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9章 もふうさフィーバー
326.会議に参加するよ
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タマモから届いていた地図を頼りに、もふもふ教教会に向かう。すると――
「おお! 桃がいっぱい!」
領主城の近くに、桃の木がたくさん植えられた一画があった。
大通りから続く白い石畳の道沿いには、たくさんの桃の木が並び、その道の先に淡い桃色の建物がある。
建物は三階建てくらいの高さで、見た目は東京ドームみたいな感じ。あんまり教会っぽくないかも。
白い石畳みの両脇、桃の木の合間に時折僕そっくりの石像があって、スラリンやユキマルが嬉しそうだ。
ストルムは『なにこれ……?』と少し戸惑ってた。でも、ライブと同じですぐに慣れてくれる気がする。
観賞しながら教会内に入ると、大きな扉が見えた。片側だけ開いたままになっていて、その先にたくさんの人がいるのが見える。
「入ってすぐに会議場があるのかー。左右は通路? 会議場をぐるっと通路が囲んでる感じかな」
予想しながら、会議場に向かった。教会内を歩いて見て回りたいけど、そろそろ会議が始まる時間だし。
会議場は円形で、奥の方に大きなステージがあった。
壁に沿うように二階席もあって、内観もすごく東京ドームっぽい。さすがに何万人の収容数はなさそうだけど。
それでもすごく広い空間にあるたくさんの席を埋め尽くすように、人の姿とざわめきが満ちていた。
「……広ーい、すごーい」
圧倒されて、そう呟きながら固まってしまう。
そんな僕に気づいたタマモが駆け寄ってきた。さっきまでもふもふ教の人たちと深刻そうな顔で何かを話し合ってたみたいなんだけど、大丈夫かな?
「モモさん、いらっしゃいませ!」
「タマモ、こんちゃー。間に合った?」
「はい、こんにちは。大丈夫ですよ。でも、そろそろ会議を始めるので、こちらにどうぞ」
にこやかな表情のタマモに案内されるがままについていくと――ステージ上の席に案内された。
え、僕、どんな会議をするかも知らないのに、ここにいて大丈夫?
ちょっぴり不安になって、席に座りながらタマモを見上げる。スラリンたちは自由に動き回って歓声を受けていた。
「モモさんは私たちの神なので。ここで会議をお見守りくださいね」
「あ、そういう感じね。りょうかーい」
マスコット的な感じでここにいるだけでいいらしい。タマモが会議を進めてくれるなら問題なさそうだね。
安心しながら、周囲を見渡す。
僕がいる席の右隣にはタマモがいる。そして、左隣にはルトやリリが座ってた。タマモの右側にはメアリ、ユリなど馴染みのメンバーが揃ってる。
ルトはちょっと面倒くさそうな顔をしてるけど、リリはにこにこと笑いながらメアリたちとおしゃべりを楽しんでるみたい。
ふとルトと目が合ったので微笑んで話しかけてみる。
「やほやほ。さっきシーズンイベントのお知らせがあったね」
「だな。早くバトルしに行きたかったのに……」
「お、ルトはやっぱり戦う感じかぁ」
さすがバトルジャンキーと思いながら僕が頷くと、ルトは不思議そうに首を傾げた。
「そりゃ、イベントをこなすためには戦わないといけないだろ?」
「ううん。それがそうとも言えなくて――」
モンちゃんから入手した情報を僕が教えようとしたところで、タマモの「それでは、これよりもふもふ教第一回大会議を始めます!」という宣言が聞こえてきた。
情報は後でね、とルトに目配せしてから正面を向く。たくさんのキラキラとした眼差しを感じた。
ここにいるみんなが僕をもふもふ神と思ってるなんて、今さらだけど不思議な気分だ。プレイヤーだけでなく、異世界の住人も結構たくさんいるみたいだし。
「栄えある第一回大会議には、もふもふ神さまであられるモモさんにもご参加いただくことになりました!」
タマモが嬉しそうに言った途端、拍手と歓声が湧いた。
こんなに喜ばれたら、ファンサービスしないわけにはいかないよねー。そう思って、お手振りとウィンクをしたら、さらに歓声が大きくなった。
むふふ、ライブコンサートじゃなくてもこんなに熱狂してもらえるんだね。もふもふ神アイドルとしてとっても幸せだよ。
タマモは壇上にいるメンバーを紹介した後、真剣な表情で言葉を続ける。
「時間が限られていますので、早速議題に移ります。まずは、急遽議題にすることになったシーズンイベントについてです」
お、その話を議題にするんだ? それなら、僕も発言した方がいいかも。
ひとまずタマモの話に耳を傾ける。
「――今回のイベントでは宝石兎を倒したり、卵を奪ったりすることが、イベント参加の必須の条件になっています。しかし、私たちもふもふ教が集めた情報によりますと、宝石兎はとっても可愛いモンスターで……」
タマモがスッと上を指すと、半透明の大きなスクリーンが展開された。客席を向く僕たちの前にはそれぞれ小さなスクリーンが現れて、うさぎ型モンスターの写真が映し出される。
これが宝石兎なんだろうな。額に青い宝石がついていて、体色も薄青色だ。水属性かな?
