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6章 どたばた大騒動?
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称号【爆弾魔】を恐る恐る確認してみる。
「効果は『ボムの威力が10%上昇する』かぁ。それなら、まぁいっか!」
まるで犯罪者のような称号はどうかと思うけど、効果がいいので受け入れることにする。そもそも拒否するシステムはないんだけど。
「なに言ってんだ?」
「新しい称号の話ー。僕、爆弾魔なんだって」
「……教祖で神でアイドルで、加えて爆弾魔か。お前、どうなりたいんだ?」
「自由に生きたい」
「お前以上に自由なヤツはいねぇよ」
そうかな?
呆れた表情のルトに首を傾げながら、腹ごしらえをする。
レイドイベントに備えて、食べかけアイテムを使った料理(空腹度減少速度低下の効果がある)をみんなに配ってるけど、どうしたってお腹は空く。ずっと戦闘ばかりしていたら疲れるし、休憩は必要だ。
こういう時は、好きなものを食べるべし。というわけで、桃のフルーツサンドをパクッと頬張る。
「うまうま」
「やっぱマイペースだよな……」
半眼のルトにハンバーガーを差し出すと、嬉しそうに食べ始めた。僕はルトの胃袋を掴んでるのです、ふふん!
僕たち以外にも、食事休憩や体力・魔力回復をしている人がたくさんいる。モンスターは一時遠ざけただけだから、束の間の休息だね。
「モモさん! 全体回復などのスキルはまだ使えますか?」
「使えるよ~」
駆け寄ってきたタマモに答えてから、スキルをかけ直す。僕のスキル、パーティだけじゃなくてクランにも効くようになってた。だから、もふもふ教のみんなに効果を発揮できるんだ。
歌唱スキルでみんなの集中力や回復効果を上げると、いろんなところから「あー、モモさんはやっぱり神!」という声が聞こえてくる。
みんなのやる気に繋がるなら、いくらでも神として崇めていいよ。
「モモのそれ、反則だにゃ」
「えー、種族特典だよ。みんなもあるでしょ?」
「あたいのは、精々パーティに効く程度にゃ」
「僕はソロ効果のスキルしか持ってないですよ」
近寄ってきたムギとソウタに、「そういうものなんだねぇ」と頷く。
希少種の中でも、天兎は特殊なタイプなのかも。補助スキル系が多いから、サポーターとしての能力が高いんだろうな。
「回復したし、俺は前線戻るぜ」
「え、もう?」
ツッキーに言われてバトルフィールドを見ると、少数のプレイヤーが襲ってくるモンスターと対峙していた。そろそろモンスターの第二陣がやって来そうな雰囲気だ。
その様子を眺めていると、無意識の内に「うーん」と声が漏れる。
事前の話し合いでは、各エリアで防衛が成功した後、他のエリアの援助や城での犯人逮捕協力に赴くことになっている。
そろそろ城で騒ぎが起きてもおかしくないし、さっさとこのエリアの敵を一掃したい。
「東だけ討伐率100%だったから、すぐに他へ援助に行けると思ってたんだけどなぁ」
「予定は未定だろ。少なくとも、他のエリアはここより苦戦してるはずだ。でも、どこも緊急援助要請は出してねぇし、問題はないはず。城の方で備えてるヤツらからも連絡はねぇし、まだ大丈夫だろ」
ルトが肩をすくめながら言う。
城の方には、プレイヤーの中でも特に精鋭と呼ばれる人たちが、犯人の訪れに備えて待っている。
だから、僕たちが急いで援助に向かう必要はないと思うんだけど、なんとなくソワソワして気になるんだよねぇ。
「……城に向かった方がいい気がする」
ポツリと呟くと、話していたルトだけでなく、周囲に集っていたリリやタマモ、ムギたちからも視線が向けられた。
「モモさんの勘ですか?」
「うーん……そんな感じ?」
タマモに聞かれても明確な答えは返せなくて、苦笑しちゃった。勘だけでみんなに迷惑かけちゃったらダメだよね。
話し合いを始めるタマモたちを横目に、次第に数を増やし始めた敵を眺める。休憩を終えたプレイヤーや異世界の住人で、今のところは対応可能のようだ。
僕もいつまでも休んでいる場合じゃない――
「――あれ?」
「どうしました?」
もう見慣れた敵モンスターの背後に異様なモノが見えて、思わず間抜けな声を上げてしまった。
すぐさま反応してくれたタマモに、フィールドの方を指し示す。
「あの巨大な影、なんだろう?」
「は……あれは、もしかして、レイドボス……?」
黒いモヤのようなもので覆われた、小象より大きなモンスターが遠くにいた。シルエットはゴリラに近いかな?
