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「……パルメ様ぁ! よくもそんな格好で、セドリック殿下をたぶらかしていますわね!」
翌朝。パルメが温泉の掘削現場(予定地)で地質調査をしていると、またしてもミリアがやってきた。
リュント王子も後ろの方で、魂が抜けたような顔でふらふらと付いてきている。
「たぶらかす? 人聞きの悪いことを言わないでくださる? 私はただ、この殿下に『重機』としての適性があるかを見極めているだけですわ」
パルメは、セドリックが昨夜からずっと門の前で直立不動していたことを思い出し、肩をすくめた。
「嘘をおっしゃい! 殿下がエプロン姿でカボチャを煮ていたという報告、ミリア、耳を疑いましたわ! 貴女、殿下にどんな呪いをかけたんですの!?」
「呪い? 失礼ね。あれは『無償の労働』という名のボランティア活動よ」
ミリアは顔を真っ赤にして、パルメに詰め寄った。
「いいですわ。本当の令嬢というものがどういうものか、私が今ここで見せつけてあげます! リュント様、見ていてくださいねっ!」
ミリアはどこから取り出したのか、真っ白なレースのハンカチを広げ、泥だらけの地面にそっと置いた。
「あら、そこに置いたら汚れるわよ?」
パルメの忠告を無視し、ミリアはハンカチの上に片膝をついて、可憐なポーズを決めた。
「殿下、見てください……。この荒れ果てた大地に咲く一輪の百合、それが私です。パルメ様のように泥を掘り返すなんて、野蛮な方のすることですわ。本当の淑女は、大地に『美』を授けるものなのです!」
そう言うと、ミリアは香水の小瓶を取り出し、周囲の土に振り撒き始めた。
「……ミリアさん。それ、何をしているのかしら?」
「何って、大地に香りを授けているんですのよ! これでここも、パルメ様の加齢臭……じゃなくて、土臭さから解放されるはずですわ!」
パルメは、その光景を冷ややかな目で見つめた。
(……この子、もしかして、農業というものを根本から舐めているのかしら?)
「ミリアさん、その香水、成分は何? もしアルコールが強いなら、土の中の微生物が全滅してしまうわ。あと、その甘い香りは……」
パルメの言葉が終わるより先に、周囲の森から「ブゥゥゥン」という不穏な羽音が響き渡った。
「……あ。やっぱり来たわね」
「えっ? 何ですの、この音……。ひっ!? ハ、ハチ!? 大きなハチがいっぱいですわぁぁぁ!」
ミリアの放った甘い香りに誘われて、近隣に生息する巨大な「ド・ラ・メール大雀蜂」の群れが一斉に集まってきたのである。
「嫌ぁぁぁ! 来ないで! あっち行ってくださいましぃ!」
ミリアは先ほどの淑女ポーズをかなぐり捨て、顔芸全開で逃げ回った。
「大変! ミリア、今助けるぞ!」
リュントが慌てて駆け寄ろうとしたが、彼はパルメが昨夜仕掛けた「セドリック避けの落とし穴」の第一号に見事にはまった。
「あだっ!? な、なんだこの穴は! 深い……底が見えん!」
「あら殿下。そこ、温泉を掘るための予備の穴ですの。ちょうどいい温度になるまで、そこで蒸されていてくださる?」
「蒸すな! 出せ、私を出せぇ!」
パルメは騒動を横目に、黄金のスコップ『ガイア・ブレイカー』の「防虫・駆除モード」のスイッチを入れた。
スコップが超音波を放つと、ハチたちは一瞬で大人しくなり、森へと帰っていった。
「ふぅ。やれやれだわ。ミリアさん、農場での香水は厳禁よ。これ、常識ですわよ?」
ミリアは泥の中に突っ伏し、自慢のドレスをボロボロにしながら震えていた。
「うぅ……。パルメ様……貴女、わざと教えなかったんですわね……! なんて性根の腐った悪役令嬢……!」
「いいえ、私は警告したわよ? 『汚れるわよ』って」
パルメは、泥だらけのミリアを見下ろし、扇で口元を隠して笑った。
「さあ、おーほっほっほ! ライバルを名乗るなら、まずはこの広大な畑の雑草を全部抜いてからにしてくださる? 今の貴女は、ただの『泥にまみれた迷子』にしか見えませんわよ」
「……パルメ。今の君のあの、冷酷なまでの正論……。やはり、ゾクゾクするほど美しい」
落とし穴の横で、セドリックが一人で感動していた。
「セドリック殿下、貴方はいつまでそこにいるんですの? 門番の仕事に戻ってくださいな」
「了解した。パルメの言葉は絶対だ。……リュント、君はそのままその穴で反省しているといい」
「待て! 私を置いていくな! セドリック、貴様ァー!」
リュントの叫びが穴の底から虚しく響く中、パルメは爽やかな朝の空気を吸い込んだ。
「さて、アンナ。今日はミリアさんが耕してくれた(※逃げ回って土を荒らした)ところに、ハーブでも植えましょうか」
「お嬢様……。今の、わざと罠に嵌めたようにしか見えませんでしたよ?」
「失礼ね。私はただ、彼女の『美学』を尊重しただけよ」
パルメの「悪役令嬢」としてのスキルは、農作業と嫌がらせの両面において、ますます磨きがかかっていた。
