92 / 113
92 王家の晩餐会
しおりを挟む
「王家の晩餐会に行くって?」
「ああ、そうだ」
オリバー様が伯爵邸へ訪れてから数日後。
私は久しぶりに窓から部屋へやって来たルークとお茶をしながら近況を話していた。
「お兄さんに招待されたのね」
「面倒なことにな……」
(王家の晩餐会ってことは……レイラも一緒よね?)
そしてそこには彼らの子供たちである王子殿下や王女殿下もいるだろう。
何だか賑やかで楽しい会になりそうだ。
(いいなぁ、私もまだレイラの子供たちには会ったことないのに)
心の中ではルークに対する羨望を抱いていたが、そんなことを思ったところでどうしようもない。
王家の晩餐会ともなると、選ばれし者だけが招待されるのだから。
「――それで、お前にも一緒に来てほしいんだが」
「……うん、そうだね……って、え!?」
ルークの言葉に、私は思わず紅茶を吹き出しそうになった。
「え、私?私も行くの?」
「ああ、一人までなら誰か連れて来て良いって言われてな」
聞き間違いかと思って確認するも、彼の顔は真剣そのものだった。
(私が王家の晩餐会に!?)
本来なら光栄なことなのだろうが、私は素直に喜べなかった。
嬉しさよりも不安の方が勝ってしまったからだ。
陛下の前で粗相をしてしまわないか、そんな感情が芽生えた。
(ど、どうしよう……レイラはともかく、国王陛下とかほぼ関わったこと無いし!)
穏やかな性格をしているとは聞いているが、この国の最高権力者なのだ。
怖くないはずが無い。
そんな私の気持ちに気付いたのか、ルークが机の上に置かれていた手をギュッと握った。
「エミリア、不安なのか?大丈夫だ、兄貴はお前が思ってるほど怖い人じゃない」
「ルーク……」
そう言いながら彼は私の手の甲を優しく撫でた。
「……」
彼の温もりが伝わって来て、少しだけ安心出来たような気がした。
(ルークがそう言うなら……行ってみようかな……)
良い経験になるだろうし、せっかくだから行ってみよう。
そう思った私は、彼の手を握り返して参加の意を示した。
「分かったわ、私も一緒に行く」
ルークはクスリと笑った。
「当日は俺が伯爵邸まで迎えに行く。それと……ドレスの用意はしなくていいから」
「……!」
らしくないことを口にした彼の顔はほんのり赤く染まっていた。
(何だか可愛いわね)
こうしているとまるで恋人同士にでもなった気分だ。
「ええ、分かったわ」
そして私は、今日も平気なフリしてルークを笑顔で送り出した。
しかし、照れていたのは彼だけではなかった。
(……ドキドキする、こんな気持ち久しぶりだわ)
考えていることは私も同じだった。
***
同時刻、レビンストン公爵家の執務室にて。
「王家で晩餐会が開かれるだと?」
「はい、王宮ではそのための準備が進められており、たしかな情報のようです」
「それとあの男と、何の関係があると言うんだ……」
私はこの日、執務室で側近の調査結果を聞いていた。
憎きあの男をこの世から消すことだけを目標にした私は、ルーク……いや、ルドウィクに関しての徹底的な調査を命じたのだ。
(上がってくるのはどれもくだらない報告ばかりだ……)
不機嫌そうな顔になった私に、側近が焦ったように言葉を付け加えた。
「こ、公爵様!それが……どうやら例の男も、この晩餐会に招待されているようなのです!」
「……何だって?それは事実なのか?」
「はい、兄君である国王陛下との仲は良好で……陛下から直々に招待されたようです」
「……」
それを聞いた私は、側近ですらビクリとなるほどの醜悪な笑みを浮かべた。
(これは……あの男を消すチャンスかもしれないな……)
「ああ、そうだ」
オリバー様が伯爵邸へ訪れてから数日後。
私は久しぶりに窓から部屋へやって来たルークとお茶をしながら近況を話していた。
「お兄さんに招待されたのね」
「面倒なことにな……」
(王家の晩餐会ってことは……レイラも一緒よね?)
