愛人の子を寵愛する旦那様へ、多分その子貴方の子どもじゃありません。

ましゅぺちーの

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22 集結

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「公爵夫人、アルフ様が放火事件の実行犯である暗殺者の身柄を確保したそうです」
「そう、上手くいったみたいね」


公爵家の応接間にいた私は、アルフ様の侍従から話を聞いてほっと胸を撫で下ろした。


(相手が暗殺者だと聞いて少し不安だったけれど……)


侍従の話によると、彼は傷一つ負うことなく裏社会では名の知れた暗殺者を捕らえたらしい。
やはりアルフ様は誰よりも強い。


「私もドロシー様に匿名で手紙を送っておいたわ。直にここへ来るはずよ。あとは――」


私はたった今公爵家の前に到着した馬車を窓から眺めて呟いた。


「――ディアン様の到着を待つだけね」


断罪劇が始まるのはそれからだ。
リアを傷付けたディアン様も私を貶めようとしたドロシー様もただでは済まさない。


(覚悟しておくことね……)


そして予想通り、すぐに慌ただしい様子でこちらへ向かってくる足音が聞こえてきた。
扉が勢いよく開けられ、そこから姿を現わしたのはドロシー様だった。


彼女は酷く焦っているようで、顔が真っ青だ。


「あら、ドロシー様。そんな急いでどうかなさったのですか?」
「この手紙を送ったの、アンタでしょう!?」


そう言ってドロシー様は紙を私に見せた。
その手は小刻みに震えていた。


「あら、随分焦っているみたいですね」
「誰だって焦るわよ!!!――『十年前の事件の真相を私は知っている』なんて書かれているんだもの……!」


それを聞いた私は、こみ上げてくる笑いをじっと堪えた。
アルフ様の言う通り、ドロシー様はただ性格が悪いだけの女では無かった。
――とんでもない秘密を隠していたのだ。


(まぁ、当然のことよね)


ドロシー様はディアン様にとって聖母では無かったのだから。
私は今回、そのことをよく分からせるために彼らをこの場所に呼び寄せたのだ。


「どうしてアンタがそれについて知ってるのよ、私の過去でも調べたわけ?」
「ええ、そうね」
「人の過去を勝手に調べるだなんて最低ね!!!地獄に堕ちればいいわ!!!」


声を荒らげるドロシー様に、私は淡々と言葉を返した。


「先に手を出したのは貴方の方でしょう?放火事件の真犯人が貴方だってこと、そして私を犯人に仕立て上げたことも。全て知っているわ」
「……ッ」


返す言葉も無いのか、彼女は口を噤んだ。
気まずそうに目を逸らしたその姿に、私は静かな怒りを覚えた。


(この人は一体どれだけの悪事に手を染めてきたのだろう……)


自分の欲のために何の罪も無い人を何人も貶め、殺害した。
正真正銘の悪女である。


そんな彼女には正しい裁きを与えなければならない。


(これ以上犠牲者を出すわけにはいかないのよ)


そう心に決めたとき、待ち望んでいた人物がやって来た。


「奥様、旦那様がいらっしゃいました」
「通してちょうだい」
「ディアン様……!?」


それからすぐにディアン様が応接間へと入ってきた。


「おい、急に呼び出すだなんて何の真似だ……って、ドロシー?何故君がここに……」
「……」


最初よりもずっと顔が青くなっているドロシー様。
そんな彼女を不思議そうに見つめるディアン様。


(うふふ、愛し合う二人がお互いを疑っている状況ね)


そして、来訪者はもう一人いた。


「――どうやら俺が最後だったようだな」


そう言いながら窓から入って来たのは暗殺者を捕らえた後のアルフ様だった。
彼は右手に抱えていた男を応接間の床に放り投げた。


男の顔の布が外されると、彼はドロシー様を見て驚いた顔をした。


「お、お前……!」
「ア、アンタ……!なんでここに……」
「……ドロシー、知り合いなのか?」
「ち、違うわよ!」


彼女は慌てて否定したが、ディアン様は納得していない様子だった。
その光景を前に、これから何が起こるのかも分かっていない彼らを見て一人笑みを浮かべた。


(全員揃ったみたいね)


いよいよ断罪劇の始まりである。


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