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9 結婚初夜
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「奥様、本当に良くお似合いです。このマーメイドラインのウエディングドレスをここまできれいに着こなす方はそうはいません!」
新婦の控室で力説してくれているのは、伯爵家に移った私の専属の侍女になったカトリーヌだ。
小柄な彼女は私と同じ年で、ふわふわの金髪のショートヘアに大きな瞳でとてもかわいらしい。
私が悪女のような容姿だとしたら、彼女は正統派ヒロインといった所だ。
そして何より、とても良い子で私に尽くしてくれる。
彼女も男爵家の出身なので、元の身分は同じだ。
だから本当は仕えることに抵抗があっても良いはずなのに、それを一切出さず心を込めて接してくれる。
「同じ女性でも、ため息が出ちゃいます。この細く美しいくびれに、この豊満なバスト、そして形の良いお尻……」
……ん?
「はぁはぁ……、美しすぎます……」
先ほどから、カトリーヌが何やら呼吸が荒いような……。彼女も忙しかったから、大丈夫だろうか……。
「今日はこのドレスに合うように、髪の毛を巻いて生花を差していきますね。きっと女神様のように美しくなられますよ!」
「ふふふ……、ありがとう」
ここ数か月の激務のおかげで体重は5キロ落ち、ダイエットの心配はなくなった。ほとんど寝ていなくて、目の下のクマはカトレーヌが綺麗に消してくれた。
今日はとてもきれいにしてもらった。そうでないと、あの美しい幼馴染の横にはたてないであろう。
むしろここまでしても彼の横に立ったら私など、かすんでしまうかもしれない。
それほど、ディートハルトは美しくそれでいて男の色気がムンムンなのだ。
私が幼馴染ではなかったら、きっと美しさにやられて倒れてしまうだろう。
つくづく、すごい人と幼馴染になってしまったものだ。そして、そんな彼と本当に結婚することになるとは……。
貴族の結婚は恋愛ではなくて家同士のつながりみたいなもの。私はもともとこだわりもなく、今回だって家の援助と仕事を続けて良いと言われたから婚姻届にサインしたわけだし。
ただディートハルトは……、本当に良かったのだろうか……。
好きな人とか、いなかったのだろうか。
騎士団に入っての3年間、本当に何もなかったのだろうか……。
そして、今夜は初夜……。本当にするのかな……。友達どうしなのに……。
いまだに実感がわかないや。
「さあ、奥様できましたよ!本当にお美しいです!」
髪を巻いてこれをゆるく編み込みにして、前に垂らしてくれた。生花が所々に飾り付けられていて、本当にきれいだった。
コンコン……とドアをノックされた。
「入ってもいいだろうか?」
ディートハルトの声だった。
「うん、いいわよ。入って」
扉を開けて、ディートハルトが入ってきた。
「アーシュ、なんて美しいんだ……」
翡翠の美しい瞳が細められた。そして私の手を取り、そっと唇を落とした。
触れられたところが熱い。
「ありがとう、でもディーの方が綺麗よ」
そう言うと「何言ってんだよ」とディートハルトが笑った。笑うと幼い日の天使の様な可愛い頃を彷彿とさせる。
日の光に照らされて、ディートハルトの美しい金髪がキラキラと光っていた。
白のタキシードが良く似合っていた。筋肉がしっかりあるから、きれいに着こなしている。上から下まで光り輝いていて、直視出来なかった。私じゃなきゃ、普通の女性は倒れているわね……。今日の参列者、女性も多いからみんな大丈夫かしら……。
イヴェッタだけは大丈夫だろうけどね。学園時代も一度もそういったことがなかったし。むしろ無関心だったな……。
だから、ディートハルトも安心して彼女とは普通に話していた。
「さあ、皆が待っている。行こう」
「うん、よろしくね」
「こちらこそ」
そして私たちは会場へ向かった。
◇◇◇
バサッ……。
私は今夫婦の大きなベッドに正面から飛び込んだ所だ。
「もうだめ……、動けない……」
結婚式は大成功と言っても良いほど、盛り上がった。
ここ数か月の不眠不休は無駄ではなかった。食事や音楽、会場の飾りつけ等、決める事が多く大変だったが、皆さん本当に満足そうに帰ってくれた。両家も満足そうだった。
結婚式が終わった後は仲の良い友人だけを集めて、簡単なパーティを開いた。私は職場の人とイヴェッタ、ディートハルトは学友と騎士団の人をたくさん呼んでいた。私たちはほぼ話すことはなく、私はイヴェッタといたし、彼は騎士団の面々にお酒を飲まされ、とても楽しそうにしていた。今もきっと楽しくしているのだろう。
私は疲れてしまったので、イヴェッタが帰ると同時に退室し、先ほどまでカトレーヌに磨き上げられていた。
『今日は初夜ですからね!』とまた、鼻息を荒くしていた。
来ているものも、透け感のあるもので、ガウンを着ているのに下着までうっすら見えている。
こんなものを着て、はたしてディートハルトは喜んでくれるのだろうか……。
全く想像が出来ない……。というか、ディートハルトは本当に来るの?あんなにお酒を飲まされて……、会場で騎士団のメンバーと寝てしまったのではないかしら?
