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3章 商人への道?
107.気分転換するぞー
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ダンスって結構難しいんだね。ログインして練習する度にそう感じる。
シェルさんに演奏する曲を教えてもらって、それに合うダンスを考えたり、演出を構成したりしてみた。でも、すればするだけ、もっと良いパフォーマンスになるんじゃないかなって思っちゃうんだもん。終わりがない!
「リアルでもダンスとかコンサートの動画見て勉強してるんだー」
「すげぇな……その、わけわかんねぇ熱意」
今日もリリに置いてきぼりにされたルトが、僕の隣を歩いてる。最近は商品作りとかダンス練習とかばっかりしてたから、気分転換に街中を散策しに来てみたよ。
「プロ意識って言って」
「なんのプロだよ」
「うーん……アイドル?」
「……間違ってはねぇな」
ルトにアイドル認定された。これ、喜んでもいい?
首を傾げてたら、プレイヤーの女の子と目が合った。ぱぁ、と輝いた表情で控えめに手を振られたので、僕もふりふり、と手を揺らす。
「――モモといると、注目度ハンパねぇよ」
「イヤ?」
「別に。ただ、お前は嫌にならねぇのかな、とは思う」
ぼーっとした顔で屋台を眺めながら言うルトを見上げる。もしかして心配されてるのかな?
「イヤにはならないよ。だって、友だち増えるの楽しいじゃん」
「基本ソロで気ままに動いてるくせに、モモって実はコミュ力高いよな」
「気分屋なんだよ~。一人でいたい時は、そもそも人と会わないようにするもん」
僕には飛翔スキルがあるので。極力人と会わないように街中を進むこともできるんだ。
実際、ほのぼのふらふらしたい時は飛んで移動してるし、人気のないバトルフィールドでスラリンやピアと戯れてることもあるし。
「そんなもんか」
「そうそう。――あ、そうだ。ルトも写真撮影会来る?」
「なんで??」
心底不思議そうに言われたし、「お前マジか……」って引いた目をされるの、なんだか納得できない。誘うのって変?
「ルトのお友だち作ろう大作戦?」
「余計なお世話だ、バカ」
「バカって言う方がバカなんだよー」
ムッとしながら言い返したら、「ガキか」とツッコまれて頭を軽く叩かれた。
「――いたーい! リリがいないと、すぐ僕のところに来るから、交流を広げる手助けしようと思っただけなのにぃ」
「それが余計なお世話なんだよ。つーか、絶対別の理由あるだろ」
「ぎくっ」
「棒読みに、わかりやすい演技やめろ」
ちょっと跳びはねて驚いてみたら、呆れた顔をされる。でも、「それで、俺になんかしてほしいことあんのか?」って聞いてくれるんだから、ルトってば優しーい。
「できたら、パフォーマンスを手伝ってくれないかなって思って」
「は? お前みたいにダンスすんのは絶対嫌だぞ」
絶対、の語調が強すぎない? そんなにダンスイヤなの? 楽しいのに。
「ダンスじゃなくて裏方的な感じだよ。演出で花吹雪とかキラキラした照明とか使おうと思ってて」
「いつの間にそんなん作ったんだ」
「最近。レナードさんに良い演出アイテムないか聞いて、作り方教えてもらったんだー」
「レナードって誰だっけ?」
「はじまりの街にいる錬金術士で、僕の師匠!」
「あっそ……」
説明してるのに、ルトは関心ない感じで空を眺めてる。上ばっかり見てると躓いちゃうぞ。
「あと、ダンス系統のスキルを習得したけど、効果を発揮するにはパーティーメンバーがいた方がいいっぽくて――」
「待て待て。普通に言ってるけど、ダンススキルって、技的な感じのやつか」
ぎょっとした様子で見下されたので、「うん」と頷く。そんなに驚くことかな。
ダンスを練習してる途中で入手したスキルは【ステップ】【ジャンプ】【ターン】の三つ。まだまだスキルはありそうなんだけど、覚えられてないんだよねぇ。
ステップは『正しいステップを踏むと五分間素早さが10上がる』というもの。
素早さが上がるとバトルはもちろん、パフォーマンスでも迫力が出るんだよね。
