【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる

ざっしゅ

文字の大きさ
16 / 68

16話 深まる愛と決意

しおりを挟む

 ソウタの温かい言葉に、オリオンの心は癒され、二人の間には以前よりも強い絆が生まれた。

「ソウタ君……ありがとう……」

 オリオンは、ソウタの手をそっと握り、感謝の気持ちを伝えた。
 彼の頬は、わずかに赤く染まっている。

 ソウタは、オリオンの言葉に、にこやかに頷いた。

 彼にとって、オリオンは大切な友人であり、彼を安心させることができたことに、内心で安堵していた。

 その様子を、少し離れた場所で鍛錬していたルースが見ていた。

 ソウタとオリオンが、互いの手を握り合っている光景は、ルースの目に、まるで恋人同士のように映った。

(ソウタ……なぜ、オリオン様と……!)

 ルースの心の中に、激しい嫉妬が燃え上がった。
 ルースにとって、ソウタが他の男と親密にしている姿は、耐え難いものだった。
 彼の胸は、不快感と怒りで満たされていく。

(ソウタの気を、私に向けさせなければ……!)

 ルースは、瞬間的にそう思った。
 そして、彼の脳裏に、ある「計画」が閃いた。

 ルースは、鍛錬中の姿勢をわざと崩し、重心を不安定にした。

 そして、そのまま、バランスを失ったかのように、地面に派手に転倒した。

「うっ……!」

 ルースは、呻き声を上げ、膝を抱え込んだ。
 彼の動きは、あくまで事故を装っているが、その転び方は、ソウタの注意を引くには十分すぎるほどだった。

「ルース!?」

 ソウタは、ルースの異変にすぐに気づき、慌てて駆け寄った。彼の顔には、心配の色が浮かんでいる。

 オリオンもまた、驚いてルースの元へ駆け寄ろうとしたが、ソウタの動きの方が早かった。

「大丈夫か、ルース!?どこか痛むのか!?」

 ソウタは、ルースの体を抱き起こし、怪我がないか心配そうに確認した。

 ルースは、ソウタの焦った表情を見て、内心でほくそ笑んだ。ソウタの注意が、完全に自分に向いている。

「少し、膝を捻ってしまった……大したことはないよ……」

 ルースは、痛むふりをして、わずかに顔を歪めた。

「大したことないわけないだろ! ほら、医務室に行くぞ!」

 ソウタは、ルースを立ち上がらせようとした。

 しかし、ルースはソウタの手を振り払った。
 彼の顔には、嫉妬に燃える怒りが浮かんでいる。

「大丈夫……私一人で行ける」

 ルースは、そう言って、ソウタの隣から離れようとした。

「何言ってるんだ! 一人で行かせられるわけないだろ! ほら、僕が支えるよ!」

 ソウタは、ルースの腕を掴み直し、強引に医務室へと向かおうとした。

 ソウタとルースが、医務室へと向かっていく。
 その二人を、オリオンは、寂しそうな眼差しで見つめていた。

 彼の瞳には、ソウタが自分ではなく、ルースを選んだことへの、複雑な感情が揺れている。
 ソウタの優しさは、自分だけのものではないのだと、オリオンは痛感していた。

 

 軍事学校の医務室。

 ソウタは、自ら医務室の応急処置セットを取り出し、ルースの怪我の手当てを始めた。
 彼の動きは、冷静で、そして手慣れていた。
 消毒をし、包帯を巻き、痛みを和らげる薬を塗る。

「はい、これで大丈夫。無理するなよ」

 ソウタは、ルースの膝に巻いた包帯を指でそっと叩いた。

 ルースは、ソウタが真剣な表情で、自分の怪我を治療してくれている姿を見て、胸の奥が温かくなるのを感じた。

 ソウタの、自分を心配する気持ちが、ルースの心を癒していく。

(ソウタは、こんなにも私のことを……)

 ルースの心の中にあった嫉妬の炎は、ソウタの献身的な看病によって、ゆっくりと鎮火していった。

 彼の顔には、再び、ソウタへの愛おしさと満足げな表情が戻っていた。

 

