦が始まります!今大会は両グループ共に優勝者が我々獣人ではなく、初出場の人族選手という、大会始まって以来の異例づくしの大会となりました!その異例づくしの今大会、最後の試合が今、決戦の火蓋を落とそうとしております!そ~れ~で~は~……両選手、入~場~!!」
そうアナウンスが流れた途端、会場内は割れんばかりの大歓声に包まれた。
俺とスコットさんは目を見合わせると1つ頷き、舞台中央へと歩き出す。
その時、スコットさんが俺に向かって小さい声で呟いた。
「……シエル、この試合、俺は負けるわけにはいかない。かといって、お前に負けてもらう気もさらさらないから、お互いに全力で実力を出そう。……って言っても、お前はそういう訳にはいかないかもしれないがな。」
俺は思わずスコットさんを振り仰ぐと、苦笑いをした兄さんと目が合った。
……そっかぁ、とうとう決めたんだね?
それなら俺はその心意気に、全力で向き合わなければならないだろう。
……頑張れ、兄さん!
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