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6章 どたばた大騒動?
209.テイマーさん、こんにちは
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昨日は、温泉に入った後、ルトたちに屋敷内を案内してからログアウトした。
ルト、呆れたような疲れたような、不思議な顔してたなぁ。なんでだろう? 時間がなかったから、今度会った時に聞いてみよう。
そして、今日。
僕が向かったのはモンちゃんの家。
「こんにちはー、師匠! 講習受けに来たよ」
お弟子さんがいるはずだから、モンちゃん呼びは控えてみたよ。
「……いっつも元気いっぱいだな、お前」
「それが僕の長所!」
呆れた顔をしながらも、モンちゃんは「こっちだ」と手招きして案内してくれる。その先からは、ザワザワと声が聞こえてきた。
道場のような場所にたくさんの人がいる。でも、それ以上に目立つのは様々なモンスターの姿だ。
「もっふもふ~!」
「語彙力を捨てるな」
入口近くでおすわりしていた柴犬みたいなモンスターに駆け寄る。これ、抱きついて良いかな? 見るからにもふもふなんだけど。
タマモほどじゃないけど、僕も可愛くてもふもふしたもの好きなんだよ。
僕より二回りほど大きなモンスターをじぃっと見つめたら、『えっ、えっ?』と戸惑われた。僕と傍に座ってるテイマーらしき人に視線を交互に向けてる。
「シバちゃん、この子抱きつきたいみたいよ。伏せてあげたら?」
ふわふわのウェーブしたボブヘアを揺らしたテイマーさんが、雰囲気そのままに緩い笑みを浮かべて柴犬っぽいモンスターの頭を撫でた。
「こんにちはー。僕はモモ。テイマー初心者だよ!」
ビシッと手を挙げて挨拶したらテイマーさんがクスクスと笑う。
「はじめまして。私はリカエラよ。テイマーレベルは21。あなたの先輩と言ってもいいかしらね。この子は地犬のシバというの。仲良くしてくれると嬉しいわ」
「リカちゃんとシバちゃんかー。よろしくね!」
握手しよー、と手を差し出したら、リカちゃんの目が丸くなった。でもすぐに「……さすが師匠をモンちゃん呼びする子ね」と納得した感じで頷く。僕、結構知られてる?
優しく握手してくれるリカちゃんとは、なんか仲良くなれそうな感じ。
シバちゃんも伏せをして抱きつきやすくしてくれた。わーい、と首元に飛びつく。予想通りのもっふもふでむちむち。触り心地良すぎでは?
「シバちゃんの好きな食べ物はなに?」
「この子はビーフジャーキーが好きよ」
「なるほどー……じゃあ、お近づきの印にこれをどうぞ!」
おやつ用に作っていたビーフジャーキーをプレゼント。ほんとはルトにあげようと思ってたんだけど、忘れてアイテムボックスで眠ってたんだ。
シバちゃんはくるんと丸まった尻尾を嬉しそうに振りながら、リカちゃんを見上げた。
「ありがとう。シバちゃん、食べていいわよ」
「アンッ!」
リカちゃんの合図の後すぐに、シバちゃんがビーフジャーキーを頬張る。幸せそうで、見てる僕もニコニコしちゃう。
「モモはリカエラと仲良くなったようだな。――リカエラ、こいつはだいぶ問題児だから、先輩として面倒見てやってくれ」
「問題児の面倒を見るのはイヤですけど?」
「お前が心底もふもふモンスター好きなこと、知らないと思ってんのか」
「……わかりました。進化石一つで手を打ちましょう」
「おい、勝手に決めてんじゃねーよ」
半眼で呟くモンちゃんに、リカちゃんは綺麗な笑みを向けた。モンちゃんが目を逸らしたから、たぶん話はまとまったんだろう。
でもさ、僕が問題児扱いされてるのは、文句言っていい? リカちゃんともっと仲良くなれるのは嬉しいけど、面倒かけたいわけじゃないんだよ。
たくさんのテイマーとモンスターたちの間をスタスタと歩き、最前列に向かうモンちゃんを、ジトッとした目で見送った。
「今のは私と師匠のいつも通りのやり取りで、本気であなたの面倒を見るのがイヤだと言ったわけではないのよ?」
「それはなんとなく言い方でわかったから良いよー」
リカちゃんが少し申し訳なさそうにしていたので、僕も気分を切り替えてにこやかに答える。
「それなら良かった。なにか困ったことがあったら相談してちょうだい」
フレンドカードを差し出される。異世界の住人とフレンドになるのは久々かも。
「ありがとー。早速だけど、今日の講習はなにするの?」
シバちゃんを挟むように座りながら尋ねた。
「今日はモンスターの特殊スキル習得についての座学よ。実践じゃないのが残念ね」
「座学かぁ。でも、すごく興味のある内容だし、楽しみ!」
「そう? それなら良かったわね」
講習が始まるまでリカちゃんと話をする。
リカちゃんは王都出身で、モンちゃんに弟子入りするために第三の街まで来たんだって。元々魔術学院で魔術を学んでて、サブ職は魔術士なんだとか。
これ、魔術に関しての相談にも乗ってくれるかな?
