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私とディートハルトが出会ったのは、5歳の時だった。
義父がディートハルトをつれて、我が家にやってきたのだ。
父親同士が庭園のテラスで話し込んでおり、暇になったディートハルトが庭園を散歩している時に出会った。
それは春の風が運んだ妖精のように美しい少年だった。
日に透けたはちみつ色の髪の毛はさらさらと風になびいていて、翡翠の瞳と目が合えば見とれてしまう。
顔も小さく、幼いながらも均整のとれた体つきをしていた。
「君はここの人……?」
先に話しかけてきたのは、ディートハルトだった。
「あ……、うん。ここの人……」
あれ……、なんか変な返事をしちゃったな。
「花壇にお水あげてるの?」
あ……、そうだった。彼に見とれて忘れてた。今日は祖父と作ったジョウロの魔道具を試していたのだ。
祖父は王宮の魔道具課の魔道具師だった。今は引退して、自室で魔道具を作ったり、私に魔道具の作り方を教えてくれている。
庭師が水がたくさん入るジョウロがあればいいなと言ったので、祖父と相談して昨日完成したところだった。
5歳の私でも持てる軽量のジョウロだが、10分程水をあげてもなくならなかった。試作品としてはまずまずだ。
「うん。花にお水をあげてる所だよ」
「君は庭師の娘さん?」
ひたすら水まきをしている私の近くに、彼がしゃがみこんで聞いてきた。
「あ……」
私は自身の恰好を見た。今日は水まきで汚れるからと、アイボリーの男の子のようなシャツに、茶色のズボンに茶色の紐靴をはいていた。
髪の毛も最近魔道具の製作中に少し燃えてしまい、耳の下まで切る羽目になった。
まだ女の子に見えていただけで、良かったかもしれない……。
私はジョウロを置いて、立ち上がり彼に一礼した。
「私はここの長女のアーシュレイと言います。あなたは……?」
彼も立ち上がり、一礼した。
「それは失礼しました。僕はディートハルトだよ。今日は父に連れられてきたんだ」
「あ、あなたが……」
父が今日は友人が来ると言っていた。そして、同じ年の子供がいるとも言っていた。
「ねぇ、それ魔道具だよね?さっきからずっと水あげてるのに、なくならないんだね!どうなっているの?」
翡翠の瞳がキラキラと輝いた。魔道具に興味を持ってくれた……?
「あ、これは対になっている大きな水がめがあって、そこから水を汲んでいるイメージなんだよ。その水がめの水がなくならないかぎり、ジョウロの水はなくならないの」
「へぇ!すごいね!!これがあれば庭師の人も楽だよね。でも、なんで君が水やりをしてるの?」
「これは昨日祖父と作った試作品だから、ちゃんと水が出るか確認してるの」
美しい顔が間近まで迫ってきた。私はビクッとして、後ろに一歩下がった。
「君が作ったの!?すごいね!!」
彼は満開の花のような笑顔を向けてくれた。
私が魔道具を作ってるっていっても、変な顔しないんだ……。それどころか喜んでる……。
普通貴族の令嬢が魔道具などに没頭しているのは、よろしくないとされている。魔道具師も99%が男性だ。
うちは祖父が魔道具師の為、両親は理解してくれている。流石に髪の毛を燃やした時は、母に泣かれてしまったけど……。
だから、今度は製作中に髪の毛と服が燃えない衣類と帽子を作る予定だ。
「魔道具すきなの……?」
私は恐る恐るディートハルトに聞いてみた。魔法が使える人にとって、魔道具は下に見られやすいからだ。貴族は魔法が使える人が多いから、魔道具は市民向けといっても過言ではない。
「うん!興味ある!!」
ディートハルトは手を強く握ってそう答えた。
「祖父の作業室に来る……?」
「うん!!」
こうして、私たちはあっという間に仲良くなった。
彼は私が作った魔道具の説明を良く聞き、「すごい」と感心してくれた。
私もうれしくなり、ディートハルトが来てくれるのが待ち遠しくなった。
祖父の作業室は私たちの秘密の遊び場となった。
そんな事を五年もしていたら、父親同士が私たちの仲を勘違いして、あっさり婚約者となってしまった。
その頃は彼が女性嫌いだなんて知らなかった。
義父がディートハルトをつれて、我が家にやってきたのだ。
父親同士が庭園のテラスで話し込んでおり、暇になったディートハルトが庭園を散歩している時に出会った。
それは春の風が運んだ妖精のように美しい少年だった。
日に透けたはちみつ色の髪の毛はさらさらと風になびいていて、翡翠の瞳と目が合えば見とれてしまう。
顔も小さく、幼いながらも均整のとれた体つきをしていた。
「君はここの人……?」
先に話しかけてきたのは、ディートハルトだった。
「あ……、うん。ここの人……」
あれ……、なんか変な返事をしちゃったな。
「花壇にお水あげてるの?」
あ……、そうだった。彼に見とれて忘れてた。今日は祖父と作ったジョウロの魔道具を試していたのだ。
祖父は王宮の魔道具課の魔道具師だった。今は引退して、自室で魔道具を作ったり、私に魔道具の作り方を教えてくれている。
庭師が水がたくさん入るジョウロがあればいいなと言ったので、祖父と相談して昨日完成したところだった。
5歳の私でも持てる軽量のジョウロだが、10分程水をあげてもなくならなかった。試作品としてはまずまずだ。
「うん。花にお水をあげてる所だよ」
「君は庭師の娘さん?」
ひたすら水まきをしている私の近くに、彼がしゃがみこんで聞いてきた。
「あ……」
私は自身の恰好を見た。今日は水まきで汚れるからと、アイボリーの男の子のようなシャツに、茶色のズボンに茶色の紐靴をはいていた。
髪の毛も最近魔道具の製作中に少し燃えてしまい、耳の下まで切る羽目になった。
まだ女の子に見えていただけで、良かったかもしれない……。
私はジョウロを置いて、立ち上がり彼に一礼した。
「私はここの長女のアーシュレイと言います。あなたは……?」
彼も立ち上がり、一礼した。
「それは失礼しました。僕はディートハルトだよ。今日は父に連れられてきたんだ」
「あ、あなたが……」
父が今日は友人が来ると言っていた。そして、同じ年の子供がいるとも言っていた。
「ねぇ、それ魔道具だよね?さっきからずっと水あげてるのに、なくならないんだね!どうなっているの?」
翡翠の瞳がキラキラと輝いた。魔道具に興味を持ってくれた……?
「あ、これは対になっている大きな水がめがあって、そこから水を汲んでいるイメージなんだよ。その水がめの水がなくならないかぎり、ジョウロの水はなくならないの」
「へぇ!すごいね!!これがあれば庭師の人も楽だよね。でも、なんで君が水やりをしてるの?」
「これは昨日祖父と作った試作品だから、ちゃんと水が出るか確認してるの」
美しい顔が間近まで迫ってきた。私はビクッとして、後ろに一歩下がった。
「君が作ったの!?すごいね!!」
彼は満開の花のような笑顔を向けてくれた。
私が魔道具を作ってるっていっても、変な顔しないんだ……。それどころか喜んでる……。
普通貴族の令嬢が魔道具などに没頭しているのは、よろしくないとされている。魔道具師も99%が男性だ。
うちは祖父が魔道具師の為、両親は理解してくれている。流石に髪の毛を燃やした時は、母に泣かれてしまったけど……。
だから、今度は製作中に髪の毛と服が燃えない衣類と帽子を作る予定だ。
「魔道具すきなの……?」
私は恐る恐るディートハルトに聞いてみた。魔法が使える人にとって、魔道具は下に見られやすいからだ。貴族は魔法が使える人が多いから、魔道具は市民向けといっても過言ではない。
「うん!興味ある!!」
ディートハルトは手を強く握ってそう答えた。
「祖父の作業室に来る……?」
「うん!!」
こうして、私たちはあっという間に仲良くなった。
彼は私が作った魔道具の説明を良く聞き、「すごい」と感心してくれた。
私もうれしくなり、ディートハルトが来てくれるのが待ち遠しくなった。
祖父の作業室は私たちの秘密の遊び場となった。
そんな事を五年もしていたら、父親同士が私たちの仲を勘違いして、あっさり婚約者となってしまった。
その頃は彼が女性嫌いだなんて知らなかった。
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