愛する夫が目の前で別の女性と恋に落ちました。

ましゅぺちーの

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29 立場

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その美しい容姿とは対照的に、口元は醜く歪んでいた。


「その様子だとどうやらバレてないと思っていたみたいね、呆れたわ」
「最初から私だって分かってたんですか?」
「ええ、貴方のくだらない企みにわざわざ付き合ってあげてたのよ」
「……」


全てが私の掌の上だということに気付いたのか、ブリアナが眉をひそめた。


――「とうとう本性を現したのね、ブリアナ」


彼女はニヤリと笑った。


「本性だなんて……私は昔から何も変わっていませんわ」
「ええ、知っているわ。貴方が学園時代多くの男性を惑わした悪女だということもね」
「……そんなことまで知ってるだなんて、わざわざ調べたんですか?」


私は殿下から聞いた彼女の過去を全て話した。
婚約者のいる男性ばかりを狙っていたこと、教師と関係を持って不正をしていたことなど。


「さて、この事実を旦那様が知ったらどうなるかしら……?貴方への深い愛は一瞬にして消えてしまうかもしれないわね」
「……私を脅迫するつもりですか」
「ええ、そうね……貴方が私たちに手を出すのなら容赦はしないわ」


私の妊娠が発覚してからというもの、アランの別邸へ行く頻度は以前より圧倒的に少なくなった。
そのことでブリアナが最近焦っているのは知っていた。
でなければ、わざわざこのようなことをするはずがないからだ。


(ブリアナ、私は貴方がどれだけアランを愛しているかよく知っているわ)


おそらく今回のことも彼の心を取り戻そうとしてやったのだろう。
当然、バレたら逆効果だが。


「過去のことを持ち出して私を脅迫しようとは……いくらアラン様の愛を取られたからって醜いのではありませんか?」
「勘違いしないでちょうだい、私は別にアランが誰のことを愛そうがどうでもいいのよ」
「嘘をつかないでください!!!」
「本当よ」


別に嘘ではない。
私はもうアランのことを愛してなどいないのだから。
だから彼女の過去を利用して二人を引き裂こうだなんて気にはならなかった。


(まぁ、貴方が私やお腹の子に手を出すなら話は別だけれどね)


「私が今日ここへ来たのは貴方に自分の立場というものを分からせるためよ。最近随分と調子に乗っているようだったからお灸を据えたの」
「何を偉そうに。私だって好きで愛人になっているわけではないのに」
「平民上がりの男爵令嬢が名門貴族であるバインベルク公爵の愛人になれたことに感謝するべきではないかしら?」
「それは奥様にも言えることでは?ただ伯爵家の令嬢だったというだけでアラン様と結婚出来たことに感謝するべきですよ」


ブリアナは私に対する敵意を隠すことも無くそう言った。
やはり彼女はアランの正妻の座を狙っていたのだ。
愛する人の横に堂々と立ちたいという気持ちは理解出来なくもないが、どれだけ頑張ったところで意味が無い。


「……貴方はまだ分からないのね」
「……?」


椅子から立ち上がってゆっくりと彼女に近付いた私は、その耳元で囁いた。


――「貴方では、どれだけ頑張っても彼の正妻になどなれないのよ」


だから諦めなさい、とトドメを刺し、そのまま本邸へと戻った。




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