もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

文字の大きさ
74 / 555
3章 商人への道?

107.気分転換するぞー

しおりを挟む
 ダンスって結構難しいんだね。ログインして練習する度にそう感じる。

 シェルさんに演奏する曲を教えてもらって、それに合うダンスを考えたり、演出を構成したりしてみた。でも、すればするだけ、もっと良いパフォーマンスになるんじゃないかなって思っちゃうんだもん。終わりがない!

「リアルでもダンスとかコンサートの動画見て勉強してるんだー」
「すげぇな……その、わけわかんねぇ熱意」

 今日もリリに置いてきぼりにされたルトが、僕の隣を歩いてる。最近は商品作りとかダンス練習とかばっかりしてたから、気分転換に街中を散策しに来てみたよ。

「プロ意識って言って」
「なんのプロだよ」
「うーん……アイドル?」
「……間違ってはねぇな」

 ルトにアイドル認定された。これ、喜んでもいい?
 首を傾げてたら、プレイヤーの女の子と目が合った。ぱぁ、と輝いた表情で控えめに手を振られたので、僕もふりふり、と手を揺らす。

「――モモといると、注目度ハンパねぇよ」
「イヤ?」
「別に。ただ、お前は嫌にならねぇのかな、とは思う」

 ぼーっとした顔で屋台を眺めながら言うルトを見上げる。もしかして心配されてるのかな?

「イヤにはならないよ。だって、友だち増えるの楽しいじゃん」
「基本ソロで気ままに動いてるくせに、モモって実はコミュ力高いよな」
「気分屋なんだよ~。一人でいたい時は、そもそも人と会わないようにするもん」

 僕には飛翔フライスキルがあるので。極力人と会わないように街中を進むこともできるんだ。
 実際、ほのぼのふらふらしたい時は飛んで移動してるし、人気のないバトルフィールドでスラリンやピアと戯れてることもあるし。

「そんなもんか」
「そうそう。――あ、そうだ。ルトも写真撮影会来る?」
「なんで??」

 心底不思議そうに言われたし、「お前マジか……」って引いた目をされるの、なんだか納得できない。誘うのって変?

「ルトのお友だち作ろう大作戦?」
「余計なお世話だ、バカ」
「バカって言う方がバカなんだよー」

 ムッとしながら言い返したら、「ガキか」とツッコまれて頭を軽く叩かれた。

「――いたーい! リリがいないと、すぐ僕のところに来るから、交流を広げる手助けしようと思っただけなのにぃ」
「それが余計なお世話なんだよ。つーか、絶対別の理由あるだろ」
「ぎくっ」
「棒読みに、わかりやすい演技やめろ」

 ちょっと跳びはねて驚いてみたら、呆れた顔をされる。でも、「それで、俺になんかしてほしいことあんのか?」って聞いてくれるんだから、ルトってば優しーい。

「できたら、パフォーマンスを手伝ってくれないかなって思って」
「は? お前みたいにダンスすんのは絶対嫌だぞ」

 絶対、の語調が強すぎない? そんなにダンスイヤなの? 楽しいのに。

「ダンスじゃなくて裏方的な感じだよ。演出で花吹雪とかキラキラした照明とか使おうと思ってて」
「いつの間にそんなん作ったんだ」
「最近。レナードさんに良い演出アイテムないか聞いて、作り方教えてもらったんだー」
「レナードって誰だっけ?」
「はじまりの街にいる錬金術士で、僕の師匠!」
「あっそ……」

 説明してるのに、ルトは関心ない感じで空を眺めてる。上ばっかり見てると躓いちゃうぞ。

「あと、ダンス系統のスキルを習得したけど、効果を発揮するにはパーティーメンバーがいた方がいいっぽくて――」
「待て待て。普通に言ってるけど、ダンススキルって、技的な感じのやつか」

 ぎょっとした様子で見下されたので、「うん」と頷く。そんなに驚くことかな。

 ダンスを練習してる途中で入手したスキルは【ステップ】【ジャンプ】【ターン】の三つ。まだまだスキルはありそうなんだけど、覚えられてないんだよねぇ。

 ステップは『正しいステップを踏むと五分間素早さが10上がる』というもの。
 素早さが上がるとバトルはもちろん、パフォーマンスでも迫力が出るんだよね。

 ジャンプは『空中を一回蹴って、さらに高いところまで跳べる』というもの。
 僕は飛翔フライスキルがあるからいらないだろって? ところがこれ、着地する代わりに空中を蹴って再度飛翔フライスキルを使えるっていう利点があるんだ。飛翔フライ→ジャンプ→飛翔フライの後は、一回地面に着地しないといけないけど。

