【改稿版】夫が男色になってしまったので、愛人を探しに行ったら溺愛が待っていました

妄夢【ピッコマノベルズ連載中】

文字の大きさ
4 / 24

しおりを挟む
「ねぇ、あそこにいるのディートハルト様じゃない?」

「え?どこどこ?本当だわ!今日もなんて麗しいのかしら」

ご令嬢たちがディートハルトを見てうっとりしている。

私たちは12歳となり、親に連れられてガーデンパーティに参加することが増えた。

そこで同じ年代のご令嬢達が、よくディートハルトの噂をしている。

一応婚約者だが、貧乏男爵家の令嬢の私と、王都の伯爵家のディートハルトでは釣り合っていないので、皆私を気にする様子がなかった。

12歳になったディートハルトは更に美しさに磨きがかかり、背も高く少し大人っぽくもあり、ご令嬢の黄色い声援を集めていた。

今も5人ほどのご令嬢に囲まれている。

私は立食スタイルの小皿の食事を食べており、遠くのディートハルトと目があった。

2人でいる時は生き生きした瞳なのだが、今は完全に生気を失った目をしている。

ヤレヤレ……。

私はドレスのポケットから、小型の箱を取り出した。その箱を二回トントンと叩くと中からガサゴソと何かが動く音がした。

私はその箱をそっと地面に置き、蓋を開けた。

すると中から5cmほどの黒い虫が10匹飛び出し、ディートハルト達がいる方向に走っていった。

「キャー!なんですの!この気持ち悪い虫は!」

案の定、ディートハルトに群がっていたご令嬢たちは魔道具の虫によってちりぢりに消えていった。

私は再び箱を二回たたくと、虫たちが戻ってきた。何事もなかったように箱の蓋を閉じ、ポケットにしまった。

「アーシュ、今日もありがとう」

キッシュを口にほおばった時に、ディートハルトが声をかけてきた。最近は愛称呼びをしてくる。

「いえいえ、我が婚約者殿はおモテになりますから」

そういうとディートハルトは深いため息をつき「女の子は苦手……」ともらした。一応私も女の子だよ……と出かかったが、ひっこめた。

「今日の魔道具も最高だったね。あとで見せてよ」

ディートハルトは黄色い声援から解放されて、穏やかな笑顔を向けてきた。

私は完全に婚約者というか、もはや護衛になっている気がする。

そして、他のご令嬢の視線が背中に突き刺さるのであった。

そんなことばかりしているので、同世代のご令嬢と親しくなることもなく、家ではひたすら魔道具の研究に没頭した。

そして、翌年祖父が他界した。

『私が亡くなったら、この部屋はお前が使いなさい』と祖父が言ってくれていたので、そのまま私が使う事となった。

実の両親や弟よりも多くの時間を共にした祖父がいなくなり、心に大きな穴が空いてしまった。

訃報を聞きつけ、翌日にはディートハルトが訪問してくれた。

私はディートハルトと祖父の部屋で声が枯れるまで泣いた。

ディートハルトは私が悲しい時、辛い時いつも傍にいてくれた。本当に心優しい友人だった。




――そして翌年、私たちは王立学園に入学した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大嫌いな幼馴染の皇太子殿下と婚姻させられたので、白い結婚をお願いいたしました

柴野
恋愛
「これは白い結婚ということにいたしましょう」  結婚初夜、そうお願いしたジェシカに、夫となる人は眉を顰めて答えた。 「……ああ、お前の好きにしろ」  婚約者だった隣国の王弟に別れを切り出され嫁ぎ先を失った公爵令嬢ジェシカ・スタンナードは、幼馴染でありながら、たいへん仲の悪かった皇太子ヒューパートと王命で婚姻させられた。  ヒューパート皇太子には陰ながら想っていた令嬢がいたのに、彼女は第二王子の婚約者になってしまったので長年婚約者を作っていなかったという噂がある。それだというのに王命で大嫌いなジェシカを娶ることになったのだ。  いくら政略結婚とはいえ、ヒューパートに抱かれるのは嫌だ。子供ができないという理由があれば離縁できると考えたジェシカは白い結婚を望み、ヒューパートもそれを受け入れた。  そのはず、だったのだが……?  離縁を望みながらも徐々に絆されていく公爵令嬢と、実は彼女のことが大好きで仕方ないツンデレ皇太子によるじれじれラブストーリー。 ※こちらの作品は小説家になろうにも重複投稿しています。

幼馴染の執着愛がこんなに重いなんて聞いてない

エヌ
恋愛
私は、幼馴染のキリアンに恋をしている。 でも聞いてしまった。 どうやら彼は、聖女様といい感じらしい。 私は身を引こうと思う。

前世の旦那様、貴方とだけは結婚しません。

真咲
恋愛
全21話。他サイトでも掲載しています。 一度目の人生、愛した夫には他に想い人がいた。 侯爵令嬢リリア・エンダロインは幼い頃両親同士の取り決めで、幼馴染の公爵家の嫡男であるエスター・カンザスと婚約した。彼は学園時代のクラスメイトに恋をしていたけれど、リリアを優先し、リリアだけを大切にしてくれた。 二度目の人生。 リリアは、再びリリア・エンダロインとして生まれ変わっていた。 「次は、私がエスターを幸せにする」 自分が彼に幸せにしてもらったように。そのために、何がなんでも、エスターとだけは結婚しないと決めた。

結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。 結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。 アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。 アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。

婚約者が番を見つけました

梨花
恋愛
 婚約者とのピクニックに出かけた主人公。でも、そこで婚約者が番を見つけて…………  2019年07月24日恋愛で38位になりました(*´▽`*)

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

【完結】2人の幼馴染が私を離しません

ユユ
恋愛
優しい幼馴染とは婚約出来なかった。 私に残されたのは幼馴染という立場だけ。 代わりにもう一人の幼馴染は 相変わらず私のことが大嫌いなくせに 付き纏う。 八つ当たりからの大人の関係に 困惑する令嬢の話。 * 作り話です * 大人の表現は最小限 * 執筆中のため、文字数は定まらず  念のため長編設定にします * 暇つぶしにどうぞ

私の婚約者とキスする妹を見た時、婚約破棄されるのだと分かっていました

あねもね
恋愛
妹は私と違って美貌の持ち主で、親の愛情をふんだんに受けて育った結果、傲慢になりました。 自分には手に入らないものは何もないくせに、私のものを欲しがり、果てには私の婚約者まで奪いました。 その時分かりました。婚約破棄されるのだと……。

処理中です...