1 / 32
1 縁談
しおりを挟む
――「リーゼ、お前の縁談が決まった」
ニヤリと笑いながらそう言ったのは私の父であるオーブリー伯爵だ。
昔から欲深くて権力に目が無い、私を道具として扱ってきた実の父親。
そんな父が決めた縁談だなんて良くないものに決まっている。
元より愛のある結婚なんて諦めていたからそれほど絶望は無かったが。
(かなり年上の男の後妻かしら?それとも他国の王の側室とか?)
父は利己的な人だ。
きっとこちらに最も利があるところに決めたに違いない。
何か嫌な予感がすると思いながらもじっと話に耳を傾けた。
「相手はブリントン公爵家の当主、ウィルベルト殿だ!喜べ、お前が公爵夫人になれるのだぞ!」
「ブリントン公爵家……ウィルベルト……」
喜ぶ父親とは対照的に、私はその名前を聞いた途端頭を抱えた。
彼は社交界ではなかなか有名な人物だった。
――ウィルベルト・ブリントン公爵
容姿端麗で剣術の腕も立つ、文武両道な公爵閣下。
その美貌に惹かれる女性は多く、国内外問わず縁談が山のように舞い込んでくるのだと聞いたことある。
しかし、貴族令嬢の誰もが憧れる彼は二十五にして未だに独身を貫いていた。
それは何故か。
決してウィルベルト本人が女性に興味が無かったというわけではない。
(そこが問題なのよね、女に興味が無い方がむしろ良かったわ)
そう、彼には相思相愛の恋人がいた。
社交界ではとても有名な話だった。
彼が山のように来る縁談を断り続け、独身を貫いているのは全てその愛する女性のためなのである。
身分差を乗り越えて愛し合う、彼ら二人の愛は国内でも有名だった。
(たしか、お相手の身分が低いせいでご両親が反対していてなかなか結婚に踏み切れない……という理由だったかしら……)
私も舞踏会で何度かウィルベルトが恋人をエスコートしている姿を目にしたことがある。
お互いを見つめて微笑み合うその姿は誰から見ても愛し合う恋人同士そのものだった。
その間に私が入ることなど、今この瞬間まで想像もしていなかった。
(つまり、お父様は他に想う相手のいる方に妻として嫁げとおっしゃるのね……)
ニヤニヤとこちらを見つめてくる父親。
父がどうやってウィルベルトと私の縁談を取り付けたのかは分からないが、彼にとって望まぬ結婚であることは間違いなさそうだ。
そんな結婚をするだなんて私としても御免だ。
しかし、結婚は既に決まったことのようで、反対したところで何の意味も無い。
「結婚式は二ヶ月後だ。これからお前の輿入れの準備をする。見た目には一層気を遣うように」
「……はい、お父様」
拒否権など最初から無い私は、頷くしかなかった。
ニヤリと笑いながらそう言ったのは私の父であるオーブリー伯爵だ。
昔から欲深くて権力に目が無い、私を道具として扱ってきた実の父親。
そんな父が決めた縁談だなんて良くないものに決まっている。
元より愛のある結婚なんて諦めていたからそれほど絶望は無かったが。
(かなり年上の男の後妻かしら?それとも他国の王の側室とか?)