〈〈東の鉱山エリアにレイドボス凶獣が出現しました。三十分後に外壁に到達し、破壊を開始します〉〉
ワールドアナウンスだ!
これって、凶獣が街の外壁に到達するまでに倒せないと、街防衛100%になれないってことだろうな。
「タイムアタックですね」
「楽しくなってきたじゃん」
好戦的な眼差しのタマモとルトの傍で、リリが「えー、あれ超強そう……」と疲れた顔をしてる。
凶獣には鑑定が効かなくて、詳細が確認できない。でも、すぐさまプレイヤーが攻撃を仕掛けても全然足を止めないから、三十分で倒せないと外壁まで来るのは確実だ。
「ダメージは負ってるね」
「微々たるもんだけどにゃ」
凶獣の体力バーは、僅かずつ減っている。休憩中だった人たちが戦闘に復帰しても、与えられるダメージ量は多いとは言えない。
「これ、三十分で倒しきれる?」
ルトとタマモが飛び出していくのを見送って、リリたちに話しかける。
「たぶん、ギリギリいける?」
「事前に討伐率100%を達成してたおかげか、もう雑魚モンスはほとんどいないし、いける気がするにゃ」
「そうですね。なんだかんだ、もふもふ教には強いプレイヤーが揃ってますし、問題ないと思いますよ」
リリとムギ、ソウタの判断に「そっか」と頷く。僕もなんだかいける気がしてきた。
「あいつを倒したら、東エリアの防衛成功ってことだよね? それじゃあ、僕たちもがんばろっか!」
僕が宣言すると、それぞれから気合いの入った反応が返ってきた。
正直、ここでイグニスさんを呼んでもいいんじゃないかなって思ってたんだけど、そんなことをしたら、楽しそうに戦ってるルトたちに恨まれそう。
ギリギリまで僕たちの力を合わせてがんばってみよう。
「効果は『ボムの威力が10%上昇する』かぁ。それなら、まぁいっか!」
まるで犯罪者のような称号はどうかと思うけど、効果がいいので受け入れることにする。そもそも拒否するシステムはないんだけど。
「なに言ってんだ?」
「新しい称号の話ー。僕、爆弾魔なんだって」
「……教祖で神でアイドルで、加えて爆弾魔か。お前、どうなりたいんだ?」
「自由に生きたい」
「お前以上に自由なヤツはいねぇよ」
そうかな?
呆れた表情のルトに首を傾げながら、腹ごしらえをする。
レイドイベントに備えて、食べかけアイテムを使った料理(空腹度減少速度低下の効果がある)をみんなに配ってるけど、どうしたってお腹は空く。ずっと戦闘ばかりしていたら疲れるし、休憩は必要だ。
こういう時は、好きなものを食べるべし。というわけで、桃のフルーツサンドをパクッと頬張る。
「うまうま」
「やっぱマイペースだよな……」
半眼のルトにハンバーガーを差し出すと、嬉しそうに食べ始めた。僕はルトの胃袋を掴んでるのです、ふふん!
僕たち以外にも、食事休憩や体力・魔力回復をしている人がたくさんいる。モンスターは一時遠ざけただけだから、束の間の休息だね。
「モモさん! 全体回復などのスキルはまだ使えますか?」
「使えるよ~」
駆け寄ってきたタマモに答えてから、スキルをかけ直す。僕のスキル、パーティだけじゃなくてクランにも効くようになってた。だから、もふもふ教のみんなに効果を発揮できるんだ。
歌唱スキルでみんなの集中力や回復効果を上げると、いろんなところから「あー、モモさんはやっぱり神!」という声が聞こえてくる。
みんなのやる気に繋がるなら、いくらでも神として崇めていいよ。
「モモのそれ、反則だにゃ」
「えー、種族特典だよ。みんなもあるでしょ?」
「あたいのは、精々パーティに効く程度にゃ」
「僕はソロ効果のスキルしか持ってないですよ」
近寄ってきたムギとソウタに、「そういうものなんだねぇ」と頷く。
希少種の中でも、天兎は特殊なタイプなのかも。補助スキル系が多いから、サポーターとしての能力が高いんだろうな。
「回復したし、俺は前線戻るぜ」
「え、もう?」
ツッキーに言われてバトルフィールドを見ると、少数のプレイヤーが襲ってくるモンスターと対峙していた。そろそろモンスターの第二陣がやって来そうな雰囲気だ。
その様子を眺めていると、無意識の内に「うーん」と声が漏れる。
事前の話し合いでは、各エリアで防衛が成功した後、他のエリアの援助や城での犯人逮捕協力に赴くことになっている。
そろそろ城で騒ぎが起きてもおかしくないし、さっさとこのエリアの敵を一掃したい。
「東だけ討伐率100%だったから、すぐに他へ援助に行けると思ってたんだけどなぁ」
「予定は未定だろ。少なくとも、他のエリアはここより苦戦してるはずだ。でも、どこも緊急援助要請は出してねぇし、問題はないはず。城の方で備えてるヤツらからも連絡はねぇし、まだ大丈夫だろ」
ルトが肩をすくめながら言う。
城の方には、プレイヤーの中でも特に精鋭と呼ばれる人たちが、犯人の訪れに備えて待っている。
だから、僕たちが急いで援助に向かう必要はないと思うんだけど、なんとなくソワソワして気になるんだよねぇ。
「……城に向かった方がいい気がする」
ポツリと呟くと、話していたルトだけでなく、周囲に集っていたリリやタマモ、ムギたちからも視線が向けられた。
「モモさんの勘ですか?」
「うーん……そんな感じ?」
タマモに聞かれても明確な答えは返せなくて、苦笑しちゃった。勘だけでみんなに迷惑かけちゃったらダメだよね。
話し合いを始めるタマモたちを横目に、次第に数を増やし始めた敵を眺める。休憩を終えたプレイヤーや異世界の住人で、今のところは対応可能のようだ。
僕もいつまでも休んでいる場合じゃない――
「――あれ?」
「どうしました?」
もう見慣れた敵モンスターの背後に異様なモノが見えて、思わず間抜けな声を上げてしまった。
すぐさま反応してくれたタマモに、フィールドの方を指し示す。
「あの巨大な影、なんだろう?」
「は……あれは、もしかして、レイドボス……?」
黒いモヤのようなもので覆われた、小象より大きなモンスターが遠くにいた。シルエットはゴリラに近いかな?
〈〈東の鉱山エリアにレイドボス凶獣が出現しました。三十分後に外壁に到達し、破壊を開始します〉〉
ワールドアナウンスだ!
これって、凶獣が街の外壁に到達するまでに倒せないと、街防衛100%になれないってことだろうな。
「タイムアタックですね」
「楽しくなってきたじゃん」
好戦的な眼差しのタマモとルトの傍で、リリが「えー、あれ超強そう……」と疲れた顔をしてる。
凶獣には鑑定が効かなくて、詳細が確認できない。でも、すぐさまプレイヤーが攻撃を仕掛けても全然足を止めないから、三十分で倒せないと外壁まで来るのは確実だ。
「ダメージは負ってるね」
「微々たるもんだけどにゃ」
凶獣の体力バーは、僅かずつ減っている。休憩中だった人たちが戦闘に復帰しても、与えられるダメージ量は多いとは言えない。
「これ、三十分で倒しきれる?」
ルトとタマモが飛び出していくのを見送って、リリたちに話しかける。
「たぶん、ギリギリいける?」
「事前に討伐率100%を達成してたおかげか、もう雑魚モンスはほとんどいないし、いける気がするにゃ」
「そうですね。なんだかんだ、もふもふ教には強いプレイヤーが揃ってますし、問題ないと思いますよ」
リリとムギ、ソウタの判断に「そっか」と頷く。僕もなんだかいける気がしてきた。
「あいつを倒したら、東エリアの防衛成功ってことだよね? それじゃあ、僕たちもがんばろっか!」
僕が宣言すると、それぞれから気合いの入った反応が返ってきた。
正直、ここでイグニスさんを呼んでもいいんじゃないかなって思ってたんだけど、そんなことをしたら、楽しそうに戦ってるルトたちに恨まれそう。
ギリギリまで僕たちの力を合わせてがんばってみよう。
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