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4章 錬金術士だよ?
120.それゆけ、希少種会!
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夜になっちゃったから一旦別れて、それぞれログアウト(休憩)したり、攻略用アイテムを揃えたりして朝になってから再集合。
サウス街道の手前で待ち合わせたら、すごく注目を浴びた。うーん、いつも以上にすごいなぁ。なんだかんだ、初めからこのゲームで遊んでた人たちは、僕に慣れてくれてたんだろうな。
「よしっ、みんな揃ったな。早速行くぞ!」
「遅刻してきたやつが偉そうにリーダーぶるんじゃないにゃ」
ツッキーをムギが冷たい目で睨む。ツッキーは「そんな怒るなよー」と困った表情だ。
意外にムギは時間に厳しいタイプだったんだね。
「まぁまぁ。遅刻って言っても、五分くらいだし」
「五分も人目にさらされながら待つのはイヤにゃ」
間に入って宥めてみるけど、ムギはツッキーに猫パンチを繰り出した。
どうしようかなー、と困ってソウタと顔を見合わせたけど、しばらくして気が済んだのか、ムギが「行くにゃ」と宣言する。本物の猫のように気まぐれだ。
「俺はもう遅刻しないぞ!」
「うん、それがいいと思う」
背景に炎が見えるくらい気合いを入れて宣言するツッキーに深く頷いた。パーティーで活動するなら、それぞれ最低限の気遣いっていうか、約束事は守らないとね。
「それで、みなさんはどんなアイテムを準備しました?」
サウス街道に進んだところでソウタが尋ねる。
一番歩く速度が遅いから、ツッキーの上に乗って、毛にしがみついているのが可愛い。本人は必死なんだろうけど。
それにしても、ツッキーとムギは四つ足で歩いてるから、野生のモンスターにしか見えないな。すれ違うプレイヤーがぎょっと身構えるのも当然だ。すぐに「あぁ、プレイヤーか……」って納得されてるけど。
「俺は回復薬をゲットしてきたぜ!」
「あたいもにゃ」
「ボクもです」
三人は最低限必要なものは自力で入手したみたい。よしよし、と先輩風を吹かせて頷いてみる。
「回復薬は重要だもんね。はじまりの街で比較的安くで手に入るし。でも、サウス街道だと、他にも薬が必要だと思うんだー」
「他ですか?」
「……状態異常回復かにゃ」
「その通り! というわけで、みんなにプレゼントだよー」
アイテムボックスから薬を取り出す。
状態異常回復薬(麻痺・毒・混乱に対応)だよ。サウス街道のモンスターを倒してドロップアイテムがたくさんあったから、それを使って作ってきたんだ。
「一応、耐性獲得が優先だけど、全員が状態異常を食らっちゃったら、危ないでしょ? だから持っておいて、状況にあわせて使ってね」
「了解だぜ! さすがリーダー、頼りになるな!」
リーダー? 僕が?
僕は目を見開いて驚いたけど、三人は当然って感じで聞き流して、アイテムの方に興味津々だ。
「……リーダーの言うことは、ちゃんと聞くようにね!」
なんか嬉しい。責任感も生まれた気がするけど、それはそれで楽しいし。
胸を張って宣言したら、ツッキーとムギがニヤニヤと笑った気がした。ソウタは素直に「はい、リーダー!」と返事をしてくれる。二人はソウタの可愛げを見習ってよ。
「あ、リーダー、最初の敵だぜ!」
「キモい花だにゃー」
「根っこがヘビみたいですね」
前方に現れたモンスターを確認して、散開した。
それぞれの能力は休憩を取る前に把握してる。
物理・魔力攻撃力が優れていて、体力もある体術士のツッキーが完全前衛。
物理・魔力攻撃力が優れていて、素早さが高い魔術士のムギが敵の撹乱役。
魔力攻撃力が高く、ステルス能力がある治癒士のソウタは、隠れながら攻撃したり回復させたり。
僕は全員のカバーをしながら、敵の体力を削るんだ。一発で倒しちゃったら、耐性を獲得できないからね。調整がちょっと難しい。
「【突進】!」
ツッキーがモンスターに体当たりする。ダメージは与えられたけど、モンスターの麻痺粉であっさりと麻痺状態になっちゃった。たぶん、精神力が低いからかな。
「火の玉!」
動きが鈍ったツッキーを攻撃しようとするモンスターの足元に魔術を放って牽制。その間に、ツッキーはムギに蹴飛ばされてモンスターと距離を取った。時間回復で戦闘に復帰できそうだな。
「――土の玉にゃ!」
モンスターに土色の玉が激突する。反動で放たれた麻痺の粉が、風でムギの方に流れた。咄嗟に飛び退いたみたいだけど、ちょっと影響が出たのか、動きが鈍ってる。
「【隠れ刃】」
銀色のものがモンスターの根っこ部分を切り裂いた。これ、ソウタがステルス状態の時にだけ使える攻撃なんだって。剣での物理攻撃じゃなくて、風属性の魔力攻撃らしい。
「火の玉!」
僕が放った火魔術でモンスターが燃える。木属性には効果抜群だー!
……手加減するなら、他の属性の魔術が良かったかな?
討伐成功アナウンスが聞こえて、むくれた表情のツッキーが近づいてくる。
「俺、全然活躍できなかった」
「馬鹿みたいに突撃しただけだったにゃー」
「バカって言うなよぉ」
ふふん、と笑ったムギに、ツッキーが情けない表情で尻尾を垂らす。完全に尻に敷かれてない? 力関係が確立されちゃってる気がする。
「お二人とも、麻痺は大丈夫ですか?」
「俺は回復したぞ。耐性もとれたし」
「あたいは元々、弱麻痺だったから、大丈夫にゃ。耐性はとれなかったにゃ」
「僕も耐性はとれなかったんですよねぇ」
ムギとソウタがちょっとしょんぼりしてる。
「それなら、次に麻痺攻撃してくる敵と遭ったら、ムギとソウタが積極的に食らってみる?」
「……わざわざ麻痺しに行くのはどうかと思うけど、今後のことを考えたらそれが良さそうにゃ」
「がんばります!」
「今度は俺が二人をフォローするからな!」
僕の提案は難なく受け入れられた。早速、攻略を再開する。
進みはゆっくりだけど、たまにはこういう感じでバトルするのも楽しいね。みんなが成長していくのがわかって嬉しいし。
「どんどん進むよー」
「おー!」
「にゃん」
「ツッキーさん、待って、ボクを乗っけてください!」
「おっと、悪ぃな、ソウタ!」
種族も大きさもバラバラ。でもなんだか一体感がある仲間といっしょに、てくてく進む。
傍から見たら変な行進みたいだろうなぁ、と思ってこっそり笑っちゃった。
サウス街道の手前で待ち合わせたら、すごく注目を浴びた。うーん、いつも以上にすごいなぁ。なんだかんだ、初めからこのゲームで遊んでた人たちは、僕に慣れてくれてたんだろうな。
「よしっ、みんな揃ったな。早速行くぞ!」
「遅刻してきたやつが偉そうにリーダーぶるんじゃないにゃ」
ツッキーをムギが冷たい目で睨む。ツッキーは「そんな怒るなよー」と困った表情だ。
意外にムギは時間に厳しいタイプだったんだね。
「まぁまぁ。遅刻って言っても、五分くらいだし」
「五分も人目にさらされながら待つのはイヤにゃ」
間に入って宥めてみるけど、ムギはツッキーに猫パンチを繰り出した。
どうしようかなー、と困ってソウタと顔を見合わせたけど、しばらくして気が済んだのか、ムギが「行くにゃ」と宣言する。本物の猫のように気まぐれだ。
「俺はもう遅刻しないぞ!」
「うん、それがいいと思う」
背景に炎が見えるくらい気合いを入れて宣言するツッキーに深く頷いた。パーティーで活動するなら、それぞれ最低限の気遣いっていうか、約束事は守らないとね。
「それで、みなさんはどんなアイテムを準備しました?」
サウス街道に進んだところでソウタが尋ねる。
一番歩く速度が遅いから、ツッキーの上に乗って、毛にしがみついているのが可愛い。本人は必死なんだろうけど。
それにしても、ツッキーとムギは四つ足で歩いてるから、野生のモンスターにしか見えないな。すれ違うプレイヤーがぎょっと身構えるのも当然だ。すぐに「あぁ、プレイヤーか……」って納得されてるけど。
「俺は回復薬をゲットしてきたぜ!」
「あたいもにゃ」
「ボクもです」
三人は最低限必要なものは自力で入手したみたい。よしよし、と先輩風を吹かせて頷いてみる。
「回復薬は重要だもんね。はじまりの街で比較的安くで手に入るし。でも、サウス街道だと、他にも薬が必要だと思うんだー」
「他ですか?」
「……状態異常回復かにゃ」
「その通り! というわけで、みんなにプレゼントだよー」
アイテムボックスから薬を取り出す。
状態異常回復薬(麻痺・毒・混乱に対応)だよ。サウス街道のモンスターを倒してドロップアイテムがたくさんあったから、それを使って作ってきたんだ。
「一応、耐性獲得が優先だけど、全員が状態異常を食らっちゃったら、危ないでしょ? だから持っておいて、状況にあわせて使ってね」
「了解だぜ! さすがリーダー、頼りになるな!」
リーダー? 僕が?
