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ゆるり

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4章 錬金術士だよ?

145.最後のアイテム作成です

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 ルトを眺めていたリリが、「あれ?」と首を傾げた。

「どうしたの?」
「いや、素材が変わったけど、効果はそのままなのかなって思って」
「……あ」
「おい」

 ジトッとした眼差しのルトから目を逸らす——間際に、さり気なくルトのイヤリングを鑑定した。

「……大丈夫! 幸運値+8だよ!」
「下がってんじゃねぇか」
「木属性に関しての効果は僕のと同じだから問題ない! あと追加の効果もあるし!」

 必死に弁明したら、ルトが興味を惹かれた感じで前のめりになった。

「追加の効果? 攻撃力アップとか?」
「ルトは、攻撃は最大の防御って言うタイプ?」

 今度は僕がジトッと見る番だ。そんなんだから、リリにバトルジャンキー扱いされるんだぞ。僕もリリと同じように思ってるけど。

「そんなんじゃねぇし……」

 まぁ、そういうことにしておこう。
 目を逸らしてるルトに肩をすくめて見せたら、「なんかムカつく……」と呟かれた。

「それで追加効果はなんなの?」
「それがねぇ……」

 改めてルトのイヤリングを鑑定して、にこりと笑う。そうしたら、なぜかルトが引き攣った顔をした。嫌な予感でもしたのかな?

「——魅力度20%アップだよ!」
「なんだよ、それっ!?」

 リリとルトがポカンと口を開ける。
 ちなみにアイテム名は【魅惑琥珀マジカルアンバーのイヤリング】だよ。教えたら、せっかく作ったイヤリングを捨てられそうだから、内緒にしとく。

 魅力度っていう表示は僕も初めて見たけど、さらに鑑定したらなんとなくわかった。

「魅了系スキルの効果が上がるみたい」
「心底いらねぇなっ!」
「いやいや、魅了スキル覚えて、僕と一緒にコンサートしよ? 世界一のデュオアイドル目指そ?」
「しねぇよ! つーか、お前のファンに魅了スキルかけさせようとしてんな!」

 拒否された上に怒られちゃった。絶対楽しいと思うんだけどなぁ。

 リリが「さすがにそれは、ルトには無理な気がする」って苦笑してるから、ここは断念するしかないか。残念だけど。

「したくなったらいつでも言ってねー」
「一生ねぇよ」

 ルトの言葉を聞き流し、長靴を使ったアイテム作りに取り掛かる。

「それはともかく、最後のアイテムを作るよ~」
「はぁ……。つーか、マジでこの長靴でアイテム作れんのか?」

 大量に積み重ねられた長靴を指し、ルトが微妙な感じで眉を寄せた。
 僕は錬金術を使う準備をしながら頷く。作っておいたペンキと長靴を錬金布に載せるだけなんだけど。

「そうだよー。百聞は一見にしかず、ってことでいってみよー」
「みよー」

 僕の掛け声に合わせてくれたリリと微笑み合ってから、いざ錬金。ルトは僕たちのノリに呆れた顔をしてたけど、気にしない。

「【錬金スタート】!」

 演出を見流して、完成品に注目する。
 使ったペンキが赤色だったからか、カラーボール自体も赤色だった。見た目で色分けされてるなら、種類をたくさん作っても間違うことはないね。

「できたー」
「普通のカラーボールみたいだね」
「中にペンキが入ってるんだよな? つまりペイントボール。……銃にいれて、ペイント弾とかできねぇのか?」

 ルトの目がちょっとキラキラしてる気がする。もしかして、リアルでペイント弾を撃ち合う遊びが好きなのかな。

「残念なお知らせがあります」
「急に真顔でなんだよ?」

 ちょっと引いてるルトを見つめ、重々しい感じで言ってみる。
 リリが「普段感情豊かなウサギが無表情なの怖い……。普通のウサギはこれが正常のはずなのに……」と呟いてるのが聞こえたので、表情は作ることにした。僕、怖くないよー?

