332 / 555
番外編:九尾狐は愛を捧げる
③試練が思いを強くするのです
しおりを挟む
無事に小象を倒せました。ドロップアイテムもなかなかいい感じです。防具や武器に使うには少々無骨なので、第二の街に到着してすぐに、冒険者ギルドで売っちゃいましたけど。
ボス戦はリュウエンさん頼りになってしまったのが悔しいですねぇ。物理攻撃がボスに通りにくくて……火魔術を覚えておけばよかったです。能力を高めてから再挑戦しましょう。
反省はこれくらいにして。
もう少し冒険者ギルドで話をする、と言うリュウエンさんと別れて、市場にやってきました。目的はもちろん桃ですよ!
「ボスドロのおかげで懐あったかーい。これで桃をたくさん買えます♪」
第二の街ははじまりの街よりすごく賑わってます。野菜や果物がお安い! 肉の種類も豊富ですねー。
でも、お魚は全然見ません。はじまりの街ほどじゃなくても海は近いはずなんですけど。海との間にある岩山は攻略が難しいポイントなのかもしれません。
「あらまぁ、狐のお嬢ちゃん、綺麗な格好ねぇ」
市場で八百屋のおばさまに声をかけられました。褒めてもらえて嬉しいです。
私の格好は白と朱色を基調としたミニ丈の着物っぽい感じです。ニーハイソックスとブーツを合わせて、ギャップがあって可愛いのです。ちょっと花魁のような色っぽさもあって私好みなんですよ。
「ふふっ、ありがとうございます。あ、ここ、桃を売ってますか?」
「もちろん売ってるよ。【普通の桃】と【白美桃】と【王桃】の三種類あるけど、どれにする?」
桃だけで三種類! そのこだわりは素晴らしいです。さすが味覚の再現が素晴らしいゲームと言われているだけありますね。
モモさんはどんな桃が好きなんでしょう?
……わからないので、全部買っちゃいます! 小象討伐のおかげで、お金はありますからね。
「全部五十個ずつください!」
「はっ、え、あ、百五十個も桃を買うのかい……? あなたパティシエさん?」
「いえ、贈り物にするだけです!」
「百五十個も……?」
八百屋のおばさまには大変困惑されましたが、無事購入できました。まぁ、所持金がほとんど消えましたけどね!
ですが、モモさんにご挨拶するための気合い入れにも完璧な買い物だったので問題ありません。お金はモンスターを倒して稼げばいいんです。
早速、モモさんを探しにはじまりの街へ――
「ねぇママ、羽うさぎちゃん、どこにいるかなー?」
「さぁ、今日は見てないわねぇ」
異世界の住人の親子が話をしています。
羽うさぎさんって、まるでモモさんのことを話しているかのようですね? この街にもいるんでしょうか?
「異世界の住人の羽うさぎ……!?」
胸が高鳴ります。きっと可愛いもふもふのはずです。だって可愛い男の子がにこにこと微笑んで話しているんですもん。子どもの心をキャッチする可愛さ、期待しないわけないですよ!
「あれ、でも、もしかしたら、異世界の住人じゃなくてモモさん……?」
ちょっと冷静さを思い出して、考え直します。
モモさんがこの街に来ている可能性もありますよね? そういえば、はじまりの街でモモさんウォッチング員からの報告が最近ないような……?
とりあえず、街中を歩いて話題の羽うさぎさんを探してみます。
今ならこの街にプレイヤーがほとんどいませんし、モモさんに話しかけてもご迷惑はかけないでしょう。ぜひご挨拶したいです!
――三十分後。
「……いません」
いくら歩いても、もふもふ可愛いお姿が見つかりません。
やはりモモさんはいないのでしょうか? でも、男の子が話していた羽うさぎさんもいないんですよねぇ?
道端で立ち止まり、掲示板で尋ねてみましたが、モモさんははじまりの街で目撃されていないようです。
うーん、もうちょっとこの街を捜索してみましょう。お店に入っている可能性もあるので、もっと念入りに確認した方がよさそうですね。
――さらに一時間後。
「見つかりません! 猫ちゃんさえいないって、どういうことです!?」
はじまりの街では道を歩いている猫を見かけることもあったのに! あそこが港街だったからですかね? この街では小鳥くらいしか見かけません。癒やしが足りない……!
ひとまず、掲示板で報告してみます。モモさんの目撃情報はないでしょうか?
私が書き込むと、『第二の街にいるのは野生の希少種さん』という話題で盛り上がりました。野生でもいいから見たいです!
うぅ、と泣きそうになっていたところで、ようやくモモさんの目撃情報がありました。
「モモさん、はじまりの街の西の港に……?」
ありがたい報告ですけど、それなら一日中第二の街で探していた私の苦労っていったい……?
いえ、これはきっとモモさんに会うために乗り越えなければならない試練だったのです。そういうことにしましょう。
ご挨拶に向けてずっと緊張していたので、いつもより疲労感があります。勇気がしぼんだ感じになってます。こんな状態では、ちゃんとご挨拶できないかもしれません。
そんなことを掲示板で少し愚痴ったら、励ましの言葉をもらいました。
「うわーん、モフラーはみんな優しい、大好き!」
ちょっと元気が湧きましたよ。
目撃情報があったのですから、ご挨拶に向かいましょう。
モモさんの釣りを邪魔することのないタイミングにしないといけませんが……いや、これからはじまりの街に向かうのに時間がかかりますし、ちょうどいいかもしれませんね。
ボス戦はリュウエンさん頼りになってしまったのが悔しいですねぇ。物理攻撃がボスに通りにくくて……火魔術を覚えておけばよかったです。能力を高めてから再挑戦しましょう。
反省はこれくらいにして。
もう少し冒険者ギルドで話をする、と言うリュウエンさんと別れて、市場にやってきました。目的はもちろん桃ですよ!
「ボスドロのおかげで懐あったかーい。これで桃をたくさん買えます♪」
第二の街ははじまりの街よりすごく賑わってます。野菜や果物がお安い! 肉の種類も豊富ですねー。
でも、お魚は全然見ません。はじまりの街ほどじゃなくても海は近いはずなんですけど。海との間にある岩山は攻略が難しいポイントなのかもしれません。
「あらまぁ、狐のお嬢ちゃん、綺麗な格好ねぇ」
市場で八百屋のおばさまに声をかけられました。褒めてもらえて嬉しいです。
私の格好は白と朱色を基調としたミニ丈の着物っぽい感じです。ニーハイソックスとブーツを合わせて、ギャップがあって可愛いのです。ちょっと花魁のような色っぽさもあって私好みなんですよ。
「ふふっ、ありがとうございます。あ、ここ、桃を売ってますか?」
「もちろん売ってるよ。【普通の桃】と【白美桃】と【王桃】の三種類あるけど、どれにする?」
桃だけで三種類! そのこだわりは素晴らしいです。さすが味覚の再現が素晴らしいゲームと言われているだけありますね。
モモさんはどんな桃が好きなんでしょう?
……わからないので、全部買っちゃいます! 小象討伐のおかげで、お金はありますからね。
「全部五十個ずつください!」
「はっ、え、あ、百五十個も桃を買うのかい……? あなたパティシエさん?」
「いえ、贈り物にするだけです!」
「百五十個も……?」
八百屋のおばさまには大変困惑されましたが、無事購入できました。まぁ、所持金がほとんど消えましたけどね!
ですが、モモさんにご挨拶するための気合い入れにも完璧な買い物だったので問題ありません。お金はモンスターを倒して稼げばいいんです。
早速、モモさんを探しにはじまりの街へ――
「ねぇママ、羽うさぎちゃん、どこにいるかなー?」
「さぁ、今日は見てないわねぇ」
異世界の住人の親子が話をしています。
羽うさぎさんって、まるでモモさんのことを話しているかのようですね? この街にもいるんでしょうか?
「異世界の住人の羽うさぎ……!?」
胸が高鳴ります。きっと可愛いもふもふのはずです。だって可愛い男の子がにこにこと微笑んで話しているんですもん。子どもの心をキャッチする可愛さ、期待しないわけないですよ!
「あれ、でも、もしかしたら、異世界の住人じゃなくてモモさん……?」
ちょっと冷静さを思い出して、考え直します。
モモさんがこの街に来ている可能性もありますよね? そういえば、はじまりの街でモモさんウォッチング員からの報告が最近ないような……?
とりあえず、街中を歩いて話題の羽うさぎさんを探してみます。
今ならこの街にプレイヤーがほとんどいませんし、モモさんに話しかけてもご迷惑はかけないでしょう。ぜひご挨拶したいです!
――三十分後。
「……いません」
いくら歩いても、もふもふ可愛いお姿が見つかりません。
やはりモモさんはいないのでしょうか? でも、男の子が話していた羽うさぎさんもいないんですよねぇ?
道端で立ち止まり、掲示板で尋ねてみましたが、モモさんははじまりの街で目撃されていないようです。
うーん、もうちょっとこの街を捜索してみましょう。お店に入っている可能性もあるので、もっと念入りに確認した方がよさそうですね。
――さらに一時間後。
「見つかりません! 猫ちゃんさえいないって、どういうことです!?」
はじまりの街では道を歩いている猫を見かけることもあったのに! あそこが港街だったからですかね? この街では小鳥くらいしか見かけません。癒やしが足りない……!
ひとまず、掲示板で報告してみます。モモさんの目撃情報はないでしょうか?
私が書き込むと、『第二の街にいるのは野生の希少種さん』という話題で盛り上がりました。野生でもいいから見たいです!
うぅ、と泣きそうになっていたところで、ようやくモモさんの目撃情報がありました。
「モモさん、はじまりの街の西の港に……?」
ありがたい報告ですけど、それなら一日中第二の街で探していた私の苦労っていったい……?
いえ、これはきっとモモさんに会うために乗り越えなければならない試練だったのです。そういうことにしましょう。
ご挨拶に向けてずっと緊張していたので、いつもより疲労感があります。勇気がしぼんだ感じになってます。こんな状態では、ちゃんとご挨拶できないかもしれません。
そんなことを掲示板で少し愚痴ったら、励ましの言葉をもらいました。
「うわーん、モフラーはみんな優しい、大好き!」
ちょっと元気が湧きましたよ。
目撃情報があったのですから、ご挨拶に向かいましょう。
モモさんの釣りを邪魔することのないタイミングにしないといけませんが……いや、これからはじまりの街に向かうのに時間がかかりますし、ちょうどいいかもしれませんね。
1,214
あなたにおすすめの小説
もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜
きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。
遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。
作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓――
今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!?
ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。
癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!
異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~
黒蓬
ファンタジー
白石悠真は、ある日突然異世界へ召喚される。しかし、特別なスキルとして授かったのは「牧場経営」。戦えない彼は、与えられた土地で牧場を経営し、食料面での貢献を望まれる。ところが、彼の牧場には不思議な動物たちが次々と集まってきて――!? 異世界でのんびり牧場ライフ、始まります!
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
────────
自筆です。
【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜
るあか
ファンタジー
僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。
でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。
どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。
そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。
家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。
嘘つきと呼ばれた精霊使いの私
ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。
異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
辺境の町バラムに暮らす青年マルク。
子どもの頃から繰り返し見る夢の影響で、自分が日本(地球)から転生したことを知る。
マルクは日本にいた時、カフェを経営していたが、同業者からの嫌がらせ、客からの理不尽なクレーム、従業員の裏切りで店は閉店に追い込まれた。
その後、悲嘆に暮れた彼は酒浸りになり、階段を踏み外して命を落とした。
当時の記憶が復活した結果、マルクは今度こそ店を経営して成功することを誓う。
そんな彼が思いついたのが焼肉屋だった。
マルクは冒険者をして資金を集めて、念願の店をオープンする。
焼肉をする文化がないため、その斬新さから店は繁盛していった。
やがて、物珍しさに惹かれた美食家エルフや凄腕冒険者が店を訪れる。
HOTランキング1位になることができました!
皆さま、ありがとうございます。
他社の投稿サイトにも掲載しています。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。