ジャンプは『空中を一回蹴って、さらに高いところまで跳べる』というもの。
僕は飛翔スキルがあるからいらないだろって? ところがこれ、着地する代わりに空中を蹴って再度飛翔スキルを使えるっていう利点があるんだ。飛翔→ジャンプ→飛翔の後は、一回地面に着地しないといけないけど。
まぁ、この二つはともかく、問題はターンだよ。これは『パーティーメンバーの数が一人増える毎に、ターンがきれいに決まる回数が一増える。ソロでは一回』っていうスキルなんだ。
そんなにクルクル回るつもりはないけど、二回ターンできるといいなぁって思ってるんだよね。
「なんだそのスキル……」
説明した僕を、ルトがなんとも言えない表情で見下ろしてくる。
僕も、運営さんちょっとおかしいかも、って思ったよ。だから、僕をそんな目で見てこないで。
「一応、ターンはパッシブスキルで、バトル時には、回避系スキルの成功率が上昇するっていう効果もあるんだよ」
「あー……それなら、まぁ、便利か……?」
首を傾げつつも納得してくれたルトを見上げ、ズボンを軽く引っ張る。
「それで、協力してくれる?」
「お前なら、集まったやつらにパーティー組んでもらえばいいじゃねぇか」
「そうだけど、それでも演出用のアイテム使ってくれる裏方役の人は探さないといけないし」
「……リリが参加するらしいから、協力すんのはいいけどよ」
なんだかんだと言いつつ、肩をすくめて受け入れてくれたルトに「ありがとー!」と抱きつく。すぐに「歩きにくい」と剥がされちゃったけど。
「そういえば、リリも参加するんだねー」
お金ないって言ってたのに、抽選券のために屋台で買い物してくれてたのかな?
「あぁ。なんか裁縫士の集まりで、予定変わって参加できなくなったって言ってるやつがいて、参加権を譲ってもらったんだと」
「そうなんだ。まぁ、スケジュール決めたの遅かったし、予定合わない人もいるよね。今回は不参加の人のために、タマモが撮った動画をスレに載せるらしいけど」
「……すげぇ編集まで完璧にしてきそうだな」
「同感」
頷き合う。タマモ撮影編集の動画、完成度が高そう。
話が一段落着いたので、街を楽しもうと視線を動かしたところで、数人のプレイヤーに囲まれている女の子が視界に飛び込んできた。
「――イザベラちゃん?」
「っ、モモ!」
僕に気づいたイザベラちゃんが、プレイヤーたちの間をすり抜けて駆け寄ってくる。一体なにごと?
シェルさんに演奏する曲を教えてもらって、それに合うダンスを考えたり、演出を構成したりしてみた。でも、すればするだけ、もっと良いパフォーマンスになるんじゃないかなって思っちゃうんだもん。終わりがない!
「リアルでもダンスとかコンサートの動画見て勉強してるんだー」
「すげぇな……その、わけわかんねぇ熱意」
今日もリリに置いてきぼりにされたルトが、僕の隣を歩いてる。最近は商品作りとかダンス練習とかばっかりしてたから、気分転換に街中を散策しに来てみたよ。
「プロ意識って言って」
「なんのプロだよ」
「うーん……アイドル?」
「……間違ってはねぇな」
ルトにアイドル認定された。これ、喜んでもいい?
首を傾げてたら、プレイヤーの女の子と目が合った。ぱぁ、と輝いた表情で控えめに手を振られたので、僕もふりふり、と手を揺らす。
「――モモといると、注目度ハンパねぇよ」
「イヤ?」
「別に。ただ、お前は嫌にならねぇのかな、とは思う」
ぼーっとした顔で屋台を眺めながら言うルトを見上げる。もしかして心配されてるのかな?
「イヤにはならないよ。だって、友だち増えるの楽しいじゃん」
「基本ソロで気ままに動いてるくせに、モモって実はコミュ力高いよな」
「気分屋なんだよ~。一人でいたい時は、そもそも人と会わないようにするもん」
僕には飛翔スキルがあるので。極力人と会わないように街中を進むこともできるんだ。
実際、ほのぼのふらふらしたい時は飛んで移動してるし、人気のないバトルフィールドでスラリンやピアと戯れてることもあるし。
「そんなもんか」
「そうそう。――あ、そうだ。ルトも写真撮影会来る?」
「なんで??」
心底不思議そうに言われたし、「お前マジか……」って引いた目をされるの、なんだか納得できない。誘うのって変?
