愛する夫が目の前で別の女性と恋に落ちました。

ましゅぺちーの

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37 疑念 アラン視点

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妻であるアンジェの見舞いを終え、アランは一人公爵邸へと戻っていた。
あの事件以降アンジェは王宮で暮らしている。
こんなことは初めてだからか、彼女のいない公爵邸に寂しさを感じてしまう。


(私にはそんな資格無いというのに……)


殿下がアンジェを助けに洋館へ行かなければ彼女は間違いなくお腹の子と共に亡くなっていただろう。
あの日、殿下に言われたことは全て正しかった。
アランはようやく自身がどれだけ最低な夫だったかを悟った。


出迎える使用人たちの目が冷たいのは気のせいでは無いだろう。
アランは妻と友人だけでなく、使用人たちにまで失望されているのだ。


公爵邸の廊下を歩き、執務室に入ると、そこにいるはずのない人物の姿が目に入った。


「――お帰りなさい、アラン様!」
「……ブリアナ!?」


別邸にいるはずのブリアナだった。
彼女はいつものように愛らしい顔でアランに駆け寄った。


「ブリアナ、何故君がここにいるんだ……」
「アラン様が心配だったんです、奥様にあんなことがあったから」
「……」


アンジェが襲撃を受けたことはブリアナの耳にまで入っていたようだ。


「殿下が奥様を救ってくださったと聞きました」
「ああ、何はともあれアンジェが無事で良かった」
「本当、奥様がご無事で何よりです……」
「……」


そう言いながら目を伏せたブリアナの姿に、アランは妙な違和感を感じた。


(何だ……?)


何かが変だった。
彼女は本当に良かったと思っているのだろうか。
少なくとも、今目の前にいるブリアナからそのような感情は感じられなかった。


「驚きましたわ、王宮から帰る道中に暗殺者たちに襲われてしまうだなんて……」
「……」


何故か嬉しそうに聞こえるのは気のせいだろうか。


「奥様を森の奥にある洋館に閉じ込めて火をつけるだなんて、何て卑劣な……」
「……」


(……何故、そこまで事件の詳細を知っているんだ……?)


アランの脳裏にある疑惑が浮かぶが、信じたくなくてすぐに頭からかき消した。
ブリアナがそんなことするはずがない。
そう信じているが、一度抱いた疑念はなかなか消えなかった。


「――アラン様、元気出してください」
「……!」
「キャッ!」


気付けば彼女の手を振り払っていた。


「アラン様……?」


ブリアナが驚いた顔でこちらを見つめた。


「あ……すまない……どうやら疲れているようだ……」
「……あのようなことがあったから疲れるのは当然です」


ブリアナはいつものように愛くるしい笑顔でそう言った。
その顔を見ているといつものブリアナに戻ったように感じたが、今はこれ以上彼女と一緒にいたくなかった。


「私は部屋で休むとしよう」
「なら私も一緒に……」
「いや、悪いが……今は一人にしてほしい」
「……分かりました」
「君も早く別邸へ戻りなさい」


それだけ言うと、彼はそそくさとブリアナの前から立ち去って行った。
去って行くアランの後ろ姿を、ブリアナは鋭い眼光でじっと見つめていた。




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