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7章 世界が広がっていくよ
242.王都へゴーゴー
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礼拝堂に付属した小部屋の床には大きな魔方陣が描かれてて、そこから西のキーリ湖にあるセーフティエリアまで一気に転移できた。
そして今、僕たちはキーリ湖の先にある草原地帯を進んでる。遠くには王都の姿が見える。
王都を囲む高い壁と、それでも隠しきれないほど高い塔がたくさんあるようだ。王都を探索するのが楽しみだなぁ。
「――お、ここが異点やな」
「おっしゃ、今度は俺が壊すぞ!」
ユリがなにもないように見える場所を指す。この仕草はこれで三度目だ。
一度目は、発見した異点をユリが壊して見せた。二度目は、タマモが指示を受けながら壊した。どうやら、異点を発見できる人は限られているけど、壊すのは誰でもできるらしい。
三度目の今回はツッキーが立候補したから任せることにする。
鋭い爪を振りかぶったツッキーは、ユリが指したところを目掛けて、勢いよく攻撃を加えた。途端にシャボン玉が割れるような感覚がする。無事、結界を突破できたようだ。
結界を無効化できる時間は一分に満たないそうなので、さっさと先へ進む。
「あと何回結界を突破するの?」
「二回やな」
タマモが拠点として設定したセーフティエリアから出発して、まだ三十分も経ってない。それで王都までの道のりの半分を超えられたというのは快挙のはずだ。それはすべてユリのおかげ。
「僕も罠探知スキルを覚えようかなー」
「いいと思うで。結構役に立つしな。けど、モモの場合、罠探知できるモンスターを見つけてテイムした方が楽なんちゃう?」
周囲を見渡し、異点を探しながら歩くユリについていきながら、真剣に考え込んだ。
罠探知できる仲間がいたら、確かにありがたいかも。今後ダンジョンとかでも必要になるかもしれないし。
「前向きに検討します」
「ふふ、がんばってな。できれば、もふもふしてる子を頼むわ」
「そう言われたところで、希望を叶えられるかはわからないなー」
まずはギルドの図書室でモンスターの情報を集めるところから始めないと。第三の街の司書ライリーさんに協力してもらおう。モンちゃんに聞いてみてもいいかも。
そんなことを考えながら、時折襲ってくるモンスターを危うげなく倒していく。
タマモもユリもレベルに相応しく強いし、希少種会のみんなも結構鍛えてるみたいで、このフィールド内の敵は問題なさそうだ。
僕は一撃くらいしか与える隙がなく、他のみんなに倒されていくのを眺めることになってる。
「あ、そこが異点や」
「次はあたいがするにゃ」
立候補したムギが、すぐさま異点を攻撃する。
壊す結界はあと一枚。王都はもう近くに見えていた。
「ワクワクするねー」
「油断はダメですよ?」
こそっと話しかけたら、ソウタに微笑ましそうに注意された。そう言ってるソウタも、期待に満ちた目を王都に向けてる。
「油断はしてないよ。でも、楽しみなのはしかたないもん。王都に着いたらなに食べよっか? お腹空いたよねー。これまでの街みたいに屋台があるかなー?」
ユリからの事前情報はあまり耳に入れないようにしてる。自分の目で見て、探検して回る方が絶対楽しいから。
「モモさんが一番興味あるのは、食ですか?」
「他にもあるよ? 魔術学院とか、王城とか」
言ってから改めて気づく。
王都って、王様がいるんだよね。どんな人なんだろう。会うことは早々ないだろうけど、王女様とかいるのかな?
