告白現場に遭遇したら、まさかの俺の推しだった

花魁童子

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プロローグ

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 思いが芽生えるのはいつも突然だ。
 それをこの世は、積み重ねられた偶然と呼ぶのか、あるいは最初から定められた必然と呼ぶのか。

 俺には分からない。

 ただ一つ確かなのは、その思いが時に”叶わない”と思い、また時に”それでも諦めるな”と背中を押すこともあるということ。無数に分かれた選択肢に人は惑わされてしまう。

 推しに好意を抱くことは悪いことじゃない。

 少なくとも俺はそう信じている。

 俺が惚れたのは天才ピアニストだった。
 開いた動画にはイヤホン越しに流れてくる声と鍵盤に触れるたびに生まれる音。その一音一音がまるで感情をなぞるようで気づけば息を潜めて聴いていた。感情が揺さぶられ、全神経が彼の奏でる音に反応する。

 画面の向こうで笑う彼。
 その数秒の一瞬、カメラに映り込む表情に何度も心を奪われた。

 手の届かない存在だと分かっていながら俺は今日もその動画を開く。
 静寂に満ちた部屋に自分の気配を紛れ込ませながら、動画の彼を見て心惹かれる。

 ――もっとも彼が奏でる音で救われたのはきっと俺だけじゃない。

 ステージの上で”天才”と呼ばれるほどの技術を持ち、聞く者の神経や感情を同調させ、人を魅了する。


 叶わないと分かっていた。
 立つ世界が違う。
 俺とは交わるはずがない。

 それでも俺は思いを馳せることだけはやめられなかった。


 この想いが”偶然”なのか”必然”なのか。


 その答えが明らかになるのは――二人の音が、重なったその先。
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