父は利己的な人だ。
きっとこちらに最も利があるところに決めたに違いない。
何か嫌な予感がすると思いながらもじっと話に耳を傾けた。
「相手はブリントン公爵家の当主、ウィルベルト殿だ!喜べ、お前が公爵夫人になれるのだぞ!」
「ブリントン公爵家……ウィルベルト……」
喜ぶ父親とは対照的に、私はその名前を聞いた途端頭を抱えた。
彼は社交界ではなかなか有名な人物だった。
――ウィルベルト・ブリントン公爵
容姿端麗で剣術の腕も立つ、文武両道な公爵閣下。
その美貌に惹かれる女性は多く、国内外問わず縁談が山のように舞い込んでくるのだと聞いたことある。
しかし、貴族令嬢の誰もが憧れる彼は二十五にして未だに独身を貫いていた。
それは何故か。
決してウィルベルト本人が女性に興味が無かったというわけではない。
(そこが問題なのよね、女に興味が無い方がむしろ良かったわ)
そう、彼には相思相愛の恋人がいた。
社交界ではとても有名な話だった。
彼が山のように来る縁談を断り続け、独身を貫いているのは全てその愛する女性のためなのである。
身分差を乗り越えて愛し合う、彼ら二人の愛は国内でも有名だった。
(たしか、お相手の身分が低いせいでご両親が反対していてなかなか結婚に踏み切れない……という理由だったかしら……)
私も舞踏会で何度かウィルベルトが恋人をエスコートしている姿を目にしたことがある。
お互いを見つめて微笑み合うその姿は誰から見ても愛し合う恋人同士そのものだった。
その間に私が入ることなど、今この瞬間まで想像もしていなかった。
(つまり、お父様は他に想う相手のいる方に妻として嫁げとおっしゃるのね……)
ニヤニヤとこちらを見つめてくる父親。
父がどうやってウィルベルトと私の縁談を取り付けたのかは分からないが、彼にとって望まぬ結婚であることは間違いなさそうだ。
そんな結婚をするだなんて私としても御免だ。
しかし、結婚は既に決まったことのようで、反対したところで何の意味も無い。
「結婚式は二ヶ月後だ。これからお前の輿入れの準備をする。見た目には一層気を遣うように」
「……はい、お父様」
拒否権など最初から無い私は、頷くしかなかった。
246
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
王太子妃候補、のち……
ざっく
恋愛
王太子妃候補として三年間学んできたが、決定されるその日に、王太子本人からそのつもりはないと拒否されてしまう。王太子妃になれなければ、嫁き遅れとなってしまうシーラは言ったーーー。
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリエット・スチール公爵令嬢18歳
ロミオ王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
夫「お前は価値がない女だ。太った姿を見るだけで吐き気がする」若い彼女と再婚するから妻に出て行け!
佐藤 美奈
恋愛
華やかな舞踏会から帰宅した公爵夫人ジェシカは、幼馴染の夫ハリーから突然の宣告を受ける。
「お前は価値のない女だ。太った姿を見るだけで不快だ!」
冷酷な言葉は、長年連れ添った夫の口から発せられたとは思えないほど鋭く、ジェシカの胸に突き刺さる。
さらにハリーは、若い恋人ローラとの再婚を一方的に告げ、ジェシカに屋敷から出ていくよう迫る。
優しかった夫の変貌に、ジェシカは言葉を失い、ただ立ち尽くす。
「そんなの聞いてない!」と元婚約者はゴネています。
音爽(ネソウ)
恋愛
「レイルア、許してくれ!俺は愛のある結婚をしたいんだ!父の……陛下にも許可は頂いている」
「はぁ」
婚約者のアシジオは流行りの恋愛歌劇に憧れて、この良縁を蹴った。
本当の身分を知らないで……。
父の後妻に婚約者を盗られたようです。
和泉 凪紗
恋愛
男爵令嬢のアルティナは跡取り娘。素敵な婚約者もいて結婚を待ち遠しく思っている。婚約者のユーシスは最近忙しいとあまり会いに来てくれなくなってしまった。たまに届く手紙を楽しみに待つ日々だ。
そんなある日、父親に弟か妹ができたと嬉しそうに告げられる。父親と後妻の間に子供ができたらしい。
お義母様、お腹の子はいったい誰の子ですか?
【完】幼馴染と恋人は別だと言われました
迦陵 れん
恋愛
「幼馴染みは良いぞ。あんなに便利で使いやすいものはない」
大好きだった幼馴染の彼が、友人にそう言っているのを聞いてしまった。
毎日一緒に通学して、お弁当も欠かさず作ってあげていたのに。
幼馴染と恋人は別なのだとも言っていた。
そして、ある日突然、私は全てを奪われた。
幼馴染としての役割まで奪われたら、私はどうしたらいいの?
サクッと終わる短編を目指しました。
内容的に薄い部分があるかもしれませんが、短く纏めることを重視したので、物足りなかったらすみませんm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる