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第三章 学校生活始めました

27.駆けあがる超優秀生

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 数週間たち順調に学んだ結果、僕は次のクラスへと上がることになった。しかし歴史の授業に身が入らない真琴はあと一歩と言うところだったが、放課後マイのところへ寄って個別指導してもらい、なんとか同じクラスとなった。こうしてようやく実際の魔術を学ぶ第一歩、魔術基礎のクラスで学ぶ準備が出来たのだ。

「今日から魔術基礎だからロミと一緒だと思ったけどやっぱり来てないね。
 朝は家へ来てたの?」

「今日はマーケットへ行くから仕込みするって言ってたよ。
 まさかお兄ちゃんってばロミちゃんのこと気になってるんじゃないでしょうねえ。
 マイちゃんのことも気にしてたみたいだし、そんなにあちこち欲張ったらダメなんだからね。
 お兄ちゃんにはマコがいるでしょ!?」

「いやいやそんなの言いがかりもいいところだよ。
 そりゃ二人とも素敵な女の子だとは思うけど、特に変な目で見たりしてないってば。
 しかも真琴がいるってのもおかしい話でしょ」

「真琴にはお兄ちゃんしかいないのに……
 なんかズルだから彼女とか作ったらダメなんだからね!」

 相変わらず嫉妬深いと言うか思い込みが激しいと言うか…… でもこれからは同年代の十歳前後の子と一緒に学ぶのだから、これまでのような兄依存は薄れていくに違いない。もう僕たちは今までのようなクソみたいな親に縛られた兄妹ではないのだから。

 教室には他の生徒がいて、僕と真琴を入れて丁度十人だ。本来はロミもいるのだろうが今日は来ていない、と言うよりほぼ来ていないらしい。ここでどのくらいの時間学ぶのが適性なのかはまだ知らないけど、顔ぶれを見ると真琴よりも小さいか同じくらいの子が五人、それよりも年上に見える子が二人、そして僕と大差無さそうな女子が一人だ。

 そしてその年長っぽい三人のすべてが直線の角を持っていることが、僕の心を不安で包み込んだ。爺ちゃんの研究によると曲がった角を持っている人のほうが魔術適性が高い、これは現代まで受け継がれて定説として確立されている事実なのだ。

 そんな不安をよそに、副校長のカナエがやってきて授業が始まった。初日最初の時間から自習で無かったのは幸いだ。

「それでは今日の授業をはじめますね。
 えっと…… ロミさんは結局昨日だけでしたか……
 初めてのお二人もいるのでこのクラスで学ぶことを説明します。
 魔術基礎は魔力の練り込み、増幅、放出までを習得していただきます。
 やり方は教科書にも載っていますので、実習を行った後は必ず復習しましょうね」

 全員が頷いているが、僕と真琴は以外はやり方を知っているからこその返事、僕たち二人は言われたから返事をしただけと言う違いがある。

「ああ、そうそう、ライトさんとマコトさんはまずステータスを見せていただけますか?
 一応魔力が強すぎると危険も伴いますからね。
 ええっと、お二人とも…… はい、問題はなさそうなのでこのまま進めていきましょう」

 こんなこともあろうかとステータスを偽装しておいて良かった。僕は全体的に高めで年齢の十倍くらいとそれだけでもおかしいのに、さらには運のマイナス124と想像力の2という明らかなマイナス面も持っていた。

 方や真琴はと言うと、全体的には僕と同じ傾向で年齢の十倍くらいだが、運が僕よりは高いがやっぱり低い0、そして魔力と想像力が1000を超えていて明らかにデタラメな数値だった。こんなの他人に見せられるはずがないので普段は偽装したまま過ごすことにしたのだ。

 真琴には授業で魔力を使うことがあったらなるべく力を押さえるようにと言い聞かせてはあるが、実際にどういう授業なのか、そう言う効果が出るのかなどわからないことだらけで不安である。

「それでは魔力練りから始めましょう。
 教科書へ手のひらを付けてイメージしてください。
 身体の中に散らばっている魔力が手のひらに集まっていきますよ?
 これは想像力が試されます、目に見えないものを集めるようなイメージを持ちましょう」

 机の上に置いた教科書にただ手を置く子が多いが、空いている手で手首をつかむ子も数人いて好みか流派か知らないが何通りかあるようだ。僕は普通に置いただけだったが何となく教科書へ魔力が流れて行っているような感覚を覚えた。