「はぁ……、もう眠い……」
私はこれまでの疲労と寝不足が一気に襲いかかってきて、まぶたを閉じてしまった。
――チュッ……、チュッ……。
唇に何か柔らかいものが触れてくる。
「……ん?」
「先に寝ちゃうなんて寂しいじゃん……」
目を開けると、濡れた髪の毛を後ろに流し、ガウンを着たディートハルトが目に飛び込んできた。
今度は頬にもチュッと音を立ててキスをしてきた。
「はぁ~、かわいい……」
ディートハルトはその力強い腕で、私を抱きしめてきた。
「やっと、一緒になれたね。この日をどんなに待っていたか」
私は放心状態だった。ディートハルトが変なことを言っているからだ。
あ……。
「ディー、酔ってるでしょう……」
「うん、せーかい!ははは……」
笑った顔は天使だが、質が悪そうだ。
時計を見ると深夜2時を超えていた。
「今まで飲んでたの?」
「うん、先輩方が離してくれなくて」
「そっか……、ディーはどこにいっても可愛がられていていいね」
私はディートハルトの顔の前に落ちてきた髪を耳にかけた。
「そんなことないよ。アーシュのほうが……」
「みんなアーシュに見とれてた……」
「え?」
「俺のなのに。みんなアーシュに見とれてた。今日は特に女神様みたいだって、みんな釘付けだった……」
ディートハルトが眉間に皺を作ってそう言った。
「そんなことないよ。参列者の女性なんて、みんな頬を赤くしてディーに夢中だったよ」
「俺は女性は嫌い……。すぐ群れて、キャーキャーうるさい」
「私も一応女性だよ?」
ディートハルトが瞳を大きく開いた。なぜか驚いている。
「もちろん、知ってるけど。アーシュはちょっと違うから。かっこいいし……」
ディートハルトが私の胸元に顔を埋めた。まるで子どもが甘えるように。
「かっこいいかぁ……。悪女みたいだって言われることはあったけど、かっこいいは初めてかも」
「子どもの頃にガーデンパーティで女の子に囲まれて困っていた時、虫の魔道具を使って追い払ってくれたじゃん。あー、アーシュは俺のヒーローだって思ったよ」
あー、そんなこともあった。女性を撃退するために考えたんだよね。あれは我ながらよい作品だった。
「あのあと、父と母にバレてあれは使用禁止になったのよね」
「画期的だったのにな……」 とディートハルトが残念そうに言った。
「本当に……きみは……すごい……よ」
「すぅ……すぅ……」
上にのしかかったディートハルトの重みが急に増し、息遣いが規則的になった。
「えっ? ちょっと、ディー!? 寝てるの?」
ディートハルトの肩を揺さぶるも、全く動かなかった。
ひぃ……、お……重い。この筋肉の塊~!
