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側妃と第二王子
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その頃王宮にはエイドリアン王太子殿下がエレン・ローラン公爵令嬢を婚約者候補から外し、平民の女性を婚約者にしたという話が広まっていた。
それを聞いた一人の女性はほくそ笑む。
「ふふふっ・・・・ふふっ・・・ようやくあの邪魔な女がいなくなったのねー!」
そう言うのは側妃であるマリアベルだ。
彼女は名門侯爵家の令嬢で元々現国王陛下の婚約者だった。
だが陛下が20年前、突然市井から連れてきた女を正妃にすると言い出したのだ。
その時のマリアベルはどれほど絶望し、泣いたことか。
その女の子どもであるエイドリアンを見る度に20年前の恨みが心の中に蓄積していった。
その後マリアベルは側妃として王妃の代わりに仕事をするだけの地位につけられた。
最初の頃は辛かったが、それも数年で終わった。
王妃となった平民の女ーフィオナは陛下を愛していなかった。
元々愛する夫と仲睦まじく市井で暮らしていた。
それを陛下が無理矢理王宮へ連れ帰ったのだ。
自身が嫌悪してやまない男に抱かれ、侍女や貴族たちには蔑んだ目で見られる。
心を病まない方がおかしいだろう。
第一王子を産んだ頃には心も体もボロボロだった。
唯一の取り柄だった美貌が無くなると陛下の心はすぐに離れていった。
それから陛下はしばらくマリアベルの元へ通うようになった。
そして、第二王子であるシャルルが生まれた。
フィオナはもう死んだけれど、まだ息子であるエイドリアンが生きている。
このままいけば王太子は王妃の息子で第一王子であるエイドリアンになる。
それだけは絶対に阻止しなくてはいけない。
(私は何度も暗殺者をエイドリアンの元へ送ったけれど全てあの女に防がれてきたわ。)
そう、エイドリアンの婚約者候補であるエレン・ローラン公爵令嬢。
あの女はエイドリアンにゾッコンでいつも邪魔してきた。
でも今はもうあの忌々しい女はいないのだ。
ーコンコン
その時、自室の扉をノックする音が聞こえた。
「母上、お呼びでしょうか。」
マリアベルの息子であるシャルルだ。
「シャルル!朗報よ、あなたが王太子になる日が来たのよ!」
喜ぶマリアベルとは対照的にシャルルはハァと息をつく。
「母上、僕は王位に興味はありません。国王になるつもりも・・・」
「何を言っているのシャルル!!!」
マリアベルはシャルルに対して怒鳴る。
「エイドリアンには平民の血が混じっているのよ!あんなのが次期国王だなんてありえないわ!
それに比べてあなたの母である私は名門侯爵家出身。あの女とは格が違うのよ!」
「母上・・・。」
「いい!?絶対にあの女の息子に勝つのよ!!!」
「分かりました・・・。母上・・・。」
結局折れたのはシャルルだった。
それを聞いた一人の女性はほくそ笑む。
「ふふふっ・・・・ふふっ・・・ようやくあの邪魔な女がいなくなったのねー!」
そう言うのは側妃であるマリアベルだ。
彼女は名門侯爵家の令嬢で元々現国王陛下の婚約者だった。
だが陛下が20年前、突然市井から連れてきた女を正妃にすると言い出したのだ。
その時のマリアベルはどれほど絶望し、泣いたことか。
その女の子どもであるエイドリアンを見る度に20年前の恨みが心の中に蓄積していった。
その後マリアベルは側妃として王妃の代わりに仕事をするだけの地位につけられた。
最初の頃は辛かったが、それも数年で終わった。
王妃となった平民の女ーフィオナは陛下を愛していなかった。
元々愛する夫と仲睦まじく市井で暮らしていた。
それを陛下が無理矢理王宮へ連れ帰ったのだ。
自身が嫌悪してやまない男に抱かれ、侍女や貴族たちには蔑んだ目で見られる。
心を病まない方がおかしいだろう。
第一王子を産んだ頃には心も体もボロボロだった。
唯一の取り柄だった美貌が無くなると陛下の心はすぐに離れていった。
それから陛下はしばらくマリアベルの元へ通うようになった。
そして、第二王子であるシャルルが生まれた。
フィオナはもう死んだけれど、まだ息子であるエイドリアンが生きている。
このままいけば王太子は王妃の息子で第一王子であるエイドリアンになる。
それだけは絶対に阻止しなくてはいけない。
(私は何度も暗殺者をエイドリアンの元へ送ったけれど全てあの女に防がれてきたわ。)
そう、エイドリアンの婚約者候補であるエレン・ローラン公爵令嬢。
あの女はエイドリアンにゾッコンでいつも邪魔してきた。
でも今はもうあの忌々しい女はいないのだ。
ーコンコン
その時、自室の扉をノックする音が聞こえた。
「母上、お呼びでしょうか。」
マリアベルの息子であるシャルルだ。
「シャルル!朗報よ、あなたが王太子になる日が来たのよ!」
喜ぶマリアベルとは対照的にシャルルはハァと息をつく。
「母上、僕は王位に興味はありません。国王になるつもりも・・・」
「何を言っているのシャルル!!!」
マリアベルはシャルルに対して怒鳴る。
「エイドリアンには平民の血が混じっているのよ!あんなのが次期国王だなんてありえないわ!
それに比べてあなたの母である私は名門侯爵家出身。あの女とは格が違うのよ!」
「母上・・・。」
「いい!?絶対にあの女の息子に勝つのよ!!!」
「分かりました・・・。母上・・・。」
結局折れたのはシャルルだった。
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