 しかし真琴は――

「マコトさん、魔力を止めてください! すぐに!」

 カナエが大声を出して真琴を制止した。いったい何があったのかわからないが、この様子だとやらかしたのは間違いなさそうだ。恐る恐る僕が隣に目をやると、そこにはキョトンとした顔で何が起こったのかわかっていない様子の真琴が普通に座っていた。

「副校長、真琴になにかあったんですか?
 全然気が付かなかったし今も普通に見えるんですが」

「みんなも驚かせてしまってごめんなさい。
 ちょっとマコトさんは一緒に来てもらえますか?
 もちろんライトさんもです」

 やらかしの内容がわからないまま別室へと連れて行かれた僕たちは、石造りの塔の中、まるで牢獄のような物々しい雰囲気の小部屋へとやってきた。中央にはやはり石造りのテーブルなのか土台なのかわからないゴツイ円柱が鎮座している。

「驚かせて申し訳ございません。
 真琴様、こちらの円柱へ向って魔力を放出していただけますか?
 先ほどと同じような感じでお願いします」

「放出って!? さっきのは初歩の初歩じゃなかったんですか?」

 そう言っている間に真琴は円柱へ向かって魔力を練り、そして放出したらしい。すると円柱は高い塔の上に向かって伸びて行った。石造りの円柱が伸びるなんてそんなバカなことあるはずもないが、恐らくはさっきまで地下へ格納されていたのだろう。

「おおお、これは、さすが初代様のご令孫でございます!
 真琴様、魔術基礎はこれでクリアです。
 もしかしたら初級も一日で終わりになるかもしれません。
 いいえ、このまま上級で学んで頂いた方がいいかもしれませんね」

「ええっ!? 上級って、隣の?
 もうこっちは卒業ってことですか?
 というか、僕なんてさっきの授業で何をやってたのかも分かってないんですけど……」

「先ほどのは魔力を練り上げる練習です。
 教科書の表紙は魔力で色の変わる魔道具で作られております。
 魔力を手のひらに集中する練習と言うことですね。
 しかし真琴様は手のひらを付ける前すでに増幅まで進んでおりました。
 あのままでは何が起こるかわかりませんのでこちらへお連れしたのです」

「この部屋はなんですか?
 真ん中の柱みたいなのが伸びて天井まで行ってしまいましたが。これが真琴の仕業ですか?」

「仕業とは人聞きが悪い、お力のなしたことでございます。
 これは村の浄化装置を作動させるための魔道具で、放出の練習に使っているのです。
 この円柱が少しでも動けば合格ですが、いやはや少しどころか満タンになってしまいました」

「ねえねえ、マコはもう魔法使えるの?
 変身とかできちゃうかな?」

「魔法じゃなくて魔術だからなぁ。
 そう言うのはないんじゃないか?
 火の玉発射したりは出来るかもしれないけどさ」

「ファイヤーボールをご存じなのですか?
 基本的に今は他人を攻撃する呪文は教えておりません。
 大昔のような野原程度の村ではなく随分と人が増えましたからね。
 ある時から危険度の高い呪文は教科書から外されたのです。
 子供たちが遊び感覚で撃ちあってたのは遠い昔の話と聞いております」

「まあ確かにそうですね。
 癇癪起こされるたびに黒こげにされちゃ叶わない。
 いいか真琴、人に向かって危ないことしちゃだめだからな?」

「わかってるもーん、マコはいじめっ子じゃないし。
 でももうお兄ちゃんと同じクラスじゃなくなっちゃうの?
 マコつまんないな……」

「上級へ進むと週に一度は荒野へ出て大きな攻撃呪文の練習もしますから刺激的ですよ?
 それに広範囲結界の呪文を覚えたら他の村へお仕事に行くこともあるのです。
 もし魔道具に興味があれば工房へ通うのもいいかもしれません」

「でもマコはまだなにもできないよ?
 この石を伸ばすだけで学校の勉強は全部終わり?」

「ああそうでしたね、私としたことが興奮して焦ってしまいました。
 初級では浄化や回復を、中級では結界や魔道具への魔術付与などを覚えていくのです。
 どれも生活の役に立ちますし、学んで損の無いものばかりですね」

「それじゃ真琴は初級へってことで。
 僕はしばらく基礎を頑張りますよ。
 真琴もそれでいいか?」

「う、うん、一緒に通うならそれでいいよ?
 でもお兄ちゃんも早く来てよね?」

「おう、任せとけ!
 すぐ追いついて見せるっての」

 だがそれから一週間経っても、僕はまだ教科書へ手を載せていた
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