もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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4章 錬金術士だよ?

148.悪気はない!

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 予定通り、バトルは僕の一投から始まる。
 警戒して後ずさっている小象タイニーエレフを見ながら、取り出したペイントボール(青)を振りかぶった。

「モモ選手、第一投!」

 ピッチャーになりきりながら勢いよく投げる。
 放物線を描いたペイントボールは、僕が狙ったところとは少し離れたところに飛んでいく。でも、小象タイニーエレフは大きいから、届きはするだろう――と思ったところで、想定外の事態が発生した。

 小象タイニーエレフが長い鼻を振り回し、風を巻き起こしたのだ。それによってペイントボールが流されていく。

「あー!」

 あえなく地面に落ちたペイントボール。地面が青く染まったから、期待した効果はそれなりにあるとわかったとはいえ、小象タイニーエレフに当たらなかったのは悔しい。

 思わずダンダンと足を踏み鳴らしてしまった。

「おい、モモ、油断してんなよ。【風盾ウィンドシールド】」
「えっ?」

 ルトが僕たちより一歩前に出たかと思うと、左腕を前に突き出してスキル名を唱えた。途端に、風でできた盾が全員を覆うように展開される。

 ――パオーン!

 小象タイニーエレフが鳴いた。それで思い出す。小象タイニーエレフは鳴いて音波攻撃を仕掛けてくることを。

「ルト、ぐっじょぶ!」
「対応できてなかったのお前だけな」

 呆れた感じの声で言われた。周りを見たら、リリも希少種会も、それぞれスキルを使って防御態勢をとっているのがわかった。……僕の経験不足が露呈しちゃったなぁ。

「でも、僕は防御系のスキル持ってないし……とりあえず継続回復するね! 【天からの祝福アンジュブレス】! 【天の祈りアンジュプレ】! ついでに『ど~んど~ん、いって~み~よ~♪』」

 パーティー全体に体力・魔力継続回復効果のあるスキルと、意気高揚効果のある歌唱スキルを使う。

「……相変わらず気が抜ける歌だな」
「でも、ちょっと集中力が上がった気がするよ」

 軽く睨んできたルトを見て、リリがフォローしてくれた。

 ――ダンッ!

 聞こえてきた音と振動に、小象タイニーエレフを注視する。その足元をムギとツッキーが駆け回って、地道に攻撃を繰り返していた。小象タイニーエレフはムギたちに【踏みつけ】攻撃をしていたが、避けられて苛立たしそうだ。

「一度攻撃しちゃうと、小象タイニーエレフは逃げるのをやめるんだったね」
「そうだぞ。だからさっさとアイテム使え。今はあいつらが気を逸らしてくれてんだし」

 そう言いながら、ルトが駆けて僕から離れ、飛ぶ斬撃を放つ。小象タイニーエレフの意識逸らしをルトもしてくれるみたい。

「じゃあ、私も行くね。ペイントボールの試用が終わったら、ボム系も使ってみるから」

 リリがにこりと笑って、ルトの後に続いて駆けていく。治癒士のリリは防御力が低めでバトルは魔法頼りだから、前衛のルトを盾にして動くって事前に決めてたんだ。

「うーん……ペイントボール、どうしよう……」

 相談する暇もなく、みんないなくなっちゃった。どうやって小象タイニーエレフに当てるかは、自分で考えろってことかな。

「風で飛ばされてるんですし、モモさんも風で後押ししてみては?」
「っ! びっくりした。ソウタいたんだね」

 パッと現れたソウタはステルススキルを使っていたらしい。

「これから攻撃食らう前に、ステルス攻撃してくるつもりですけど」

 そう答えながら、ソウタがパクパクとキャロットケーキを食べる。途端に羽が生えた。絹銀鼠シルクチンチラも羽が似合うね!

「そっか。がんばってー」

 タイミングを見計らって小象タイニーエレフに忍び寄るソウタを見送る。すぐに「【隠れ刃ステルスブレード】!」という声が聞こえてきた。その後吹き飛ばし攻撃を食らって、ステルス状態が強制解除されちゃったみたいだけど。

「――よし、僕もがんばる」

 時々やって来る音波攻撃を天からの祝福アンジュブレススキルで凌ぎ、ペイントボールを構える。同時に風魔術の準備をした。

「いっけー! 風の玉ウィンドボール!」

 ペイントボールを投げる。それに気づいた小象タイニーエレフが再び吹き飛ばそうとするのを見て、風魔術を発動。
 小象タイニーエレフに当たる前にペイントボールが風魔術で破裂しちゃう可能性があるけど――。

「……あっ!」
「うわっ……この、ノーコンがっ!」

 体の左側を青く染めたルトに勢いよく怒られた。リリが「あちゃー……」って顔で額を押さえてる。

 風魔術でペイントボールが破裂しなかったのは良かったんだけど、小象タイニーエレフの吹き飛ばし攻撃の影響で、ペイントボールの軌道が逸れちゃったんだ。それも、結構な勢いで。

 ――結果、ルトにぶつかった。まさか背後から来るとは思ってなかったのか、避けられなかったみたい。

「ごっめーん!」
「怖いにゃ! あたいには絶対に当てんじゃないにゃ!」
「後ろまで警戒しねぇといけないのかよ」
「モモさん……勘弁してください……」

 謝ってみたけど、希少種会の三人からも苦情が来ちゃった。僕だって、当てたくて当てたんじゃないんだよー!

「モモ、次は許さねぇぞ!」
「了解です!」

 今回ばかりはビシッと真剣に答える。
 とはいえ、どうやって小象タイニーエレフに当てるべきかな……。これはアイテム自体を改良すべき?

「うーん……あ、そうだ! 小象タイニーエレフにペイントボールが見えてるから的確に抵抗にあうんだし――【花舞】!」

 小象タイニーエレフの初討伐報酬でもらった攻撃スキルだ。雅で綺麗な演出とは裏腹に、刃のような花びらが切り裂く攻撃をしつつ、敵の視界を妨げるという凶悪な効果がある。

 ――パオッ!?

 小象タイニーエレフが動揺している。それを隙と判断したルトたちが一気に攻勢を強めた。
 それを見ながら、再び取り出したペイントボールを投げる。風魔術もおまけだ。

「いっけー!」

 気合いを込めた一投が、小象タイニーエレフの抵抗を受けることなく、ようやくその身を青く染めた。

「――完璧!」
「ペイントボールの使い方は掴めたな。ボスにも効果があるみたいだし」

 先ほどまでの怒りを鎮め、冷静にアイテムの使用結果を見定めているルトの声が聞こえてくる。

「ってことで、ペイントボールのお試しは完了だよー! 協力ありがとう。リリたちはボム系アイテム使ってみてね!」
「はーい! では、もふもふのみんなー、がんばろー!」

 リリの言葉に、ムギたちが待ってましたと言わんばかりにやる気いっぱいの声を上げた。

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