第二の街の領主家のご令嬢であるベラちゃんを脳裏に思い浮かべる。
もし王女様に会うことがあるとして、ベラちゃんのように気さくな子だといいなぁ。偉そうな子はどう対応したらいいかわからないし。
そもそも王族と出会うことなんて滅多にないとわかってるから、考える必要もなさそうだけど。
「僕も魔術学院は気になります。いろんな魔術を覚えられたら、戦力アップに繋がりますよね」
「そうだねぇ。複合魔術とか? 他にも便利そうな魔術があるといいね」
詠唱破棄スキルも、本来は魔術学院で覚えられるものだったはず。僕はスキルリストで手に入れたけど。
「モモたちがほのぼのしてる間に、最後の異点見つけたでー。モモが壊す?」
「する!」
ユリに声を掛けられて、指してる方を見る。僕の目には異点がどういうものなのか全然わからないけど、ユリを信頼してるから、サクッと攻撃することにした。
「――ん~……【足蹴】!」
飛翔スキルで飛んでから、異点を目掛けて鋭い蹴りを放つ。途端に、軽い衝撃を足に感じ、シャボン玉が割れるような音が響いた気がした。
「それ、かっこええなぁ!」
「でしょ~」
蹴り技を褒められ、思わずにこにこと笑っちゃった。【嵐蹴り】スキルと合わせて、蹴り技は僕もお気に入りなんだ。上手く決まると、気分がスカッとするし。
「モモさん、さすがです!」
「体術士に褒められるほどかな? でも、嬉しい!」
パチパチと拍手するタマモに「いぇーい」とハイタッチする。
〈ミッション『迷い道を突破する』をクリアしました。報酬として【光魔石】が贈られます〉
良いものもらった! 光魔石って、なかなか手に入らないんだよね~。
ほくほくとした気分で王都に向けて歩く。
最後の結界を突破したら、これまで以上に王都を近く感じた。結界には距離感を誤魔化す効果もあったのかも。
王都を囲む壁にある門の前に、男の人が二人立ってる。向こうも僕たちに気づいてるみたいだ。
「あれが門衛さんだろうにゃ。……さすがに、あたいたちがモンスターの姿だからって、止められることはないよにゃ?」
「ないだろ。テイムモンスターだと間違われる可能性はあるかもしれないけどな」
ツッキーの言葉を聞いて、思わずソウタと顔を見合わせる。
確かに獣人二人とモンスター四人の組み合わせって、テイマーとテイムモンスターのパーティみたいだね。
「……まさかぁ、そんなことはないでしょー」
否定しながらも、誤解されたらちょっと面白いなって思っちゃった。
さて、門衛さんの反応はいかに――?
そして今、僕たちはキーリ湖の先にある草原地帯を進んでる。遠くには王都の姿が見える。
王都を囲む高い壁と、それでも隠しきれないほど高い塔がたくさんあるようだ。王都を探索するのが楽しみだなぁ。
「――お、ここが異点やな」
「おっしゃ、今度は俺が壊すぞ!」
ユリがなにもないように見える場所を指す。この仕草はこれで三度目だ。
一度目は、発見した異点をユリが壊して見せた。二度目は、タマモが指示を受けながら壊した。どうやら、異点を発見できる人は限られているけど、壊すのは誰でもできるらしい。
三度目の今回はツッキーが立候補したから任せることにする。
鋭い爪を振りかぶったツッキーは、ユリが指したところを目掛けて、勢いよく攻撃を加えた。途端にシャボン玉が割れるような感覚がする。無事、結界を突破できたようだ。
結界を無効化できる時間は一分に満たないそうなので、さっさと先へ進む。
「あと何回結界を突破するの?」
「二回やな」
タマモが拠点として設定したセーフティエリアから出発して、まだ三十分も経ってない。それで王都までの道のりの半分を超えられたというのは快挙のはずだ。それはすべてユリのおかげ。
「僕も罠探知スキルを覚えようかなー」
「いいと思うで。結構役に立つしな。けど、モモの場合、罠探知できるモンスターを見つけてテイムした方が楽なんちゃう?」
周囲を見渡し、異点を探しながら歩くユリについていきながら、真剣に考え込んだ。
罠探知できる仲間がいたら、確かにありがたいかも。今後ダンジョンとかでも必要になるかもしれないし。
「前向きに検討します」
「ふふ、がんばってな。できれば、もふもふしてる子を頼むわ」