「作り笑顔がホラーなんだが」
「アイドルに向かって、笑顔がホラーはひどい」
「お前がアイドル認定をあっさり受け入れてんのもホラーだよ」
「どういうこと??」

 たくさんの人が僕を好きって状況を、アイドル認定で示してるんだよ? 喜ぶしか無いよね? 最初は困惑したけど、それは『教祖』って部分にびっくりしただけだもん。

「それより、残念なお知らせって?」

 僕が納得してないのに、ルトはあっさりと話を元に戻そうとする。思わず「むー」と唸っちゃった。でも、話が進まないし、僕が大人になって対応するしかないね。

「――すげぇ心外なこと考えられてる気がする」
「ルトの謎の察し力に、僕はホラーを味わってる」
「やっぱ変なこと考えてたんだな?」

 コノヤロー、と頭を拳でぐりぐりとされた。ふぇーん、ひどいー。……痛くないけど。

「モモ、ルト、飽きたよー。それより、残念なお知らせってあれでしょ? 銃ないよ、ってこと」
「リリがあっさりネタバレするぅ!」
「俺に泣きつくな」

 ルトの腕に抱きついたら、あっさりと振り払われちゃった。二人とも、僕の扱いが雑じゃないかな。もっと優しくして。

「――ってか、やっぱ銃ねぇのか」
「うん、私、聞いたことないよ。ルトもそうでしょ?」
「いや、モモのわけわかんねぇ行動の中で、銃が出てきてんじゃねぇかと思ってたんだけど」
「あぁ……」
「待って、リリはなんで納得したの?」

 リリとルトから生暖かい目を向けられてる気がするんだけど、どうしてだろう? 僕、そんなに変なことしてないよ。

「銃ねぇなら、いつか出てくることを期待しよう」
「そんなに銃を撃ちたいの?」
「だって、カッコいいだろ?」

 純真な目で同意を求められて、どうして否定できようか、いやできまい(反語)。

「……うん、銃ってカッコいいよね! いつか出てくるといいね!」
「モモの目が優しい。子どもを見てるみたい」
「なんかバカにされてる気がするんだけど、なんでだ?」

 首を傾げてるルトから目を逸らす。
 聞いた最初は意外な趣味だと思ったけど、普段のバトル好きな感じを思い出せば、さほど違和感がなかった。嬉々としながら銃を撃ちまくって、モンスターを倒してる姿が容易に想像できるもん。

「それより、カラーボール――じゃなくてペイントボール、作っていくよ」
「試す分も含めて、何個かあった方がいいもんね」

 リリから促されて、手際良くペンキをペイントボールにしていく。
 さすがに工房内で試すのは嫌だから、バトルフィールドに行かないとなぁ。いきなり小象タイニーエレフを相手に使うのは無謀?

 二人に相談してみたら、ルトから「いや、いけるだろ」って返事がきた。リリも頷いてる。

「私たち、何度も小象タイニーエレフと戦ってるしね」
「死に戻りはしねぇよ」
「わぁ、頼りになるー!」

 ということで、アイテムを作り終えたら、小象タイニーエレフで試すことになった。
 僕がまともに戦ったのは一回だけなんだけど、大丈夫かな。ルトとリリに任せればオッケー?

「――小象タイニーエレフといえば、僕の友だちが今がんばって挑んでるんだよ」
「友だち?」
「うん、希少種仲間なんだ」
「あぁ……狼と猫とネズミだっけ」
「ネズミじゃなくてチンチラだけど」

 訂正してから説明する。
 三人には羽の生えるアイテム――食べかけニンジンのケーキ――を提供してるけど、まだ転移スキルを獲得できてないんだよね。

「それじゃあ、どうせなら一緒に行ってみる? 私たちの戦い方を見たら、勉強になるかも」
「希少種の戦い方とは違う気がするけどな」
「でも、攻撃とか、回避とかのタイミングを知るのは役に立つと思うんだけど」
「あー、それは、まぁ……」

 リリの言葉に、ルトが納得した感じで頷いた。
 これは希少種会と一緒に小象タイニーエレフに挑む感じかな? すごく楽しそう!

「リリとルトがいいなら、三人に提案してみるよ!」

 にっこにこと笑って言ったら、リリが微笑ましげな表情で頷いた。ルトは「別に、モモの好きにすれば?」なんてクールに言ってるけど、希少種会に興味を持ってるのが隠せてない。

「『モモと愉快な仲間たち』の結成だね」

 リリが突然そんなことを言う。思わずきょとんとしちゃった。
 ルトは固まった後、リリの肩を掴んで詰め寄る。

「待て。まさかそれをパーティー名にするわけじゃねぇよな?!」
「え、良くない?」
「ぜっったいに、いやだ! 俺は愉快な仲間じゃねえ!」

 ルトが叫んだ。そんなに嫌なの? 僕はその名前でもいいけどなー。

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