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4章 錬金術士だよ?
118.出会いを求めよう
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無事にはじまりの街に帰って来られて、ヤナとお別れする。ちゃんとフレンドになったからいつでも連絡できるよ。貴重な希少種仲間なんだから、仲良くしたいよね。
ヤナ曰く、第二陣は希少種を選んだ人が増えたらしい。僕が出てるCMの効果だって。もちろん、ガチャで種族が決まるから、希望通りになれるわけじゃないんだけど。
「希少種、どんな人がいるのかな~?」
はじまりの街の中を歩きながら、ちらちらと周囲を観察する。できたら、希少種仲間を増やしたい。
第一陣でも、僕以外に希少種はいるはずなんだけど、会ったことないんだよね。あんまり話題にも上がってないみたいだから、ひっそりとゲームしてるのかも。僕は目立ってるから、接触しない方がいいかな。
「――あっ、羽のあるうさぎだ!」
指差された。ここまで勢いよく声を掛けてくる人は珍しい。
声の方を振り向くと、犬系の尻尾をブンブンと振ってる女の人がいた。獣人だろうな。
「こんにちはー?」
「ども! CMで見てたんで、思わず声かけちゃいました、すみません!」
「別にいいよー」
なんか色んなところから視線を感じるけど、気にしなーい。僕、有名人(兎?)になっちゃったから仕方ないよね。
「私、狼族のペニーです! 今日からゲームを始めました」
「僕はモモだよ」
狼族らしい。ふっさふさの尻尾がいいね。タマモほどじゃないけど。九尾狐と比べたら、たいていの尻尾がシュッとした感じになるよね。
「それで、ここで会ったが百年目、お願いしたいことがあるんですが!」
「言葉の使い方間違ってない?」
首を傾げてたら、ペニーが「語感重視です」とよくわからない返事をした。……不思議な人だ。
「まぁ、そんなことはどうでもよくて。お願いなんですけど!」
「うん、なに?」
「私が作る人形のモデルになってくれませんかっ?」
「モデル!?」
え、どういうこと。頭の中に『?』が乱舞するけど、そんな僕に気づいてない感じで、ペニーが説明を続ける。
「私、人形使いになりたいんですよ」
「うん?」
「でも、まだそういう職業ないし、スキルも発見されてないみたいでしょ?」
「そうだね、聞いたことないよ」
「だから、いつ発見されてもいいように、というか、私が発見してやるぞ、という気持ちで、早いうちから人形を作っておこうと思って。あ、私、裁縫士なんですよ」
色々説明してもらったけど、ペニーは人形使い(?)という職業になりたくて、そのために人形を作るつもりなんだってことしかわからなかった。その理解で十分な気もする。
「僕に似た人形を作りたいから、モデルになって、っていうこと?」
「そうです! 他にも作る予定の子はいるんですけど、ぜひウサギ系も作っておきたくて」
ふーん、と首を傾げる。
「モデルってなにするの?」
「色んな角度からスクショを撮らせてください。それを参考にして作るので。まぁ、生地集めからしないといけませんが」
にこにこと微笑まれる。でも、目力が強くて『絶対に、なにがあっても作ってやるぞ……!』という気合いが伝わってきた。よっぽど人形使い(?)になりたいんだね。
「それくらいならいいよー。……でも、上手く作れるようになったら、僕の店で売らない?」
ふと思い浮かんだことをそのまま言葉にしてた。
僕も錬金術でぬいぐるみを作れるけど、裁縫士が作るぬいぐるみもきっと可愛いと思うんだよ。ファンの人たちが喜んでくれそうだし。
別の素材で僕のぬいぐるみを作れるなら、綿毛の消費量が減るなぁ、って狙ってるわけじゃないよ? このまま綿毛をとりすぎたら、ハゲちゃうかなって心配してるんじゃないんだよ?
……そういう考えがゼロではないけど!
「店で?」
「きっと欲しがる人多いと思うんだー。ちゃんとペニーにも売上を渡すし」
「……それはいいですね! 私は手元に一体あればいいので、追加で作れた分は売りましょう」
ガシッと握手する。商談成立って感じ?
そのままペニーに言われるがままにポーズをとって、スクショを撮られる。可愛く撮ってねー。
「――これで良い感じに作れそうです!」
「楽しみにしてるよー。生地にできそうなアイテム見つけたら、連絡するね」
「お願いします!」
リリに生地の種類とか聞いてみようかな。僕にたくさんの服を作ってくれてるし、詳しいかも。
そんなことを考えてたら、ペニーが「他の希少種さんにもモデルをお願いしたんですよー」と言ってきた。
「他の希少種?」
「そうです。猫とか狼とかチンチラっぽい子に会ったので、スクショを撮らせてもらいました」
撮ったスクショを見せてくれた。確かに丸っこい猫とかカッコいい銀色の狼とか、ねずみっぽい子が写ってる。これ全部希少種なんだね!
「どこで会ったの?」
「あっちの広場で、希少種仲間で結束を強める会っていうのをしてましたよ」
ペニーが通りの先を指さした。明確な場所はわかんないけど、会いに行ってみたいな。でも、『希少種仲間で結束を強める会』ってなに? なんだか面白そうだね?
僕も希少種だし、その会に参加する資格があるんじゃないかな!
「探してみる!」
「がんばってくださーい」
ペニーとお別れして飛翔スキルで上空へ。広場なら上空から探した方が見つけやすそうだもんね。
「どこにいるかな~?」
とりあえずペニーが指した方向へ進む。ペニーと同じく希少種の子たちもゲーム始めたてだろうから、シークレットエリアにはいなさそうだよね。それならすぐに見つけられるかな。
……あ、でも、僕がシークレットエリアを見つけたのも初日だ。やっぱり広範囲を探すべき?
建物の屋根に着地したり、空中でジャンプして飛んでいく。滞空時間、そろそろ延びてほしいんだけど――。
〈飛翔スキルのレベルが4になりました〉
おー、ちょうど考えてたところでレベルアップした!
滞空時間三十秒だって。レベル1の頃と比べたら、だいぶ長時間飛べるようになったね! ジャンプスキルと合わせて使ったら、一分飛べることになるってすごくない?
「っと、あれって……!」
建物の合間にちょこっと存在してる広場に、動物のような姿が円を作るように座ってる。プレイヤーの表示があるし、希少種たちだ!
「――こーんにーちはー!」
「どわっ!?」
円の中央に飛び降りたら、勢いよく飛び退かれちゃった。
驚かせてごめん……。すごく反省してるから、そんなに警戒しないで……?
ヤナ曰く、第二陣は希少種を選んだ人が増えたらしい。僕が出てるCMの効果だって。もちろん、ガチャで種族が決まるから、希望通りになれるわけじゃないんだけど。
「希少種、どんな人がいるのかな~?」
はじまりの街の中を歩きながら、ちらちらと周囲を観察する。できたら、希少種仲間を増やしたい。
第一陣でも、僕以外に希少種はいるはずなんだけど、会ったことないんだよね。あんまり話題にも上がってないみたいだから、ひっそりとゲームしてるのかも。僕は目立ってるから、接触しない方がいいかな。
「――あっ、羽のあるうさぎだ!」
指差された。ここまで勢いよく声を掛けてくる人は珍しい。
声の方を振り向くと、犬系の尻尾をブンブンと振ってる女の人がいた。獣人だろうな。
「こんにちはー?」
「ども! CMで見てたんで、思わず声かけちゃいました、すみません!」
「別にいいよー」
なんか色んなところから視線を感じるけど、気にしなーい。僕、有名人(兎?)になっちゃったから仕方ないよね。
「私、狼族のペニーです! 今日からゲームを始めました」
「僕はモモだよ」
狼族らしい。ふっさふさの尻尾がいいね。タマモほどじゃないけど。九尾狐と比べたら、たいていの尻尾がシュッとした感じになるよね。
「それで、ここで会ったが百年目、お願いしたいことがあるんですが!」
「言葉の使い方間違ってない?」
首を傾げてたら、ペニーが「語感重視です」とよくわからない返事をした。……不思議な人だ。
「まぁ、そんなことはどうでもよくて。お願いなんですけど!」
「うん、なに?」
「私が作る人形のモデルになってくれませんかっ?」
「モデル!?」
え、どういうこと。頭の中に『?』が乱舞するけど、そんな僕に気づいてない感じで、ペニーが説明を続ける。
「私、人形使いになりたいんですよ」