私は足と手を使い、なんとかディートハルトをひっくり返した。ガウンから鍛えられた胸筋と腹筋が見えて、慌ててガウンを整えた。
「まったく、人のことを起こしておいて、先に寝るってどういうことよ……。それに初夜なのに……」
私は寝ているディートハルトに文句を言って、また眠りについた。
新婦の控室で力説してくれているのは、伯爵家に移った私の専属の侍女になったカトリーヌだ。
小柄な彼女は私と同じ年で、ふわふわの金髪のショートヘアに大きな瞳でとてもかわいらしい。
私が悪女のような容姿だとしたら、彼女は正統派ヒロインといった所だ。
そして何より、とても良い子で私に尽くしてくれる。
彼女も男爵家の出身なので、元の身分は同じだ。
だから本当は仕えることに抵抗があっても良いはずなのに、それを一切出さず心を込めて接してくれる。
「同じ女性でも、ため息が出ちゃいます。この細く美しいくびれに、この豊満なバスト、そして形の良いお尻……」
……ん?
「はぁはぁ……、美しすぎます……」
先ほどから、カトリーヌが何やら呼吸が荒いような……。彼女も忙しかったから、大丈夫だろうか……。
「今日はこのドレスに合うように、髪の毛を巻いて生花を差していきますね。きっと女神様のように美しくなられますよ!」
「ふふふ……、ありがとう」
ここ数か月の激務のおかげで体重は5キロ落ち、ダイエットの心配はなくなった。ほとんど寝ていなくて、目の下のクマはカトレーヌが綺麗に消してくれた。
今日はとてもきれいにしてもらった。そうでないと、あの美しい幼馴染の横にはたてないであろう。
むしろここまでしても彼の横に立ったら私など、かすんでしまうかもしれない。
それほど、ディートハルトは美しくそれでいて男の色気がムンムンなのだ。
私が幼馴染ではなかったら、きっと美しさにやられて倒れてしまうだろう。
つくづく、すごい人と幼馴染になってしまったものだ。そして、そんな彼と本当に結婚することになるとは……。
貴族の結婚は恋愛ではなくて家同士のつながりみたいなもの。私はもともとこだわりもなく、今回だって家の援助と仕事を続けて良いと言われたから婚姻届にサインしたわけだし。
ただディートハルトは……、本当に良かったのだろうか……。
好きな人とか、いなかったのだろうか。
騎士団に入っての3年間、本当に何もなかったのだろうか……。
そして、今夜は初夜……。本当にするのかな……。友達どうしなのに……。
いまだに実感がわかないや。
「さあ、奥様できましたよ!本当にお美しいです!」
髪を巻いてこれをゆるく編み込みにして、前に垂らしてくれた。生花が所々に飾り付けられていて、本当にきれいだった。
コンコン……とドアをノックされた。
「入ってもいいだろうか?」
ディートハルトの声だった。
「うん、いいわよ。入って」
扉を開けて、ディートハルトが入ってきた。
「アーシュ、なんて美しいんだ……」
翡翠の美しい瞳が細められた。そして私の手を取り、そっと唇を落とした。
触れられたところが熱い。
「ありがとう、でもディーの方が綺麗よ」
そう言うと「何言ってんだよ」とディートハルトが笑った。笑うと幼い日の天使の様な可愛い頃を彷彿とさせる。
日の光に照らされて、ディートハルトの美しい金髪がキラキラと光っていた。
白のタキシードが良く似合っていた。筋肉がしっかりあるから、きれいに着こなしている。上から下まで光り輝いていて、直視出来なかった。私じゃなきゃ、普通の女性は倒れているわね……。今日の参列者、女性も多いからみんな大丈夫かしら……。
イヴェッタだけは大丈夫だろうけどね。学園時代も一度もそういったことがなかったし。むしろ無関心だったな……。
だから、ディートハルトも安心して彼女とは普通に話していた。
「さあ、皆が待っている。行こう」
「うん、よろしくね」
「こちらこそ」
そして私たちは会場へ向かった。
◇◇◇
バサッ……。
私は今夫婦の大きなベッドに正面から飛び込んだ所だ。
「もうだめ……、動けない……」
