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番外編 ディアン視点②
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騎士に引きずられ、私は強引に用意されていた馬車へ乗せられた。
「おい、どこへ行く気だ!私は公爵だぞ!!!」
「貴方はもう公爵ではありませんよ」
「な……それは一体どういうことだ!?」
慌てて騎士を問い詰めた。
私が公爵ではなくなったとは、一体どういうことなのか。
「奥様が貴方と離婚されました」
「なッ……離婚だと!?私は同意した覚えは無いぞ!」
「貴方は侯爵家から嫁いできた奥様を長年蔑ろにし、さらには殺害未遂事件まで起こしました。そのため、特別に離婚が認められたのです。――国王陛下によって」
「……ッ!!!」
(シアと離婚!?聞いてないぞ!)
「待て、仮に離婚が成立したとしてもグクルス公爵家の血を引いているのはあの女ではなく私だ!邸から出て行くのはアイツの方だろう!」
「本来ならそうなりますが……奥様にはグクルス家の血を持つ娘がいますから」
「私はその子の父親だぞ!!!」
つい最近まで名前すら知らず、顔も見たことの無かった子供だが、父親は正真正銘私だった。
子から父親を引き離すなど、何を考えているのか。
「父親……?何を言っている……?」
「……何だ?」
騎士の顔が一瞬で険しいものとなった。
「もしお前が本当にお嬢様の父親であるのなら、何故これまで一度も会いに来なかった?」
「そ、それは……!」
「お嬢様はいつだって父親の存在を恋しがっていた。生まれたときからずっとだ。良い子にしていればきっといつかは帰って来ると信じて。お前はそんなお嬢様の想いを無惨に踏みにじったんだ。そのことを分かっているのか?」
「ッ……」
返す言葉が無かった。
娘が私に対してそのようなことを思っていたとは。
(ああ……)
私はとんでもなく大きな罪を犯してしまったのだ。
***
しばらくして、馬車が停まった。
ずっと放心状態だったため、どれくらい時間が経ったのかも分からない。
「ここはどこだ……?」
目的地へと到着した頃には既に辺りが暗くなっていた。
馬車から降ろされた私は、目の前に広がる景色を見て驚愕した。
(こ、ここは……!)
森の中に、古びた一軒の小屋がポツンと建っている。
「お、おい……冗談だろう……?」
忘れられるはずが無い。
ここは母が処刑された後、私が大罪人の息子として幽閉されていた場所だった。
十年前、私はここで地獄のような日々を過ごした。
「シアが……私をここに入れろと命じたのか……?」
「いや、奥様は何も知らないさ」
「じゃあ一体誰が……!」
「それをお前が知る必要は無い」
そう言うと、騎士は私を強引に小屋の中へ押し込んだ。
「おい、やめろ!」
扉を閉められ、真っ暗な部屋に閉じ込められる。
小屋の中は十年前と何一つ変わっていなかった。
「おい、待ってくれ……」
扉に縋りつくも、しっかりと施錠されていてビクともしない。
(私は再び、この地獄のような場所で暮らさなければいけないということか!?)
目の前が真っ暗になった。
これならいっそ死んだ方がマシだ。
「そ、そんな……あ、ああ……」
ドロシーは死に、妻からも離婚をされ、公爵位までも失った。
十年前は運良くここから出られたが、今度はそう上手くいかないだろう。
これから私は死ぬまでの間をこの場所で過ごさなければならないのだ。
「あ……ああ……」
そのことに絶望した私は小屋で一人、叫び声を上げて泣き続けた。
***
これで番外編完結となります!
完結まで読んでくださってありがとうございました!
「おい、どこへ行く気だ!私は公爵だぞ!!!」
「貴方はもう公爵ではありませんよ」
「な……それは一体どういうことだ!?」
慌てて騎士を問い詰めた。
私が公爵ではなくなったとは、一体どういうことなのか。
「奥様が貴方と離婚されました」
「なッ……離婚だと!?私は同意した覚えは無いぞ!」
「貴方は侯爵家から嫁いできた奥様を長年蔑ろにし、さらには殺害未遂事件まで起こしました。そのため、特別に離婚が認められたのです。――国王陛下によって」
「……ッ!!!」
(シアと離婚!?聞いてないぞ!)
「待て、仮に離婚が成立したとしてもグクルス公爵家の血を引いているのはあの女ではなく私だ!邸から出て行くのはアイツの方だろう!」
「本来ならそうなりますが……奥様にはグクルス家の血を持つ娘がいますから」
「私はその子の父親だぞ!!!」
つい最近まで名前すら知らず、顔も見たことの無かった子供だが、父親は正真正銘私だった。
子から父親を引き離すなど、何を考えているのか。
「父親……?何を言っている……?」
「……何だ?」
騎士の顔が一瞬で険しいものとなった。
「もしお前が本当にお嬢様の父親であるのなら、何故これまで一度も会いに来なかった?」
「そ、それは……!」
「お嬢様はいつだって父親の存在を恋しがっていた。生まれたときからずっとだ。良い子にしていればきっといつかは帰って来ると信じて。お前はそんなお嬢様の想いを無惨に踏みにじったんだ。そのことを分かっているのか?」
「ッ……」
返す言葉が無かった。
娘が私に対してそのようなことを思っていたとは。
(ああ……)
私はとんでもなく大きな罪を犯してしまったのだ。
***
しばらくして、馬車が停まった。
ずっと放心状態だったため、どれくらい時間が経ったのかも分からない。
「ここはどこだ……?」
目的地へと到着した頃には既に辺りが暗くなっていた。
馬車から降ろされた私は、目の前に広がる景色を見て驚愕した。
(こ、ここは……!)
森の中に、古びた一軒の小屋がポツンと建っている。
「お、おい……冗談だろう……?」
忘れられるはずが無い。
ここは母が処刑された後、私が大罪人の息子として幽閉されていた場所だった。
十年前、私はここで地獄のような日々を過ごした。
「シアが……私をここに入れろと命じたのか……?」
「いや、奥様は何も知らないさ」
「じゃあ一体誰が……!」
「それをお前が知る必要は無い」
そう言うと、騎士は私を強引に小屋の中へ押し込んだ。
「おい、やめろ!」
扉を閉められ、真っ暗な部屋に閉じ込められる。
小屋の中は十年前と何一つ変わっていなかった。
「おい、待ってくれ……」
扉に縋りつくも、しっかりと施錠されていてビクともしない。
(私は再び、この地獄のような場所で暮らさなければいけないということか!?)
目の前が真っ暗になった。
これならいっそ死んだ方がマシだ。
「そ、そんな……あ、ああ……」
ドロシーは死に、妻からも離婚をされ、公爵位までも失った。
十年前は運良くここから出られたが、今度はそう上手くいかないだろう。
これから私は死ぬまでの間をこの場所で過ごさなければならないのだ。
「あ……ああ……」
そのことに絶望した私は小屋で一人、叫び声を上げて泣き続けた。
***
これで番外編完結となります!
完結まで読んでくださってありがとうございました!
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