「そう言われたところで、希望を叶えられるかはわからないなー」
まずはギルドの図書室でモンスターの情報を集めるところから始めないと。第三の街の司書ライリーさんに協力してもらおう。モンちゃんに聞いてみてもいいかも。
そんなことを考えながら、時折襲ってくるモンスターを危うげなく倒していく。
タマモもユリもレベルに相応しく強いし、希少種会のみんなも結構鍛えてるみたいで、このフィールド内の敵は問題なさそうだ。
僕は一撃くらいしか与える隙がなく、他のみんなに倒されていくのを眺めることになってる。
「あ、そこが異点や」
「次はあたいがするにゃ」
立候補したムギが、すぐさま異点を攻撃する。
壊す結界はあと一枚。王都はもう近くに見えていた。
「ワクワクするねー」
「油断はダメですよ?」
こそっと話しかけたら、ソウタに微笑ましそうに注意された。そう言ってるソウタも、期待に満ちた目を王都に向けてる。
「油断はしてないよ。でも、楽しみなのはしかたないもん。王都に着いたらなに食べよっか? お腹空いたよねー。これまでの街みたいに屋台があるかなー?」
ユリからの事前情報はあまり耳に入れないようにしてる。自分の目で見て、探検して回る方が絶対楽しいから。
「モモさんが一番興味あるのは、食ですか?」
「他にもあるよ? 魔術学院とか、王城とか」
言ってから改めて気づく。
王都って、王様がいるんだよね。どんな人なんだろう。会うことは早々ないだろうけど、王女様とかいるのかな?
第二の街の領主家のご令嬢であるベラちゃんを脳裏に思い浮かべる。
もし王女様に会うことがあるとして、ベラちゃんのように気さくな子だといいなぁ。偉そうな子はどう対応したらいいかわからないし。
そもそも王族と出会うことなんて滅多にないとわかってるから、考える必要もなさそうだけど。
「僕も魔術学院は気になります。いろんな魔術を覚えられたら、戦力アップに繋がりますよね」
「そうだねぇ。複合魔術とか? 他にも便利そうな魔術があるといいね」
詠唱破棄スキルも、本来は魔術学院で覚えられるものだったはず。僕はスキルリストで手に入れたけど。
「モモたちがほのぼのしてる間に、最後の異点見つけたでー。モモが壊す?」
「する!」
ユリに声を掛けられて、指してる方を見る。僕の目には異点がどういうものなのか全然わからないけど、ユリを信頼してるから、サクッと攻撃することにした。
「――ん~……【足蹴】!」
飛翔スキルで飛んでから、異点を目掛けて鋭い蹴りを放つ。途端に、軽い衝撃を足に感じ、シャボン玉が割れるような音が響いた気がした。
「それ、かっこええなぁ!」
「でしょ~」
蹴り技を褒められ、思わずにこにこと笑っちゃった。【嵐蹴り】スキルと合わせて、蹴り技は僕もお気に入りなんだ。上手く決まると、気分がスカッとするし。
「モモさん、さすがです!」
「体術士に褒められるほどかな? でも、嬉しい!」
パチパチと拍手するタマモに「いぇーい」とハイタッチする。
〈ミッション『迷い道を突破する』をクリアしました。報酬として【光魔石】が贈られます〉
良いものもらった! 光魔石って、なかなか手に入らないんだよね~。
ほくほくとした気分で王都に向けて歩く。
最後の結界を突破したら、これまで以上に王都を近く感じた。結界には距離感を誤魔化す効果もあったのかも。
王都を囲む壁にある門の前に、男の人が二人立ってる。向こうも僕たちに気づいてるみたいだ。
「あれが門衛さんだろうにゃ。……さすがに、あたいたちがモンスターの姿だからって、止められることはないよにゃ?」
「ないだろ。テイムモンスターだと間違われる可能性はあるかもしれないけどな」
ツッキーの言葉を聞いて、思わずソウタと顔を見合わせる。
確かに獣人二人とモンスター四人の組み合わせって、テイマーとテイムモンスターのパーティみたいだね。
「……まさかぁ、そんなことはないでしょー」
否定しながらも、誤解されたらちょっと面白いなって思っちゃった。
さて、門衛さんの反応はいかに――?
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