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38 焦り ブリアナ視点
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「……」
ブリアナは焦っていた。
(アイツら……失敗したのね……)
完璧な計画のはずだった。
邪魔なアンジェを抹殺し、自分が公爵夫人になる。
そのために入念に準備をし、決行した。
(今日が最高の日になるはずだったのに……)
アンジェは生きている。
聡明な彼女なら、犯人がブリアナだということに勘付いているだろう。
(バレればただでは済まないわね……)
既に暗殺者たちの追跡が始まっているはずだ。
アランはバインベルク公爵家の後継者の誕生にとても喜んでいた。
犯人たちを絶対に生かしてはおかないだろう。
「あの事件で公爵夫人を助けに行った第一王子殿下が右肩を負傷されたようです」
「犯人は無事ではいられないでしょう」
「……」
ブリアナにとって最も想定外だったのは、今回の一件に王族が介入したことだ。
何でも第一王子エイベルがアンジェを救うため、炎に包まれた洋館へ飛び込んだのだという。
「ハハッ……」
何て素晴らしい愛なのだろう。
ブリアナの口から笑みが零れた。
(夫に相手にされないからって第一王子を誘惑するだなんて、どんな手を使ったんだか……)
ブリアナの中でアンジェに対する憎しみが増していく。
彼女は自分が一番でないと気が済まない性格だった。
(……どちらにせよ、このまま引き下がるわけにはいかないわ)
確実にアンジェを亡き者にし、自分自身が最後の勝者になる。
そのためにブリアナはとある場所へと向かった。
***
――「お久しぶりです、殿下」
「……ブリアナ?」
それからしばらくして、ブリアナが訪れたのは王宮の第二王子宮だった。
第二王子セシルは第一王子エイベルの腹違いの弟だ。
身分の低い側妃から生まれたが、父である国王からの愛を一身に受けてきた。
(今はこれしか方法が無いわ……)
ブリアナは目に涙を浮かべて彼に駆け寄った。
「殿下、どうか助けてください!」
「どうかしたのか、ブリアナ」
セシルは心配そうに彼女の肩を抱いた。
「バインベルク公爵夫人を襲った火事の件で、私が犯人ではないかと疑われているんです!」
「何だと……?」
「私、そんなことしてないのに……」
ブリアナは目から大粒の涙を流した。
「ブリアナ……」
セシルは優しく彼女を抱き締めた。
彼は初めて出会った頃から彼女に惚れ込んでいた。
しかし、ブリアナが選んだのはアランだった。
セシルはそのことにショックを受けたが、ブリアナの意思を尊重した。
たとえ彼女と一緒になれなくとも、幸せでいてくれたらそれでいいと思っていた。
「あの日以降アラン様も冷たくて……私どうすればいいか……」
「……」
「全てアンジェ・バインベルク――彼女のせいなんです」
ブリアナは震える声でそう言った。
セシルはそんな彼女をこれ以上見ていられなかった。
それがブリアナの狙いだった。
「殿下、お願いです!」
ブリアナは胸の前で手を組んで上目遣いで彼を見上げた。
「――私を傷付けた奴らを、痛い目に遭わせてください!」
ブリアナは焦っていた。
(アイツら……失敗したのね……)
完璧な計画のはずだった。
邪魔なアンジェを抹殺し、自分が公爵夫人になる。
そのために入念に準備をし、決行した。
(今日が最高の日になるはずだったのに……)
アンジェは生きている。
聡明な彼女なら、犯人がブリアナだということに勘付いているだろう。
(バレればただでは済まないわね……)
既に暗殺者たちの追跡が始まっているはずだ。
アランはバインベルク公爵家の後継者の誕生にとても喜んでいた。
犯人たちを絶対に生かしてはおかないだろう。
「あの事件で公爵夫人を助けに行った第一王子殿下が右肩を負傷されたようです」
「犯人は無事ではいられないでしょう」
「……」
ブリアナにとって最も想定外だったのは、今回の一件に王族が介入したことだ。
何でも第一王子エイベルがアンジェを救うため、炎に包まれた洋館へ飛び込んだのだという。
「ハハッ……」
何て素晴らしい愛なのだろう。
ブリアナの口から笑みが零れた。
(夫に相手にされないからって第一王子を誘惑するだなんて、どんな手を使ったんだか……)
ブリアナの中でアンジェに対する憎しみが増していく。
彼女は自分が一番でないと気が済まない性格だった。
(……どちらにせよ、このまま引き下がるわけにはいかないわ)
確実にアンジェを亡き者にし、自分自身が最後の勝者になる。
そのためにブリアナはとある場所へと向かった。
***
――「お久しぶりです、殿下」
「……ブリアナ?」
それからしばらくして、ブリアナが訪れたのは王宮の第二王子宮だった。
第二王子セシルは第一王子エイベルの腹違いの弟だ。
身分の低い側妃から生まれたが、父である国王からの愛を一身に受けてきた。
(今はこれしか方法が無いわ……)
ブリアナは目に涙を浮かべて彼に駆け寄った。
「殿下、どうか助けてください!」
「どうかしたのか、ブリアナ」
セシルは心配そうに彼女の肩を抱いた。
「バインベルク公爵夫人を襲った火事の件で、私が犯人ではないかと疑われているんです!」
「何だと……?」
「私、そんなことしてないのに……」
ブリアナは目から大粒の涙を流した。
「ブリアナ……」
セシルは優しく彼女を抱き締めた。
彼は初めて出会った頃から彼女に惚れ込んでいた。
しかし、ブリアナが選んだのはアランだった。
セシルはそのことにショックを受けたが、ブリアナの意思を尊重した。
たとえ彼女と一緒になれなくとも、幸せでいてくれたらそれでいいと思っていた。
「あの日以降アラン様も冷たくて……私どうすればいいか……」
「……」
「全てアンジェ・バインベルク――彼女のせいなんです」
ブリアナは震える声でそう言った。
セシルはそんな彼女をこれ以上見ていられなかった。
それがブリアナの狙いだった。
「殿下、お願いです!」
ブリアナは胸の前で手を組んで上目遣いで彼を見上げた。
「――私を傷付けた奴らを、痛い目に遭わせてください!」
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