愛人の子を寵愛する旦那様へ、多分その子貴方の子どもじゃありません。

ましゅぺちーの

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31 悪女の最期

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裁判を経て、ドロシーは斬首刑を宣告された。
彼女に手を貸していた暗殺者の男も同じ刑に処されることとなった。


稀代の悪女ドロシーの処刑はすぐに執行されることが決まった。
判決の翌日朝という異例の執行スピードである。


「放しなさい!!!私を誰だと思っているのよ!!!」


ドロシーは色褪せた髪をバッサリと切り、血で汚れた古びたドレスを着て処刑場に現れた。
以前の輝かしい美貌は見る影も無かった。


みずぼらしい姿を民衆の前で晒されるのがかなりの屈辱だったのか、彼女は髪を振り乱して暴れた。
そんなドロシーの姿に、民たちはこれまで以上に蔑みの視線を向ける。


全員に侮蔑の目を向けられながら、惨めな姿で死んでいく。
稀代の悪女の最期としてはお似合いなのではないか。


私はそんな気持ちで彼女の処刑をじっと見守っていた。


「早く死ね!」
「さっさと首を切り落とせ!」


断頭台の前にいるドロシーに平民たちの罵声が浴びせられる。


「うるさいわね!私は公爵に愛された女よ!?こんなことをしてただで済むと思ってるわけ!?」


断頭台に乗せられてもなお、ドロシーは悪あがきを続けた。
彼女の言う通り、かつては公爵に愛された女だったが、それは過去の話でしかない。


「ああ、私を助けてディアン様!アース様でもいいわ!私を罵倒するコイツらに罰を与えてちょうだい!」


ここで既に亡くなった前公爵の名前を出すとは、完全に正気を失っているようだ。
アース様が地獄から這い上がって来てかつて愛した自分を助けてくれるとでも思っているのだろうか。


しかし、そんなのは虚しい妄想でしかない。
助けが来ることも無く、彼女は断頭台に頭を固定された。


「ちょっとやめて!嫌よ私!こんなみずぼらしい姿で死ぬだなんて嫌!せめて化粧をさせて良いドレスを着せてちょうだい!そうしないと――」
「――死刑を執行しろ!」


国王陛下のその言葉で巨大な刃がドロシーの首に向かって落とされた。


「待って!最後にいざというときのために貯めておいたお金を使いたいわ!処刑はそれからで――」


――ザシュッ


最後の言葉を言い終わる前に彼女の首は切り落とされた。


大勢の人の罵声を浴びながらドロシーは死んだ。
最期の最期まで悪女らしい、醜悪な姿だった。


「自業自得ですわ」
「平民の分際で、公爵夫人を陥れようとしたんですもの。こうなって当然ね」


処刑を見守っていた貴族たちは口をそろえてそう言った。
首を落とされる瞬間を見て気分が悪くなった私は、額を手で押さえた。


「シア、大丈夫か?」
「……はい、平気です」


そんな私を見たアルフ様が心配そうに顔を覗き込んだ。


「最期まで醜い姿だったな。ディアンはあれのどこが良かったんだか……」
「きっとあの方の表の部分しか見ていなかったのでしょう。人とは恐ろしいですね」
「そうだな……」


それから私たちは会話を交えながら処刑場を後にした。


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