もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

文字の大きさ
527 / 555
12章 美味しいもの大好き!

481.ルンルン山登り

しおりを挟む
 転移スキルを使って、もふもふ愛ランドに到着。

「あ、どこで木材を採れるか聞いてなかったや……」

 島の中央にある山。そこに生えている木全部が伐採できるわけではないはず。
 いちいち全鑑定スキルで調べるのも面倒くさいし、タマモに聞いてみようっと。

「あ、モモさん!」
「ほえ?」

 不意に声を掛けられて振り向く。
 猫獣人のプレイヤーが頬を染めて、小さく手を振っていた。

 僕のお友だちのマルだ。
 スイーツ作りが好きで、パティシエに弟子入りしてるって前に聞いた。
 ハロウィンパーティーをした時に食べた、マルが作ったモンブラン、美味しかったなぁ。

「──マル、久しぶり~」

 挨拶をしながら近づく。
 ふわふわとした白色の尻尾が揺れるのを、無意識の内に目で追った。長い尻尾っていいよねぇ。

「お久しぶりです。モモさんは、木材集めに来たんですよね?」
「そうだけど、マルがどうして知ってるの?」
「タマモちゃんに聞いたので。私も屋台を自分で作ろうと思って、木材を採りに来たんです」

 同じ目的でここに来たらしい。
 マルはパティシエだろうから、グルメ大会に参加するのは当然だ。屋台まで自力で作るというのは珍しいだろうけどね。

「そっか。場所は知ってる?」
「聞きましたよ。一緒に行きますか?」
「うん!!」

 タマモに連絡をとる必要がなくなった。ラッキー。
 ルンルンとしながらマルと歩き始めたら、たくさんの視線を感じる。いつの間にか、周りにプレイヤーの数が増えていた。
 僕たちが歩くと、周りのみんなも歩く──大名行列かな?

「皆さんの視線がすごいですねぇ……」

 マルの頬が少し引き攣っていた。慣れてないと困っちゃうよね。
 僕が周囲にチラッと視線を向けると、「えっ、ついていっちゃダメな感じ……?」という声が聞こえてくる。

「マル、これヤダ?」

 周りのみんなを指して尋ねると、マルは「いえ」と苦笑しながら首を横に振った。

「もふもふウォッチャーの気持ちはわかりますので、私は大丈夫です」
「んん? ……そっかぁ。それならみんなで行こうねー」

 もふもふウォッチャーという言葉はちょっと気になったけど、スルーする。別に知る必要はなさそうだし。

 周りのみんなが嬉しそうにはしゃぎながら一緒に歩く。集団ハイキングだねぇ。

 マルが「こっちですよー」と案内してくれるから、どんどんと山を登っていった。
 展望台に行くルートとは違って整備されてないけど、道中には薬草があったり、木の実があったり、採集ポイントが結構多い。

 たまに採集しながら進んでいたら、ふとタマモが現れないことを不思議に感じた。
 これだけたくさんの人が来ていて、タマモが来ない理由ってなんだろう? タマモなら即座に来そうなものだけど……

「タマモ、今忙しいのかなぁ?」

 ポツリと疑問をこぼすと、マルが周囲を眺めていた目を僕に向けた。

「もふらーさん──じゃなくて、タマモちゃんは今、動画編集の最終段階に入っていて、ちょっと手が離せないらしいですよ。『せっかくご連絡もらったのにぃ』って泣きそうになってました」
「タマモらしいね。それにしても、動画編集かぁ」

 大げさに嘆いているタマモの姿が容易に想像できて笑っちゃった。
 きっと、僕にあとで大工作業を教える時間を確保するために、がんばって動画編集を終わらせようとしてるんだろうな。

 動画編集と言えば、僕のミュージックビデオだ。
 ついこの前、ラッタンと一緒にレコーディングしたんだよね。動画も新たに撮ったし、どんな感じに仕上がるのか楽しみ!

