240 / 555
7章 世界が広がっていくよ
244.王都初歩きです
しおりを挟む
僕のファンとして覚醒しそうな門衛さんに、タマモが改めてもふもふ教を布教しようとしているのを横目に見ながら、王都の門を通った。
〈王都に到達しました。到達特典【魔術の書(生活)】が贈られます〉
突然のアナウンス。
僕がきょとんとしたら、隣を歩いていたユリがにこりと笑った。
「到達特典届いたやろ?」
「うん。これなに?」
希少種会の三人も不思議そうな顔でアイテムを確認してる。
「見た目は古めかしい本やけど、使用したら生活魔術を覚えられんねん」
「生活魔術?」
「洗浄とか着火とか、バトルでは大した効果はないけど地味に便利な魔術や」
「ほーう」
ユリの解説に頷き、アイテムボックスから取り出した魔術の書を眺める。表紙をめくったら、ちゃんと文章が書かれてる! 読めない文字だけど演出が細かい。
魔術の書を手に持った状態で『使用する』と念じれば、設定されている魔術を習得できるようだ。早速やってみよう。
「――生活魔術覚えた~い」
言葉にする必要はないけど、なんとなく言ってみた。
途端に、体にふわっと熱が灯った気がする。ステータスを見てみたら、しっかりと【生活魔術】を覚えていた。レベル1で使えるのは、【洗浄】らしい。
「洗浄を自分に使うと、体が綺麗になった感じがして気分がリフレッシュするで」
「毛繕いとは効果が違うのかな? ――【洗浄】!」
全身をシャボンで包まれるような感覚がした。柔らかいソープの香りが心地よい。確かにリラックスできて気分爽快だ。
「お、モモ、毛艶が良くなったみたいだぞ」
「ほんと?」
ツッキーに言われて、自分の体を見下ろす。確かになんとなくいつもより毛が輝いてる気がする。
「――ついでに毛繕い~」
くしくし。もふもふミラーで見ながら顔や体の毛を手で整えたら、びっくりするくらい綺麗でふわっふわになった。魅力度爆上がり!
「ほわっ!? モモさんの神々しさが増してる……!」
門衛さんを無事にもふもふ教に引き入れられたのか、満足そうな顔で近づいてきたタマモが、目を丸くして固まった。すぐに手を合わせて拝み始めたので、さすがにやめてもらう。
王都の人に変な目で見られたらどうするの!
「これで王都でも友だちたくさんできるかな~♪」
「信者がほしくて綺麗にしたわけじゃなかったんやね」
「僕はいつだって信者じゃなくて友だちを作ろうとしてるよ?」
「そうなん?」
「そうなの! 見た目を清潔にして、初対面の印象を良くするのは、友だちを作る上で大切でしょ」
首を傾げるユリに力強く頷いて見せる。
ランドさんとかレナードさんとかモンちゃんとか、もふもふ教に入ってなくても、僕のことを好きだと思ってくれてる友だちはいるもん!
僕の友だちになってくれたと思ったら、いつの間にかもふもふ教に入ってる人が多いだけで!
「なーなー、それより早く街を探索しようぜ」
ツッキーがキョロキョロと周囲を見渡しながら明るい声で提案する。
確かにここで立ち止まってる時間がもったいないね。といっても、王都って随分と特殊な街みたいで、どこをどう見て回ったらいいか――
「……屋台はなさそうだね?」
王都にある建物はどれも高い塔だった。都会のビル群って感じかな。見た目は西洋風の古めかしい建物だけど。
地上に通りはあるけど、塔同士を空中で繋ぐ回廊が主な通路らしく、人の姿は上の方に見える。
「レストランは『商業の塔』にあるで。緑色の塔や」
「色で区別されてるの?」
「そうや。赤色は『魔術の塔』で魔術学院の関連施設が入ってる。青色は『生産の塔』で生産職の人が働いてるとこやな。黄色は『行政施設の塔』でギルドもここにあるんよ。貴族の住居は水色で、庶民の住居は茶色になっとる。王城は王都の中央にあって、真っ白な塔が連結してるような見た目をしてるで」
「へぇ、よくわかんないけどすごいねぇ」
色で区別されてるけど、バラバラに点在してるからなかなかカラフルな見た目の街になってる。王城はいつか見に行こう。
「――とりあえず、王都飯を食べたい!」
「それならオススメに案内するわ」
ユリに連れられ、近くの緑色の塔に入る。
一階には各階の案内図があって、その近くにエレベーターにそっくりなものがあった。ユリはそこで十一階のボタンを押す。
ぐーんと上がっていく感覚に、『僕がいるのはリアルの商業施設だった?』という思いが湧いてくる。近代的な内装でファンタジー感が薄れてるよぉ。
「あ、到着?」
「昇降機以外は古めかしい感じでゲーム感あるやろ」
ユリも僕と同じ感想を抱いていたのか、目的の階に着いて歩き始めた途端そう言った。
確かに廊下は石造りで、ところどころ不思議な紋様が刻まれててファンタジーな見た目。やっぱこういうのがいい。
「そうだねー。明かりも魔法陣が刻まれてるし、魔法の世界って感じ!」
「それより、ここではなにを食えるんだ? 俺腹減ったー」
「確かに結構お腹空きましたね」
王都までの道をショートカットして進んだとはいえ、それなりに時間は経過してる。おかげでいい具合に空腹度が減ってた。
「この階にあるのは、肉料理が主や。そんでウチのオススメは――ここや」
いくつかの店の前を通り過ぎた後、ユリが入ったのは肉が焼ける香りが漂う店だった。
たくさんのお客さんがいる。道中もだったけど、チラチラと視線を向けられるのを感じた。
王都もテイマーがいるから、街をモンスターが歩いてるのは珍しくないようだけど、天兎を見たことがある人は少なそうだ。
とりあえず、じっと見つめてくる人に「こんにちはー」と手を振ってみると、驚いた顔をした後嬉しそうに手を振り返してくれた。「あの子かわいー」という声が聞こえてきて満足です。
「モモはいついかなる時もファンを増やそうとしてるにゃ」
「違うよ! こういう出会いから友だちが増えたら嬉しいでしょ」
「まぁ、そういう出会いもあるかもにゃ?」
首を傾げながらもムギが頷く。そんなムギにもキラキラとした目が向けられてるんだから、愛嬌を振りまいてあげたらいいのに。友だちたくさんできるよ?
「それじゃあ、まずは腹ごしらえといこか」
六人掛けの席につき、ユリがにこりと笑う。
どんな料理を食べられるか楽しみ!
〈王都に到達しました。到達特典【魔術の書(生活)】が贈られます〉
突然のアナウンス。
僕がきょとんとしたら、隣を歩いていたユリがにこりと笑った。
「到達特典届いたやろ?」
「うん。これなに?」
希少種会の三人も不思議そうな顔でアイテムを確認してる。
「見た目は古めかしい本やけど、使用したら生活魔術を覚えられんねん」
「生活魔術?」
「洗浄とか着火とか、バトルでは大した効果はないけど地味に便利な魔術や」
「ほーう」
ユリの解説に頷き、アイテムボックスから取り出した魔術の書を眺める。表紙をめくったら、ちゃんと文章が書かれてる! 読めない文字だけど演出が細かい。
魔術の書を手に持った状態で『使用する』と念じれば、設定されている魔術を習得できるようだ。早速やってみよう。
「――生活魔術覚えた~い」
言葉にする必要はないけど、なんとなく言ってみた。
途端に、体にふわっと熱が灯った気がする。ステータスを見てみたら、しっかりと【生活魔術】を覚えていた。レベル1で使えるのは、【洗浄】らしい。
「洗浄を自分に使うと、体が綺麗になった感じがして気分がリフレッシュするで」
「毛繕いとは効果が違うのかな? ――【洗浄】!」
全身をシャボンで包まれるような感覚がした。柔らかいソープの香りが心地よい。確かにリラックスできて気分爽快だ。
「お、モモ、毛艶が良くなったみたいだぞ」
「ほんと?」
ツッキーに言われて、自分の体を見下ろす。確かになんとなくいつもより毛が輝いてる気がする。
「――ついでに毛繕い~」
くしくし。もふもふミラーで見ながら顔や体の毛を手で整えたら、びっくりするくらい綺麗でふわっふわになった。魅力度爆上がり!
「ほわっ!? モモさんの神々しさが増してる……!」
門衛さんを無事にもふもふ教に引き入れられたのか、満足そうな顔で近づいてきたタマモが、目を丸くして固まった。すぐに手を合わせて拝み始めたので、さすがにやめてもらう。
王都の人に変な目で見られたらどうするの!
「これで王都でも友だちたくさんできるかな~♪」
「信者がほしくて綺麗にしたわけじゃなかったんやね」
「僕はいつだって信者じゃなくて友だちを作ろうとしてるよ?」
「そうなん?」
「そうなの! 見た目を清潔にして、初対面の印象を良くするのは、友だちを作る上で大切でしょ」
首を傾げるユリに力強く頷いて見せる。
ランドさんとかレナードさんとかモンちゃんとか、もふもふ教に入ってなくても、僕のことを好きだと思ってくれてる友だちはいるもん!
僕の友だちになってくれたと思ったら、いつの間にかもふもふ教に入ってる人が多いだけで!
「なーなー、それより早く街を探索しようぜ」
ツッキーがキョロキョロと周囲を見渡しながら明るい声で提案する。
確かにここで立ち止まってる時間がもったいないね。といっても、王都って随分と特殊な街みたいで、どこをどう見て回ったらいいか――
「……屋台はなさそうだね?」
王都にある建物はどれも高い塔だった。都会のビル群って感じかな。見た目は西洋風の古めかしい建物だけど。
地上に通りはあるけど、塔同士を空中で繋ぐ回廊が主な通路らしく、人の姿は上の方に見える。
「レストランは『商業の塔』にあるで。緑色の塔や」
「色で区別されてるの?」
「そうや。赤色は『魔術の塔』で魔術学院の関連施設が入ってる。青色は『生産の塔』で生産職の人が働いてるとこやな。黄色は『行政施設の塔』でギルドもここにあるんよ。貴族の住居は水色で、庶民の住居は茶色になっとる。王城は王都の中央にあって、真っ白な塔が連結してるような見た目をしてるで」
「へぇ、よくわかんないけどすごいねぇ」
色で区別されてるけど、バラバラに点在してるからなかなかカラフルな見た目の街になってる。王城はいつか見に行こう。
「――とりあえず、王都飯を食べたい!」
「それならオススメに案内するわ」
ユリに連れられ、近くの緑色の塔に入る。
一階には各階の案内図があって、その近くにエレベーターにそっくりなものがあった。ユリはそこで十一階のボタンを押す。
ぐーんと上がっていく感覚に、『僕がいるのはリアルの商業施設だった?』という思いが湧いてくる。近代的な内装でファンタジー感が薄れてるよぉ。
「あ、到着?」
「昇降機以外は古めかしい感じでゲーム感あるやろ」
ユリも僕と同じ感想を抱いていたのか、目的の階に着いて歩き始めた途端そう言った。
確かに廊下は石造りで、ところどころ不思議な紋様が刻まれててファンタジーな見た目。やっぱこういうのがいい。
「そうだねー。明かりも魔法陣が刻まれてるし、魔法の世界って感じ!」
「それより、ここではなにを食えるんだ? 俺腹減ったー」
「確かに結構お腹空きましたね」
王都までの道をショートカットして進んだとはいえ、それなりに時間は経過してる。おかげでいい具合に空腹度が減ってた。
「この階にあるのは、肉料理が主や。そんでウチのオススメは――ここや」
いくつかの店の前を通り過ぎた後、ユリが入ったのは肉が焼ける香りが漂う店だった。
たくさんのお客さんがいる。道中もだったけど、チラチラと視線を向けられるのを感じた。
王都もテイマーがいるから、街をモンスターが歩いてるのは珍しくないようだけど、天兎を見たことがある人は少なそうだ。
とりあえず、じっと見つめてくる人に「こんにちはー」と手を振ってみると、驚いた顔をした後嬉しそうに手を振り返してくれた。「あの子かわいー」という声が聞こえてきて満足です。
「モモはいついかなる時もファンを増やそうとしてるにゃ」
「違うよ! こういう出会いから友だちが増えたら嬉しいでしょ」
「まぁ、そういう出会いもあるかもにゃ?」
首を傾げながらもムギが頷く。そんなムギにもキラキラとした目が向けられてるんだから、愛嬌を振りまいてあげたらいいのに。友だちたくさんできるよ?
「それじゃあ、まずは腹ごしらえといこか」
六人掛けの席につき、ユリがにこりと笑う。
どんな料理を食べられるか楽しみ!
1,354
あなたにおすすめの小説
もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜
きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。
遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。
作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓――
今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!?
ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。
癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!
異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~
黒蓬
ファンタジー
白石悠真は、ある日突然異世界へ召喚される。しかし、特別なスキルとして授かったのは「牧場経営」。戦えない彼は、与えられた土地で牧場を経営し、食料面での貢献を望まれる。ところが、彼の牧場には不思議な動物たちが次々と集まってきて――!? 異世界でのんびり牧場ライフ、始まります!
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
────────
自筆です。
【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜
るあか
ファンタジー
僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。
でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。
どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。
そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。
家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。
嘘つきと呼ばれた精霊使いの私
ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。
異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
辺境の町バラムに暮らす青年マルク。
子どもの頃から繰り返し見る夢の影響で、自分が日本(地球)から転生したことを知る。
マルクは日本にいた時、カフェを経営していたが、同業者からの嫌がらせ、客からの理不尽なクレーム、従業員の裏切りで店は閉店に追い込まれた。
その後、悲嘆に暮れた彼は酒浸りになり、階段を踏み外して命を落とした。
当時の記憶が復活した結果、マルクは今度こそ店を経営して成功することを誓う。
そんな彼が思いついたのが焼肉屋だった。
マルクは冒険者をして資金を集めて、念願の店をオープンする。
焼肉をする文化がないため、その斬新さから店は繁盛していった。
やがて、物珍しさに惹かれた美食家エルフや凄腕冒険者が店を訪れる。
HOTランキング1位になることができました!
皆さま、ありがとうございます。
他社の投稿サイトにも掲載しています。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。