もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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3章 商人への道?

106.僕は○○になる!

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 今回はちゃんとお知らせしたから、開店と同時にたくさんのお客さんが来てくれた。しかも、事前に注意があったのか、ちゃんと列を作って、店内の人数制限までしてくれてる。
 タマモ、ありがとうって感じかな?

 無人で対応できるから、僕がいる必要はないんだけど、工房の扉から店内をこっそり眺めてみる。

「うん、うん。鑑定してつけた説明文、ちゃんと伝わってるみたいだね。カウンターの使い方でも問題起きてないみたいだし」
「なんで隠れて見てるんだ? 普通に店内にいればいいだろ」

 ルトの呆れた声を聞いて振り返る。工房内の椅子に座ってテーブルに頬杖をつき、なんだか退屈そうだ。

「人が接客してなくても大丈夫かな、って確かめてるんだよ」
「へーへー。……満足したなら、どっか行こうぜ。狭い部屋に閉じ籠もってんの退屈」
「別に一緒にいてくれなんて、頼んでないんだけどねー?」

 揶揄まじりに返しながらルトの膝の上に飛び乗る。テーブルにあった食べ残しのクッキーをぱくり。バターの香りが強くてうまうま。

「それ俺の」
「僕が作ったんだよー」
「知ってる」

 頬や脇腹をツンツンとつつかれてくすぐったい。耳をつまんで動かすのもやーめーてー!

「もうっ、リリがいないからって、僕で遊ばないでよ」
「暇」
「リリと一緒に行けば良かったじゃん」

 今、リリは裁縫士のプレイヤーの集まりに行ってるらしいんだ。なんでも、僕の写真撮影会での衣装を作ってるとか。どんな衣装ができあがるのか、楽しみだけど、不安でもある……。奇抜なのは嫌だなぁ。

「俺が裁縫士の集まりに行ったところで、暇になるだけだろ。女子ばっかで居心地悪いし。お前とは違うんだよ」
「どういう意味??」

 首を傾げちゃったけど、女の子の集団の中にいるルトを想像したら、すごい違和感があった。居心地悪くて当然かも。
 僕は可愛いから大丈夫なんだよ。……たぶん。マスコットキャラ的な感じで。

「それより、出かけるぞ」
「どこにー?」
「……市場とか?」
「目的地ないんかい」

 雑にツッコミを入れながら、クッキーを食べ終える。空腹度回復したし、遊びにいくかー。

「――あ、僕、スキル習得したい」
「ん? 魔術か?」
「違うよー。芸をするやつ」
「……なんで?」

 心底不思議そうに言われた。まぁ、僕も気持ちはわかる。明確な理由を一つ挙げるなら、スキル屋のシェルさんとの親密度を高めるためかな? スキル交換がお得になるのは大きなメリットだよ。

 実際は、写真撮影会に集まってくれるみんなが楽しめるように、っていうのが一番大きな理由だけど。

「ルトもシェルさんとなんかパフォーマンスしてみるといいよ。交換に必要なスキルを、一部お金での支払いで対応してくれるから」
「金もねぇから、今んとこいらねぇわ」
「……悲しい」

 世知辛いってこのことだね。
 目元を拭う真似をしたら「うるせぇ」って言われた。なんでルトはツンツンしてるの。

「芸事スキルを習得するってなったら、広いところがいいか。――農地だな」
「農地だね。他人に見られないし」

 ツンツンしてるくせに、協力してくれるの、ルトの優しいところだよね。でも、いきなり立ち上がって僕を床に落としたのは絶許!


◇◆◇ 


 農地に来たはいいものの、なにをしようかな。

「今、どんな芸事スキル覚えてんだっけ?」
「跳び芸と玉乗りかなー。自由曲芸はパッシブスキルだし、特定の芸じゃないから」
「その他なぁ……」

 地面にあぐらをかいて真剣に考えてるルトを横目に、シェルさんからの連絡を再確認する。たくさんスキル名を教えてもらったけど、どうやって習得すればいいかわからないやつ多いや。

「――とりあえず、舞台映えすんのがいいんだろ?」
「うん。曲にのせていい感じになるやつ」
「跳び芸、玉乗りときたら、サーカス系で綱渡りとか空中ブランコか? 新体操系で側転、バク転してみるってのもいいんじゃね?」

 めっちゃ考えてくれてる!
 綱渡りして覚えられるスキルは【バランス】かな。空中ブランコだとなんだろう?