 まぁ、この二つはともかく、問題はターンだよ。これは『パーティーメンバーの数が一人増える毎に、ターンがきれいに決まる回数が一増える。ソロでは一回』っていうスキルなんだ。
 そんなにクルクル回るつもりはないけど、二回ターンできるといいなぁって思ってるんだよね。

「なんだそのスキル……」

 説明した僕を、ルトがなんとも言えない表情で見下ろしてくる。
 僕も、運営さんちょっとおかしいかも、って思ったよ。だから、僕をそんな目で見てこないで。

「一応、ターンはパッシブスキルで、バトル時には、回避系スキルの成功率が上昇するっていう効果もあるんだよ」
「あー……それなら、まぁ、便利か……?」

 首を傾げつつも納得してくれたルトを見上げ、ズボンを軽く引っ張る。

「それで、協力してくれる?」
「お前なら、集まったやつらにパーティー組んでもらえばいいじゃねぇか」
「そうだけど、それでも演出用のアイテム使ってくれる裏方役の人は探さないといけないし」
「……リリが参加するらしいから、協力すんのはいいけどよ」

 なんだかんだと言いつつ、肩をすくめて受け入れてくれたルトに「ありがとー!」と抱きつく。すぐに「歩きにくい」と剥がされちゃったけど。

「そういえば、リリも参加するんだねー」

 お金ないって言ってたのに、抽選券のために屋台で買い物してくれてたのかな?

「あぁ。なんか裁縫士の集まりで、予定変わって参加できなくなったって言ってるやつがいて、参加権を譲ってもらったんだと」
「そうなんだ。まぁ、スケジュール決めたの遅かったし、予定合わない人もいるよね。今回は不参加の人のために、タマモが撮った動画をスレに載せるらしいけど」
「……すげぇ編集まで完璧にしてきそうだな」
「同感」

 頷き合う。タマモ撮影編集の動画、完成度が高そう。
 話が一段落着いたので、街を楽しもうと視線を動かしたところで、数人のプレイヤーに囲まれている女の子が視界に飛び込んできた。

「――イザベラちゃん?」
「っ、モモ!」

 僕に気づいたイザベラちゃんが、プレイヤーたちの間をすり抜けて駆け寄ってくる。一体なにごと?

しおりを挟む
感想 2,532

あなたにおすすめの小説

番外編・もふもふで始めるのんびり寄り道生活

ゆるり
ファンタジー
『もふもふで始めるのんびり寄り道生活』の番外編です。 登場人物の説明などは本編をご覧くださいませ。 更新は不定期です。

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜

るあか
ファンタジー
 僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。  でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。  どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。  そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。  家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。

異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~

黒蓬
ファンタジー
白石悠真は、ある日突然異世界へ召喚される。しかし、特別なスキルとして授かったのは「牧場経営」。戦えない彼は、与えられた土地で牧場を経営し、食料面での貢献を望まれる。ところが、彼の牧場には不思議な動物たちが次々と集まってきて――!? 異世界でのんびり牧場ライフ、始まります!

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

嘘つきと呼ばれた精霊使いの私

ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。

異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
辺境の町バラムに暮らす青年マルク。 子どもの頃から繰り返し見る夢の影響で、自分が日本(地球)から転生したことを知る。 マルクは日本にいた時、カフェを経営していたが、同業者からの嫌がらせ、客からの理不尽なクレーム、従業員の裏切りで店は閉店に追い込まれた。 その後、悲嘆に暮れた彼は酒浸りになり、階段を踏み外して命を落とした。 当時の記憶が復活した結果、マルクは今度こそ店を経営して成功することを誓う。 そんな彼が思いついたのが焼肉屋だった。 マルクは冒険者をして資金を集めて、念願の店をオープンする。 焼肉をする文化がないため、その斬新さから店は繁盛していった。 やがて、物珍しさに惹かれた美食家エルフや凄腕冒険者が店を訪れる。 HOTランキング1位になることができました! 皆さま、ありがとうございます。 他社の投稿サイトにも掲載しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。