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第二章 ハウエバー系 第901辺境惑星 編
77. アン姉ちゃんは、とても不器用だった
しおりを挟むそれから毎日、俺とコナンとシスは、キッチントレーラーで行商に出掛ける事となった。
本当に、コナンとシスは商売大好きなのである。
このヤバ過ぎるテンションに、血の繋がってないナナは付いていけなくなり、早々に脱落しちゃってるし。
無理も無いよね。コナンもシスも商売してる最中、目が血走ってるんだもん。
しかも、2人は残業しまくってるのに、残業代も要らないって、本当に凄いよね。
そんな俺も残業しまくる羽目になってるのだけど、経営者なので仕方がないのか?
まあ、俺の場合、コナンとシスが楽しそうに仕事してるのを見てるだけで、何故か嬉しいんだよね。本当の弟と妹を見てるみたいで。
既視感というか、デジャブを見てる感じもして、なんかこの状態で要るのが、とても意心地が良くて落ち着くのだ。
本当は、超絶ブラックの筈なのに謎である。
でもって、今日も一日分の商品を持って、行商に出掛けようとしたら、エリザベスさんがアンさんを連れてやって来たのである。
「ヨツバ君、今日はアンも連れていってあげて!
それから、この魔法に袋にある品物も全て売ってから、帰ってきて頂戴!絶対よ!」
なんか知らんが、トンデモない量の商品が入ってそうな魔法の鞄を渡されてしまう。
「これ、一日じゃ売り捌けないと思うんだけど?」
「勿論、何日掛かっても良いわよ!グラスホッパー領にも全て売り切るまで、戻ってこなくてもいいから!
そのつもりで頑張って頂戴!」
「どんなブラック企業だよ!」
俺は、思わずツッコんでしまう。
従業員に命令される商会長って、どんなだよ。
だけれども、コナンとシスは燃えてるし。
ゲームの勝負か何かと思ってるみたいだ。
「ヤッター久しぶりの泊まりの仕事だぜ!売りに売って売りまくってやるぞー!」
「絶対に、チイ兄ちゃんに負けないんだからね!それとお泊まり嬉しいなー!」
どんだけ、この2人は商売大好きなんだよ。
「アン!貴方も頑張って、ヨツバ君をモノにするのよ!」
「うん。頑張ってみる」
アンさんも、何故か燃えてるし。
というか、何を頑張るんだよ。
というか、俺、アンさんにも狙われてるの?
そんなそぶり、アンさん、俺に見せて無かったんだけど。
兎に角、こうして、俺とコナンとシスとアンさんとのお泊まり行商の旅が始まったのである。
キッチントレーラー荷馬車の馬を操る俺の両隣には、当たり前のようにコナンとシスが座る。
アンさん、改め、アン姉ちゃんは、流石に4人も座れないから後ろに座る。
後ろと言っても、拡張魔法で、ほぼ家になってるので、前の席より優雅に過ごせるんだけどね。
アン姉ちゃんと呼ぶ事にしたのは、コナンとシスがそう呼んでるから。俺も何故か知らないが、アン姉ちゃんと呼んだ方がしっくりくるので、アン姉ちゃんと呼ぶ事にしたのである。まあ、俺より1つ歳上だから良いよね。
アン姉ちゃんも、普通にアン姉ちゃんと呼ばれる事に、全く気にしないようだったし。
サヤも、何故かウンウンと頷いてたから、間違っては居ないのだろう。
で、目的地に着くと、アン姉ちゃんは、想像以上にポンコツだった。
本当に、コナンとシスと血が繋がってるのかというほど、不器用なのだ。
まあ、不器用というより、力加減というものが全く分かっていないのである。
エリザベスから預かった魔法の鞄の中に、何故か肉のミンチが入ってたから、サヤの提案でハンバーガーを売ろうという事になったんだけど、アン姉ちゃん、包丁がマトモに使えないのである。
トマト切ってと頼んだら、まな板まで真っ二つに切っちゃうし、ジャガイモをポテトの大きさに切ってと頼んだら、まな板まで、ポテトの形になってたし……
そんでもって、調理は無理だと判断して、接客やらせたら、いちいちお釣りを渡す時、お客さんの指を骨折させちゃった時は、本当に、どうしたらそんな風になるんだと、頭抱えたからね……
完全に、ユニークスキル身体強化Lv.3を持て余してるのである。
結局、何もやらせれないので、お店の看板を持つ係をやってもらう事にした。
「イーグル辺境伯の血筋の人でも、不器用な人って居るんだな」
「まあ、アンさんの場合は、イーグル辺境伯の血より、少しだけエドソンさんの血が濃いんですよ!」
サヤが、俺の独り言に勝手に答え、アン姉ちゃんを擁護する。
「エドソンさんって、不器用なのか?」
「剣術や戦闘に関しては、天才的に器用ですけど、生き方に関しては、メチャンコ不器用ですね。
貴族社会に全く馴染めてないですし、エリザベスさんをお嫁さんに貰ってるのに、全く、エリザベスさんを活かしていませんでしたから!
その点、ご主人様は、エリザベスさんを活かしまくってますから、ご主人様の方が、エドソンさんより、数倍器用です!」
「まあ、俺の場合、将来【器用貧乏】スキル貰える予定だから、多分だけど、要領が良いんだよな?」
「ですです!ご主人様は、切り替え早いんですよ!
エリザベスさんに全て、商会の経営を任せちゃうなんて、普通の人には出来ませんから!
エドソンさんの場合、働くのは男の仕事とか言って、一切、エリザベスさんを働かせなかったから、グラスホッパー領は超絶貧乏になってしまったと言えますからね!
エリザベスさんレベルの人なら、不毛なグラスホッパー領であっても、それなりの生活は送れるようにするポテンシャル持ってる筈ですけど、それを一切使わせなかったエドソンさんは、ある意味、天才的に不器用で要領が悪かったと言えますね!」
「お前、エドソンさんを、ディスってるだろ!」
「ディスってなんてないですよ!僕は、エドソンさんの事も大好きだから、決して、エドソンさんをディスる事なんてありませんから!
ただ、僕は最新鋭AIなので、間違った事が言えないだけです!」
なんか、昔聞いた事あるセルフの気がしたが、間違った事が言えないイコール、ディスる事なんだと、ヨツバは、しみじみ思ったのであった。
ーーー
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