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6章 どたばた大騒動?
227.レイドボスとの戦い方は?
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巨大なモンスター凶獣に向けて、数多の魔術が放たれ、剣術や体術がダメージを加える。
凶獣は歩みを止めないまま、時には腕や足を振り、また土魔術を使って攻撃してきた。
「う~ん……攻撃の種類は少ないけど、体力と攻撃力、防御力が高めな感じ?」
僕もみんなと一緒に魔術を使って攻撃しながら、凶獣を観察した。
エリアボスみたいな厄介さは感じない。時間をかければ倒せると思う。でも、それが問題なんだ。
「――タイムアタック系ボスって、こんな感じかぁ」
風の槍を放ちながら、ふむふむと頷く。
時間制限があるっていうのが、想像していた以上に対策が難しい。というか、ひたすら高威力のスキルを使うしかない状況だ。
これ、攻撃する人数か、一撃のダメージ量を増やせるよう、他のエリアを担当している人とも話し合った方がいいんじゃないかな。今のところレイドボスが出てるのは東エリアだけみたいだし、援助を頼んでも良さそう。
「そもそも、なんでここしかボスが出てないんだろう?」
ふと浮かんだ疑問を呟くと、傍で魔術を放っていたミレイが視線を向けてきた。
ミレイは以前一緒に幻桃探しをしてくれたプレイヤーだ。高威力の雷魔術が使えるから、このレイドイベントでもすごく活躍してる。
「……事前の討伐率が影響してる気がします」
「どういうこと?」
ちょうど大技がすべてクールタイムが必要になっちゃったから小休止。僕はスラリンたちに指示を飛ばし、ミレイは魔力回復薬を飲みながら話を続ける。
「ここは、事前に討伐率が100%になっていたので、おそらくボス前に出てくるモンスターの数が少なかったんだと思うんです」
「そうだね」
「加えて、私たちの戦力は結構高いですし、モモさんのアイテムの影響もあって、モンスターの討伐が手際よく進みました」
「ボムで吹っ飛ばすの、めちゃくちゃ爽快だった!」
頷きながら、さっきの光景を思い出してサムズアップする。ミレイが控えめに微笑んで「そうですね」と同意してくれた。
「ボスが出現するきっかけは、ボス以外のモンスターの討伐率が一定に達した時だと思うんです」
「なるほど? つまり、東エリアは元々ボスが出現する討伐率に到達しやすくなってて、さらに効率よく討伐が進んだから、他のエリアよりすごく早くボスが出現したってこと?」
「はい。私の予想ですけど……」
ミレイは自信なさそうに微笑んでるけど、僕はそれが正解な気がする。
そうなると、西と北のエリアにボスが出現するのには、まだ時間の余裕があるんだろうな。
「そういえば、レイドイベントっていつまで続くのかな?」
開始時間のカウントダウンはあったけど、終了する時間は一切告知されてない。
予定が合わなくて参加できなさそうと嘆いているプレイヤーが結構いて、運営に詳しいスケジュールを出してと頼んだらしい。でも、返答は『レイドイベント開催期間については一切お答えできません』だったんだって。
僕だって、ぶっ続けで何時間もゲームしてられるわけじゃないし、途中離脱になったら残念だ。いつぐらいに終わるのかって予想くらいはしておきたい。
「……すべてのレイドボスを倒すまでじゃないですか?」
「犯人確保は関係ない?」
「そちらはストーリーが主で、レイドイベントはきっかけにすぎないと思います」
「あー、そうだねぇ」
ミレイは頭がいいなぁ。
今回のこれは、ストーリーミッションとレイドイベントが上手く絡み合ってるから、つい忘れちゃうけど、一応別々のミッションなんだよね。
「――あれ? それなら、今回領主さんたちが襲撃されたとして、その際に犯人を確保できなかったらどうなるんだろう?」
「また、他の事件が起きるのでは?」
返ってきた言葉に思わず沈黙する。
今回で犯人を捕まえられなかったら、その分、王都開放が遠のくってこと?
