30 / 51
30 決意 ブリアナ視点
しおりを挟む
「……」
アンジェが部屋を出て行ってから、私は微動だにせず拳をギュッと握りしめて座っていた。
――『貴方では、どれだけ頑張っても彼の正妻になどなれないのよ』
彼女に言われた言葉が頭から離れない。
アランを深く愛している私にとってそれは死刑宣告も同然だった。
お飾りの妻であるアンジェを蹴落とし、自分が公爵夫人となりアランの横に立つ。
密かに思い描いていた理想のストーリーがゆっくりと崩壊していく。
(私ではアラン様の正妻になれないですって……?)
そんなことあるはずがない。
だって彼は私を一番に愛しているのだから。
アランだって、本当はさっさとアンジェと離婚して私を妻に迎えたいに違いない。
ただアンジェの身分が高いから出来ないというだけで、彼の気持ちは私にある。
今だって、子供が出来たから仕方なく本邸に帰っているだけだ。
彼も強引に結婚させられた女より、愛する私といたいはず。
(惨めで醜い女……寵愛も得られないのに未だに彼にしがみつくだなんて)
妊娠さえしなければこれまで通りアランに見向きもされなかったはずだ。
ただちょっと魔が差しただけで、彼の心は変わらずに私のもの。
そう思うことで何とか耐えた。
「――セイラ」
「はい、ブリアナ様」
セイラは男爵家にいた頃からの専属侍女だ。
私の手足も同然で、最も信頼の置ける女である。
「バインベルク公爵夫人に相応しいのは誰かしら?」
「ブリアナ様でございます」
セイラはさも当然といったようにそう答えた。
(やっぱり、彼に最も似合うのは私)
私の様子がおかしいことに気が付いたのか、セイラが心配そうに声をかけた。
「ブリアナ様、あの女に何か言われたのですか?」
「……私では絶対に公爵夫人になれないと言われたわ」
「……何ですって?」
セイラが眉をピクリとさせた。
「公爵夫人に相応しいのは間違いなくブリアナ様でございます。旦那様の寵愛がブリアナ様にあるのは誰から見ても明白です」
「ええ、その通りだわ」
セイラは出会った頃から美しい私に心酔している。
だから絶対に私を裏切ることは無い。
「あの女、私に立場を分からせるとか言っていたわ」
「何を馬鹿なことを……立場を分かっていないのはあの女の方ですよ」
彼女の言う通りだ。
子供が出来たからって偉そうに。
(彼の隣に立つべきは私よ……私以外ありえないわ……)
あんな風に言われると余計に奪いたくなるものだ。
一度心についた火はそう簡単には消えなかった。
(絶対蹴落としてやるんだから)
――どんな手を使ってでも、公爵夫人の座を手に入れてやる。
アンジェが部屋を出て行ってから、私は微動だにせず拳をギュッと握りしめて座っていた。
――『貴方では、どれだけ頑張っても彼の正妻になどなれないのよ』
彼女に言われた言葉が頭から離れない。
アランを深く愛している私にとってそれは死刑宣告も同然だった。
お飾りの妻であるアンジェを蹴落とし、自分が公爵夫人となりアランの横に立つ。
密かに思い描いていた理想のストーリーがゆっくりと崩壊していく。
(私ではアラン様の正妻になれないですって……?)
そんなことあるはずがない。
だって彼は私を一番に愛しているのだから。
アランだって、本当はさっさとアンジェと離婚して私を妻に迎えたいに違いない。
ただアンジェの身分が高いから出来ないというだけで、彼の気持ちは私にある。
今だって、子供が出来たから仕方なく本邸に帰っているだけだ。
彼も強引に結婚させられた女より、愛する私といたいはず。
(惨めで醜い女……寵愛も得られないのに未だに彼にしがみつくだなんて)
妊娠さえしなければこれまで通りアランに見向きもされなかったはずだ。
ただちょっと魔が差しただけで、彼の心は変わらずに私のもの。
そう思うことで何とか耐えた。
「――セイラ」
「はい、ブリアナ様」
セイラは男爵家にいた頃からの専属侍女だ。
私の手足も同然で、最も信頼の置ける女である。
「バインベルク公爵夫人に相応しいのは誰かしら?」
「ブリアナ様でございます」
セイラはさも当然といったようにそう答えた。
(やっぱり、彼に最も似合うのは私)
私の様子がおかしいことに気が付いたのか、セイラが心配そうに声をかけた。
「ブリアナ様、あの女に何か言われたのですか?」
「……私では絶対に公爵夫人になれないと言われたわ」
「……何ですって?」
セイラが眉をピクリとさせた。
「公爵夫人に相応しいのは間違いなくブリアナ様でございます。旦那様の寵愛がブリアナ様にあるのは誰から見ても明白です」
「ええ、その通りだわ」
セイラは出会った頃から美しい私に心酔している。
だから絶対に私を裏切ることは無い。
「あの女、私に立場を分からせるとか言っていたわ」
「何を馬鹿なことを……立場を分かっていないのはあの女の方ですよ」
彼女の言う通りだ。
子供が出来たからって偉そうに。
(彼の隣に立つべきは私よ……私以外ありえないわ……)
あんな風に言われると余計に奪いたくなるものだ。
一度心についた火はそう簡単には消えなかった。
(絶対蹴落としてやるんだから)
――どんな手を使ってでも、公爵夫人の座を手に入れてやる。
2,383
あなたにおすすめの小説
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
さようなら、お別れしましょう
椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。
妻に新しいも古いもありますか?
愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?
私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。
――つまり、別居。
夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。
――あなたにお礼を言いますわ。
【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる!
※他サイトにも掲載しております。
※表紙はお借りしたものです。
旦那様。私が悪女ならば、愛人の女は何になるのかしら?
白雲八鈴
恋愛
我が公爵家主催の夜会の最中。夫が愛人を連れてやってきたのです。そして、私を悪女という理由で離縁を突きつけてきました。
離縁して欲しいというのであれば、今まで支援してきた金額を全額返済していただけません?
あら?愛人の貴女が支払ってくれると?お優しいわね。
私が悪女というのであれば、妻のいる夫の愛人に収まっている貴女は何なのかしら?
ご安心を、2度とその手を求める事はありません
ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・
それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望
【完結】彼の瞳に映るのは
たろ
恋愛
今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。
優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。
そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。
わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。
★ 短編から長編へ変更しました。
【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
〖完結〗私はあなたのせいで死ぬのです。
藍川みいな
恋愛
「シュリル嬢、俺と結婚してくれませんか?」
憧れのレナード・ドリスト侯爵からのプロポーズ。
彼は美しいだけでなく、とても紳士的で頼りがいがあって、何より私を愛してくれていました。
すごく幸せでした……あの日までは。
結婚して1年が過ぎた頃、旦那様は愛人を連れて来ました。次々に愛人を連れて来て、愛人に子供まで出来た。
それでも愛しているのは君だけだと、離婚さえしてくれません。
そして、妹のダリアが旦那様の子を授かった……
もう耐える事は出来ません。
旦那様、私はあなたのせいで死にます。
だから、後悔しながら生きてください。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全15話で完結になります。
この物語は、主人公が8話で登場しなくなります。
感想の返信が出来なくて、申し訳ありません。
たくさんの感想ありがとうございます。
次作の『もう二度とあなたの妻にはなりません!』は、このお話の続編になっております。
このお話はバッドエンドでしたが、次作はただただシュリルが幸せになるお話です。
良かったら読んでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる