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第6章 王都近くのダンジョン編
浜辺での一夜
しおりを挟む30階層に到着した俺達は、目の前に広がる砂浜で海を見ながら話をしていた。
辺りは綺麗な夕日のおかげでオレンジ色に染まり、太陽は水平線に向かって降りていってる。
もう1時間もしないうちに夕日は水平線に沈むだろう。
「さて……こうやって話していてもどんどん日は沈むんだし、明るいうちに手早くテントを張ったりしようぜ?」
リッキーはみんなに向かってそう言い、俺に荷物を出せと促す。はいはい、分かってるよ。
俺がテントの材料を鞄から出すと、早速男性陣は組み立てに取りかかる。
それと同時に俺はテーブルを出し、その上に今日使う予定の調理器具や食材、調味料、食器を出す。
女性陣にはサラダを作ってもらうことにして、俺はまず竈を土魔法で作る。
そこに手持ちの薪を入れ、火魔法で火を付ける。
火が安定したら竈に水を張った寸胴鍋をかけ、中に刻んでおいた人参やキャベツ、もやし、豚肉、そして酒を適量入れる。
それらが煮えてきたらキューブタイプの鶏塩味の鍋つゆを入れ、しばらく煮込む。
それが完成したら鞄へとしまい、竈には普通の鍋に水を張ってかけ、沸騰させる。
そこへ揉んでほぐした極太麺を人数分より何玉も多めに入れて茹でる。
「今、麺を茹で始めたんだけど、そっちは終わりそう?」
俺はリッキーに声をかけた。
「大丈夫、もうすぐ終わる。っていうか、今夜は麺なのか!?久々だな!」
リッキーはそう言うと、嬉しそうな歓声を上げた。
他のメンバーもなんだか嬉しそう。
そうしている間に少し硬めに麺を茹で、さっさと器に盛りつける。
それから素早く先ほど作ったスープを麺の上からたっぷりとかければ出来上がりだ!
これなら野菜もたっぷりと摂れるし、一石二鳥だね!
これにサラダをつければさらにバランスも良い。
盛り付けたものを各自にテーブルへ運んでもらい、席に着く。
嬉しそうな皆とは対象的に、セバスとリーシェさんは不思議そうな顔をしている。
「じゃあ麺が伸びる前に食べてしまおう。いただきます!」
スコットさんのかけ声で皆が食べ始める。
食べ方を知らない2人は皆の食べ方を見て食べ始めた。
2人には食べやすいように箸だけではなくフォークも出しておいたけど、皆が箸を使っているのを見て箸をチョイスしたようだ。
「うん、久しぶりのラーメン、美味しいわぁ。」
「野菜もたっぷり摂れるから、身体にも良いわね!」
リリーさんとエミリーさんも気に入ってくれたようだ。
生麺を買っておいてくれた山田には感謝だね!
後で何かお裾分けでもあげなきゃだな!
皆でわいわいと賑やかに食事をとった後、明日のボス戦のことを話し合う。
今回に限っては頼みのリーシェさんも分からないかもしれないなぁ……。
「リーシェさんはこの地を踏んだのは間違いないんだ?」
リッキーがリーシェさんにそう聞く。
「ああ、この浜辺に来たのは来たんだが、皆も思ったかもしれないが『これは無理だ』と感じたんだよ。それで下の階層まで降りて、ダンジョンを出たんだ。だからボスが実際は何なのかは知らないからね?」
リーシェさんは1つ頷いてからそう言った。
……実際?
今、実際って言った?
それな気づいたのは俺だけではなかったようで、スコットさんが先に口を開いた。
「リーシェさん、今『実際は何なのか』って言ったような?そう言うってことは、何か知ってたりするのか?」
するとそのスコットさんの質問に、リーシェさんは苦笑いをしながら答える。
「ああ、知ってるとも。実はこのダンジョンを踏破目前で帰ってきた者が書いた書物があるんだ。そこには『私には彼を倒すのは無理だ』と書かれていて、そこからはそのボスが『人』の形をとっているらしい事が分かる。でもどうやってそこに行ったのかも、どこにボス部屋があるのかも書かれてはいなかったんだよ。だからこの広いフロアのどこにボス部屋があるのかも私は知らない。」
リーシェさんは残念そうに、そう言った。
なるほど……最低でも一度はこのフロアのボスに会ったことがある人がいるんだね。
それにしても『人』の形をしているのか……。
それは確かに倒しづらい。
特に俺は人を殺したことも見たこともないから、多分躊躇してしまうだろう。
俺がそう思っていると、リッキーが頭を撫でてきた。
「良いんだよ、お前は。そんな汚れ仕事みたいなのは俺たちに任せておけ。」
リッキーは頭を撫でながらそんな事を言うけれど……俺としては皆にもそんな事はして欲しくなかったりする。
……でも、いつかはそんな事を言ってはいられない時が来るのも知ってはいるんだ。
この世界はあまりにも『死』というものが身近すぎる。
日本で育ってきた俺からすれば、今の俺の姿は想像できないものだろう。
だけど忌避してしまっては、逆に自分や大切なものの命が奪われてしまう。
だからしっかりと『優先順位』というものを理解しないとならないんだろうな。
俺が黙ってしまったことで皆も話をやめてしまった。
それに気づいた俺が顔を上げると、皆が気遣わしげに俺を見ていた。
どうやら俺が考えていた事が皆には筒抜けだったみたい。
「大丈夫、無理に倒さなくても良いのよ?『人』ならば話せばダンジョンを出るための転移陣を使わせてもらえるかもしれないわよ?」
「そうよ。しーちゃんは気にしなくても大丈夫。交渉は兄さんに頼むから!」
「おいおい、交渉事は俺なのか?」
「あったりまえだろ?このメンバーの中でそういうのが得意なのはお前が1番だって!」
「そうよぉ~。兄さんが1番だわ、今も、昔も。」
皆はそんな事を言って場を和ませてくれた。ありがと、皆。
それを微笑ましそうに見ている、リーシェさんとセバス。
ユーリはいつの間にか子竜の姿で俺の膝の上に来て胸にしがみついていた。……かわええのぉ。
みんなとそんな時間を過ごしていると、先程までの沈んだ気持ちが浮上してくるのが分かった。
……ありがとう、みんな。
みんなは俺の、大切な、大切な家族だよ。
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