もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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8章 新たな地へ

305.スタ島から帰還です

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 スタ島探索は一旦休んで、ホームに帰ってきたよ~。
 第二の街と第三の街のお店の在庫を確認して、不足してる分を作り足していく。

 東の鉱山ダンジョン用のアイテムが結構売れてるなぁ。僕も魔宝をストックしておきたいし、時間を見つけて破壊のツルハシで採掘しなくちゃ。

 パパッとお店の仕事を片付けた後は、転移で農地へゴー!

「お、桃がたくさんできてる!」

 広々した農地の一画、果樹園になっているエリアに桃がたわわに実ってた。美味しそー。

「食べちゃお」

 飛翔フライで飛んで桃を一個もぎ取る。甘い香りがする~。この香りだけで幸せな気分になるよね。
 ワクワクしながら両手で抱えてパクッと食べる。

「うっまーい!」

 じゅわっと溢れだす甘い果汁が口いっぱいに広がって、心がルンルンする。やっぱり桃は一番美味しい果物だよね。異論は認める。好みは人それぞれだし。

「あ、アイテム置かなくちゃ」

 桃を一個食べきったところで、農地に来た目的を思い出した。
 アイテムバッグから取り出した黄麒麟オウキリンの像(小)を農地の倉庫近くに置く。

「——んん? ただ置くだけだと見映えがよくない……」

 黄麒麟オウキリンがちょっと寂しげに見える。

 いろいろと試行錯誤して、錬金術で作った【綺麗な台座】の上に置いてみた。この台座、臙脂色のベルベットが敷かれてて綺麗なんだよ。

「うん、なんか神様っぽさがある! これでよし」

 黄麒麟オウキリンが光を受けてキラキラと輝いてる。神々しい感じ。

「続いて、黄妖精のパウダー!」

 てってれー、とアイテムを取り出したところで視線を感じた。
 振り向く。

「——リリとルト! どうしたのー?」

 農地の傍の小道にリリたちが立ってた。遊びに来るって連絡はなかったけど……?

「やっほー、モモ。こっちに帰ってきてるって情報見たから会いに来たよー」
「お前は瓶を掲げて何やってんだ?」

 にこにこと微笑みながら近づいてきたリリとハグして挨拶。「もふもふー癒やされるー」とリリが喜んでる。

 ルトはちょっと呆れた顔で、僕が持ってる瓶を眺めた。でも、すぐに黄麒麟オウキリンの像の方を見て目を丸くする。

「——え、なんだこれ」
「ネタバレいいの?」
「……いいよ」

 ルトが一拍置いた後に、覚悟を決めた感じで頷いた。
 そんな爆弾発言をするつもりはないよ?

「これ、神魔の像なんだよー。スタ島には五体の神魔って呼ばれるモンスターがいて、神様を支えてるんだって。神魔に会ったところで、この像をもらったんだ」

 シークレットミッションも含めて教えてみる。ルトは頭が痛そうな顔をしながら聞いてた。

「……なるほど。あのワールドアナウンスな」
「そう、それそれ」

 頷いたら、ルトの手が伸びてきた。
 もに、と頬を引っ張られて揉まれる。

「のわっ、なにするぅー?」
「鬱憤晴らしとストレス解消」

 それ、どっちも同じ意味では?
 されるがままに頬をモミモミされてたら、リリがクスクスと笑った。

「仲良しだねー」
「そうだりょー」

 不明瞭な言葉でリリに返事をする。ルトが不本意そうな、ちょっと照れたような顔で手を離した。

「ごほんっ……それで、その瓶はなんなんだ?」

 咳払いってなんでも誤魔化せるほど万能じゃないよ?

 フフッと笑うリリから目を逸らしてるルトに、僕は生暖かい目を向ける。相変わらずクール気取りな照れ屋さんなんだからー。

「——なんか、ムカつくこと考えられてる気がする」
「気のせい気のせい」

 ルトのジト目をニコッと微笑んで躱し、改めてアイテムを掲げて見せる。

「キラキラしてるね」
「うん。黄妖精のパウダーっていうアイテムなんだよ。農地にまいたら、妖精を召喚できて、収穫量アップとかの効果があるらしいんだ」

 瓶を覗き込んで楽しそうにしてるリリに説明し、早速使おうと農地に傾けてみる。

〈【黄妖精のパウダー】の効果範囲は10✕10マスです。この場所に使用しますか?〉

 アナウンスが聞こえると同時に、農地の一部が薄青色に光った。アイテムの効果範囲を示してるみたい。

 農地全体に効果があるわけじゃないのかー。
 それなら桃とかの果物に使おう。

 果樹園になっている一画に黄妖精のパウダーを使うよう設定した。
 すると、地面からふわっと黄色い光の粒が湧いてきて、効果範囲に指定した場所をフラフラーと舞い始める。

「小人に羽があるタイプの妖精じゃなかったかー」

 丸い光の粒が妖精らしい。ちょっぴり残念だ。
 まぁ、黄麒麟オウキリンの眷属の妖精も一角獣っぽい見た目だったし、意外でもないか。どっかにオーソドックスな妖精もいるのかな?

「なんか幻想的な感じだな」
「綺麗だね。スクショ撮っていい? もふもふ教のみんなに共有してあげたいな」
「いいよー」

 リリが楽しそうに聞いてきたのでオッケーする。僕も一緒に写って、と言われたので、桃の木の前でピース。もふっとした手だから、わかりにくいけどね。

 鼻先を黄妖精が通っていってちょっとくすぐったかった。

「くしゅっ!」

 思わずくしゃみをした瞬間に、パシャと音がする。

「えっ!? 待って、僕がくしゃみしたとこ、撮ったでしょ!」
「うん、可愛かったから」

 リリがニコッと笑う。
 そんな言葉で僕は誤魔化されないぞ。くしゃみの瞬間は間抜けに決まってるもん!

「消して!」
「えー、でも、これ可愛いよ?」

 リリが撮ったスクショを見せてくれた。
 ……目をぎゅっと瞑ってる天兎アンジュラパ、思ったより可愛いね?
 うぅむ、これなら見られてもいいかな。

「わかった。でも、ちゃんとキメ顔も撮ってね」
「もちろんだよ。はい、ポーズ」
「いぇい!」

 飛翔フライで飛んで、ターンからのポーズ。
 リリが「カッコいいー」って言ってくれたから満足です。

 ルトは即席撮影会の間、近くの木からブドウを採って食べてた。
 僕のことマイペースって言うことあるけど、ルトもわりとそんなとこあるよね。
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