モンちゃんの情報が正しいなら、いろんな色の子がいるらしいし、会うのが楽しみ。
可愛いなぁ。垂れ耳うさぎに似てる。宝石兎は僕と違って、ちゃんと四本足で歩くみたいだ。
卵をお腹の下に抱えて、潤んだ目で見上げてくるポーズが、庇護欲をそそる。
……これ倒すの、どんだけ精神が強ければできるの? 罪悪感を刺激するのはよくないよ、運営さん!
「ご覧のように、卵を取ろうとすると『え、取るの? 僕の宝物だよ?』と訴えるような潤んだ眼差しで見上げてきます。この視線を受けて、卵を取れるもふもふ教の人は絶対にいないでしょうっ! この写真を撮った人も、泣きながら謝り、すぐさま撤退しました」
タマモが重々しい声音で言う。
会議場内にいる人全員が、「当然だね」と言いたげに真剣な顔で頷いた。
「――このイベントをどう乗り越えるか。皆様と一緒に協議したいと思います」
そう言い切ったタマモが、意見を求めるように会議場内を見渡す。でも、発言者は誰もいなかった。
今回のイベントがもふもふ教設立以来最難関の問題になるのは、僕の予想通りな感じだ。もふもふ教の最大の弱点は、もふもふ可愛い子だもんねぇ。
よし、ここは僕が役立つ情報をあげなくっちゃ!
みんな喜んでくれるだろうなー。
「おお! 桃がいっぱい!」
領主城の近くに、桃の木がたくさん植えられた一画があった。
大通りから続く白い石畳の道沿いには、たくさんの桃の木が並び、その道の先に淡い桃色の建物がある。
建物は三階建てくらいの高さで、見た目は東京ドームみたいな感じ。あんまり教会っぽくないかも。
白い石畳みの両脇、桃の木の合間に時折僕そっくりの石像があって、スラリンやユキマルが嬉しそうだ。
ストルムは『なにこれ……?』と少し戸惑ってた。でも、ライブと同じですぐに慣れてくれる気がする。
観賞しながら教会内に入ると、大きな扉が見えた。片側だけ開いたままになっていて、その先にたくさんの人がいるのが見える。
「入ってすぐに会議場があるのかー。左右は通路? 会議場をぐるっと通路が囲んでる感じかな」
予想しながら、会議場に向かった。教会内を歩いて見て回りたいけど、そろそろ会議が始まる時間だし。
会議場は円形で、奥の方に大きなステージがあった。
壁に沿うように二階席もあって、内観もすごく東京ドームっぽい。さすがに何万人の収容数はなさそうだけど。
それでもすごく広い空間にあるたくさんの席を埋め尽くすように、人の姿とざわめきが満ちていた。
「……広ーい、すごーい」
圧倒されて、そう呟きながら固まってしまう。
そんな僕に気づいたタマモが駆け寄ってきた。さっきまでもふもふ教の人たちと深刻そうな顔で何かを話し合ってたみたいなんだけど、大丈夫かな?
「モモさん、いらっしゃいませ!」
「タマモ、こんちゃー。間に合った?」
「はい、こんにちは。大丈夫ですよ。でも、そろそろ会議を始めるので、こちらにどうぞ」
にこやかな表情のタマモに案内されるがままについていくと――ステージ上の席に案内された。
え、僕、どんな会議をするかも知らないのに、ここにいて大丈夫?
