愛人の子を寵愛する旦那様へ、多分その子貴方の子どもじゃありません。

ましゅぺちーの

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番外編 ディアン視点①

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あの事件があってから、私は公爵邸にある自室に軟禁されることとなった。
この部屋で過ごすのは何年ぶりか、最後にここにいたのがいつかさえもよく分からない。


それほどに私は家に帰らず、本邸に住む妻と子を蔑ろにしていたのだということにようやく今気付いた。


久々に来る公爵邸の自室は子供の頃に見たものと何一つ変わっていなかった。
父は時々私をこの場所へ呼んでは、何の感情も宿していない瞳で義務的な会話をした。
気にかけるフリをしているものの、内心は疎ましく思っているのだということが嫌でも伝わってきた。


当主が兄に代わってからは、ここで罵詈雑言を浴びせられるようになった。
そんな辛い記憶の残るこの場所が嫌いで、私は逃げるようにドロシーと暮らす別邸へと足を運んでいた。
そして次第にそこに住み着くようになった。


(一体何日経ったのだろうか……)


この部屋に出入りするのは定期的に食事を運んでくる騎士たちのみで、妻であるシアや娘のリアとも会えていない。
騎士たちに日付を尋ねても何も答えずに去って行く。


どうやら今、この公爵邸の主人は私ではなくシアのようだった。
そうなるのも当然だろう。


仕事が出来ないうえに妻と娘を蔑ろにする当主に愛想を尽かさない人間などいない。


(どうしてこうなってしまったのだろうか……)


私は一体いつから間違えたのか。
ドロシーと出会い、恋をしたとき。
妻を冷遇し、娘を憎き敵の子だと決めつけたとき。


いや、もしかすると生まれたこと自体が間違いだったのではないか。
そのような後ろ向きな考えが頭の中に広がっていく。


外にいる騎士たちの話で、先日ドロシーが死刑宣告をされたということを聞いた。
長年私を騙した彼女に未練などは無いが、彼女が死刑なら私はどうなるのだろうという不安が頭をよぎった。


ドロシーと違って王家の法廷に送られることの無かった私の処罰はシアに委ねられているのだろう。
私は公爵とは名ばかりの男だった。
母親は平民で、頼れる貴族もいない。


今の状況で私を救ってくれる人間は誰もいないのだ。
政略結婚で嫁いできた妻をもっと大事にしていれば、こんな未来は訪れなかったかもしれない。
娘だって間違いなく私の血を引く子だった。


(私は全て決めつけ、しっかりと確認しようともしなかった……)


後悔の念がどっと押し寄せてくる。


(死刑でも文句は言えないな……)


そんなことを考えていたそのとき、突然部屋の扉が開けられた。
入って来たのはいつもの騎士たちだった。


(……?まだ食事の時間では無いはずだ……)


不思議に思っていると、二人の騎士が私の両腕をガシッと掴んだ。


「お、おい!」


そして私を引きずるようにして外へ連れ出していく。


「ま、待て!私をどこに連れて行く気だ!」




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