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4章 錬金術士だよ?
119.モフモフたちとこんにちは
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幸運なことに、広場に集っていた希少種たちは僕のことをCMで知っていたみたいだ。おかげですぐに警戒心がなくなった。
「わー、このサーバーにいたんだにゃ」
「にゃ」
思わず語尾を真似しちゃう。
マンチカンのような短足で、メインクーンのようなふわふわ尻尾の大きな猫。大きさはライオンやトラくらいある。丸っこくて可愛いけど、鋭い爪や牙に猛獣っぽさが滲んでる。
「真似するにゃー!」
「ごめん、可愛いから、つい」
えへ、と笑って言い訳すると、猫ちゃんは「それならしかたにゃいにゃー」とまんざらでもなさそうな表情になる。
僕も相当だけど、猫ちゃんもキャラへのなりきり具合がすごいね。
「ムギ、まずは挨拶だろ」
額に三日月形の模様がある狼くんが、呆れたように首を振りながら言う。
「そうだったにゃ。あたいはムギにゃ。種族は丸猫だにゃ。よろしくにゃー」
「僕はモモだよ。種族は天兎。こちらこそよろしくねー」
ぺこり、と僕がお辞儀をしたら、ムギも前足を折るようにして頭を下げた。四つ足での動きが本物の動物みたいだ。僕は四つ足で歩くことほとんどないよ。
それにしても、丸猫かー。こういうモンスターもいるんだね。
「俺は月狼のツッキーだ。よろしくベイビー」
狼くん改め、ツッキーがぱちりとウインクしてくる。僕より上手いかも。でも、ノリが独特だなぁ。
「べ、べいびー? よくわかんないけど、よろしく」
ツッキーに「イェーイ」とハイタッチを求められて、ジャンプしながらこたえる。
ちょっとビビッちゃったのは、ツッキーがすごく大きいから。立ったらルトより背が高いんじゃないかな。口も大きくて、僕は一口でガブッと食べられちゃいそう。
「はじめまして、モモさん。ボク、絹銀鼠のソウタって言います。仲良くしてください」
唯一僕より小さい希少種が、キラキラとした眼差しで手を差し出してきた。その手も小さい。可愛い。
「ソウタ! よろしく。僕たち、もう友だちなんだから、仲良くするのは当たり前だよ~」
手を握って揺らす。チンチラをモデルにしたモンスターだからか、ウサギ系の僕と顔がちょっと似てる気がする。二本足で立ってるのも一緒だ。
「そうですね! ボクたち友だち!」
ソウタが嬉しそうに笑った。
「俺たちはのけものか? ちっさい子同盟発足したのか?」
「それならあたいとツッキーでおっきい子同盟作ろうにゃ」
「この場に四人しかいないのに、二対二で分かれる必要ある?」
からかってくるツッキーとそれに乗るムギに呆れる。ソウタもあはは、と苦笑していた。
大きいからって偉いわけじゃないんだぞ。強さで言うと、たぶん僕が一番強いんだよ。……現時点では、ね。
「わー、怒られちまったぁ!」
「もふもふうさぎは怒っても可愛いにゃー」
「怒ってないけど、ムカつく」
ゲシゲシと二人を蹴ったら、思った以上に衝撃があったらしく、よろめいた後にパチパチと目を瞬かせていた。
そういえば僕、足蹴っていうスキル持ってたかも。今使ったつもりはないけど、ちょっと効果が出ちゃったのかな?
「悪かったよ。そんなに拗ねないでくれ、ベイビー」
「あたいも悪ノリしてごめんにゃ」
「反省したならそれで良し!」
胸を張って頷いたら、「偉そうだにゃー」と言われた。ソウタが僕の真似をするような仕草をしてたのが可愛くて、つい頬が緩んじゃう。
僕を見て「かわいいっ!」と悶える人たちの気持ちがちょっとわかった気がする。
「同盟といえば、ボクたち希少種仲間で結束を強める会――略して希少種会を作ったんですよ。モモさんも入りませんか?」
「あ、それペニーっていう人に聞いたよ! 仲間に入れてもらおうと思って三人を探してたんだ」
「ああ、あの御仁な」
「テンション高い人だったにゃ……」
「でも、無遠慮に撫でてこようとはしなかったので、ちゃんとマナーはある感じでしたよね」
ペニーは三人の中にもしっかりと印象が残ってるらしい。そりゃそうか。
それに、希少種としてログインして早くも、ちょっと迷惑な感じのプレイヤーにも出会ってるっぽい。僕は幸運なことに、そんな人に出会ってないけど。
「希少種会ってなにするの?」
「……駄弁る?」
「ゴロゴロするにゃー」
ツッキーとムギは頼りにならないってことがよく理解できる返答だった。思わず半眼になっちゃう。
「えっと、希少種ならではの情報交換とか、協力体制とか、できたらいいなって思ってるんです」
「ソウタ、いい子だねぇ」
しっかりと答えを返してくれたソウタにニコニコと微笑む。しゃべり方とか、僕より年下な感じがするんだよね。
「そ、そうですか? 普通ですよ」
照れた感じで頬をかくソウタに、ツッキーとムギが「いや、お前はいい子だぞー」「頼りになるにゃー」と声をかける。
ニヤニヤとした雰囲気を感じるし、からかっているに違いない。悪い大人だ。
呆れながらも、話を元に戻すことにした。
「とりあえず、希少種仲間として協力し合おうってことだね。僕は第一陣で遊んでるし、必要なことがあったら頼ってよ」
「おー、ありがてぇな!」
「それなら、レベリングを手伝ってにゃ」
早速とばかりにムギが期待に満ちた目を向けてくる。レベリングかー。
「僕ら、一緒に始めた友だちがいないので、三人でパーティーを組むつもりなんです。普通のプレイヤーからは変に注目されるか、遠巻きにされることが多いから。でも、三人だと攻略を進めるのが大変そうだって思いまして……」
ソウタが詳しく説明してくれる。
どうやら三人とも、さっさと第二の街に進みたいらしい。今、はじまりの街は混雑してるし、その分注目を浴びることも多いから、そう思うのも当然かも。
「そっか。それならレベリング付き合うよ」
「サンクス、ベイビー!」
「ありがとうございます!」
ツッキーとソウタで、お礼の言葉の重みが全然違う気がする。バトルではソウタを積極的に助けてあげようっと。
「ありがとにゃ。みんな草原狼の牙はギルドに提出してるから、南と北のどっちでも行けるけど、どうするにゃ?」
「うーん? たぶん、初心者ならノース街道の方が楽なんだろうけど、プレイヤーも多そうなんだよね。サウス街道だと状態異常の耐性も獲得できると思うし、そっちにしない?」
提案してみたら、三人とも異論はないようで頷いてくれる。
ヤナと探索した時は、状態異常の耐性獲得を考える余裕なかったし、三人と一緒に攻略したら、僕にも利点がある。がんばろうっと。
「わー、このサーバーにいたんだにゃ」
「にゃ」
思わず語尾を真似しちゃう。
マンチカンのような短足で、メインクーンのようなふわふわ尻尾の大きな猫。大きさはライオンやトラくらいある。丸っこくて可愛いけど、鋭い爪や牙に猛獣っぽさが滲んでる。
「真似するにゃー!」
「ごめん、可愛いから、つい」
えへ、と笑って言い訳すると、猫ちゃんは「それならしかたにゃいにゃー」とまんざらでもなさそうな表情になる。
僕も相当だけど、猫ちゃんもキャラへのなりきり具合がすごいね。
「ムギ、まずは挨拶だろ」
額に三日月形の模様がある狼くんが、呆れたように首を振りながら言う。
「そうだったにゃ。あたいはムギにゃ。種族は丸猫だにゃ。よろしくにゃー」
「僕はモモだよ。種族は天兎。こちらこそよろしくねー」
ぺこり、と僕がお辞儀をしたら、ムギも前足を折るようにして頭を下げた。四つ足での動きが本物の動物みたいだ。僕は四つ足で歩くことほとんどないよ。
それにしても、丸猫かー。こういうモンスターもいるんだね。
「俺は月狼のツッキーだ。よろしくベイビー」
狼くん改め、ツッキーがぱちりとウインクしてくる。僕より上手いかも。でも、ノリが独特だなぁ。
「べ、べいびー? よくわかんないけど、よろしく」
ツッキーに「イェーイ」とハイタッチを求められて、ジャンプしながらこたえる。
ちょっとビビッちゃったのは、ツッキーがすごく大きいから。立ったらルトより背が高いんじゃないかな。口も大きくて、僕は一口でガブッと食べられちゃいそう。
「はじめまして、モモさん。ボク、絹銀鼠のソウタって言います。仲良くしてください」
唯一僕より小さい希少種が、キラキラとした眼差しで手を差し出してきた。その手も小さい。可愛い。
「ソウタ! よろしく。僕たち、もう友だちなんだから、仲良くするのは当たり前だよ~」
手を握って揺らす。チンチラをモデルにしたモンスターだからか、ウサギ系の僕と顔がちょっと似てる気がする。二本足で立ってるのも一緒だ。
「そうですね! ボクたち友だち!」
ソウタが嬉しそうに笑った。
「俺たちはのけものか? ちっさい子同盟発足したのか?」
「それならあたいとツッキーでおっきい子同盟作ろうにゃ」
「この場に四人しかいないのに、二対二で分かれる必要ある?」
からかってくるツッキーとそれに乗るムギに呆れる。ソウタもあはは、と苦笑していた。
大きいからって偉いわけじゃないんだぞ。強さで言うと、たぶん僕が一番強いんだよ。……現時点では、ね。
「わー、怒られちまったぁ!」
「もふもふうさぎは怒っても可愛いにゃー」
「怒ってないけど、ムカつく」
ゲシゲシと二人を蹴ったら、思った以上に衝撃があったらしく、よろめいた後にパチパチと目を瞬かせていた。
そういえば僕、足蹴っていうスキル持ってたかも。今使ったつもりはないけど、ちょっと効果が出ちゃったのかな?
