もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

文字の大きさ
486 / 555
11章 夏の海ではしゃいじゃお

448.みんなで漁(&レベリング)

しおりを挟む
 ぷかーっと浮いてるぷる君は、辺りをキョロキョロと見回してから、ぐりんと目を下に動かした。そして、暫くしてから再び目を上げ、僕を見つめて叫ぶ。

「モモさーん、海の中はお魚いっぱいですー! みんな攻撃してこようとしてるんですけど、ペタさんが瞬殺してまーす」

 海の中を確認していたらしい。
 ペタの手厚いフォローのおかげか、ぷる君に余裕が出てきたみたいだ。

「よかったねー。そろそろスラリンを見習って、漁を始めてみてー」

 手でメガホンの形を作って指示を飛ばすと、ぷる君が心なしかキリッとした顔になった……いや、正直スライムの表情は全然わからないから気のせいかも。

「了解です!」

 体の一部を伸ばして手のようにひらひらと振ったぷる君は、じぃーっと海面を見つめる──見つめる、見つめる……

「え、まさか海水を吸えない?」

 あまりにもぷる君に動きがなくて心配になってきた。
 スライム種だから、って漁を提案したけど、無謀だったのかな。それなら申し訳ないことをしたかも。

「……僕は、桃色の悪魔になる! 【吸収】!」

 突然ぷる君が叫んだ。
 すると、瞬く間に体が膨らんでいく。

「あ、吸えてる!」

 すごーい! やっぱりプレイヤーでもスライムアバターならできるんだね。

 今はそれよりも『桃色の悪魔になる』っていう宣言の方が気になるけど。
 ぷる君は青緑色だし、悪魔要素を入れるにしても『青緑の悪魔』にしかなれなくない?
 それとも、スライムは変態する──成長過程で形態を変える──ことがあって、その時に色も変わるの?

 ……どっかから『ぷる君って変態だしね!』とコメントが来た気がして、考えるのをやめた。
 たぶん、ぷる君はノリで言っただけでしょ。

「わあ、凄いですね。プレイヤーだとどういう感覚なんでしょう? 味はするんですかね?」

 タマモがbot状態から回復し、ぷる君を不思議そうに眺めた。
 確かに海水を吸いまくってる状態をどう感じるのか気になるねぇ。ぷる君、教えてくれるかな?

「モモさーん、全然モンスターが入ってきませーん! あと、味は全然しませんよ! そこは心底ホッとしました!」

 スラリンの最大サイズの半分ほどの大きさまで膨らんだところで、ぷる君が報告してきた。タマモの声が聞こえたのかな?

 ぷる君の中では海水がタプタプしてる。モンスターの姿はない。
 これ、味覚が働いてたら、吸ってすぐに吐き出しちゃうやつだよね。そうならなくてよかったー。

「……あ、ペタがモンスターを狩りすぎ?」

 ぷる君の最初の報告を思い出して手をポフッと叩く。
 ペタがぷる君の周囲のモンスターを狩り尽くしてたら、そりゃ漁ができるわけないよね。

「──ペター、ぷる君に弱めのモンスターを捕まえさせてあげて!」

 水中に声が届くかは賭けだったけど、ペタはしっかりと僕の指示を聞き取ってくれたようだ。
 ぷる君の下の方から次々と小魚や貝・エビなどのモンスターが入ってくる。しかも、どれも体力バーが赤表示になってて、いい感じに弱ってた。
 ペタのフォローは気が利いてるね!

「ふあっ、下からツンツン、くすぐったぁいっ! あはっ、へふっ!」

 ぷる君がぷるぷるくねくねしながら笑い始めた。
 巨大な水まんじゅうみたいなもののそんな動きは、ちょっとホラーというか、気持ち悪いというか……。

「へぇ、くすぐったいんですね?」
「そうみたいだねぇ。スライムって口じゃなくても吸収できるから、全身をくすぐられてるような感覚になるのかぁ」

 タマモと話しながら、襲ってくるモンスターに対処する。
 推奨レベル15前後のフィールドだから、会話をしてても片手間に倒せるんだよ。
 タマモは索敵能力が高いのか、僕より早く敵を見つけてパンチやキックの一撃で倒してくれるし、僕はすごく楽~。

「あ、【吸い込み】っていうスキルを覚えました! 吸収スキルじゃなくて、こっちの方が効率的みたいです」

 報告したぷる君が、すぐさま「【吸い込み】」と唱えてスキルを発動した。
 海水を吸い込む速度が上がる。
 すると、その流れに巻き込まれるモンスターも増えるようで、ペタが投げ込まなくてもモンスターを飲み込めることが増えてきた。

