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12章 美味しいもの大好き!
481.ルンルン山登り
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転移スキルを使って、もふもふ愛ランドに到着。
「あ、どこで木材を採れるか聞いてなかったや……」
島の中央にある山。そこに生えている木全部が伐採できるわけではないはず。
いちいち全鑑定スキルで調べるのも面倒くさいし、タマモに聞いてみようっと。
「あ、モモさん!」
「ほえ?」
不意に声を掛けられて振り向く。
猫獣人のプレイヤーが頬を染めて、小さく手を振っていた。
僕のお友だちのマルだ。
スイーツ作りが好きで、パティシエに弟子入りしてるって前に聞いた。
ハロウィンパーティーをした時に食べた、マルが作ったモンブラン、美味しかったなぁ。
「──マル、久しぶり~」
挨拶をしながら近づく。
ふわふわとした白色の尻尾が揺れるのを、無意識の内に目で追った。長い尻尾っていいよねぇ。
「お久しぶりです。モモさんは、木材集めに来たんですよね?」
「そうだけど、マルがどうして知ってるの?」
「タマモちゃんに聞いたので。私も屋台を自分で作ろうと思って、木材を採りに来たんです」
同じ目的でここに来たらしい。
マルはパティシエだろうから、グルメ大会に参加するのは当然だ。屋台まで自力で作るというのは珍しいだろうけどね。
「そっか。場所は知ってる?」
「聞きましたよ。一緒に行きますか?」
「うん!!」
タマモに連絡をとる必要がなくなった。ラッキー。
ルンルンとしながらマルと歩き始めたら、たくさんの視線を感じる。いつの間にか、周りにプレイヤーの数が増えていた。
僕たちが歩くと、周りのみんなも歩く──大名行列かな?
「皆さんの視線がすごいですねぇ……」
マルの頬が少し引き攣っていた。慣れてないと困っちゃうよね。
僕が周囲にチラッと視線を向けると、「えっ、ついていっちゃダメな感じ……?」という声が聞こえてくる。
「マル、これヤダ?」
周りのみんなを指して尋ねると、マルは「いえ」と苦笑しながら首を横に振った。
「もふもふウォッチャーの気持ちはわかりますので、私は大丈夫です」
「んん? ……そっかぁ。それならみんなで行こうねー」
もふもふウォッチャーという言葉はちょっと気になったけど、スルーする。別に知る必要はなさそうだし。
周りのみんなが嬉しそうにはしゃぎながら一緒に歩く。集団ハイキングだねぇ。
マルが「こっちですよー」と案内してくれるから、どんどんと山を登っていった。
展望台に行くルートとは違って整備されてないけど、道中には薬草があったり、木の実があったり、採集ポイントが結構多い。
たまに採集しながら進んでいたら、ふとタマモが現れないことを不思議に感じた。
これだけたくさんの人が来ていて、タマモが来ない理由ってなんだろう? タマモなら即座に来そうなものだけど……
「タマモ、今忙しいのかなぁ?」
ポツリと疑問をこぼすと、マルが周囲を眺めていた目を僕に向けた。
「もふらーさん──じゃなくて、タマモちゃんは今、動画編集の最終段階に入っていて、ちょっと手が離せないらしいですよ。『せっかくご連絡もらったのにぃ』って泣きそうになってました」
「タマモらしいね。それにしても、動画編集かぁ」
大げさに嘆いているタマモの姿が容易に想像できて笑っちゃった。
きっと、僕にあとで大工作業を教える時間を確保するために、がんばって動画編集を終わらせようとしてるんだろうな。
動画編集と言えば、僕のミュージックビデオだ。
ついこの前、ラッタンと一緒にレコーディングしたんだよね。動画も新たに撮ったし、どんな感じに仕上がるのか楽しみ!
「ワクワクしますね。あ、そういえば、グルメ大会の後に、コンサートをする予定とか、あります?」
期待に満ちた目でマルに聞かれた。
コンサートねぇ。してもいいんだけど、それならそろそろ新曲も作りたい。
いつも作詞とかをしてくれるのはアイリーンだから、聞いてみないと。作曲をしてくれるシェルさんにも声を掛けよう。
「いいね。できたら、アイリーンとかと相談して新曲も考えたいな」
「やった! それなら、私からアイちゃんにお願いしておきますね!」
嬉しそうに顔を綻ばせたマルを見上げる。
ゲーム内アイドルをしてるアイリーンが、ハロウィンパーティーでマルを紹介してくれたことを思い出した。
「そういえば、二人は友だちだったっけ?」
「はい。幼馴染なんですよ」
「へぇ……このゲーム、リア友とする人多いねぇ」
リリとルトしかり、リコとナディアしかり。
たぶん僕があまり知らないだけで、元々友だちって人が集まってパーティ組んでることは多いんだろうな。
「そうですねぇ。やっぱりリアルの事情を知ってる方が、パーティで遊ぶ時に予定を合わせやすかったりしますし」
マルが頷いて言う。ついでに、「今はアイちゃん、リアルでもあんまり忙しくないので、新曲を作ってくれると思いますよ」と笑顔で教えてくれた。
新曲についての相談はマルに頼み、今は屋台作りに専念しよう。
「ところで、木材が採れるところって、まだ?」
このまま登ってたら山頂の展望台に着いちゃいそうだぞ、と思って尋ねてみる。
マルがハッとした顔になり、マップで現在地と目的地を確認した。
「っ、話に夢中で通り過ぎちゃってました! あちゃー……すみません……」
しっかり者に見えて、実はうっかりさんかな?