僕は目を見開いて驚いたけど、三人は当然って感じで聞き流して、アイテムの方に興味津々だ。
「……リーダーの言うことは、ちゃんと聞くようにね!」
なんか嬉しい。責任感も生まれた気がするけど、それはそれで楽しいし。
胸を張って宣言したら、ツッキーとムギがニヤニヤと笑った気がした。ソウタは素直に「はい、リーダー!」と返事をしてくれる。二人はソウタの可愛げを見習ってよ。
「あ、リーダー、最初の敵だぜ!」
「キモい花だにゃー」
「根っこがヘビみたいですね」
前方に現れたモンスターを確認して、散開した。
それぞれの能力は休憩を取る前に把握してる。
物理・魔力攻撃力が優れていて、体力もある体術士のツッキーが完全前衛。
物理・魔力攻撃力が優れていて、素早さが高い魔術士のムギが敵の撹乱役。
魔力攻撃力が高く、ステルス能力がある治癒士のソウタは、隠れながら攻撃したり回復させたり。
僕は全員のカバーをしながら、敵の体力を削るんだ。一発で倒しちゃったら、耐性を獲得できないからね。調整がちょっと難しい。
「【突進】!」
ツッキーがモンスターに体当たりする。ダメージは与えられたけど、モンスターの麻痺粉であっさりと麻痺状態になっちゃった。たぶん、精神力が低いからかな。
「火の玉!」
動きが鈍ったツッキーを攻撃しようとするモンスターの足元に魔術を放って牽制。その間に、ツッキーはムギに蹴飛ばされてモンスターと距離を取った。時間回復で戦闘に復帰できそうだな。
「――土の玉にゃ!」
モンスターに土色の玉が激突する。反動で放たれた麻痺の粉が、風でムギの方に流れた。咄嗟に飛び退いたみたいだけど、ちょっと影響が出たのか、動きが鈍ってる。
「【隠れ刃】」
銀色のものがモンスターの根っこ部分を切り裂いた。これ、ソウタがステルス状態の時にだけ使える攻撃なんだって。剣での物理攻撃じゃなくて、風属性の魔力攻撃らしい。
「火の玉!」
僕が放った火魔術でモンスターが燃える。木属性には効果抜群だー!
……手加減するなら、他の属性の魔術が良かったかな?
討伐成功アナウンスが聞こえて、むくれた表情のツッキーが近づいてくる。
「俺、全然活躍できなかった」
「馬鹿みたいに突撃しただけだったにゃー」
「バカって言うなよぉ」
ふふん、と笑ったムギに、ツッキーが情けない表情で尻尾を垂らす。完全に尻に敷かれてない? 力関係が確立されちゃってる気がする。
「お二人とも、麻痺は大丈夫ですか?」
「俺は回復したぞ。耐性もとれたし」
「あたいは元々、弱麻痺だったから、大丈夫にゃ。耐性はとれなかったにゃ」
「僕も耐性はとれなかったんですよねぇ」
ムギとソウタがちょっとしょんぼりしてる。
「それなら、次に麻痺攻撃してくる敵と遭ったら、ムギとソウタが積極的に食らってみる?」
「……わざわざ麻痺しに行くのはどうかと思うけど、今後のことを考えたらそれが良さそうにゃ」
「がんばります!」
「今度は俺が二人をフォローするからな!」
僕の提案は難なく受け入れられた。早速、攻略を再開する。
進みはゆっくりだけど、たまにはこういう感じでバトルするのも楽しいね。みんなが成長していくのがわかって嬉しいし。
「どんどん進むよー」
「おー!」
「にゃん」
「ツッキーさん、待って、ボクを乗っけてください!」
「おっと、悪ぃな、ソウタ!」
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傍から見たら変な行進みたいだろうなぁ、と思ってこっそり笑っちゃった。
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