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第6章 王都近くのダンジョン編
ダンジョン最上階、30階層へ
しおりを挟む25階層を出発した俺たちは、ダンジョン攻略はきっちりとはせずにさくさくと先へと向かう。
意外と25階層以降は『変換期』の影響をあまり受けていないのか、それまでの様に大量の魔物が出てくることは少なかった。
考えてみれば25階層の休憩所で一夜明かした時も、20階層の時よりは魔物の数が少なかったので、上に行けば行くほど数は減るのかな?
俺は気になったので過去に来たことのあるリーシェさんに聞いてみると、魔物自体が強くなればなるほど出現数が激減するものらしく、それで数自体は少ないんだろうとのことだった。
だけど本来はここまで来ると出くわす魔物の数は一つの通路に1体程度らしいので、やはり増えてはいるんだろう。
結局出くわす魔物が少なかったのもあって、30階層のすぐ手前までは一泊しただけで到着できた。
そして30階層へと続く階段を上がっていくと……そこは砂浜の広がる『海岸』で、目の前には果てしない『海』があった。
……なるほど、リーシェさんがここの攻略を諦めた理由が分かった気がする。
流石にこの果てしない海を見れば、攻略する気も失せるってものだ。俺だってそうだし。
海岸には船すらなく、どうやってこの大海原を攻略すれば良いのか途方に暮れていると、ユーリが俺の服の袖をクイクイと引っ張った。
「にぃに、僕が元の姿に戻ればみんな乗せられるよ?」
ユーリが控えめにそんな事を言ってくる。
なるほど、確かにユーリのあの姿ならば全員乗せられるだろう。
「シエルくん、ユーリ様はそんなに大きな姿なのかい?」
驚いたリーシェさんが俺の方を見て聞いてきた。
「ええ、この子は元々産まれた時から俺たちよりも何倍も大きかったんですけど、先代の神竜の力を吸収した事によって更に大きくなったんですよ。今では4属性竜の4人よりも大きいですしね。」
俺がリーシェさんにそう答えると、音がしそうな勢いでバッとみんなが俺を見た。いや、大きいの俺じゃないよ?
「……まじか!?いつの間にあんなにでかくなったっていうんだよ?」
リッキーがユーリの方を見てそう聞いてきた。
「ほら、ネシアから帰ってきてスノーピークでユーリとセバスがいなかった時あっただろ?あの時に2人は力を吸収しに行っていたんだよ。俺も一度だけ見に行った時には凄い驚いたさ。」
「えっ、にぃに驚いてくれていたの?やったぁ~!」
俺の返答を聞いて嬉しがるユーリ。
どうやら俺を驚かせたいと思っていたんだってさ。
「でもまだまだ何回か行って力を吸収しなきゃならないんだろ?見た目が追い越されないようにしてもらえると嬉しいんだけど。」
俺がそう苦笑いして言うと、セバスが「大丈夫です」と答えた。
「今回は連れて行くのがちょっと早かったのですが、皆さんとの旅の事を考えて行ってきたんですよ。本来はあと2、3年後の予定だったんです。次にあそこへ行くのは……多分5年~10年後になるのではないかと。ただ、それまでにユーリ様の準備が整いましたら、最短の5年で行かせてもらいます。」
「……5年か。俺、5年で成人した見た目になるんだろうか……?」
俺がそう言って遠い目になると、それを聞いていたリーシェさんが首を傾げる。
「どういう事だい?シエルくんは人族ですし、皆さんと同じく段々と老いていくものだよね?」
それを聞いて皆、顔を見合わせる。
「……あ~、リーシェさん、実は俺たち5人とも普通の人族じゃないんだ。」
「正確に言うと、元から普通の人族じゃないのはシエルだけで、俺達4人は前世を思い出した後から普通じゃなくなったんだろう。」
「……?どういう事だい?」
スコットさんとリッキーの言葉に、訝しそうな表彰をするリーシェさん。
それに対してスコットさんが真面目な表情で話しかけた。
「俺達5人とも、今は『ハイヒューマン』っていう種族なんだ。4属性竜の長たちからは『ユーリ様並みに長寿になった』って聞かされているから、大人の俺達は良いとして、まだ子供の姿のシエルは『大人になるまでに時間がかかるのでは?』と不安なんだろう。だからユーリがあと5年程でまた成長すると聞いて、見た目が今と逆転してしまうのでは?と考えたんだろうと思う。」
そうスコットさんが言うと、リーシェさんは納得した顔になった。
「なるほど、そこが気になったんだね。っていうか、『ハイヒューマン』になったのか!それは凄いね!普通の人族が『ハイヒューマン』へと進化するには神の祝福がないと駄目だって聞いたことあるけど、もしかすると君たちの前世の記憶を呼び起こしたのは創造神様、なのかもしれないね。」
にこやかな表情でリーシェさんはそう言うと、うんうんと頷いた。
まぁ……そうだよね。
そんな『奇跡』を起こせるの、神様しかいないもんね。
でも皆とすぐに『お別れ』しないでかなり長く一緒にいられるっていうのは、神様に感謝しても良いなと俺は思っている。
「ところで『ハイヒューマン』の成長の仕方って知ってます?」
俺は思い切ってリーシェさんに聞いてみた。
「そうだね、文献によると『ハイヒューマン』は通常は大人になった人族が創造神様から祝福されてなるものらしく、最初からっていうのは載ってないんだ。だけど『ハイエルフ』の例から言うと、大人になるまでは普通のエルフと同じに成長するはずだよ。だから君もあと数年で大人の見た目になるとは思う。ただ、『ハイエルフ』の場合は、そこからが気の遠くなるような年月になるとの事だ。でも私は流石にそこまでの年月を生きたくはないと思ってしまうね。あ……そうか、100年や200年の誤差はあるけど、多分私達はほぼ同じ頃に寿命を迎えるんだね。それはなんだか嬉しいなぁ。」
リーシェさんはそんな事を言って微笑む。
そういえばこの前『仲間の人族との寿命の違い』の事をチラッと話していた時、とても寂しそうな雰囲気だった。
エルフはたとえ仲の良い人族の友人ができても、その全てが自分より短命だ。
だからいつも友人を見送ることになるのだ。
でも俺達はその人族よりも遥かに寿命が長い。
もしかすると普通のエルフよりも長いかもしれないらしい。
だとすれば、リーシェさんにとっては『人族の友人を見送らないで済む事』は初めてと言っていいんじゃないだろうか。
そういえば俺も最初は『いつかはスコットさん達を看取る事になる』と考えて心が痛かったのを思い出した。
そうだよね……リーシェさんは今までずっとその気持ちを持ち続けていたんだろう。
俺は久々にその事を思い胸が痛くなったが、俺達の存在があることで少しでもリーシェさんの心の痛みが和らぐことを願った。
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