異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ

文字の大きさ
291 / 529
第7章 新しい出来事

スノービークに到着!

しおりを挟む
俺たちは目の前にある出入り口から外へと走り出た。

「眩しっ!」

俺は思わずそう零す。

ダンジョンの外は開けた場所とはいえ森の中なのに、とても光に満ちていた。

近くにはここに入る前にギルドカードを調べられた小屋もあるのが見える。……あぁ、帰ってきたんだな。

俺の心に何とも言えない感情が湧き上がった時、誰かが頭をわしゃわしゃと撫でてきた。

隣を見上げると、そこにはリッキーが立って頭を撫でていた。

「……頭、グシャグシャじゃん。」

俺が不貞腐れた顔でそう言うと、リッキーは笑った。

「ハハッ!それはすまん!つい……な。」

「……。」

「まぁ……なんだ、お疲れ様。家に帰ったらしばらくゆっくりしろよ?今回いろいろあって心も体も疲れただろうし。」

リッキーはそう言って微笑む。


……わかってるよ、そんな事。

今回俺は、今まで以上に『命』というものの儚さを感じざるをえなかった。

とにかく目の前の消えそうな命を、何度も何度も拾ってきた。

ダンジョンとして普段はこんな危険な事はないとはいうが、それでも各自の考え方や選択によっては命を落とすこともあるという。

今回は数十年に1度というとても稀な現象が起こった訳だけど、その現象が起こった時にいつも俺がいるわけじゃない。

その時は必ず被害者は出るんだろうなってことだけはとても良く分かった。

俺がそのことを考えて心が沈んでいると、今度はスコットさんが俺と肩を組んできた。

「ほら、気持ちを切り替えて。帰ろう、俺たちの家がある街へ。」

スコットさんも微笑みながらそう言って頷く。

そうだね、もうこのダンジョンも落ち着いてこの国の軍隊だけでも安全に管理できるようになった。

俺たちはもう必要ない。

俺は1つ頷くと、スノービークへと転移した。



転移の光が収まると、そこには見慣れたスノービークの街の門があった。

そこにいた門番はちょっと驚いた顔をしていたが、俺たちの顔を見ると微笑んで「おかえり」と言ってくれた。

あの事件があってからというものの、この街の人達はリッキーや俺達にも優しくなったと思う。



それから俺達は皆それぞれの家へと戻り、最後に残った俺達3人とリッキーはこの街に初めて来た時と同じく並んで歩いている。

あの時の事を思い出しながら歩いていると、リッキーが突然「ありがとうな」と言ってきた。

俺が隣を見上げると、リッキーはそのまま前を見ながら話しかけてきた。

「お前がローランの街でこの街へと行こうと言ってくれなかったら、もしかするとこの街や大切な人たちを失っていたかもしれない。それにこれから産まれてくる俺の弟か妹も、この世に産まれてこれなかったかもしれないしな。だからありがとう。この街に行こうと言ってくれて。」

リッキーはそんな風に俺にお礼を言った。

そっか……そうだよね。

考えてみればこの街も危険だったんだもんね。

そう考えると、この世は意外と危険に満ちているのかもしれないね。



それからしばらく歩くとリッキーの実家、領主の館の門前に到着した。

少し前から門番さんは俺たちに気がついたようで、大きく手を振って「お帰りなさい!」とアピールしてきていた。

「……お前ら、恥ずかしいからずっと大きく手を振るのやめろよ。」

リッキーが少し照れくさそうにそう言う。

すると門番さんの1人が「何言ってるんですか!」と言ってきた。……あ、もう1人の門番さんは屋敷のほうに走っていったね。

「最初は一週間で帰ってくるようなことを言っていたのに、実際には倍以上も帰ってこなかったんですよ?何かあったのかと屋敷にいる皆で心配していたんです。でも無事に帰ってこられて安心いたしました。」

門番さんはニコニコと笑顔でそんな事を言う。

……無事だったかどうかは何とも言えないけどね?

「何かあったのか」には「あった」としか言えない。

俺達は何ともいえない表情で門を抜け、屋敷へと向かう。



屋敷の玄関前にはこの屋敷の執事さんとメイドさん達が並んで待っていた。……これ、いつも思うけど、慣れないよねぇ。

「おかえりなさいませ、リッキー様、シエル様、ユーリ様。セバスもお疲れさまでした。」

玄関の前まで来ると執事さんにそんな事を言われた。

……そっか、セバスは『同僚』扱いなんだね?