「ワクワクしますね。あ、そういえば、グルメ大会の後に、コンサートをする予定とか、あります?」

 期待に満ちた目でマルに聞かれた。
 コンサートねぇ。してもいいんだけど、それならそろそろ新曲も作りたい。
 いつも作詞とかをしてくれるのはアイリーンだから、聞いてみないと。作曲をしてくれるシェルさんにも声を掛けよう。

「いいね。できたら、アイリーンとかと相談して新曲も考えたいな」
「やった! それなら、私からアイちゃんにお願いしておきますね!」

 嬉しそうに顔を綻ばせたマルを見上げる。
 ゲーム内アイドルをしてるアイリーンが、ハロウィンパーティーでマルを紹介してくれたことを思い出した。

「そういえば、二人は友だちだったっけ?」
「はい。幼馴染なんですよ」
「へぇ……このゲーム、リア友とする人多いねぇ」

 リリとルトしかり、リコとナディアしかり。
 たぶん僕があまり知らないだけで、元々友だちって人が集まってパーティ組んでることは多いんだろうな。

「そうですねぇ。やっぱりリアルの事情を知ってる方が、パーティで遊ぶ時に予定を合わせやすかったりしますし」

 マルが頷いて言う。ついでに、「今はアイちゃん、リアルでもあんまり忙しくないので、新曲を作ってくれると思いますよ」と笑顔で教えてくれた。

 新曲についての相談はマルに頼み、今は屋台作りに専念しよう。

「ところで、木材が採れるところって、まだ?」

 このまま登ってたら山頂の展望台に着いちゃいそうだぞ、と思って尋ねてみる。
 マルがハッとした顔になり、マップで現在地と目的地を確認した。

「っ、話に夢中で通り過ぎちゃってました! あちゃー……すみません……」

 しっかり者に見えて、実はうっかりさんかな?
 申し訳なさそうにしてるマルに、「いいよいいよ、大丈夫だよー」と答えながらUターン。
 たくさんの人が一斉に同じ動きをするのが面白くて、ちょっと笑っちゃった。

 たまには、こうしてみんなで行動するのも楽しいねぇ。

しおりを挟む
感想 2,531

あなたにおすすめの小説

番外編・もふもふで始めるのんびり寄り道生活

ゆるり
ファンタジー
『もふもふで始めるのんびり寄り道生活』の番外編です。 登場人物の説明などは本編をご覧くださいませ。 更新は不定期です。

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~

黒蓬
ファンタジー
白石悠真は、ある日突然異世界へ召喚される。しかし、特別なスキルとして授かったのは「牧場経営」。戦えない彼は、与えられた土地で牧場を経営し、食料面での貢献を望まれる。ところが、彼の牧場には不思議な動物たちが次々と集まってきて――!? 異世界でのんびり牧場ライフ、始まります!

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜

るあか
ファンタジー
 僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。  でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。  どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。  そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。  家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。

嘘つきと呼ばれた精霊使いの私

ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。

異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
辺境の町バラムに暮らす青年マルク。 子どもの頃から繰り返し見る夢の影響で、自分が日本(地球)から転生したことを知る。 マルクは日本にいた時、カフェを経営していたが、同業者からの嫌がらせ、客からの理不尽なクレーム、従業員の裏切りで店は閉店に追い込まれた。 その後、悲嘆に暮れた彼は酒浸りになり、階段を踏み外して命を落とした。 当時の記憶が復活した結果、マルクは今度こそ店を経営して成功することを誓う。 そんな彼が思いついたのが焼肉屋だった。 マルクは冒険者をして資金を集めて、念願の店をオープンする。 焼肉をする文化がないため、その斬新さから店は繁盛していった。 やがて、物珍しさに惹かれた美食家エルフや凄腕冒険者が店を訪れる。 HOTランキング1位になることができました! 皆さま、ありがとうございます。 他社の投稿サイトにも掲載しています。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。