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8章 新たな地へ
288.おしゃれディナーだよ
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ディナータイム。
レストランで無料ディナーの提供が始まった。どんな料理が出てくるのか、楽しみー。
「モモさんは、海賊との戦いで活躍してくれたんですってね?」
ラファイエットさんがワイングラスを揺らしながら首を傾げる。お酒を飲めるの羨ましい。
僕の前には桃を使ったノンアルコールカクテルがある。
出航の時に『もふもふプリティ』を歌って、たくさんの桃をもらってたのを見て、僕の好物だと思って用意してくれたんだって。
ありがとう、うまうまです。
「僕だけじゃなくて、テイムしてる子もがんばったんだよ。もちろん、騎士さんたちもがんばってた!」
僕だけの成果じゃないんです。
一応そう主張したら、ラファイエットさんは「わかってるわ」と頷く。
「騎士たちにも報奨は贈るけれど、モモさんには何がいいかしら」
「えー……別に、欲しいものはないけど」
聞かれても困っちゃう。
むむー、と僕が考え込んでいたら、ラファイエットさんが「じゃあ――」と言いながら微笑んだ。
「王家の紋を掲げた船を守ってくれたのだから、王家らしい報奨がいいかしら。モモさんに王家所有地への立ち入り許可証を渡すわね」
「王家所有地?」
首を傾げる。ラファイエットさんがカードを取り出して、テーブルに滑らせて渡してきた。
――――――
【王家所有地への立ち入り許可証】
王家が保有する土地(シークレットエリア)への立ち入りが許可される
マップが更新される
――――――
お、マップ更新かー。
確認してみると、もらった立ち入り許可証を使えば、スタ島内のシークレットエリアに入れるようだ。
……上陸する前に、シークレットエリア見つけちゃったぞ? いいの? 行っちゃうよ?
表示に【神域】【神の社】などの表記が追加されてる。
さすが神様が創ったと言われる島だ。神にゆかりのあるエリアが存在してるらしい。
でも、もうこれがわかってるなら、ラファイエットさんが改めて調査に行く必要はなかったのでは?
気になって聞いてみると――
「神と名前がつく場所は多々あるけれど、私たちが崇め奉る神とどれほど関連があるかはわかっていなかったから、あまり調査をしていなかったのよ」
ラファイエットさんはそう答えた。
この世界、神殿が崇め奉っている創世神以外にも神がいるとされてるから、『神』という名がどの神を指してるかわからなかったんだって。
でも、イグニスさんのおかげで、スタ島の『神』が創世神のことだとわかったから、本格的な調査ができるようになったんだとか。
ふーん……いろいろあるんだねぇ。
話を聞きながらも、僕は料理を運んでくるウェイターに目が釘付けだった。ワクワク。
僕の気がそぞろになっているのを察したのか、ラファイエットさんがふふっと微笑み、「今は食事を楽しみましょう」と言ってくれた。
「お待たせいたしました。本日の前菜『パイレイカとローズカブ サリフォリアハーブのセルクル仕立て』です」
「なんて??」
流れるように言われて、全然理解できなかった。
目の前に置かれたのは、円形に盛られたイカとカブにハーブソースが掛かった料理だった。ピンク色のカブの輪切りの上に、キューブ状のイカが載せられてる。見た目がおしゃれ。
……セルクルって何?
「こういう、輪っかの中に食材を入れて、形を整えたものをセルクル仕立てと言うのよ」
ラファイエットさんが両手で輪を作りながら教えてくれた。
ケーキ型みたいなもので形を整えてるってことらしい。
「なるほどー。見た目、ケーキみたいだもんね」
まぁ、重要なのは味なので。
ナイフを入れてカブを切り、イカと一緒にソースに絡めてパクッと食べる。
「おお、うまい……けど、どう表現したらいいかわからない……」
「ふふ。普通のイカを使うより、旨味が強いわね」
「軽く炙っておりますので、さらに旨味を強く感じていただけているかと」
ラファイエットさんの言葉に、ウェイターさんが頷く。
確かに炙ったら美味しくなるって鑑定結果だったもんね。さすがプロシェフ、一番美味しい調理法を知ってる。
「このハーブソース美味しいよー」
「ご満足いただけて光栄です」
にこりと微笑み、ウェイターさんが下がる。
こういうコース料理って、一品をたくさん食べられないのが、ちょっぴり残念な時あるよね。僕、この前菜、丼いっぱい分食べられるよ。
食べきったら、続いてスープが届く。
これはコーンスープみたいな感じで馴染みがあった。味付けが上品になってたけど、それを表現できる食レポ力は僕にないから勘弁して。
魚料理は海賊烏賊と跳鯛を使った香草焼きだった。うまうま。料理名は呪文みたいだったし、覚えられなかったから割愛です。
口直し用のレモンソルベを挟んで、肉料理。
牛っぽいお肉のステーキだった。焼き加減最高ー!
「あら? 今日は極兎じゃないのね?」
「……本日は黒糖牛でご用意させていただきました」
ウェイターさんがチラッと僕を見て答える。ラファイエットさんも納得したように頷いた。
僕、極兎じゃないから! 天兎だから! 極兎が何か知らないけど、僕、うさぎのお肉食べるの好きだよ! 同類扱いしないで!
無言のまま目で訴える。
……きょとんと見つめ返された。そりゃ、伝わらないよね。
ムスーとしながらステーキをパクリ。美味しくて、不機嫌なんてすぐに吹っ飛んじゃう。うまうま。
肉料理の後には、デザートとしてフルーツいっぱいのゼリーが出てきた。たくさん食べた後でも、ツルンと食べきっちゃうね。
「美味しかったー」
でも、正直イカ料理を満喫できた気がしない。突然お願いしたから仕方ないねー。
島に着いたら、自分でたくさんイカ料理を作ってみよう。
「そろそろ食後のコーヒーを……あら?」
微笑んだラファイエットさんが、レストラン前方にあるステージに視線を向けて首を傾げる。
今までずっと生演奏が聞こえてきてたんだけど、そこでフルリーさんが必死に僕に目配せしてた。
…………あ、一緒に歌うんだった!
忘れて料理を堪能しててごめんね。てへぺろ。
レストランで無料ディナーの提供が始まった。どんな料理が出てくるのか、楽しみー。
「モモさんは、海賊との戦いで活躍してくれたんですってね?」
ラファイエットさんがワイングラスを揺らしながら首を傾げる。お酒を飲めるの羨ましい。
僕の前には桃を使ったノンアルコールカクテルがある。
出航の時に『もふもふプリティ』を歌って、たくさんの桃をもらってたのを見て、僕の好物だと思って用意してくれたんだって。
ありがとう、うまうまです。
「僕だけじゃなくて、テイムしてる子もがんばったんだよ。もちろん、騎士さんたちもがんばってた!」
僕だけの成果じゃないんです。
一応そう主張したら、ラファイエットさんは「わかってるわ」と頷く。
「騎士たちにも報奨は贈るけれど、モモさんには何がいいかしら」
「えー……別に、欲しいものはないけど」
聞かれても困っちゃう。
むむー、と僕が考え込んでいたら、ラファイエットさんが「じゃあ――」と言いながら微笑んだ。
「王家の紋を掲げた船を守ってくれたのだから、王家らしい報奨がいいかしら。モモさんに王家所有地への立ち入り許可証を渡すわね」
「王家所有地?」
首を傾げる。ラファイエットさんがカードを取り出して、テーブルに滑らせて渡してきた。
――――――
【王家所有地への立ち入り許可証】
王家が保有する土地(シークレットエリア)への立ち入りが許可される
マップが更新される
――――――
お、マップ更新かー。
確認してみると、もらった立ち入り許可証を使えば、スタ島内のシークレットエリアに入れるようだ。
……上陸する前に、シークレットエリア見つけちゃったぞ? いいの? 行っちゃうよ?
表示に【神域】【神の社】などの表記が追加されてる。
さすが神様が創ったと言われる島だ。神にゆかりのあるエリアが存在してるらしい。
でも、もうこれがわかってるなら、ラファイエットさんが改めて調査に行く必要はなかったのでは?
気になって聞いてみると――
「神と名前がつく場所は多々あるけれど、私たちが崇め奉る神とどれほど関連があるかはわかっていなかったから、あまり調査をしていなかったのよ」
ラファイエットさんはそう答えた。
この世界、神殿が崇め奉っている創世神以外にも神がいるとされてるから、『神』という名がどの神を指してるかわからなかったんだって。
でも、イグニスさんのおかげで、スタ島の『神』が創世神のことだとわかったから、本格的な調査ができるようになったんだとか。
ふーん……いろいろあるんだねぇ。
話を聞きながらも、僕は料理を運んでくるウェイターに目が釘付けだった。ワクワク。
僕の気がそぞろになっているのを察したのか、ラファイエットさんがふふっと微笑み、「今は食事を楽しみましょう」と言ってくれた。
「お待たせいたしました。本日の前菜『パイレイカとローズカブ サリフォリアハーブのセルクル仕立て』です」
「なんて??」
流れるように言われて、全然理解できなかった。
目の前に置かれたのは、円形に盛られたイカとカブにハーブソースが掛かった料理だった。ピンク色のカブの輪切りの上に、キューブ状のイカが載せられてる。見た目がおしゃれ。
……セルクルって何?
「こういう、輪っかの中に食材を入れて、形を整えたものをセルクル仕立てと言うのよ」
ラファイエットさんが両手で輪を作りながら教えてくれた。
ケーキ型みたいなもので形を整えてるってことらしい。
「なるほどー。見た目、ケーキみたいだもんね」
まぁ、重要なのは味なので。
ナイフを入れてカブを切り、イカと一緒にソースに絡めてパクッと食べる。
「おお、うまい……けど、どう表現したらいいかわからない……」
「ふふ。普通のイカを使うより、旨味が強いわね」
「軽く炙っておりますので、さらに旨味を強く感じていただけているかと」
ラファイエットさんの言葉に、ウェイターさんが頷く。
確かに炙ったら美味しくなるって鑑定結果だったもんね。さすがプロシェフ、一番美味しい調理法を知ってる。
「このハーブソース美味しいよー」
「ご満足いただけて光栄です」
にこりと微笑み、ウェイターさんが下がる。
こういうコース料理って、一品をたくさん食べられないのが、ちょっぴり残念な時あるよね。僕、この前菜、丼いっぱい分食べられるよ。
食べきったら、続いてスープが届く。
これはコーンスープみたいな感じで馴染みがあった。味付けが上品になってたけど、それを表現できる食レポ力は僕にないから勘弁して。
魚料理は海賊烏賊と跳鯛を使った香草焼きだった。うまうま。料理名は呪文みたいだったし、覚えられなかったから割愛です。
口直し用のレモンソルベを挟んで、肉料理。
牛っぽいお肉のステーキだった。焼き加減最高ー!
「あら? 今日は極兎じゃないのね?」
「……本日は黒糖牛でご用意させていただきました」
ウェイターさんがチラッと僕を見て答える。ラファイエットさんも納得したように頷いた。
僕、極兎じゃないから! 天兎だから! 極兎が何か知らないけど、僕、うさぎのお肉食べるの好きだよ! 同類扱いしないで!
無言のまま目で訴える。
……きょとんと見つめ返された。そりゃ、伝わらないよね。
ムスーとしながらステーキをパクリ。美味しくて、不機嫌なんてすぐに吹っ飛んじゃう。うまうま。
肉料理の後には、デザートとしてフルーツいっぱいのゼリーが出てきた。たくさん食べた後でも、ツルンと食べきっちゃうね。
「美味しかったー」
でも、正直イカ料理を満喫できた気がしない。突然お願いしたから仕方ないねー。
島に着いたら、自分でたくさんイカ料理を作ってみよう。
「そろそろ食後のコーヒーを……あら?」
微笑んだラファイエットさんが、レストラン前方にあるステージに視線を向けて首を傾げる。
今までずっと生演奏が聞こえてきてたんだけど、そこでフルリーさんが必死に僕に目配せしてた。
…………あ、一緒に歌うんだった!
忘れて料理を堪能しててごめんね。てへぺろ。
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