たまにカミラ――はじまりの街で最初のバトルに付き合ってくれた友だち――から魔術について話を聞くことはあるんだけど、感覚派らしくて説明されても理解できないことが多いんだよねぇ。
「光と闇の魔術って、どうやって習得できるのかな?」
「魔術学院で学べばいいわよ。でも、今は王都との交通が制限されているから、難しいかしらね」
「制限?」
そんな話は初耳だ。
きょとんとしながらリカちゃんの顔を見上げたら、「あら?」と不思議そうな顔をされた。
「知らないの? 狂化モンスターたちの脅威度が上がったから、王都へ被害を出さないよう、王都は空間的封じがされたのよ。今は許可を得た人しか立ち入れないわ」
「空間的封じって、この街の結界みたいなもの?」
「そうね。人間も侵入できないほど強固な結界よ」
びっくり。そこまで危険視される状況になってたんだ?
固まってる僕を見て、リカちゃんが軽く肩をすくめる。そして、内緒話をするように僕の耳に顔を近づけた。
「――狂化モンスターを使ってなにか事件を起こそうと画策している人がいるらしいの。その犯人が見つかるまでは、王都の封じは解かれないと思うわよ」
「えー……それって、僕は王都に行けないってこと?」
「私でさえ帰れないのよ。あなたも無理ね」
体勢を戻したリカちゃんが、ふふっと笑って僕の鼻を指でツンと軽くつつく。
〈ストーリーミッション『狂化モンスター事件の黒幕を追え』が開始しました〉
突然のアナウンスだけど、正直驚きはなかった。だって、なんとなくこうなるってわかってたもん。
前回一人でストーリーをクリアしちゃった時に拗ねられたから、今回は絶対ルトたちを巻き込んでやるー!
ルト、呆れたような疲れたような、不思議な顔してたなぁ。なんでだろう? 時間がなかったから、今度会った時に聞いてみよう。
そして、今日。
僕が向かったのはモンちゃんの家。
「こんにちはー、師匠! 講習受けに来たよ」
お弟子さんがいるはずだから、モンちゃん呼びは控えてみたよ。
「……いっつも元気いっぱいだな、お前」
「それが僕の長所!」
呆れた顔をしながらも、モンちゃんは「こっちだ」と手招きして案内してくれる。その先からは、ザワザワと声が聞こえてきた。
道場のような場所にたくさんの人がいる。でも、それ以上に目立つのは様々なモンスターの姿だ。
「もっふもふ~!」
「語彙力を捨てるな」
入口近くでおすわりしていた柴犬みたいなモンスターに駆け寄る。これ、抱きついて良いかな? 見るからにもふもふなんだけど。
タマモほどじゃないけど、僕も可愛くてもふもふしたもの好きなんだよ。
僕より二回りほど大きなモンスターをじぃっと見つめたら、『えっ、えっ?』と戸惑われた。僕と傍に座ってるテイマーらしき人に視線を交互に向けてる。
「シバちゃん、この子抱きつきたいみたいよ。伏せてあげたら?」
ふわふわのウェーブしたボブヘアを揺らしたテイマーさんが、雰囲気そのままに緩い笑みを浮かべて柴犬っぽいモンスターの頭を撫でた。
「こんにちはー。僕はモモ。テイマー初心者だよ!」
ビシッと手を挙げて挨拶したらテイマーさんがクスクスと笑う。
「はじめまして。私はリカエラよ。テイマーレベルは21。あなたの先輩と言ってもいいかしらね。この子は地犬のシバというの。仲良くしてくれると嬉しいわ」
「リカちゃんとシバちゃんかー。よろしくね!」
握手しよー、と手を差し出したら、リカちゃんの目が丸くなった。でもすぐに「……さすが師匠をモンちゃん呼びする子ね」と納得した感じで頷く。僕、結構知られてる?