「僕が側転とかバク転ができる体型に見えますか」

 表情を無にして問いかけたら、ルトが真剣な表情で僕を上から下まで眺めて、「無理だな」と断言した。それなら言わないでよねー。

「あ、でも、お前の飛翔フライスキルでズルすればいけるんじゃねぇか? 玉乗りも、結構飛んで誤魔化してただろ」
「バレてたかぁ!」
「お前、普段が鈍くせぇから」
「ひどくない?」

 そんなこと思ってたなんて、僕泣いちゃうぞ!?
 むぅ、と不貞腐れてみたけど、ルトは全然気にしてくれない。タマモやリリだったらきちんとリアクションとってくれるのにぃ。

「とりあえず、色々やってみろ。アドバイスはしてやるから」
「ルトは全然芸事スキル持ってないはずなのに、なんでそんなに上からなの」
「他人事だから」
「身も蓋もないなぁ」

 付き合いがいいのか、突き放されてるのかよくわかんない。
 肩をすくめて「やれやれ」と呟いたら、「なんかムカつく」と言われた。それ、僕のセリフー!

「とりあえず、バク転してみまーす」

 はーい、と手を上げて飛翔フライスキルを発動。バク転って、後方宙返りのことだよね? いち、に、の、さん、はい!

 くるっと回ったら、頭がぐわーんってなった気がした。これは慣れないと酔うぞ……。頭の上に地面があるのも不思議な感覚だよ。

「それ、極めたらバトルでも役立ちそうだな」
「あー、飛行技術ってこと?」
「そうそう。なんか戦闘機のアクロバット飛行的な」
「お、カッコいい感じがするね!」

 ちょっとやる気が湧いてきたぞ。
 写真撮影会で特定のスキルを披露するんじゃなくて、飛翔フライを工夫して使うっていう考え方はいいかもしれない。

「――星とか雪を降らせたい」
「飛びながら? すげぇとこ行ったな」
「でも、良くない?」
「……正直、テンション上がる」

 ニヤリと笑ったルトとハイタッチ。
 今回はきれいな感じのパフォーマンスを目指してみよう。そうなると、飛翔フライスキルを磨くだけじゃなくて、魔術も練習するべきかな。星とか雪を出す魔術があるか知らないけど。

「錬金術で作れねぇの?」
「え?」

 ルトの言葉が福音のように響いた。
 そうだよ。全部、新しいスキルで表現する必要ないじゃん。僕には錬金術がある!

 早速錬金玉と錬金布を取り出してレシピ検索。
 雪、といえば水かな? 水魔石は持ってないんだよなぁ。

「――水鉄砲と瞬間冷凍機ならある」
「どんなん?」

 水鉄砲は持っている素材で作れるみたいだったから、ササッと完成。
 細い木の筒に入った水を、栓っぽいやつで押し出すもの。ぴゅーと水が出るの面白い。昔、竹筒で作った水鉄砲があったって聞いたことある気がする。

「水遊び楽しいー!」
「目的が変わってんな。けど、ノスタルジックな感じして、結構いいわ」

 水鉄砲はルトの心に刺さったらしい。
 僕から取り上げてぴゅーぴゅーと水を発射して遊んでる。楽しそうだねー。

「でも、これなら水魔術でいいかな?」
「水魔術じゃ強すぎねぇか? 店ん中でするんだろ?」
「……そもそも水浸しにしちゃいそうなパフォーマンスはダメかも」

 指摘されて冷静になりました。水鉄砲は外でパフォーマンスする時のためにとっておこう。夏にみんなでびしょびしょに濡れるイベントって、楽しいよね!

「それなら星か? アイドルのライブとかなら、紙吹雪がキラキラしてると星っぽいけど」
「アイドルのライブ! そうだ、そこを目指してみよう!」

 ルトの言葉で明確なイメージができた。

「――今の僕に必要なのは、ダンスだよ!」

 拳を握って宣言したら、ルトに呆れた顔で「演出の話じゃなかったのかよ」と言われた。
 ちゃんと演出も考えるよ?

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