『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)

文字の大きさ
28 / 64
第三章 学校生活始めました

28.大樹の手記 五章(閑話)

しおりを挟む
 五.魔道具について

 魔道具とは読んで字のごとし、魔力を利用して使用する道具類である。広く出回っているものとして魔灯(まとう)がある。これは魔力を光へ変換すると言う原理で動作を開始し、その後は込めた魔力量の分だけ継続動作すると言う特徴がある。しかし稼働時間は永遠ではなくせいぜい数十時間のため蝋燭の代わり程度にしかならない。それでも魔力を体外へ流す練習にはもってこいの道具である。

 魔灯の便利な使い方の一つに目印として使用すると言うものがある。深い森や洞窟等を複数人で探索しているとき、先行しながら魔灯を設置していく。するとそれをたどりながら後続がやってくることが出来るし、自分が目印にして戻っていくこともできる。これは見知らぬ土地ではなかなかに有効なのでぜひ覚えておいてほしい。

 他に身近な魔道具として魔道具|焜炉(こんろ)が挙げられる。これは魔力を送り込みながら熱源を集中的に発生させるものである。調理をしたり湯を沸かしたりと重宝するはずなのだが、魔人にとって食は必須ではないため出番はそうそうなく、自宅に設置していない家庭も数多い。ただ嗜好品として茶を嗜むことは悪くないので、湯を沸かす程度には使えるようにしておきたいものだ。

 他にも魔力を流すことによって動作する道具は多岐に渡り、エネルギー源として光や熱、または圧力を利用するものであれば大抵は動力源を魔道具へと置き換え可能である。ただし火器類のように瞬発的な熱エネルギーを必要とするものにはあまり向いておらず、どちらかと言えば力を継続的に必要とするような機構に向いていると言える。特に熱を発生させるだけの道具は複雑な構造も必要なく相性がとても良い。

 だが魔道具の真価は複雑さを持たせたものにこそある。屋敷の敷地内全てを覆っている結界や、屋敷内に設置してある浄化装置は、複雑な魔術を埋め込んだ建築素材により永続的な効果を得ているものである。これらの永続装置は、動作を開始させた後は自然界の魔素を自ら取り込みながら動作を続けるよう設計されている。このように道具自体が魔素を取り込んで作動するものは中級魔道具とされる。

 魔術に大切なことは想像力であり、それを道具として具現化するのが魔道具師ということになる。魔道具師は想像し構成した魔術を、同じように構成した物体へ付与し動作原理を与える。これにより自動で動き続ける浄化装置や結界を実現すると言うわけである。石臼を自動的に動かし続けることも試みたが、巨大な機構を動かすだけの魔素を取り込ませることは無謀だったようで、残念ながら完成にはいたらなかった。

 しかし魔力を与えることで回転力を得られる魔道具には無限の可能性が有り、小さなものを動かす程度なら強大な魔力を必要としない。それこそ井戸の釣瓶(つるべ)を昇降させたり、手押し車の車軸へ内包すると言った使い方が可能だ。馬車程度に大型なものだと一人で楽に動かすことは難しくなってくる。だとしても、複数人で魔力供給を行うことで大きな力を得ることもでき、車軸型の魔道具四つを四人で動かす魔力自動車は十分実用的で長距離移動に重宝されている。

 魔道具の道具部分は手加工で作った物へ魔術付与するものと、魔術自体で産み出す一括生成方式に分かれる。魔術付与する魔道具は作成が容易で単純動作する道具に向く。一方一括精製する魔道具は、高度な魔術技量が必要になり製作だけでも並大抵の力量では不可能であるが、その構造や性能、特性等は想像力の範囲内で無限である。

 これらの技術を駆使して製作した数々の品が屋敷の中にはいくつも設置・収蔵してあるため、将来的に参考となれば幸いだ。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さくら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。

いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。 そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。 【第二章】 原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。 原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...