「ルトのお友だち作ろう大作戦?」
「余計なお世話だ、バカ」
「バカって言う方がバカなんだよー」
ムッとしながら言い返したら、「ガキか」とツッコまれて頭を軽く叩かれた。
「――いたーい! リリがいないと、すぐ僕のところに来るから、交流を広げる手助けしようと思っただけなのにぃ」
「それが余計なお世話なんだよ。つーか、絶対別の理由あるだろ」
「ぎくっ」
「棒読みに、わかりやすい演技やめろ」
ちょっと跳びはねて驚いてみたら、呆れた顔をされる。でも、「それで、俺になんかしてほしいことあんのか?」って聞いてくれるんだから、ルトってば優しーい。
「できたら、パフォーマンスを手伝ってくれないかなって思って」
「は? お前みたいにダンスすんのは絶対嫌だぞ」
絶対、の語調が強すぎない? そんなにダンスイヤなの? 楽しいのに。
「ダンスじゃなくて裏方的な感じだよ。演出で花吹雪とかキラキラした照明とか使おうと思ってて」
「いつの間にそんなん作ったんだ」
「最近。レナードさんに良い演出アイテムないか聞いて、作り方教えてもらったんだー」
「レナードって誰だっけ?」
「はじまりの街にいる錬金術士で、僕の師匠!」
「あっそ……」
説明してるのに、ルトは関心ない感じで空を眺めてる。上ばっかり見てると躓いちゃうぞ。
「あと、ダンス系統のスキルを習得したけど、効果を発揮するにはパーティーメンバーがいた方がいいっぽくて――」
「待て待て。普通に言ってるけど、ダンススキルって、技的な感じのやつか」
ぎょっとした様子で見下されたので、「うん」と頷く。そんなに驚くことかな。
ダンスを練習してる途中で入手したスキルは【ステップ】【ジャンプ】【ターン】の三つ。まだまだスキルはありそうなんだけど、覚えられてないんだよねぇ。
ステップは『正しいステップを踏むと五分間素早さが10上がる』というもの。
素早さが上がるとバトルはもちろん、パフォーマンスでも迫力が出るんだよね。
ジャンプは『空中を一回蹴って、さらに高いところまで跳べる』というもの。
僕は飛翔スキルがあるからいらないだろって? ところがこれ、着地する代わりに空中を蹴って再度飛翔スキルを使えるっていう利点があるんだ。飛翔→ジャンプ→飛翔の後は、一回地面に着地しないといけないけど。
まぁ、この二つはともかく、問題はターンだよ。これは『パーティーメンバーの数が一人増える毎に、ターンがきれいに決まる回数が一増える。ソロでは一回』っていうスキルなんだ。
そんなにクルクル回るつもりはないけど、二回ターンできるといいなぁって思ってるんだよね。
「なんだそのスキル……」
説明した僕を、ルトがなんとも言えない表情で見下ろしてくる。
僕も、運営さんちょっとおかしいかも、って思ったよ。だから、僕をそんな目で見てこないで。
「一応、ターンはパッシブスキルで、バトル時には、回避系スキルの成功率が上昇するっていう効果もあるんだよ」
「あー……それなら、まぁ、便利か……?」
首を傾げつつも納得してくれたルトを見上げ、ズボンを軽く引っ張る。
「それで、協力してくれる?」
「お前なら、集まったやつらにパーティー組んでもらえばいいじゃねぇか」
「そうだけど、それでも演出用のアイテム使ってくれる裏方役の人は探さないといけないし」
「……リリが参加するらしいから、協力すんのはいいけどよ」
なんだかんだと言いつつ、肩をすくめて受け入れてくれたルトに「ありがとー!」と抱きつく。すぐに「歩きにくい」と剥がされちゃったけど。
「そういえば、リリも参加するんだねー」
お金ないって言ってたのに、抽選券のために屋台で買い物してくれてたのかな?
「あぁ。なんか裁縫士の集まりで、予定変わって参加できなくなったって言ってるやつがいて、参加権を譲ってもらったんだと」
「そうなんだ。まぁ、スケジュール決めたの遅かったし、予定合わない人もいるよね。今回は不参加の人のために、タマモが撮った動画をスレに載せるらしいけど」
「……すげぇ編集まで完璧にしてきそうだな」
「同感」
頷き合う。タマモ撮影編集の動画、完成度が高そう。
話が一段落着いたので、街を楽しもうと視線を動かしたところで、数人のプレイヤーに囲まれている女の子が視界に飛び込んできた。
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