優しく握手してくれるリカちゃんとは、なんか仲良くなれそうな感じ。
シバちゃんも伏せをして抱きつきやすくしてくれた。わーい、と首元に飛びつく。予想通りのもっふもふでむちむち。触り心地良すぎでは?
「シバちゃんの好きな食べ物はなに?」
「この子はビーフジャーキーが好きよ」
「なるほどー……じゃあ、お近づきの印にこれをどうぞ!」
おやつ用に作っていたビーフジャーキーをプレゼント。ほんとはルトにあげようと思ってたんだけど、忘れてアイテムボックスで眠ってたんだ。
シバちゃんはくるんと丸まった尻尾を嬉しそうに振りながら、リカちゃんを見上げた。
「ありがとう。シバちゃん、食べていいわよ」
「アンッ!」
リカちゃんの合図の後すぐに、シバちゃんがビーフジャーキーを頬張る。幸せそうで、見てる僕もニコニコしちゃう。
「モモはリカエラと仲良くなったようだな。――リカエラ、こいつはだいぶ問題児だから、先輩として面倒見てやってくれ」
「問題児の面倒を見るのはイヤですけど?」
「お前が心底もふもふモンスター好きなこと、知らないと思ってんのか」
「……わかりました。進化石一つで手を打ちましょう」
「おい、勝手に決めてんじゃねーよ」
半眼で呟くモンちゃんに、リカちゃんは綺麗な笑みを向けた。モンちゃんが目を逸らしたから、たぶん話はまとまったんだろう。
でもさ、僕が問題児扱いされてるのは、文句言っていい? リカちゃんともっと仲良くなれるのは嬉しいけど、面倒かけたいわけじゃないんだよ。
たくさんのテイマーとモンスターたちの間をスタスタと歩き、最前列に向かうモンちゃんを、ジトッとした目で見送った。
「今のは私と師匠のいつも通りのやり取りで、本気であなたの面倒を見るのがイヤだと言ったわけではないのよ?」
「それはなんとなく言い方でわかったから良いよー」
リカちゃんが少し申し訳なさそうにしていたので、僕も気分を切り替えてにこやかに答える。
「それなら良かった。なにか困ったことがあったら相談してちょうだい」
フレンドカードを差し出される。異世界の住人とフレンドになるのは久々かも。
「ありがとー。早速だけど、今日の講習はなにするの?」
シバちゃんを挟むように座りながら尋ねた。
「今日はモンスターの特殊スキル習得についての座学よ。実践じゃないのが残念ね」
「座学かぁ。でも、すごく興味のある内容だし、楽しみ!」
「そう? それなら良かったわね」
講習が始まるまでリカちゃんと話をする。
リカちゃんは王都出身で、モンちゃんに弟子入りするために第三の街まで来たんだって。元々魔術学院で魔術を学んでて、サブ職は魔術士なんだとか。
これ、魔術に関しての相談にも乗ってくれるかな?
たまにカミラ――はじまりの街で最初のバトルに付き合ってくれた友だち――から魔術について話を聞くことはあるんだけど、感覚派らしくて説明されても理解できないことが多いんだよねぇ。
「光と闇の魔術って、どうやって習得できるのかな?」
「魔術学院で学べばいいわよ。でも、今は王都との交通が制限されているから、難しいかしらね」
「制限?」
そんな話は初耳だ。
きょとんとしながらリカちゃんの顔を見上げたら、「あら?」と不思議そうな顔をされた。
「知らないの? 狂化モンスターたちの脅威度が上がったから、王都へ被害を出さないよう、王都は空間的封じがされたのよ。今は許可を得た人しか立ち入れないわ」
「空間的封じって、この街の結界みたいなもの?」
「そうね。人間も侵入できないほど強固な結界よ」
びっくり。そこまで危険視される状況になってたんだ?
固まってる僕を見て、リカちゃんが軽く肩をすくめる。そして、内緒話をするように僕の耳に顔を近づけた。
「――狂化モンスターを使ってなにか事件を起こそうと画策している人がいるらしいの。その犯人が見つかるまでは、王都の封じは解かれないと思うわよ」
「えー……それって、僕は王都に行けないってこと?」
「私でさえ帰れないのよ。あなたも無理ね」
体勢を戻したリカちゃんが、ふふっと笑って僕の鼻を指でツンと軽くつつく。
〈ストーリーミッション『狂化モンスター事件の黒幕を追え』が開始しました〉
突然のアナウンスだけど、正直驚きはなかった。だって、なんとなくこうなるってわかってたもん。
前回一人でストーリーをクリアしちゃった時に拗ねられたから、今回は絶対ルトたちを巻き込んでやるー!
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