「え、やだ! 僕、早く王都に行ってみたい!」
反射的に素直な願望が漏れちゃった。でも、こう思ってるのは僕だけじゃないよね。周囲で反応を示した人が多かったし。
「モモさんが早く王都に行きたいって!」
「モモさんの望みは、私たちの望み!」
「というか、それがなくても、普通に王都には行きたい!」
「つまり、ここで王都開放を成し遂げるということは、モモさんの願いを叶えて、私たちの貢ぎ欲を満たす最良の結果ってこと!」
「今こそ、もふもふ教の力を見せつける時!」
「もふもふ教の力を合わせて、モモさんに勝利を捧げましょう!」
「王都開放するぞー! モモさんの望みを叶えるぞー!」
……いろんなところから声が上がる。やる気があるのは良いことです。ルトが頭痛そうな顔をしてるのが見えて、ちょっぴり目を逸らしたい気分になったけど。
「王都開放するためには犯人逮捕が必要ですよ!」
タマモが言うと、「それなら領主様のところに行かなくちゃ」と話し合う声が聞こえてくる。
「街防衛も完璧にしたいよ」
僕はつい呟いていた。ここでレイドボスより犯人逮捕を優先されたら、街が危なくなるかもしれない。まぁ、みんなの熱意を感じてるから、そんな危惧は不要な気もするけど。
「もちろんです。聖地を守るのも、私たちもふもふ教の使命ですから!」
キリッとした顔でタマモが言うと、同じような表情で頷いている人が多数いた。聖地という言葉に違うルビがついていた気がするのは、知らんぷりした方がいいよね?
「それなら、今までと同じで、ひたすら攻撃を加えるしかねぇだろ。早くボスを倒して、それから領主のとこに行けばいい」
口を挟んだルトに、タマモが「いえ」と微笑む。
「私たちには最強の攻撃があるので、それを使いましょう」
「なにそれ?」
タマモの自信に満ちた表情を見て、思わずきょとんとする。事前の話し合いではそんな攻撃のことを一言も聞いてないんだけど。
僕以外にもピンときている人はいないようで、不思議そうな視線がタマモに集まった。
その視線を受け、タマモは強気な笑みを浮かべる。
「作戦名は『モモさんは神!』ですよ」
「それ、タマモたちがよく言ってる言葉じゃなかった?」
「聖句ではありますが、それだけじゃないんです」
「聖句として認定されてるってだけでビックリだよ」
タマモはなにをするつもりなんだろう?
凶獣は歩みを止めないまま、時には腕や足を振り、また土魔術を使って攻撃してきた。
「う~ん……攻撃の種類は少ないけど、体力と攻撃力、防御力が高めな感じ?」
僕もみんなと一緒に魔術を使って攻撃しながら、凶獣を観察した。
エリアボスみたいな厄介さは感じない。時間をかければ倒せると思う。でも、それが問題なんだ。
「――タイムアタック系ボスって、こんな感じかぁ」
風の槍を放ちながら、ふむふむと頷く。
時間制限があるっていうのが、想像していた以上に対策が難しい。というか、ひたすら高威力のスキルを使うしかない状況だ。
これ、攻撃する人数か、一撃のダメージ量を増やせるよう、他のエリアを担当している人とも話し合った方がいいんじゃないかな。今のところレイドボスが出てるのは東エリアだけみたいだし、援助を頼んでも良さそう。
「そもそも、なんでここしかボスが出てないんだろう?」
ふと浮かんだ疑問を呟くと、傍で魔術を放っていたミレイが視線を向けてきた。
ミレイは以前一緒に幻桃探しをしてくれたプレイヤーだ。高威力の雷魔術が使えるから、このレイドイベントでもすごく活躍してる。
「……事前の討伐率が影響してる気がします」
「どういうこと?」
ちょうど大技がすべてクールタイムが必要になっちゃったから小休止。僕はスラリンたちに指示を飛ばし、ミレイは魔力回復薬を飲みながら話を続ける。
「ここは、事前に討伐率が100%になっていたので、おそらくボス前に出てくるモンスターの数が少なかったんだと思うんです」
「そうだね」
「加えて、私たちの戦力は結構高いですし、モモさんのアイテムの影響もあって、モンスターの討伐が手際よく進みました」
「ボムで吹っ飛ばすの、めちゃくちゃ爽快だった!」
頷きながら、さっきの光景を思い出してサムズアップする。ミレイが控えめに微笑んで「そうですね」と同意してくれた。
「ボスが出現するきっかけは、ボス以外のモンスターの討伐率が一定に達した時だと思うんです」
「なるほど? つまり、東エリアは元々ボスが出現する討伐率に到達しやすくなってて、さらに効率よく討伐が進んだから、他のエリアよりすごく早くボスが出現したってこと?」
「はい。私の予想ですけど……」
ミレイは自信なさそうに微笑んでるけど、僕はそれが正解な気がする。
そうなると、西と北のエリアにボスが出現するのには、まだ時間の余裕があるんだろうな。
「そういえば、レイドイベントっていつまで続くのかな?」
開始時間のカウントダウンはあったけど、終了する時間は一切告知されてない。
予定が合わなくて参加できなさそうと嘆いているプレイヤーが結構いて、運営に詳しいスケジュールを出してと頼んだらしい。でも、返答は『レイドイベント開催期間については一切お答えできません』だったんだって。
僕だって、ぶっ続けで何時間もゲームしてられるわけじゃないし、途中離脱になったら残念だ。いつぐらいに終わるのかって予想くらいはしておきたい。
「……すべてのレイドボスを倒すまでじゃないですか?」
「犯人確保は関係ない?」
「そちらはストーリーが主で、レイドイベントはきっかけにすぎないと思います」
「あー、そうだねぇ」
ミレイは頭がいいなぁ。
今回のこれは、ストーリーミッションとレイドイベントが上手く絡み合ってるから、つい忘れちゃうけど、一応別々のミッションなんだよね。
「――あれ? それなら、今回領主さんたちが襲撃されたとして、その際に犯人を確保できなかったらどうなるんだろう?」
「また、他の事件が起きるのでは?」
返ってきた言葉に思わず沈黙する。
今回で犯人を捕まえられなかったら、その分、王都開放が遠のくってこと?
「え、やだ! 僕、早く王都に行ってみたい!」
反射的に素直な願望が漏れちゃった。でも、こう思ってるのは僕だけじゃないよね。周囲で反応を示した人が多かったし。
「モモさんが早く王都に行きたいって!」
「モモさんの望みは、私たちの望み!」
「というか、それがなくても、普通に王都には行きたい!」
「つまり、ここで王都開放を成し遂げるということは、モモさんの願いを叶えて、私たちの貢ぎ欲を満たす最良の結果ってこと!」
「今こそ、もふもふ教の力を見せつける時!」
「もふもふ教の力を合わせて、モモさんに勝利を捧げましょう!」
「王都開放するぞー! モモさんの望みを叶えるぞー!」
……いろんなところから声が上がる。やる気があるのは良いことです。ルトが頭痛そうな顔をしてるのが見えて、ちょっぴり目を逸らしたい気分になったけど。
「王都開放するためには犯人逮捕が必要ですよ!」
タマモが言うと、「それなら領主様のところに行かなくちゃ」と話し合う声が聞こえてくる。
「街防衛も完璧にしたいよ」
僕はつい呟いていた。ここでレイドボスより犯人逮捕を優先されたら、街が危なくなるかもしれない。まぁ、みんなの熱意を感じてるから、そんな危惧は不要な気もするけど。
「もちろんです。聖地を守るのも、私たちもふもふ教の使命ですから!」
キリッとした顔でタマモが言うと、同じような表情で頷いている人が多数いた。聖地という言葉に違うルビがついていた気がするのは、知らんぷりした方がいいよね?
「それなら、今までと同じで、ひたすら攻撃を加えるしかねぇだろ。早くボスを倒して、それから領主のとこに行けばいい」
口を挟んだルトに、タマモが「いえ」と微笑む。
「私たちには最強の攻撃があるので、それを使いましょう」
「なにそれ?」
タマモの自信に満ちた表情を見て、思わずきょとんとする。事前の話し合いではそんな攻撃のことを一言も聞いてないんだけど。
僕以外にもピンときている人はいないようで、不思議そうな視線がタマモに集まった。
その視線を受け、タマモは強気な笑みを浮かべる。
「作戦名は『モモさんは神!』ですよ」
「それ、タマモたちがよく言ってる言葉じゃなかった?」
「聖句ではありますが、それだけじゃないんです」
「聖句として認定されてるってだけでビックリだよ」
タマモはなにをするつもりなんだろう?
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