そしてそこには彼らの子供たちである王子殿下や王女殿下もいるだろう。
何だか賑やかで楽しい会になりそうだ。
(いいなぁ、私もまだレイラの子供たちには会ったことないのに)
心の中ではルークに対する羨望を抱いていたが、そんなことを思ったところでどうしようもない。
王家の晩餐会ともなると、選ばれし者だけが招待されるのだから。
「――それで、お前にも一緒に来てほしいんだが」
「……うん、そうだね……って、え!?」
ルークの言葉に、私は思わず紅茶を吹き出しそうになった。
「え、私?私も行くの?」
「ああ、一人までなら誰か連れて来て良いって言われてな」
聞き間違いかと思って確認するも、彼の顔は真剣そのものだった。
(私が王家の晩餐会に!?)
本来なら光栄なことなのだろうが、私は素直に喜べなかった。
嬉しさよりも不安の方が勝ってしまったからだ。
陛下の前で粗相をしてしまわないか、そんな感情が芽生えた。
(ど、どうしよう……レイラはともかく、国王陛下とかほぼ関わったこと無いし!)
穏やかな性格をしているとは聞いているが、この国の最高権力者なのだ。
怖くないはずが無い。
そんな私の気持ちに気付いたのか、ルークが机の上に置かれていた手をギュッと握った。
「エミリア、不安なのか?大丈夫だ、兄貴はお前が思ってるほど怖い人じゃない」
「ルーク……」
そう言いながら彼は私の手の甲を優しく撫でた。
「……」
彼の温もりが伝わって来て、少しだけ安心出来たような気がした。
(ルークがそう言うなら……行ってみようかな……)
良い経験になるだろうし、せっかくだから行ってみよう。
そう思った私は、彼の手を握り返して参加の意を示した。
「分かったわ、私も一緒に行く」
ルークはクスリと笑った。
「当日は俺が伯爵邸まで迎えに行く。それと……ドレスの用意はしなくていいから」
「……!」
らしくないことを口にした彼の顔はほんのり赤く染まっていた。
(何だか可愛いわね)
こうしているとまるで恋人同士にでもなった気分だ。
「ええ、分かったわ」
そして私は、今日も平気なフリしてルークを笑顔で送り出した。
しかし、照れていたのは彼だけではなかった。
(……ドキドキする、こんな気持ち久しぶりだわ)
考えていることは私も同じだった。
***
同時刻、レビンストン公爵家の執務室にて。
「王家で晩餐会が開かれるだと?」
「はい、王宮ではそのための準備が進められており、たしかな情報のようです」
「それとあの男と、何の関係があると言うんだ……」
私はこの日、執務室で側近の調査結果を聞いていた。
憎きあの男をこの世から消すことだけを目標にした私は、ルーク……いや、ルドウィクに関しての徹底的な調査を命じたのだ。
(上がってくるのはどれもくだらない報告ばかりだ……)
不機嫌そうな顔になった私に、側近が焦ったように言葉を付け加えた。
「こ、公爵様!それが……どうやら例の男も、この晩餐会に招待されているようなのです!」
「……何だって?それは事実なのか?」
「はい、兄君である国王陛下との仲は良好で……陛下から直々に招待されたようです」
「……」
それを聞いた私は、側近ですらビクリとなるほどの醜悪な笑みを浮かべた。
(これは……あの男を消すチャンスかもしれないな……)
332
あなたにおすすめの小説
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
さようなら、お別れしましょう
椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。
妻に新しいも古いもありますか?
愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?
私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。
――つまり、別居。
夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。
――あなたにお礼を言いますわ。
【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる!
※他サイトにも掲載しております。
※表紙はお借りしたものです。
【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜
くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。
味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。
――けれど、彼らは知らなかった。
彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。
すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、
復讐ではなく「関わらない」という選択。
だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
八年間の恋を捨てて結婚します
abang
恋愛
八年間愛した婚約者との婚約解消の書類を紛れ込ませた。
無関心な彼はサインしたことにも気づかなかった。
そして、アルベルトはずっと婚約者だった筈のルージュの婚約パーティーの記事で気付く。
彼女がアルベルトの元を去ったことをーー。
八年もの間ずっと自分だけを盲目的に愛していたはずのルージュ。
なのに彼女はもうすぐ別の男と婚約する。
正式な結婚の日取りまで記された記事にアルベルトは憤る。
「今度はそうやって気を引くつもりか!?」
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる