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8章 新たな地へ
281.船は進むよ
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青い海上を真白の豪華客船が進む。目的地は遠く離れたスタ島だ。
船は先ほど港を出航したばかり。まだ陸地が近い。
船の甲板の欄干に座り、潮風を感じながら、僕は東の方を眺めた。
「あれって、もしかしてサクノ山?」
船の進行方向左手側に見覚えのある山があった。麓の辺りには、オレンジ色の街が見える。はじまりの街サクだ。
王都近くの港から出ると、はじまりの街がこんなに近いのかぁ。
「モモさんたち旅人は、最初にあの街を訪れたそうね?」
横から声をかけられた。
共にスタ島に向かう仲間、第二王女のラファイエットさんだ。
ラファイエットさんを見上げて、首を傾げる。
「そうだよー。たぶん船で来たのかな?」
「どうして疑問符がついたの?」
「いつの間にか街に着いてたから」
ラファイエットさんはまだ不思議そうだけど、僕はそれ以外に答える言葉を持たない。真っ白空間からいきなり桟橋に着いてたから、船に乗ってた記憶なんてないんだもん。
桟橋がスタート地点だったし、プレイヤーみんな船で来たっていう設定なのは確かだと思うけど。
「旅人さんって不思議なのね」
「そうだね。まぁ、そういうのも楽しいでしょ? 異文化交流的な?」
テキトーなことを言いながら、景色を眺める。
海ってずっと見てられる気がするのは僕だけ? なんか何も考えずにボーッとできるんだよね。ほのぼのー。
「ふふ、そうね。はじまりの街サクといえば、そろそろ王都との定期航路を再開する計画が始まるはずよ」
「定期航路?」
ラファイエットさんをきょとんと見上げる。
はじまりの街と王都間を船で移動できるってこと?
「ええ。ただ、航路上の海には問題があって、それが解決できたら、ということになるけれど」
「問題……」
これは、ミッションが始まる流れかな。
ラファイエットさんにさらに詳細を尋ねる。
「はじまりの街周辺の海には、船を破壊するモンスターが出没するらしいの。それの討伐を旅人の冒険者たちに頼む予定になっているわ」
「おお! なんかイベントっぽい」
初めての海上戦ってことだ。
珍しいから参加したがる人多そう。
「討伐計画を実行するのはまだ先だけれど、よければお友だちに知らせておいてくれる?」
「わかったー。広めておくよ」
ラファイエットさんの言い方だと、たくさんの人が参加できるバトルな気がする。
第三の街であったレイドイベントみたいなものかな。
でも、報酬が定期航路再開って、需要があるかは謎だ。ほとんどのプレイヤーが転移スキルで移動できるし。
「——定期航路が再開したら、他の利点もある?」
「利点? そうねぇ……」
ラファイエットさんが首を傾げる。
そして、閃いたと言いたげな表情で海を指した。
「【海底都市】に途中下船できるわ」
「なにそれ?」
また初耳の情報だ。
僕がぱちぱちと目を瞬いていると、ラファイエットさんは「あら?」と不思議そうに呟いた。
「聞いたことないかしら。イノカン国に囲まれたこの内海には、古代王国の都市が沈んでいるのよ」
「おお……ファンタジー……」
海底都市・アトランティスみたいなものかな。夢があるねぇ。
でも、海の中で生きていられるものなの?
「海底都市・リュウグウというのだけれど」
アトランティスじゃなくて、竜宮城がモチーフっぽい。
「え、行って帰ってきたら年取っちゃうとかある?」
「どうして?」
心底不思議そうに聞き返された。僕の疑問はおかしくないと思うんだけど!
まぁ、浦島太郎伝説がこの世界にはないってことだね。年を取らないならいいや。
「——あ、でも、リュウグウの秘宝を盗んだ者には、老いの罰が下るとは聞いたことがあるわ」
「あるんかい」
ちゃんと浦島太郎伝説を設定に使ってるらしい。それ、必要だったかな?
でも、リュウグウの秘宝って気になるー。もちろん、盗みなんてしないけどね!
「ふふ、ただの言い伝えよ。盗みなんてしたらいけません、という教訓を伝えるものでしょう」
微笑んだラファイエットさんが海底都市・リュウグウについて詳しく説明してくれた。
そこは海の中なのに、地上同様の生活ができるように古代魔術で環境が整えられているらしい。
現在そこで暮らしているのは、海のエルフと呼ばれる人々。珍しいアイテムを販売しているんだって。
「森じゃなくて、海に住んでるエルフって珍しい気がする」
「そう? 確かに、山中にある第四の街ツーリにもたくさんエルフがいるけれど。彼らは森のエルフと呼ばれているわね」
第四の街情報ゲット。
なんとなく予想してはいたけど、やっぱりエルフが住んでるのかぁ。
「他にもエルフがいるの?」
「そうねぇ……わたくしが知っているのは空のエルフかしら」
ラファイエットさんがピンと人差し指を立てて空を指す。
その動きにつられて僕は空を見上げた。
空にも住めるような場所があるの?
「空中都市は行けるタイミングが限られているから、まだ行けないわ」
「そうなんだ。残念」
「行きたいなら、タイミングが来たら教えてあげるわよ?」
「行きたい! 教えて!」
空中都市なんて、絶対楽しいでしょ。行かないなんて選択肢はない。
前のめりで頼んだら、ラファイエットさんは楽しそうに微笑んだ。
「わかったわ。もう少し待っていてね」
「うん、楽しみにしてるよー」
なんとなくまだ未実装なんだなぁと悟って頷いた。
……今回もらった情報って、いろいろ先取りしすぎてない?
船は先ほど港を出航したばかり。まだ陸地が近い。
船の甲板の欄干に座り、潮風を感じながら、僕は東の方を眺めた。
「あれって、もしかしてサクノ山?」
船の進行方向左手側に見覚えのある山があった。麓の辺りには、オレンジ色の街が見える。はじまりの街サクだ。
王都近くの港から出ると、はじまりの街がこんなに近いのかぁ。
「モモさんたち旅人は、最初にあの街を訪れたそうね?」
横から声をかけられた。
共にスタ島に向かう仲間、第二王女のラファイエットさんだ。
ラファイエットさんを見上げて、首を傾げる。
「そうだよー。たぶん船で来たのかな?」
「どうして疑問符がついたの?」
「いつの間にか街に着いてたから」
ラファイエットさんはまだ不思議そうだけど、僕はそれ以外に答える言葉を持たない。真っ白空間からいきなり桟橋に着いてたから、船に乗ってた記憶なんてないんだもん。
桟橋がスタート地点だったし、プレイヤーみんな船で来たっていう設定なのは確かだと思うけど。
「旅人さんって不思議なのね」
「そうだね。まぁ、そういうのも楽しいでしょ? 異文化交流的な?」
テキトーなことを言いながら、景色を眺める。
海ってずっと見てられる気がするのは僕だけ? なんか何も考えずにボーッとできるんだよね。ほのぼのー。
「ふふ、そうね。はじまりの街サクといえば、そろそろ王都との定期航路を再開する計画が始まるはずよ」
「定期航路?」
ラファイエットさんをきょとんと見上げる。
はじまりの街と王都間を船で移動できるってこと?
「ええ。ただ、航路上の海には問題があって、それが解決できたら、ということになるけれど」
「問題……」
これは、ミッションが始まる流れかな。
ラファイエットさんにさらに詳細を尋ねる。
「はじまりの街周辺の海には、船を破壊するモンスターが出没するらしいの。それの討伐を旅人の冒険者たちに頼む予定になっているわ」
「おお! なんかイベントっぽい」
初めての海上戦ってことだ。
珍しいから参加したがる人多そう。
「討伐計画を実行するのはまだ先だけれど、よければお友だちに知らせておいてくれる?」
「わかったー。広めておくよ」
ラファイエットさんの言い方だと、たくさんの人が参加できるバトルな気がする。
第三の街であったレイドイベントみたいなものかな。
でも、報酬が定期航路再開って、需要があるかは謎だ。ほとんどのプレイヤーが転移スキルで移動できるし。
「——定期航路が再開したら、他の利点もある?」
「利点? そうねぇ……」
ラファイエットさんが首を傾げる。
そして、閃いたと言いたげな表情で海を指した。
「【海底都市】に途中下船できるわ」
「なにそれ?」
また初耳の情報だ。
僕がぱちぱちと目を瞬いていると、ラファイエットさんは「あら?」と不思議そうに呟いた。
「聞いたことないかしら。イノカン国に囲まれたこの内海には、古代王国の都市が沈んでいるのよ」
「おお……ファンタジー……」
海底都市・アトランティスみたいなものかな。夢があるねぇ。
でも、海の中で生きていられるものなの?
「海底都市・リュウグウというのだけれど」
アトランティスじゃなくて、竜宮城がモチーフっぽい。
「え、行って帰ってきたら年取っちゃうとかある?」
「どうして?」
心底不思議そうに聞き返された。僕の疑問はおかしくないと思うんだけど!
まぁ、浦島太郎伝説がこの世界にはないってことだね。年を取らないならいいや。
「——あ、でも、リュウグウの秘宝を盗んだ者には、老いの罰が下るとは聞いたことがあるわ」
「あるんかい」
ちゃんと浦島太郎伝説を設定に使ってるらしい。それ、必要だったかな?
でも、リュウグウの秘宝って気になるー。もちろん、盗みなんてしないけどね!
「ふふ、ただの言い伝えよ。盗みなんてしたらいけません、という教訓を伝えるものでしょう」
微笑んだラファイエットさんが海底都市・リュウグウについて詳しく説明してくれた。
そこは海の中なのに、地上同様の生活ができるように古代魔術で環境が整えられているらしい。
現在そこで暮らしているのは、海のエルフと呼ばれる人々。珍しいアイテムを販売しているんだって。
「森じゃなくて、海に住んでるエルフって珍しい気がする」
「そう? 確かに、山中にある第四の街ツーリにもたくさんエルフがいるけれど。彼らは森のエルフと呼ばれているわね」
第四の街情報ゲット。
なんとなく予想してはいたけど、やっぱりエルフが住んでるのかぁ。
「他にもエルフがいるの?」
「そうねぇ……わたくしが知っているのは空のエルフかしら」
ラファイエットさんがピンと人差し指を立てて空を指す。
その動きにつられて僕は空を見上げた。
空にも住めるような場所があるの?
「空中都市は行けるタイミングが限られているから、まだ行けないわ」
「そうなんだ。残念」
「行きたいなら、タイミングが来たら教えてあげるわよ?」
「行きたい! 教えて!」
空中都市なんて、絶対楽しいでしょ。行かないなんて選択肢はない。
前のめりで頼んだら、ラファイエットさんは楽しそうに微笑んだ。
「わかったわ。もう少し待っていてね」
「うん、楽しみにしてるよー」
なんとなくまだ未実装なんだなぁと悟って頷いた。
……今回もらった情報って、いろいろ先取りしすぎてない?
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