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9章 もふうさフィーバー
339.共闘します!
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ヤナに「これからどうするの?」と聞いたら、「できたら、モモさんのパーティにいれてもらって、一緒に氷妖樹討伐できませんかね~?」と言われたので、一緒に行動することになった。パーティ枠が一つ余っててよかったね。
それにしても、やられたばっかりで再挑戦しようと考えられるなんて、ヤナって打たれ強い。僕だったら一回街に戻って仕切り直すよ。
テクテクと歩いて、ヤナが氷妖樹と遭遇したという場所に向かってみる。
「……だいぶ遠くまで飛ばされたんだね」
「そうですねぇ。いやー、まさしく危機一髪です!」
アハハ、と笑うヤナは、危機一髪って言葉をちゃんと理解してるのか怪しい。
ジトッと見つめていたら、僕はふとあることに気づいた。
「一緒にパーティ組んでた人たちはどうなったの?」
「死に戻りしたらしいですよ。楽しそうな感じのフレンドチャットが来てました」
ヤナが明るい雰囲気で元パーティメンバーから届いたチャットの内容を教えてくれたけど——『一人だけ生き残ってるとかズルい!』『この骸骨野郎!』『冗談は存在だけにせーよ!』って、本当に楽しそうって理解していいの?
なんとも言えない気分でヤナを見つめる。
まぁ、こういう遠慮のない言い合いをできるのが、友だちの証なのかな? 僕はノーセンキューだけど。
「あ、ついでに、モモさんに救出してもらったから一緒に氷妖樹に挑む、って報告したら、変な返事があったんですよねー」
不思議そうにヤナが首を傾げる。
元パーティメンバーからの返事とは、『あ……抜け駆けか。なるほど、骸骨成仏しろよ』『お前、そんな修羅の道を歩むほど追い込まれてたのか……? なんか悪かった。狂信者に気をつけて強く生きろ』『死死死』だったらしい。
「確かに『死死死』は変だね。というかひどいよ」
「いや、それはあいつがもふもふ教なだけなんで、変じゃないですし、わりと正常な反応です。冗談でそれくらいは言います」
「え?」
「え?」
きょとんとしてるヤナと見つめ合う。僕の常識と違うことを言われてる気がするね?
「——俺が変って思ったのは、ですねー。もふもふ教は過激な団体じゃないですし、モモさんとパーティを組んだくらいで袋叩きには遭わないはずだ、ってことなんですよ。風評被害が生じてる気がします」
僕の疑問を置き去りにして、ヤナが腕を組みながら真剣な雰囲気で悩む。
もふもふ教がもふもふを愛でてるだけの団体で過激じゃない、っていうのは僕も同意見だよ……この認識はズレてないよね?
「ぴぅ(モンスターの気配だよ)」
「あ、氷妖樹かな?」
「ふあーっ、いよいよですね、昂ります!」
ヤナが考えごとをポイッと放り投げて、戦闘態勢を整える。一緒に戦うの久しぶり、っていうか本格的なのは初めてかも?
もう転職ミッションに取り組めるってことは、初めて会った時より強くなってるんだろうなぁ。僕も負けないようにがんばらなきゃ。
「氷妖樹の情報はある?」
「鑑定してみたらわかりますけど、弱点は火属性です。あと、氷の枝が鞭のように襲ってくるので、回避するか火で破壊してください」
「りょーかい!」
ちゃんと情報を持ってたヤナにニコニコと笑っちゃう。おかげでバトルを始める前に余裕ができたよー。
「ぴぅ(いたよ)」
「おぉ……大きいね」
辿り着いたのはたくさんの樹氷が並ぶ斜面で、そこに氷で覆われた大きな木があった。幹の部分にジャック・オー・ランタンみたいな顔がある。
——————
【氷妖樹】
氷・木属性のモンスター
見た目は氷で覆われた大木
氷や枝を自在に操り攻撃してくる
物理・魔力攻撃力、防御力が高いが、根を下ろしたところからは移動できないという弱点がある
枝を突き刺した相手から体力を吸収して回復する
〈スキル〉
枝鞭、氷柱、氷礫、ドレイン、氷盾
——————
鑑定したら、厄介なことがわかった。
枝を突き刺されたら、氷妖樹の体力が回復しちゃうのか。それは避けないと。
「みんな、敵を回復させないように、枝の攻撃は全力で避けるか迎撃してね!」
「そこで迎撃の選択肢があるのが、マジ強者。一生ついていきます!」
「お断りします!」
ヤナに反射的に言い返したところで、バトルが開始した。
いきなり飛んでくる氷礫を、一斉に回避する。
ヒスイが疾風スキルでパーティ全員の素早さを上げ、さらに鎌鼬スキルで氷妖樹を攻撃する。
僕もバフ・デバフを掛けるところから始めるよー。
「【天からの祝福】【天の祈り】」
これに加えて、歌を歌って『意気高揚』と『回復効果アップ』を重ねがけ。そして、敵にはデバフを。
「——【花舞】!」
たくさんの花びらが雪にまじって飛び、氷妖樹を攻撃する。そして、しっかりと暗闇のデバフを与えた。
僕たちを見失って、枝や氷柱が誰もいないところを攻撃し始める。
「おー、モモさん、最高です!」
明るい声で称賛すると、ヤナは「では、俺もいっちょ——」と杖を氷妖樹に向けて詠唱を始めた。
結構長く詠唱してる。大技なのかな?
どんな攻撃が飛び出すのか気になったから、氷妖樹に邪魔されないように、僕たちはひたすら回避と攻撃を繰り返す。
ユキマルの謎光線スキルで、毒状態にできたのは幸運だった。
「【炎爆裂】!」
僕の火魔術で氷妖樹が一瞬炎に包まれて、爆発するような音が響いた。さすがよく効く属性なだけあって、大ダメージを与えられたみたいだ。やったね!