それから俺達は執事さんの先導でウォールさんがいるだろう場所へと誘導される。

……あれ?いつもの談話室じゃないんだね?



連れてこられたのはこの屋敷の『奥様』が使う部屋だった。

現在はリッキーの母親であるシェリーさんの部屋だ。

……えっ、シェリーさんに何かあったの!?

俺が急にドキドキしだしたもんだから、リッキーも少し不安になったらしい。眉間にしわを寄せている。

そんな事なんて気付いていない執事さんがドアをノックする。

中からはリッキーの父親のフォードさんの声がした。



部屋の中に入ると、ベッドにシェリーさん、その横で椅子に座っているフォードさんがいた。

フォードさんはリッキーを見るなり駆け寄ってきて、抱きしめる。

「良かった、無事に帰ってきたんだね!父さんも母さんも心配していたんだぞ?」

フォードさんはそう言って、リッキーの顔を見つめた。

「……どうしたんだ?そんな眉間にしわを寄せて。何かあったのか?」

「……何かあったのか、じゃねぇよ、父さん。母さんがベッドに横になっているが、そっちの方が『何かあったのか?』だよ。」

フォードさんに問われたリッキーが、その顔のままベッドにいるシェリーさんを見て言う。

ベッドに横になっているシェリーさんはきょとんとした顔をしてリッキーを見返している。……どういう事?

それでようやく合点がいったのか、フォードさんは笑った。

「あぁ、これは確かにビックリするかな。ほら、母さんはお腹に赤ちゃんがいるだろ?ついこの前、助産師が来て診察をしたんだが、どうやら予想より早い出産になるようで、もう少しすると産まれるらしい。お腹の中の赤ちゃんはもう十分育っているらしく、いつ産まれても問題ないそうだ。だから安全のためにベッドで過ごさせているんだよ。」

フォードさんはとても嬉しそうに、弾けるような笑顔でそう言った。

産まれてくる赤ちゃんが楽しみでしょうがないんだろうな!

それを聞いたリッキーは目を見開き、「マジかっ!?」と言った。

そりゃあそうだろう、まだ妊娠8ヶ月~9ヶ月ってところなのだから。


……かなり早いけど、本当に大丈夫なのかな?
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

オレの異世界に対する常識は、異世界の非常識らしい

広原琉璃
ファンタジー
「あの……ここって、異世界ですか?」 「え?」 「は?」 「いせかい……?」 異世界に行ったら、帰るまでが異世界転移です。 ある日、突然異世界へ転移させられてしまった、嵯峨崎 博人(さがさき ひろと)。 そこで出会ったのは、神でも王様でも魔王でもなく、一般通過な冒険者ご一行!? 異世界ファンタジーの "あるある" が通じない冒険譚。 時に笑って、時に喧嘩して、時に強敵(魔族)と戦いながら、仲間たちとの友情と成長の物語。 目的地は、すべての情報が集う場所『聖王都 エルフェル・ブルグ』 半年後までに主人公・ヒロトは、元の世界に戻る事が出来るのか。 そして、『顔の無い魔族』に狙われた彼らの運命は。 伝えたいのは、まだ出会わぬ誰かで、未来の自分。 信頼とは何か、言葉を交わすとは何か、これはそんなお話。 少しづつ積み重ねながら成長していく彼らの物語を、どうぞ最後までお楽しみください。 ==== ※お気に入り、感想がありましたら励みになります ※近況ボードに「ヒロトとミニドラゴン」編を連載中です。 ※ラスボスは最終的にざまぁ状態になります ※恋愛(馴れ初めレベル)は、外伝5となります

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

追放されたけど実は世界最強でした ~元下僕の俺、気ままに旅していたら神々に愛されてた件~

fuwamofu
ファンタジー
「お前なんか要らない」と勇者パーティから追放された青年リオ。 しかし彼は知らなかった。自分が古代最強の血筋であり、封印級スキル「創世の権能」を無意識に使いこなしていたことを。 気ままな旅の途中で救ったのは、王女、竜族、聖女、そして神。彼女たちは次々とリオに惹かれていく。 裏切った勇者たちは没落し、リオの存在はやがて全大陸を巻き込む伝説となる――。 無自覚にチートでハーレムな最強冒険譚、ここに開幕!

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

処理中です...