愛する夫が目の前で別の女性と恋に落ちました。

ましゅぺちーの

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3 記念パーティー

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「奥様、旦那様からの贈り物です」
「まぁ、何て素敵なのかしら……」


しばらくして、結婚五周年を祝うパーティーの日がやってきた。
アランから贈られたのは彼の瞳の色を基調としたマーメイドラインのドレスだった。


「奥様は本当に旦那様に愛されておられるのですね、いつも自身の瞳の色の贈り物をしてくださるのですから」
「そうかしら」


ドレスに袖を通した私は、侍女によってメイクを施され、いつも下ろしているだけの長い髪の毛を丁寧に結い上げる。


「とてもお美しいですわ、奥様!」
「ありがとう、みんなのおかげよ」
「もうすぐ旦那様がいらっしゃいます、きっと今日の奥様に惚れ直すはずですわ」


二人の時間を邪魔したらいけないと、侍女たちはそそくさと部屋を出て行った。


(惚れ直す、か……)


部屋にある鏡を見ると、華やかに着飾った自分自身が目に入った。
彼にちょっとでも綺麗だと思われたくて、気合いを入れ過ぎてしまったようだ。


(でもこれなら彼の隣に相応しいかしら……)


それから少しして、アランが部屋へやって来た。


「アンジェ、とても綺麗だ。よく似合っている」
「ありがとうございます、旦那様も素敵ですわ」


式典用の軍服を着た彼はいつもよりも輝いて見える。
こんな人が私の夫だということが信じられないときが今でもある。


「さぁ、会場へ行こうか。みんな私たちが来るのを待っている」
「ええ、行きましょう」


彼の手を取った私は、二人並んでパーティーが開かれる会場へと向かった。





***




公爵家の本邸からパーティーが行われる会場まではそれほど遠くはない。
扉の前まで来た私たちは、一度足を止めた。


「アンジェ、緊張しているか?」
「ええ、少しだけ……でも旦那様が隣にいるから平気ですわ」
「ならパーティーではずっと私の隣にいればいい」


アランが不安げな私を安心させるようにフッと微笑んだ。
彼の隣に立つということが、初めは怖くて仕方がなかった。
釣り合わないと陰口されるのではないか、誰かが私を貶めようと画策しているのではないか。
でも今はもう平気だ。


彼が私を守ってくれると信じているから。


――「バインベルク公爵夫妻が到着されました」


その声で私たちは二人揃って一歩踏み出した。
会場にいる人々の視線が私たちに集中する。


「バインベルク公爵様よ……いつ見ても美しいわね……」
「公爵夫人はあんなにも綺麗だったか?」


私たちを褒める声が聞こえてくる。
少しずつではあるが、彼に釣り合ってきているのだと思うととても嬉しかった。


しばらく歩いて立ち止まると、彼が一歩前に出た。


「私たちを祝うためにこの場に集まってくれたことを感謝します。今日は楽しんでいってください」


式が始まると、招待客が挨拶をしに私たちの元を訪れた。


「アラン、アンジェ。久しぶりだな」
「お久しぶりです、王子殿下」


次に訪れたのはアランの旧友である第一王子殿下だ。


「二人とも、結婚五周年おめでとう」
「ありがとうございます、殿下」
「しかし、そのためにパーティーを開くだなんてアランの愛妻っぷりは凄まじいな」
「で、殿下……」


三人で和気あいあいと会話をしていると、殿下は突然何かを思い出したかのように口を開いた。


「ああ、そうだ。アラン、アンジェ。物凄い綺麗なご令嬢が来てると話題になっているぞ」
「綺麗な令嬢……?」
「名前何て言ったっけな……たしか、ジョルジュ男爵家の……あぁ、ほら、あの子だ」


王子の視線の先に目をやると、金色の髪をした一人の女性が男性たちに囲まれて立っていた。


(あの方かしら……?)


まじまじと見つめていると視線を感じたのか、振り向いた彼女と目が合った。


「まぁ……何て綺麗な……」


顔を見て驚きを隠せなかった。
陶器のような白い肌に、ぱっちりした青い瞳。
天使のように愛らしいご令嬢だった。


(たしかに綺麗な方だわ……)


初めて見る顔だったが、社交界の華と謳われているレアンドロ侯爵家の令嬢にも引けを取らないだろう。


「たしかに、とても美しい方ですね。ねぇ、旦那様もそう思――」
「……」
「…………旦那様?」


ふと隣にいる彼の方を見ると、彼が頬を真っ赤に染めて時間が止まったかのように固まっていた。
私の声など全く聞こえていないようで、彼の瞳にはただただ彼女だけが映っていた。


(どうして……)


私には一度たりとも向けたことの無い目。
完全に恋に落ちている人間のものだった。





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