申し訳なさそうにしてるマルに、「いいよいいよ、大丈夫だよー」と答えながらUターン。
たくさんの人が一斉に同じ動きをするのが面白くて、ちょっと笑っちゃった。
たまには、こうしてみんなで行動するのも楽しいねぇ。
「あ、どこで木材を採れるか聞いてなかったや……」
島の中央にある山。そこに生えている木全部が伐採できるわけではないはず。
いちいち全鑑定スキルで調べるのも面倒くさいし、タマモに聞いてみようっと。
「あ、モモさん!」
「ほえ?」
不意に声を掛けられて振り向く。
猫獣人のプレイヤーが頬を染めて、小さく手を振っていた。
僕のお友だちのマルだ。
スイーツ作りが好きで、パティシエに弟子入りしてるって前に聞いた。
ハロウィンパーティーをした時に食べた、マルが作ったモンブラン、美味しかったなぁ。
「──マル、久しぶり~」
挨拶をしながら近づく。
ふわふわとした白色の尻尾が揺れるのを、無意識の内に目で追った。長い尻尾っていいよねぇ。
「お久しぶりです。モモさんは、木材集めに来たんですよね?」
「そうだけど、マルがどうして知ってるの?」
「タマモちゃんに聞いたので。私も屋台を自分で作ろうと思って、木材を採りに来たんです」
同じ目的でここに来たらしい。
マルはパティシエだろうから、グルメ大会に参加するのは当然だ。屋台まで自力で作るというのは珍しいだろうけどね。
「そっか。場所は知ってる?」
「聞きましたよ。一緒に行きますか?」
「うん!!」
タマモに連絡をとる必要がなくなった。ラッキー。
ルンルンとしながらマルと歩き始めたら、たくさんの視線を感じる。いつの間にか、周りにプレイヤーの数が増えていた。
僕たちが歩くと、周りのみんなも歩く──大名行列かな?
「皆さんの視線がすごいですねぇ……」
マルの頬が少し引き攣っていた。慣れてないと困っちゃうよね。
僕が周囲にチラッと視線を向けると、「えっ、ついていっちゃダメな感じ……?」という声が聞こえてくる。
「マル、これヤダ?」
周りのみんなを指して尋ねると、マルは「いえ」と苦笑しながら首を横に振った。
「もふもふウォッチャーの気持ちはわかりますので、私は大丈夫です」
「んん? ……そっかぁ。それならみんなで行こうねー」
もふもふウォッチャーという言葉はちょっと気になったけど、スルーする。別に知る必要はなさそうだし。
周りのみんなが嬉しそうにはしゃぎながら一緒に歩く。集団ハイキングだねぇ。
マルが「こっちですよー」と案内してくれるから、どんどんと山を登っていった。
展望台に行くルートとは違って整備されてないけど、道中には薬草があったり、木の実があったり、採集ポイントが結構多い。
たまに採集しながら進んでいたら、ふとタマモが現れないことを不思議に感じた。
これだけたくさんの人が来ていて、タマモが来ない理由ってなんだろう? タマモなら即座に来そうなものだけど……
「タマモ、今忙しいのかなぁ?」
ポツリと疑問をこぼすと、マルが周囲を眺めていた目を僕に向けた。
「もふらーさん──じゃなくて、タマモちゃんは今、動画編集の最終段階に入っていて、ちょっと手が離せないらしいですよ。『せっかくご連絡もらったのにぃ』って泣きそうになってました」
「タマモらしいね。それにしても、動画編集かぁ」
大げさに嘆いているタマモの姿が容易に想像できて笑っちゃった。
きっと、僕にあとで大工作業を教える時間を確保するために、がんばって動画編集を終わらせようとしてるんだろうな。
動画編集と言えば、僕のミュージックビデオだ。
ついこの前、ラッタンと一緒にレコーディングしたんだよね。動画も新たに撮ったし、どんな感じに仕上がるのか楽しみ!
「ワクワクしますね。あ、そういえば、グルメ大会の後に、コンサートをする予定とか、あります?」
期待に満ちた目でマルに聞かれた。
コンサートねぇ。してもいいんだけど、それならそろそろ新曲も作りたい。
いつも作詞とかをしてくれるのはアイリーンだから、聞いてみないと。作曲をしてくれるシェルさんにも声を掛けよう。
「いいね。できたら、アイリーンとかと相談して新曲も考えたいな」
「やった! それなら、私からアイちゃんにお願いしておきますね!」
嬉しそうに顔を綻ばせたマルを見上げる。
ゲーム内アイドルをしてるアイリーンが、ハロウィンパーティーでマルを紹介してくれたことを思い出した。
「そういえば、二人は友だちだったっけ?」
「はい。幼馴染なんですよ」
「へぇ……このゲーム、リア友とする人多いねぇ」
リリとルトしかり、リコとナディアしかり。
たぶん僕があまり知らないだけで、元々友だちって人が集まってパーティ組んでることは多いんだろうな。
「そうですねぇ。やっぱりリアルの事情を知ってる方が、パーティで遊ぶ時に予定を合わせやすかったりしますし」
マルが頷いて言う。ついでに、「今はアイちゃん、リアルでもあんまり忙しくないので、新曲を作ってくれると思いますよ」と笑顔で教えてくれた。
新曲についての相談はマルに頼み、今は屋台作りに専念しよう。
「ところで、木材が採れるところって、まだ?」
このまま登ってたら山頂の展望台に着いちゃいそうだぞ、と思って尋ねてみる。
マルがハッとした顔になり、マップで現在地と目的地を確認した。
「っ、話に夢中で通り過ぎちゃってました! あちゃー……すみません……」
しっかり者に見えて、実はうっかりさんかな?
申し訳なさそうにしてるマルに、「いいよいいよ、大丈夫だよー」と答えながらUターン。
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