乙女ゲームの攻略対象者から悪役令息堕ちポジの俺は、魂の番と幸せになります

琉海

文字の大きさ
22 / 53

22.ただいま

しおりを挟む
「おかえりなさい。楽しんだかしら?」
「ただいま帰りました、久しぶりにウンディーネの湖に行けて楽しかったわ」
「はい!ウンディーネの歓迎を受けて、水の魚を見せてもらったり、湖に世界を映してもらったりしてもらいました」
「あら、それは素敵ねぇ」

きゃっきゃうふふと祖母と母と3人で盛り上がっていたら、ふと覚えのある視線を感じて振り向くと、離れた柱の向こうからじぃっと睨みつけるようにじい様が見ていた。

「あらあら、旦那様ったら、羨ましいのね」
「もうっ、お父様ったら子供みたいなんだから!」

いや、羨ましいならこっち来て輪に加わればいいじゃん。
今やあの剣吞に見える眼差しが「仲間に入れて欲しいな」という寂しんぼな意味を持っていると知っているから嫌な気持ちにはならないけどさ、恥ずかしがり屋にもほどがあるだろ。

「おじい様、ただいま帰りました。お土産があるんですよ!」

パタパタと走り寄って、ウンディーネの許可を取って摘んできた花を差し出した。
ウンディーネの加護付きの花だ。

「これを枕元に置いて寝ると、すっごく良く寝れて良い夢を見れるんですって!」
「………私に?」
「はい!小花で見た目はちょっと地味ですけどとても良い香りですよ!
それに、ウンディーネが加護を付けてくださったんです!
だからちょっとやそっとじゃ枯れないし、お花のこうのうもすっごく高くなってるんですって!初めてルチル領に来ましたが、とても素敵な所で、領民も穏やかでキラキラしていて、おじい様が頑張っておさめているんだなぁって思って。
お仕事たくさんあって大変だと思ったので、このお花でぐっすり寝てもらえたらって…」
「ふぐぉっっ!!」
「おじい様?!」

突然、口を押えたかと思うとそのまま五体投地してすげぇびびった。
てか受け身取らずに倒れたけど大丈夫?
俺がじい様の側で慌てていると、のんびりと女性2人が来て「あらあら~、お父様ったら相変わらずね。むしろ磨きがかかってなぁい?」「そう思った?私もそう思いましたよ。孔雀さんのあまりの愛らしさに倒れてしまったのね」とか意味不明な会話をし始めて唖然とした。これ通常運転?マジ?

その後、午後のお茶の時は帰るまでなぜかじい様の膝の上に座らされる日々が続いた。
顔を見ても相変わらず仏頂面なのだが、決して不機嫌ではないことはもう分かっていた。
ほんのり耳が赤く染まっていて、可愛いなと思ったがそれは口に出さずにしておいた。

「孔雀さんが手なずけたわ!!」

などと、母と祖母は失礼なことを言ってキャッキャと盛り上がっていたが、
それにもツッコミを入れることはなかった。
口に出すことは照れくさいが、この状況を俺自身も噛みしめていたからだ。
一週目の俺たちはお互いがいたし、互いに愛していたが、親子としての時間をあまり持てなかったし、母の故郷に帰ることも、祖父母に会うこともなく終わってしまった。
母と一緒に大好きなセフィロスの家に降下したこと、祖父母に受け入れてもらえたこと……こんなに幸せを感じられるなんて思ってもいなかった。
俺はこんなルートを知らない。
もしかしたら、このままいけば母を生かすことが出来るかもしれない。
ゲームの登場人物というルートを外れてさぁちゃんと結婚して幸せで平凡な人生を送れるかもしれない。
期待しないように気持ちを押さえつけているが、希望で胸が膨らむのを止めることはもう俺には出来なかった。

「奥様、坊ちゃま、お帰りなさいませ」
「「「「お帰りなさいませ」」」」

ブライト家に戻ると、セバスチャンと使用人がずらっと並んで出迎えてくれた。

「ぅおぉ……」

一週目含め、城でもこんな風に迎えられたことは一度もなく、その圧に思わずのけ反ってしまった俺を見た母がくすりと笑った。

「ただいま戻りました。旦那様は……」
「おかえり!!!!!」

馬の蹄の音が聞こえたかと思うと後ろから馬鹿でかい声が聞こえた。
振り向くと、頬っぺたをぺっかぺかにしたセフィロスが馬から飛び降りて手を振りながら走ってきていた。

「せふぃぃ~~!ただいまぁっっ!!!」

嬉しくてセフィロスに駆け寄ってその勢いのまま飛びつくと、抱きとめてそのままぎゅうと抱きしめてくれた。

「おかえり、孔雀。楽しめたか?」
「うん!おじい様とおばあ様もすっごく優しくて、ウンディーネにもご挨拶できたよ!」
「そうかそうか。ん~~孔雀の匂いだなぁ!」
「くすぐったいよ!!」

くんくんと犬のように俺の匂いを嗅ぐセフィロスの鼻息がくすぐったくて、
テンション爆上がりの俺は気持ちのままにキャハハと笑ってしまう。

「ただいま戻りました」
「———お帰りなさい。ゆっくりできましたか?」
「えぇ、とても。快く2週間も帰郷させてくださって、ありがとうございました」
「いいえ。久しぶりだったでしょうし、孔雀にとっては初めてでしたしね」
「今回はお仕事の関係で無理でしたが、今度は一緒に帰りましょう?」
「は、はい!よろこんで!!!」

セフィロスの体がピーン!と直立不動になってどこぞの居酒屋みたいに返した。


『くじゃ、おかえり~』
『おかえりなの~!』
『はやく、食わせろ』

部屋に戻ると、一斉に話しかけられて俺の周りを妖精・精霊がふわふわと漂いながら
思い思いの言葉をかけてくれる。
約一名、己の欲望全開なやつがいるが……通常運転だ。

「くぅちゃん!お帰りなさーーーい!」

ノックもそこそこに、バンッと扉を開けて変態が入ってきたかと思うと、俺が何かを言う前に俺を抱き上げてぎゅうと抱きしめてきた。

「ん~♡くぅちゃんの匂い!お帰りぃ」
「た、ただいま……」
「くぅちゃんっ……!」
「ぐぇ」
「アカネ様、坊ちゃまが絞め殺されてしまいます」
「あらっ!ごめんなさい。嬉しくって、つい」

ぜぇはぁと息を吸う。やつの胸筋に潰されるところだった……が、俺は家族に近しい誰かに「お帰り」と言われて「ただいま」と返せる喜びが勝っていた。

「セバスチャン、くぅちゃんがね”ただいま”って嬉しそうに言ってくれたのよ」
「えぇ。とても嬉しそうでしたね」

嬉しくて照れつつ妖精と会話する俺を、大人2人が微笑ましそうに見ていることには気づかなかった。

「あら?くぅちゃん、ちょっと良いかしら?」

見えてはいないだろうが「ごめんなさいね」と周りに断りつつ俺の体を触診するようにぺたぺた触る変態に驚いて固まってしまった。

「ねぇ、くぅちゃん。なにかした?」
「なにかって??」
「魔力の流れが変わってるわ。すごく良くなってる。特に胸のあたりの流れがいいわ」
「胸?………あ!」
「なぁに?」
「ウンディーネが、なんかしてくれてた。ここが目覚め始めてるからって」
「まぁ!精霊自らそんなことを?すごいわ!
最近、魔力の流れが良くなりつつあったけど、ここに風穴があいたから、これまで以上に良くなってるわよ。よかったわね」

自分のことみたいににこにこと嬉しそうに言う変態の目がすごく優しくて、
そこに愛情を感じてほわほわと胸が温かくなる。

「まぁ!輝いたわ!」
「え?」
「ほぉ……」

俺は全然、見えないんだがどうやら胸が光ってるらしい。
変態なら分かるんだけど、セバスチャンも見えてるらしく、感心したように声が漏れていた―――セバスチャン、何者?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

処理中です...