「悪かったよ。そんなに拗ねないでくれ、ベイビー」
「あたいも悪ノリしてごめんにゃ」
「反省したならそれで良し!」
胸を張って頷いたら、「偉そうだにゃー」と言われた。ソウタが僕の真似をするような仕草をしてたのが可愛くて、つい頬が緩んじゃう。
僕を見て「かわいいっ!」と悶える人たちの気持ちがちょっとわかった気がする。
「同盟といえば、ボクたち希少種仲間で結束を強める会――略して希少種会を作ったんですよ。モモさんも入りませんか?」
「あ、それペニーっていう人に聞いたよ! 仲間に入れてもらおうと思って三人を探してたんだ」
「ああ、あの御仁な」
「テンション高い人だったにゃ……」
「でも、無遠慮に撫でてこようとはしなかったので、ちゃんとマナーはある感じでしたよね」
ペニーは三人の中にもしっかりと印象が残ってるらしい。そりゃそうか。
それに、希少種としてログインして早くも、ちょっと迷惑な感じのプレイヤーにも出会ってるっぽい。僕は幸運なことに、そんな人に出会ってないけど。
「希少種会ってなにするの?」
「……駄弁る?」
「ゴロゴロするにゃー」
ツッキーとムギは頼りにならないってことがよく理解できる返答だった。思わず半眼になっちゃう。
「えっと、希少種ならではの情報交換とか、協力体制とか、できたらいいなって思ってるんです」
「ソウタ、いい子だねぇ」
しっかりと答えを返してくれたソウタにニコニコと微笑む。しゃべり方とか、僕より年下な感じがするんだよね。
「そ、そうですか? 普通ですよ」
照れた感じで頬をかくソウタに、ツッキーとムギが「いや、お前はいい子だぞー」「頼りになるにゃー」と声をかける。
ニヤニヤとした雰囲気を感じるし、からかっているに違いない。悪い大人だ。
呆れながらも、話を元に戻すことにした。
「とりあえず、希少種仲間として協力し合おうってことだね。僕は第一陣で遊んでるし、必要なことがあったら頼ってよ」
「おー、ありがてぇな!」
「それなら、レベリングを手伝ってにゃ」
早速とばかりにムギが期待に満ちた目を向けてくる。レベリングかー。
「僕ら、一緒に始めた友だちがいないので、三人でパーティーを組むつもりなんです。普通のプレイヤーからは変に注目されるか、遠巻きにされることが多いから。でも、三人だと攻略を進めるのが大変そうだって思いまして……」
ソウタが詳しく説明してくれる。
どうやら三人とも、さっさと第二の街に進みたいらしい。今、はじまりの街は混雑してるし、その分注目を浴びることも多いから、そう思うのも当然かも。
「そっか。それならレベリング付き合うよ」
「サンクス、ベイビー!」
「ありがとうございます!」
ツッキーとソウタで、お礼の言葉の重みが全然違う気がする。バトルではソウタを積極的に助けてあげようっと。
「ありがとにゃ。みんな草原狼の牙はギルドに提出してるから、南と北のどっちでも行けるけど、どうするにゃ?」
「うーん? たぶん、初心者ならノース街道の方が楽なんだろうけど、プレイヤーも多そうなんだよね。サウス街道だと状態異常の耐性も獲得できると思うし、そっちにしない?」
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ヤナと探索した時は、状態異常の耐性獲得を考える余裕なかったし、三人と一緒に攻略したら、僕にも利点がある。がんばろうっと。
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