ちょっぴり不安になって、席に座りながらタマモを見上げる。スラリンたちは自由に動き回って歓声を受けていた。
「モモさんは私たちの神なので。ここで会議をお見守りくださいね」
「あ、そういう感じね。りょうかーい」
マスコット的な感じでここにいるだけでいいらしい。タマモが会議を進めてくれるなら問題なさそうだね。
安心しながら、周囲を見渡す。
僕がいる席の右隣にはタマモがいる。そして、左隣にはルトやリリが座ってた。タマモの右側にはメアリ、ユリなど馴染みのメンバーが揃ってる。
ルトはちょっと面倒くさそうな顔をしてるけど、リリはにこにこと笑いながらメアリたちとおしゃべりを楽しんでるみたい。
ふとルトと目が合ったので微笑んで話しかけてみる。
「やほやほ。さっきシーズンイベントのお知らせがあったね」
「だな。早くバトルしに行きたかったのに……」
「お、ルトはやっぱり戦う感じかぁ」
さすがバトルジャンキーと思いながら僕が頷くと、ルトは不思議そうに首を傾げた。
「そりゃ、イベントをこなすためには戦わないといけないだろ?」
「ううん。それがそうとも言えなくて――」
モンちゃんから入手した情報を僕が教えようとしたところで、タマモの「それでは、これよりもふもふ教第一回大会議を始めます!」という宣言が聞こえてきた。
情報は後でね、とルトに目配せしてから正面を向く。たくさんのキラキラとした眼差しを感じた。
ここにいるみんなが僕をもふもふ神と思ってるなんて、今さらだけど不思議な気分だ。プレイヤーだけでなく、異世界の住人も結構たくさんいるみたいだし。
「栄えある第一回大会議には、もふもふ神さまであられるモモさんにもご参加いただくことになりました!」
タマモが嬉しそうに言った途端、拍手と歓声が湧いた。
こんなに喜ばれたら、ファンサービスしないわけにはいかないよねー。そう思って、お手振りとウィンクをしたら、さらに歓声が大きくなった。
むふふ、ライブコンサートじゃなくてもこんなに熱狂してもらえるんだね。もふもふ神アイドルとしてとっても幸せだよ。
タマモは壇上にいるメンバーを紹介した後、真剣な表情で言葉を続ける。
「時間が限られていますので、早速議題に移ります。まずは、急遽議題にすることになったシーズンイベントについてです」
お、その話を議題にするんだ? それなら、僕も発言した方がいいかも。
ひとまずタマモの話に耳を傾ける。
「――今回のイベントでは宝石兎を倒したり、卵を奪ったりすることが、イベント参加の必須の条件になっています。しかし、私たちもふもふ教が集めた情報によりますと、宝石兎はとっても可愛いモンスターで……」
タマモがスッと上を指すと、半透明の大きなスクリーンが展開された。客席を向く僕たちの前にはそれぞれ小さなスクリーンが現れて、うさぎ型モンスターの写真が映し出される。
これが宝石兎なんだろうな。額に青い宝石がついていて、体色も薄青色だ。水属性かな?
モンちゃんの情報が正しいなら、いろんな色の子がいるらしいし、会うのが楽しみ。
可愛いなぁ。垂れ耳うさぎに似てる。宝石兎は僕と違って、ちゃんと四本足で歩くみたいだ。
卵をお腹の下に抱えて、潤んだ目で見上げてくるポーズが、庇護欲をそそる。
……これ倒すの、どんだけ精神が強ければできるの? 罪悪感を刺激するのはよくないよ、運営さん!
「ご覧のように、卵を取ろうとすると『え、取るの? 僕の宝物だよ?』と訴えるような潤んだ眼差しで見上げてきます。この視線を受けて、卵を取れるもふもふ教の人は絶対にいないでしょうっ! この写真を撮った人も、泣きながら謝り、すぐさま撤退しました」
タマモが重々しい声音で言う。
会議場内にいる人全員が、「当然だね」と言いたげに真剣な顔で頷いた。
「――このイベントをどう乗り越えるか。皆様と一緒に協議したいと思います」
そう言い切ったタマモが、意見を求めるように会議場内を見渡す。でも、発言者は誰もいなかった。
今回のイベントがもふもふ教設立以来最難関の問題になるのは、僕の予想通りな感じだ。もふもふ教の最大の弱点は、もふもふ可愛い子だもんねぇ。
よし、ここは僕が役立つ情報をあげなくっちゃ!
みんな喜んでくれるだろうなー。
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