「ぷる君、がんばれ~」
「ラッタンたん、がんばれ~♡」

 タマモはぷる君への興味が薄れたのか、海面に顔を出したラッタンに声援を飛ばす。
 ラッタンはニコッと笑い、手を振ってタマモに応えた。

「──ぐふっ、尊い……!」

 タマモが砂浜に膝をついた。ラッタンの可愛いファンサにやられたみたいだね。気持ちはわかる。
 でも──

「ちょっとタマモー、モンスター寄ってきてるから、今はちゃんと戦って! ──【竜巻トルナード】!」

 戦闘から脱落気味のタマモをフォローするために、僕は風魔術の範囲攻撃を放った。
 まったく世話が焼けるんだからー。

 すると、タマモはハッと息を呑み、悲壮感の漂う表情で拳を握りしめる。

「モモさんにお手間を取らせるなんて、もふもふ教徒としての名折れ……申し訳ありません! 私に、名誉回復の機会をください……!」

 いや、そんな重く捉える必要はないんだけどね? でも、バトルをがんばってくれるのは助かるよ。今日はバトルをいっぱいして疲れたし。

「おっけー。がんばってね!」
「はい! 身命を賭して、敵を殲滅いたします!」

 タマモがキリッと表情を引き締め、目に闘志を燃やして宣言した。

 ……こわいこわいこわい。
 え、そんなに気合い入れてすること? 身命を賭してとか、殲滅っていう言葉も大げさだよぉ。

 ちょっぴり引いてる僕の様子に気づかないまま、タマモが風のように駆けて敵を駆逐していく。
 討伐アナウンスが重なって聞こえるのがちょっと不気味だ。

「らぴゅ(ラッたんもあげるねぇ)」

 ラッタンがぷる君に魚を突っ込む──って、それ大きいよ! カツオかな?
 ぷる君が「今、グサッてきたぁあ」って叫んでる。

「そっか……大きな魚だと、くすぐったいよりも衝撃を感じるんだね……」

 心の中で『ラッタンがごめんね、ぷる君』と念じながら呟く。
 ぷる君の体力バーはあまり減ってないみたいだから、大丈夫そうだねー。ラッタンがちゃんと弱らせてから魚を突っ込んでくれたおかげだろうな。

「ふやっ、ちょ、それはくすぐった……あ、今グサッて! グサッの三連発はちょっと怖いなぁ、なんて。あ、くすぐったいの連発もキツいかも、ふはは!」

 ぷる君が大変うるさい。スラリンの漁とは大違いだ。
 ジトッと見つめながら、ぷる君の中にいる魚介類の量を確認する。

「……そろそろ中身を吐き出すか、分解・吸収したらー?」
「あ、そうですね! とりあえず、過剰な分を砂浜に吐き出しながら、ちょっとずつ分解してみます!」

 やっとぷる君が真剣になった気がする。
 ペタとラッタンが魚介類をぷる君に突っ込む作業をやめて、周囲のモンスターの駆逐作業に移った。

「──よいしょ、よいしょ……」

 重たい体を引きずるように砂浜に近づいてきたぷる君が、「ぴゅふー!」と海水を吐き出した。
 たまに小魚やエビなどの小さいモンスターが海水に混じって砂浜に落ちてきて、食料アイテムに変わる。

「いい感じだねー」
「ですね! 残りは分解・吸収してみます!」

 海水をあらかた放出できたのか、ぷる君は「むむっ、【吸収】! 【分解】!」と何度もスキルを使って、ほぼ作業と化したモンスター対処を続けた。

「経験値もらえてる?」
「マジで凄い量もらえてます! 僕、今レベル9ですよ!」
「おお、それはよかったね。この調子で漁を続けたら、もっと強くなれそう」
「はい、がんばります! モモさん、マジで凄いレベリング法を教えてくれて、ありがとうございます!」

 ぷる君は目をキラキラと輝かせてる。
 結構、漁にハマってるんじゃないかな? いいレベリング法を身につけられてよかったね♪

しおりを挟む
感想 2,531

あなたにおすすめの小説

番外編・もふもふで始めるのんびり寄り道生活

ゆるり
ファンタジー
『もふもふで始めるのんびり寄り道生活』の番外編です。 登場人物の説明などは本編をご覧くださいませ。 更新は不定期です。

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~

黒蓬
ファンタジー
白石悠真は、ある日突然異世界へ召喚される。しかし、特別なスキルとして授かったのは「牧場経営」。戦えない彼は、与えられた土地で牧場を経営し、食料面での貢献を望まれる。ところが、彼の牧場には不思議な動物たちが次々と集まってきて――!? 異世界でのんびり牧場ライフ、始まります!

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜

るあか
ファンタジー
 僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。  でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。  どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。  そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。  家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。

嘘つきと呼ばれた精霊使いの私

ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。

異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
辺境の町バラムに暮らす青年マルク。 子どもの頃から繰り返し見る夢の影響で、自分が日本(地球)から転生したことを知る。 マルクは日本にいた時、カフェを経営していたが、同業者からの嫌がらせ、客からの理不尽なクレーム、従業員の裏切りで店は閉店に追い込まれた。 その後、悲嘆に暮れた彼は酒浸りになり、階段を踏み外して命を落とした。 当時の記憶が復活した結果、マルクは今度こそ店を経営して成功することを誓う。 そんな彼が思いついたのが焼肉屋だった。 マルクは冒険者をして資金を集めて、念願の店をオープンする。 焼肉をする文化がないため、その斬新さから店は繁盛していった。 やがて、物珍しさに惹かれた美食家エルフや凄腕冒険者が店を訪れる。 HOTランキング1位になることができました! 皆さま、ありがとうございます。 他社の投稿サイトにも掲載しています。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。