 医務室での手当てを終え、ソウタとルースは、ソウタの部屋へと戻ってきた。

「ルース、これ、よく効く治療薬なんだ。使ってみてよ」

 ソウタは、自分の部屋に着くと、戸棚から小さな瓶を取り出し、ルースに手渡した。

 ルースは、ソウタの気遣いに、嬉しそうに頷いた。

「ありがとう、ソウタ。助かるよ」

 その時、ソウタの部屋の机の上に、何通もの封筒が置かれているのが見えた。

 全て、豪華な装飾が施された、明らかに貴族家からのものだった。

 ソウタは、手紙を一瞥して溜息をついた。

「またか……婚約者がいるのに、なんで縁談の手紙が届くんだ?」

 ソウタの口から出たのは、純粋な疑問だった。
 彼にとって、これらの縁談は、今は全く優先順位の低いものだった。

 彼は、今この時、未来の安全を確保するために、ルースや近衛兵たちとの関係を強化することに必死で、縁談など考える余裕はなかったのだ。

 しかし、その言葉と、山のように積まれた手紙を見たルースは、顔色を変えた。

(縁談の手紙……!? ソウタは、こんなにも多くの貴族から求められているのか……!)

 ルースの心臓が、激しく脈打った。
 彼は、ソウタの呑気な態度に、言いようのない焦りを感じた。

(ソウタが、私以外の誰かに取られてしまうかもしれない……!)

 ルースの脳裏に、貴族と結婚し、自分から離れていくソウタの姿が鮮明に浮かんだ。

 ソウタが自分に恋しているという噂は、ルースの中で確固たるものだったが、それが真実であったとしても、平民の自分が貴族のソウタに相応しいのか、という不安が募った。

「ソウタ……」

 ルースは、ソウタの腕を掴んだ。
 その瞳は、強い決意に満ちていた。

(私は、このままではいけない……! ソウタに相応しい男にならなければ……!)

 ルースは、ソウタへの揺るぎない愛と、そして、彼に相応しい存在になりたいという強い願望を胸に、さらに強くなろうと決意した。

 彼の心には、ソウタを護り、そしてソウタの隣に立つための、燃えるような闘志が宿ったのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!

煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。 処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。 なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、 婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。 最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・ やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように 仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。 クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・ と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」 と言いやがる!一体誰だ!? その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・ ーーーーーーーー この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に 加筆修正を加えたものです。 リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、 あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。 展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。 続編出ました 転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668 ーーーー 校正・文体の調整に生成AIを利用しています。

ハッピーライフのために地味で根暗な僕がチャラ男会計になるために

ミカン
BL
地味で根暗な北斗が上手く生きていくために王道学園でチャラ男会計になる話 ※主人公へのいじめ描写ありのため苦手な方は閲覧ご注意下さい。

転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい!

煮卵
BL
転生コメディ/婚約破棄/王族×平凡/腐女子悪役令嬢 俺は、かつて自分がシナリオを書いた乙女ゲーム《薔薇庭》の世界に転生してしまった。 与えられた役割は、王子アーベルの取り巻きにすぎない“悪役モブ”。原作の筋書き通りなら、アーベルの婚約が破棄されたとき、俺はその罪をかぶせられて処刑される運命にある。 処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく俺は懸命に動いた。 なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限りアーベルと過ごし、 婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。 最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・ やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように 仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。 ……けれど、気づけばアーベルは俺に惚れ込み、他の誰でもなく俺を選んでしまった。 その結果、ついには俺自身の命が狙われる事態へと発展する。 真摯なアーベルの愛の告白に 俺自身は――死にたくない一心で「YES」と答えてしまうがーー 俺の“生存戦略”は、どこまで通用するのか。 そしてアーベルの想いに、俺はどこまで嘘をつき続けられるのか――。 DEAD or LOVEコメディ第二章! ※「【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!」の続きです。 単品でも読めますが、よろしければ第一部もお読みください。 ※※主人公は悪役令嬢ではありませんが途中で出てきます。 ーーーー 校正・アイディア出しに生成AIを利用しています。

【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。

明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。 新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。 しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…? 冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。

追放オメガ聖帝の幸せな結婚〜クールなスパダリ騎士に拾われて溺愛されるまで〜

あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
ノルディーナ王国の聖帝サーナは、教皇のありもしない嘘のせいで聖宮から追放されてしまう。 行く当てがないサーナが国境に向かうと、そこで隣国ルミルカ王国の騎士であるムーシュと出会う。ムーシュから諸事情により偽装結婚を提案されて、サーナは期限付きの偽装結婚ならばよいと承諾し、一時的に保護してもらうことに。 異国暮らしに慣れていく中で、やがてムーシュから溺愛されるようになり……?

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

処理中です...