「うん?」
「でも、まだそういう職業ないし、スキルも発見されてないみたいでしょ?」
「そうだね、聞いたことないよ」
「だから、いつ発見されてもいいように、というか、私が発見してやるぞ、という気持ちで、早いうちから人形を作っておこうと思って。あ、私、裁縫士なんですよ」
色々説明してもらったけど、ペニーは人形使い(?)という職業になりたくて、そのために人形を作るつもりなんだってことしかわからなかった。その理解で十分な気もする。
「僕に似た人形を作りたいから、モデルになって、っていうこと?」
「そうです! 他にも作る予定の子はいるんですけど、ぜひウサギ系も作っておきたくて」
ふーん、と首を傾げる。
「モデルってなにするの?」
「色んな角度からスクショを撮らせてください。それを参考にして作るので。まぁ、生地集めからしないといけませんが」
にこにこと微笑まれる。でも、目力が強くて『絶対に、なにがあっても作ってやるぞ……!』という気合いが伝わってきた。よっぽど人形使い(?)になりたいんだね。
「それくらいならいいよー。……でも、上手く作れるようになったら、僕の店で売らない?」
ふと思い浮かんだことをそのまま言葉にしてた。
僕も錬金術でぬいぐるみを作れるけど、裁縫士が作るぬいぐるみもきっと可愛いと思うんだよ。ファンの人たちが喜んでくれそうだし。
別の素材で僕のぬいぐるみを作れるなら、綿毛の消費量が減るなぁ、って狙ってるわけじゃないよ? このまま綿毛をとりすぎたら、ハゲちゃうかなって心配してるんじゃないんだよ?
……そういう考えがゼロではないけど!
「店で?」
「きっと欲しがる人多いと思うんだー。ちゃんとペニーにも売上を渡すし」
「……それはいいですね! 私は手元に一体あればいいので、追加で作れた分は売りましょう」
ガシッと握手する。商談成立って感じ?
そのままペニーに言われるがままにポーズをとって、スクショを撮られる。可愛く撮ってねー。
「――これで良い感じに作れそうです!」
「楽しみにしてるよー。生地にできそうなアイテム見つけたら、連絡するね」
「お願いします!」
リリに生地の種類とか聞いてみようかな。僕にたくさんの服を作ってくれてるし、詳しいかも。
そんなことを考えてたら、ペニーが「他の希少種さんにもモデルをお願いしたんですよー」と言ってきた。
「他の希少種?」
「そうです。猫とか狼とかチンチラっぽい子に会ったので、スクショを撮らせてもらいました」
撮ったスクショを見せてくれた。確かに丸っこい猫とかカッコいい銀色の狼とか、ねずみっぽい子が写ってる。これ全部希少種なんだね!
「どこで会ったの?」
「あっちの広場で、希少種仲間で結束を強める会っていうのをしてましたよ」
ペニーが通りの先を指さした。明確な場所はわかんないけど、会いに行ってみたいな。でも、『希少種仲間で結束を強める会』ってなに? なんだか面白そうだね?
僕も希少種だし、その会に参加する資格があるんじゃないかな!
「探してみる!」
「がんばってくださーい」
ペニーとお別れして飛翔スキルで上空へ。広場なら上空から探した方が見つけやすそうだもんね。
「どこにいるかな~?」
とりあえずペニーが指した方向へ進む。ペニーと同じく希少種の子たちもゲーム始めたてだろうから、シークレットエリアにはいなさそうだよね。それならすぐに見つけられるかな。
……あ、でも、僕がシークレットエリアを見つけたのも初日だ。やっぱり広範囲を探すべき?
建物の屋根に着地したり、空中でジャンプして飛んでいく。滞空時間、そろそろ延びてほしいんだけど――。
〈飛翔スキルのレベルが4になりました〉
おー、ちょうど考えてたところでレベルアップした!
滞空時間三十秒だって。レベル1の頃と比べたら、だいぶ長時間飛べるようになったね! ジャンプスキルと合わせて使ったら、一分飛べることになるってすごくない?
「っと、あれって……!」
建物の合間にちょこっと存在してる広場に、動物のような姿が円を作るように座ってる。プレイヤーの表示があるし、希少種たちだ!
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