翌朝。パルメが温泉の掘削現場(予定地)で地質調査をしていると、またしてもミリアがやってきた。
リュント王子も後ろの方で、魂が抜けたような顔でふらふらと付いてきている。
「たぶらかす? 人聞きの悪いことを言わないでくださる? 私はただ、この殿下に『重機』としての適性があるかを見極めているだけですわ」
パルメは、セドリックが昨夜からずっと門の前で直立不動していたことを思い出し、肩をすくめた。
「嘘をおっしゃい! 殿下がエプロン姿でカボチャを煮ていたという報告、ミリア、耳を疑いましたわ! 貴女、殿下にどんな呪いをかけたんですの!?」
「呪い? 失礼ね。あれは『無償の労働』という名のボランティア活動よ」
ミリアは顔を真っ赤にして、パルメに詰め寄った。
「いいですわ。本当の令嬢というものがどういうものか、私が今ここで見せつけてあげます! リュント様、見ていてくださいねっ!」
ミリアはどこから取り出したのか、真っ白なレースのハンカチを広げ、泥だらけの地面にそっと置いた。
「あら、そこに置いたら汚れるわよ?」
パルメの忠告を無視し、ミリアはハンカチの上に片膝をついて、可憐なポーズを決めた。
「殿下、見てください……。この荒れ果てた大地に咲く一輪の百合、それが私です。パルメ様のように泥を掘り返すなんて、野蛮な方のすることですわ。本当の淑女は、大地に『美』を授けるものなのです!」
そう言うと、ミリアは香水の小瓶を取り出し、周囲の土に振り撒き始めた。
「……ミリアさん。それ、何をしているのかしら?」
「何って、大地に香りを授けているんですのよ! これでここも、パルメ様の加齢臭……じゃなくて、土臭さから解放されるはずですわ!」
パルメは、その光景を冷ややかな目で見つめた。
(……この子、もしかして、農業というものを根本から舐めているのかしら?)
「ミリアさん、その香水、成分は何? もしアルコールが強いなら、土の中の微生物が全滅してしまうわ。あと、その甘い香りは……」
パルメの言葉が終わるより先に、周囲の森から「ブゥゥゥン」という不穏な羽音が響き渡った。
「……あ。やっぱり来たわね」
「えっ? 何ですの、この音……。ひっ!? ハ、ハチ!? 大きなハチがいっぱいですわぁぁぁ!」
ミリアの放った甘い香りに誘われて、近隣に生息する巨大な「ド・ラ・メール大雀蜂」の群れが一斉に集まってきたのである。
「嫌ぁぁぁ! 来ないで! あっち行ってくださいましぃ!」
ミリアは先ほどの淑女ポーズをかなぐり捨て、顔芸全開で逃げ回った。
「大変! ミリア、今助けるぞ!」
リュントが慌てて駆け寄ろうとしたが、彼はパルメが昨夜仕掛けた「セドリック避けの落とし穴」の第一号に見事にはまった。
「あだっ!? な、なんだこの穴は! 深い……底が見えん!」
「あら殿下。そこ、温泉を掘るための予備の穴ですの。ちょうどいい温度になるまで、そこで蒸されていてくださる?」
「蒸すな! 出せ、私を出せぇ!」
パルメは騒動を横目に、黄金のスコップ『ガイア・ブレイカー』の「防虫・駆除モード」のスイッチを入れた。
スコップが超音波を放つと、ハチたちは一瞬で大人しくなり、森へと帰っていった。
「ふぅ。やれやれだわ。ミリアさん、農場での香水は厳禁よ。これ、常識ですわよ?」
ミリアは泥の中に突っ伏し、自慢のドレスをボロボロにしながら震えていた。
「うぅ……。パルメ様……貴女、わざと教えなかったんですわね……! なんて性根の腐った悪役令嬢……!」
「いいえ、私は警告したわよ? 『汚れるわよ』って」
パルメは、泥だらけのミリアを見下ろし、扇で口元を隠して笑った。
「さあ、おーほっほっほ! ライバルを名乗るなら、まずはこの広大な畑の雑草を全部抜いてからにしてくださる? 今の貴女は、ただの『泥にまみれた迷子』にしか見えませんわよ」
「……パルメ。今の君のあの、冷酷なまでの正論……。やはり、ゾクゾクするほど美しい」
落とし穴の横で、セドリックが一人で感動していた。
「セドリック殿下、貴方はいつまでそこにいるんですの? 門番の仕事に戻ってくださいな」
「了解した。パルメの言葉は絶対だ。……リュント、君はそのままその穴で反省しているといい」
「待て! 私を置いていくな! セドリック、貴様ァー!」
リュントの叫びが穴の底から虚しく響く中、パルメは爽やかな朝の空気を吸い込んだ。
「さて、アンナ。今日はミリアさんが耕してくれた(※逃げ回って土を荒らした)ところに、ハーブでも植えましょうか」
「お嬢様……。今の、わざと罠に嵌めたようにしか見えませんでしたよ?」
「失礼ね。私はただ、彼女の『美学』を尊重しただけよ」
パルメの「悪役令嬢」としてのスキルは、農作業と嫌がらせの両面において、ますます磨きがかかっていた。
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