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17 気持ちが高ぶる香水
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「奥様、今日購入された下着と寝衣を置いておきますね」
「とても、素敵なお品で香りもいいですね!きっと旦那様もお喜びになりますね!」
「カトレーヌ、ありがとう」侍女のカトレーヌは退室していった。
湯あみをすると生きかえるわ。
宿舎にいた時は時間がなくて、あまりゆっくり浸かれなかった。
でも、下着に良い香りなんかしたかしら……。ハッとして私は急いでバスタブから出てバスローブを羽織り、下着を確認した。
試着した時には感じなかった鼻孔をくすぐる甘い香りがした。その近くを見渡すと、マダムからもらった香水が置いてあった。
カトレーヌだぁ~!きっと下着用の香水だと思って振りかけちゃったんだ!
私は下着をパサパサ振ってみたが、もう遅かった。
他の下着はクローゼットに置いてきちゃったし……。
私は仕方がなく香水のついた下着とナイトドレスを着た。下着は髪の色に合わせた赤色で、バラの刺繍が施されている。ナイトドレスもおそろいのバラの刺繍が胸元と裾に施されていて、黒いシースルー素材だ。着ている方が何故かいやらしくて、頬を熱くした。
恥ずかしいのでその上からガウンを羽織り、ソファでまた月間魔道具雑誌を読みながらディートハルトの帰りを待つことにした。
ディートハルトは討伐から帰ってきても、何かと用があると言って、帰りが遅かった。騎士団の事務所で作業でもしているのだろう。
討伐に行っていたから、そのあと片付けもあるのだろう……。
「アーシュ?こんな所で寝たら風邪ひくよ?」
ん……。誰……?
そう思っていると、突然体が宙に浮いた。
「えっ!」
私は驚いて目を開けると、すぐ近くに翡翠の美しい瞳があり、固まった。
ディートハルトにお姫様抱っこをされていたのだ。
その瞳は細められ、微笑まれた。
「ただいま、アーシュ」
「うん、おかえりディー」
この近さで微笑まれると、逃げ場所がない!
本当に顔が良すぎるわ……。
そして、ゆっくりベッドサイドに下ろしてくれた。ディートハルトもその横に座った。
「今日、転移魔道具見に行ったの?」
「あ、うん!もちろん!すごかったよ!まだ不安定みたいで、みんな到着すると倒れこんでたけどね」
「ははは。それ、騎士団の事務所で後輩が言ってたよ。バーデン様も試作品って言ってたもんね」
「うん。イヴェッタも改良が必要だって言ってた。本当に天才兄弟よね」
「確かに……。でも、俺からしたらアーシュだって天才だよ。アーシュの魔獣除けパウダーは本当に助かったんだ。気配を消した魔獣には特にね。それでケガをする隊員も多かったから、みんな感謝してたよ。あと、湯に入ったかのようにさっぱりする湯あみパウダーもね。討伐中は何日も野宿することがあったから、清潔を保つにはもってこいだったよ」
そう言ってディートハルトは私の頭をなでてくれた。
「いつだって、アーシュは魔道具の事を考えてるもんね」
灯篭のおぼろげな光に照らされて、ディートハルトの美しい笑顔と言葉が私の胸を温かくした。
「わ、わたしに出来るのはそんなことしかないから……。剣を持って魔獣と戦っくれたディートハルトの方がずっとかっこいいよ」
ディートハルトの瞳が大きく開かれて、無言だった。
何か変な事を言ったのだろうか。
そして口元を押さえて、「かっこいいって……、初めてアーシュに言われた……」と言って下を向いてしまった。
よく見ると顔も耳も赤い、もしかして熱でもあるのだろうか?
「ディートハルト!顔も耳も赤いよ?熱でもあるんじゃない?討伐の疲れが出たんだよ!今体温測定器持ってくるね!」
「あ!っちが!」
勢いよく立ち上がった私に、ガウンを掴んだディートハルト……。
ナイトドレスはスルスルした素材だった。ウエストの紐が緩んでおり、そのガウンはあっという間にその役目を終えて、私の足元に落ちた。
「あ……」と私は呟き、「え……」っとディートハルトが言った。
そしてお互いの視線が絡む。
「あ、あのね!だ、だいぶ下着が古くなっちゃったから、イヴェッタと買いに行ったの!それで店員さん勧められて……」
下着の赤と同じくらい、体も赤くなっているのではないかと思った。
「そうだったんだ……。よ、よくにあってるよ?」
ガウンを着ている時は封じられていた香水の香りが、一気に充満してきた。
「……っう」
ディートハルトをみるとさっきよりも顔が赤くなり、何かに耐えているようだった。
そして、勢いよく立ち上がり窓を開けた。
へ……?
「よ、夜風はきもちいね」と言って、ディートハルトはむりやり笑顔を作った。
そして、そのまま私に背を向けて窓の外を眺め始めた。
どうしたんだろう。香水が臭かったかな?普段あまりつけないから……。
普通貴族の女性は香水を愛用している。
しかし、魔道具作りに香水は何かしらの変化をもたらすとされ、仕事中は禁止されている。その癖で、普段から香水はつけないのだ。
「ディー、どうしたの?」
私が窓の方へ行こうとすると、ディートハルトは振り向いて背中を反らせた。
「アーシュ!こっちに来ない方がいい!風が冷たくて寒いから!」
そんなに寒くは無いはずだけど……。私避けられてる?
「アーシュ、風邪をひくといけないからガウンを着てくれる?」
私は足元に落ちたガウンを拾った。そして、そのまま上に羽織りウエストをキュッと結んだ。
「ありがとう。良かった……」
これは……失敗しちゃったみたいね。
その夜同じベットで寝たものの、端と端で寝ることとなった。
◇◇◇
「は?失敗した……?」
フォークに巻いたスパゲッティがイヴェッタの口には入らず、スルスルとお皿に戻っていく。
昨夜の事をイヴェッタに報告すると、あきれた顔をされた。
本当はもう少し休んでも良かったが、昨日も事が頭から離れず悶々としてしまい、結局仕事に来てしまった。
そしたら、イヴェッタも出勤していたわけだ。
そしてお昼休憩の今に至る……。
「うん。全然ダメだった。下着がダメなんだと思ってたのに。私にしては結構攻めた下着にナイトドレスを着たのにね。香水がいけなかったのかな……。あれは拒絶に近かったよ……。はぁ……、わたし女性としての魅力がないんだわ……」
「なんだって……?」
イヴェッタが眉間にシワを寄せて、聞き返した。
「だって、ここまでしてるのに全く先に進めないなんて……。あと猶予まで1年しかないのに……。やっぱり、魔道具ばかりに没頭してきたから、女性としての何かが欠けているのかもしれない」
「ちょっと、それって私の事もけなしてないか?」
イヴェッタに至近距離で睨まれる。
「うわっ!」
「まぁ、私たちは普通の貴族令嬢ではないことは確かね。でも、ディートハルトだってそんなこと百も承知でしょうに……。それに昔から好きってオーラ隠してなかったけどな……。他の貴族令息をけん制してたくらいだしね。」
イヴェッタが思いもしないことを言い出した。
「は……、好き?けん制……?イヴェッタ、そんな事ないわよ。確かに幼馴染として仲は良かったし、友情の好みはあったけど。恋愛の意味はないわよ。それにけん制なんて、ディートハルトがする意味ないわよ。逆に私が言い寄る貴族女性から守ってたくらいだからね!」
イヴェッタは全く納得してない様子で、ため息をついた。
「学園時代、お昼になると必ず私たちの隣に座りに来たわよね。あのとき、周囲の男子学生ににらみを利かせていたわよ。鈍いアーシュは全く気付いてなかったようだったけどね」
「あ、あれは!ディートハルト達が女生徒に囲まれないための、女除けよ!私たちがいないと、囲まれるからって言っていたわ!」
イヴェッタがこれでも納得せず、深いため息をついた。
「じゃあ、今周りをぐるりと見てみて……」
私は、周囲の様子を見てみた。ここは男性の職員が多く、私たちの周りは男性職員ばかりだった。そして、何人かの男性職員と目が合い、皆頬を赤くして慌てて顔を伏せた。
あ……、この悪女顔で怖がらせてしまったようだ。
「見たわよ。みんな怖がって下を向いてしまったわ……」
「なんで私たちの周りがいつも男性職員ばかりかしってる?」
「え?だって男性職員が多いからじゃない?」
「違うわよ。入職してから、みんなアーシュとお近づきになりたくて、食堂では私たちの周りは男性職員なのよ。だって王宮に勤めてるのって、男性だけじゃないじゃない。侍女だってたくさんいるし、女性の文官も増えたもの。それなのにね~。鈍いのもいい加減にしなさいよ……」
言いたいことは言ったとばかりに、イヴェッタはナポリタンを食べ始めた。
そんなことあるのかな……。私はもう一度、周りを見渡した。私たちはいつも食堂の中央に座っているが、いつもその周りは男性職員ばかりだった。
男性職員の外側には女性職員が座っている。何人かの女性の文官や、侍女の制服を着た人と目が合い、鋭い視線を向けられ、プイっと顔を背けられた。
一方男性職員は、とろんとした顔で見つめられ、目が合うとやはり顔を赤くして慌てている。
え……、本当に……?そんなことが……。ただの魔道具オタクなのに……。
胸元に垂れているくせっけの赤髪を触った。
「やっぱり派手だからかな……」
「派手なだけじゃないでしょ。その髪も、顔も瞳のスタイルもいいからに決まってるでしょ?いいかげんモテるの自覚したら?」
「う……。そんなこと自覚なんて無理だよ……。それにディートハルト以外にモテたって仕方ないじゃない。彼に拒絶されたんじゃ、意味がないわよ」
「うーん……。でも、なんでディートハルトはそんな態度をとるんだろう……。恥ずかしいのかな……」
イヴェッタは何か思いついたように、口角を上げ、魔女の様な笑みを浮かべた。
「マダムからもらった例のお茶……、使っちゃいなさいよ。ディートハルト頭でっかちだから、彼の理性を崩すのよ!」
「例のお茶って……。えっ!!それって、び……」
私は両手で口を押さえた。こんな所で言って良い単語ではなかったからだ。
そう媚薬という単語を……。
「とても、素敵なお品で香りもいいですね!きっと旦那様もお喜びになりますね!」
「カトレーヌ、ありがとう」侍女のカトレーヌは退室していった。
湯あみをすると生きかえるわ。
宿舎にいた時は時間がなくて、あまりゆっくり浸かれなかった。
でも、下着に良い香りなんかしたかしら……。ハッとして私は急いでバスタブから出てバスローブを羽織り、下着を確認した。
試着した時には感じなかった鼻孔をくすぐる甘い香りがした。その近くを見渡すと、マダムからもらった香水が置いてあった。
カトレーヌだぁ~!きっと下着用の香水だと思って振りかけちゃったんだ!
私は下着をパサパサ振ってみたが、もう遅かった。
他の下着はクローゼットに置いてきちゃったし……。
私は仕方がなく香水のついた下着とナイトドレスを着た。下着は髪の色に合わせた赤色で、バラの刺繍が施されている。ナイトドレスもおそろいのバラの刺繍が胸元と裾に施されていて、黒いシースルー素材だ。着ている方が何故かいやらしくて、頬を熱くした。
恥ずかしいのでその上からガウンを羽織り、ソファでまた月間魔道具雑誌を読みながらディートハルトの帰りを待つことにした。
ディートハルトは討伐から帰ってきても、何かと用があると言って、帰りが遅かった。騎士団の事務所で作業でもしているのだろう。
討伐に行っていたから、そのあと片付けもあるのだろう……。
「アーシュ?こんな所で寝たら風邪ひくよ?」
ん……。誰……?
そう思っていると、突然体が宙に浮いた。
「えっ!」
私は驚いて目を開けると、すぐ近くに翡翠の美しい瞳があり、固まった。
ディートハルトにお姫様抱っこをされていたのだ。
その瞳は細められ、微笑まれた。
「ただいま、アーシュ」
「うん、おかえりディー」
この近さで微笑まれると、逃げ場所がない!
本当に顔が良すぎるわ……。
そして、ゆっくりベッドサイドに下ろしてくれた。ディートハルトもその横に座った。
「今日、転移魔道具見に行ったの?」
「あ、うん!もちろん!すごかったよ!まだ不安定みたいで、みんな到着すると倒れこんでたけどね」
「ははは。それ、騎士団の事務所で後輩が言ってたよ。バーデン様も試作品って言ってたもんね」
「うん。イヴェッタも改良が必要だって言ってた。本当に天才兄弟よね」
「確かに……。でも、俺からしたらアーシュだって天才だよ。アーシュの魔獣除けパウダーは本当に助かったんだ。気配を消した魔獣には特にね。それでケガをする隊員も多かったから、みんな感謝してたよ。あと、湯に入ったかのようにさっぱりする湯あみパウダーもね。討伐中は何日も野宿することがあったから、清潔を保つにはもってこいだったよ」
そう言ってディートハルトは私の頭をなでてくれた。
「いつだって、アーシュは魔道具の事を考えてるもんね」
灯篭のおぼろげな光に照らされて、ディートハルトの美しい笑顔と言葉が私の胸を温かくした。
「わ、わたしに出来るのはそんなことしかないから……。剣を持って魔獣と戦っくれたディートハルトの方がずっとかっこいいよ」
ディートハルトの瞳が大きく開かれて、無言だった。
何か変な事を言ったのだろうか。
そして口元を押さえて、「かっこいいって……、初めてアーシュに言われた……」と言って下を向いてしまった。
よく見ると顔も耳も赤い、もしかして熱でもあるのだろうか?
「ディートハルト!顔も耳も赤いよ?熱でもあるんじゃない?討伐の疲れが出たんだよ!今体温測定器持ってくるね!」
「あ!っちが!」
勢いよく立ち上がった私に、ガウンを掴んだディートハルト……。
ナイトドレスはスルスルした素材だった。ウエストの紐が緩んでおり、そのガウンはあっという間にその役目を終えて、私の足元に落ちた。
「あ……」と私は呟き、「え……」っとディートハルトが言った。
そしてお互いの視線が絡む。
「あ、あのね!だ、だいぶ下着が古くなっちゃったから、イヴェッタと買いに行ったの!それで店員さん勧められて……」
下着の赤と同じくらい、体も赤くなっているのではないかと思った。
「そうだったんだ……。よ、よくにあってるよ?」
ガウンを着ている時は封じられていた香水の香りが、一気に充満してきた。
「……っう」
ディートハルトをみるとさっきよりも顔が赤くなり、何かに耐えているようだった。
そして、勢いよく立ち上がり窓を開けた。
へ……?
「よ、夜風はきもちいね」と言って、ディートハルトはむりやり笑顔を作った。
そして、そのまま私に背を向けて窓の外を眺め始めた。
どうしたんだろう。香水が臭かったかな?普段あまりつけないから……。
普通貴族の女性は香水を愛用している。
しかし、魔道具作りに香水は何かしらの変化をもたらすとされ、仕事中は禁止されている。その癖で、普段から香水はつけないのだ。
「ディー、どうしたの?」
私が窓の方へ行こうとすると、ディートハルトは振り向いて背中を反らせた。
「アーシュ!こっちに来ない方がいい!風が冷たくて寒いから!」
そんなに寒くは無いはずだけど……。私避けられてる?
「アーシュ、風邪をひくといけないからガウンを着てくれる?」
私は足元に落ちたガウンを拾った。そして、そのまま上に羽織りウエストをキュッと結んだ。
「ありがとう。良かった……」
これは……失敗しちゃったみたいね。
その夜同じベットで寝たものの、端と端で寝ることとなった。
◇◇◇
「は?失敗した……?」
フォークに巻いたスパゲッティがイヴェッタの口には入らず、スルスルとお皿に戻っていく。
昨夜の事をイヴェッタに報告すると、あきれた顔をされた。
本当はもう少し休んでも良かったが、昨日も事が頭から離れず悶々としてしまい、結局仕事に来てしまった。
そしたら、イヴェッタも出勤していたわけだ。
そしてお昼休憩の今に至る……。
「うん。全然ダメだった。下着がダメなんだと思ってたのに。私にしては結構攻めた下着にナイトドレスを着たのにね。香水がいけなかったのかな……。あれは拒絶に近かったよ……。はぁ……、わたし女性としての魅力がないんだわ……」
「なんだって……?」
イヴェッタが眉間にシワを寄せて、聞き返した。
「だって、ここまでしてるのに全く先に進めないなんて……。あと猶予まで1年しかないのに……。やっぱり、魔道具ばかりに没頭してきたから、女性としての何かが欠けているのかもしれない」
「ちょっと、それって私の事もけなしてないか?」
イヴェッタに至近距離で睨まれる。
「うわっ!」
「まぁ、私たちは普通の貴族令嬢ではないことは確かね。でも、ディートハルトだってそんなこと百も承知でしょうに……。それに昔から好きってオーラ隠してなかったけどな……。他の貴族令息をけん制してたくらいだしね。」
イヴェッタが思いもしないことを言い出した。
「は……、好き?けん制……?イヴェッタ、そんな事ないわよ。確かに幼馴染として仲は良かったし、友情の好みはあったけど。恋愛の意味はないわよ。それにけん制なんて、ディートハルトがする意味ないわよ。逆に私が言い寄る貴族女性から守ってたくらいだからね!」
イヴェッタは全く納得してない様子で、ため息をついた。
「学園時代、お昼になると必ず私たちの隣に座りに来たわよね。あのとき、周囲の男子学生ににらみを利かせていたわよ。鈍いアーシュは全く気付いてなかったようだったけどね」
「あ、あれは!ディートハルト達が女生徒に囲まれないための、女除けよ!私たちがいないと、囲まれるからって言っていたわ!」
イヴェッタがこれでも納得せず、深いため息をついた。
「じゃあ、今周りをぐるりと見てみて……」
私は、周囲の様子を見てみた。ここは男性の職員が多く、私たちの周りは男性職員ばかりだった。そして、何人かの男性職員と目が合い、皆頬を赤くして慌てて顔を伏せた。
あ……、この悪女顔で怖がらせてしまったようだ。
「見たわよ。みんな怖がって下を向いてしまったわ……」
「なんで私たちの周りがいつも男性職員ばかりかしってる?」
「え?だって男性職員が多いからじゃない?」
「違うわよ。入職してから、みんなアーシュとお近づきになりたくて、食堂では私たちの周りは男性職員なのよ。だって王宮に勤めてるのって、男性だけじゃないじゃない。侍女だってたくさんいるし、女性の文官も増えたもの。それなのにね~。鈍いのもいい加減にしなさいよ……」
言いたいことは言ったとばかりに、イヴェッタはナポリタンを食べ始めた。
そんなことあるのかな……。私はもう一度、周りを見渡した。私たちはいつも食堂の中央に座っているが、いつもその周りは男性職員ばかりだった。
男性職員の外側には女性職員が座っている。何人かの女性の文官や、侍女の制服を着た人と目が合い、鋭い視線を向けられ、プイっと顔を背けられた。
一方男性職員は、とろんとした顔で見つめられ、目が合うとやはり顔を赤くして慌てている。
え……、本当に……?そんなことが……。ただの魔道具オタクなのに……。
胸元に垂れているくせっけの赤髪を触った。
「やっぱり派手だからかな……」
「派手なだけじゃないでしょ。その髪も、顔も瞳のスタイルもいいからに決まってるでしょ?いいかげんモテるの自覚したら?」
「う……。そんなこと自覚なんて無理だよ……。それにディートハルト以外にモテたって仕方ないじゃない。彼に拒絶されたんじゃ、意味がないわよ」
「うーん……。でも、なんでディートハルトはそんな態度をとるんだろう……。恥ずかしいのかな……」
イヴェッタは何か思いついたように、口角を上げ、魔女の様な笑みを浮かべた。
「マダムからもらった例のお茶……、使っちゃいなさいよ。ディートハルト頭でっかちだから、彼の理性を崩すのよ!」
「例のお茶って……。えっ!!それって、び……」
私は両手で口を押さえた。こんな所で言って良い単語ではなかったからだ。
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