結婚式は大成功と言っても良いほど、盛り上がった。
ここ数か月の不眠不休は無駄ではなかった。食事や音楽、会場の飾りつけ等、決める事が多く大変だったが、皆さん本当に満足そうに帰ってくれた。両家も満足そうだった。
結婚式が終わった後は仲の良い友人だけを集めて、簡単なパーティを開いた。私は職場の人とイヴェッタ、ディートハルトは学友と騎士団の人をたくさん呼んでいた。私たちはほぼ話すことはなく、私はイヴェッタといたし、彼は騎士団の面々にお酒を飲まされ、とても楽しそうにしていた。今もきっと楽しくしているのだろう。
私は疲れてしまったので、イヴェッタが帰ると同時に退室し、先ほどまでカトレーヌに磨き上げられていた。
『今日は初夜ですからね!』とまた、鼻息を荒くしていた。
来ているものも、透け感のあるもので、ガウンを着ているのに下着までうっすら見えている。
こんなものを着て、はたしてディートハルトは喜んでくれるのだろうか……。
全く想像が出来ない……。というか、ディートハルトは本当に来るの?あんなにお酒を飲まされて……、会場で騎士団のメンバーと寝てしまったのではないかしら?
「はぁ……、もう眠い……」
私はこれまでの疲労と寝不足が一気に襲いかかってきて、まぶたを閉じてしまった。
――チュッ……、チュッ……。
唇に何か柔らかいものが触れてくる。
「……ん?」
「先に寝ちゃうなんて寂しいじゃん……」
目を開けると、濡れた髪の毛を後ろに流し、ガウンを着たディートハルトが目に飛び込んできた。
今度は頬にもチュッと音を立ててキスをしてきた。
「はぁ~、かわいい……」
ディートハルトはその力強い腕で、私を抱きしめてきた。
「やっと、一緒になれたね。この日をどんなに待っていたか」
私は放心状態だった。ディートハルトが変なことを言っているからだ。
あ……。
「ディー、酔ってるでしょう……」
「うん、せーかい!ははは……」
笑った顔は天使だが、質が悪そうだ。
時計を見ると深夜2時を超えていた。
「今まで飲んでたの?」
「うん、先輩方が離してくれなくて」
「そっか……、ディーはどこにいっても可愛がられていていいね」
私はディートハルトの顔の前に落ちてきた髪を耳にかけた。
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「え?」
「俺のなのに。みんなアーシュに見とれてた。今日は特に女神様みたいだって、みんな釘付けだった……」
ディートハルトが眉間に皺を作ってそう言った。
「そんなことないよ。参列者の女性なんて、みんな頬を赤くしてディーに夢中だったよ」
「俺は女性は嫌い……。すぐ群れて、キャーキャーうるさい」
「私も一応女性だよ?」
ディートハルトが瞳を大きく開いた。なぜか驚いている。
「もちろん、知ってるけど。アーシュはちょっと違うから。かっこいいし……」
ディートハルトが私の胸元に顔を埋めた。まるで子どもが甘えるように。
「かっこいいかぁ……。悪女みたいだって言われることはあったけど、かっこいいは初めてかも」
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あー、そんなこともあった。女性を撃退するために考えたんだよね。あれは我ながらよい作品だった。
「あのあと、父と母にバレてあれは使用禁止になったのよね」
「画期的だったのにな……」 とディートハルトが残念そうに言った。
「本当に……きみは……すごい……よ」
「すぅ……すぅ……」
上にのしかかったディートハルトの重みが急に増し、息遣いが規則的になった。
「えっ? ちょっと、ディー!? 寝てるの?」
ディートハルトの肩を揺さぶるも、全く動かなかった。
ひぃ……、お……重い。この筋肉の塊~!
私は足と手を使い、なんとかディートハルトをひっくり返した。ガウンから鍛えられた胸筋と腹筋が見えて、慌ててガウンを整えた。
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