そのすぐ後に、ヤナの詠唱が終わったらしい。なんか怪しげな黒いモヤがヤナから溢れてる気がする……
「【闇霊の行進】!」
ヤナから溢れた闇がブワッと膨れ上がり、氷妖樹に放たれ、全体を覆い尽くした。
「……ヒエー……ヤナこわい……」
氷妖樹の体力が四分の一ほど減ったのを見て、ちょっとおののいちゃったよ。
それにしても、やられたばっかりで再挑戦しようと考えられるなんて、ヤナって打たれ強い。僕だったら一回街に戻って仕切り直すよ。
テクテクと歩いて、ヤナが氷妖樹と遭遇したという場所に向かってみる。
「……だいぶ遠くまで飛ばされたんだね」
「そうですねぇ。いやー、まさしく危機一髪です!」
アハハ、と笑うヤナは、危機一髪って言葉をちゃんと理解してるのか怪しい。
ジトッと見つめていたら、僕はふとあることに気づいた。
「一緒にパーティ組んでた人たちはどうなったの?」
「死に戻りしたらしいですよ。楽しそうな感じのフレンドチャットが来てました」
ヤナが明るい雰囲気で元パーティメンバーから届いたチャットの内容を教えてくれたけど——『一人だけ生き残ってるとかズルい!』『この骸骨野郎!』『冗談は存在だけにせーよ!』って、本当に楽しそうって理解していいの?
なんとも言えない気分でヤナを見つめる。
まぁ、こういう遠慮のない言い合いをできるのが、友だちの証なのかな? 僕はノーセンキューだけど。
「あ、ついでに、モモさんに救出してもらったから一緒に氷妖樹に挑む、って報告したら、変な返事があったんですよねー」
不思議そうにヤナが首を傾げる。
元パーティメンバーからの返事とは、『あ……抜け駆けか。なるほど、骸骨成仏しろよ』『お前、そんな修羅の道を歩むほど追い込まれてたのか……? なんか悪かった。狂信者に気をつけて強く生きろ』『死死死』だったらしい。
「確かに『死死死』は変だね。というかひどいよ」
「いや、それはあいつがもふもふ教なだけなんで、変じゃないですし、わりと正常な反応です。冗談でそれくらいは言います」
「え?」
「え?」
きょとんとしてるヤナと見つめ合う。僕の常識と違うことを言われてる気がするね?
「——俺が変って思ったのは、ですねー。もふもふ教は過激な団体じゃないですし、モモさんとパーティを組んだくらいで袋叩きには遭わないはずだ、ってことなんですよ。風評被害が生じてる気がします」
僕の疑問を置き去りにして、ヤナが腕を組みながら真剣な雰囲気で悩む。
もふもふ教がもふもふを愛でてるだけの団体で過激じゃない、っていうのは僕も同意見だよ……この認識はズレてないよね?
「ぴぅ(モンスターの気配だよ)」
「あ、氷妖樹かな?」
「ふあーっ、いよいよですね、昂ります!」
ヤナが考えごとをポイッと放り投げて、戦闘態勢を整える。一緒に戦うの久しぶり、っていうか本格的なのは初めてかも?
もう転職ミッションに取り組めるってことは、初めて会った時より強くなってるんだろうなぁ。僕も負けないようにがんばらなきゃ。
「氷妖樹の情報はある?」
「鑑定してみたらわかりますけど、弱点は火属性です。あと、氷の枝が鞭のように襲ってくるので、回避するか火で破壊してください」
「りょーかい!」
ちゃんと情報を持ってたヤナにニコニコと笑っちゃう。おかげでバトルを始める前に余裕ができたよー。
「ぴぅ(いたよ)」
「おぉ……大きいね」
辿り着いたのはたくさんの樹氷が並ぶ斜面で、そこに氷で覆われた大きな木があった。幹の部分にジャック・オー・ランタンみたいな顔がある。
——————
【氷妖樹】
氷・木属性のモンスター
見た目は氷で覆われた大木
氷や枝を自在に操り攻撃してくる
物理・魔力攻撃力、防御力が高いが、根を下ろしたところからは移動できないという弱点がある
枝を突き刺した相手から体力を吸収して回復する
〈スキル〉
枝鞭、氷柱、氷礫、ドレイン、氷盾
——————
鑑定したら、厄介なことがわかった。
枝を突き刺されたら、氷妖樹の体力が回復しちゃうのか。それは避けないと。
「みんな、敵を回復させないように、枝の攻撃は全力で避けるか迎撃してね!」
「そこで迎撃の選択肢があるのが、マジ強者。一生ついていきます!」
「お断りします!」
ヤナに反射的に言い返したところで、バトルが開始した。
いきなり飛んでくる氷礫を、一斉に回避する。
ヒスイが疾風スキルでパーティ全員の素早さを上げ、さらに鎌鼬スキルで氷妖樹を攻撃する。
僕もバフ・デバフを掛けるところから始めるよー。
「【天からの祝福】【天の祈り】」
これに加えて、歌を歌って『意気高揚』と『回復効果アップ』を重ねがけ。そして、敵にはデバフを。
「——【花舞】!」
たくさんの花びらが雪にまじって飛び、氷妖樹を攻撃する。そして、しっかりと暗闇のデバフを与えた。
僕たちを見失って、枝や氷柱が誰もいないところを攻撃し始める。
「おー、モモさん、最高です!」
明るい声で称賛すると、ヤナは「では、俺もいっちょ——」と杖を氷妖樹に向けて詠唱を始めた。
結構長く詠唱してる。大技なのかな?
どんな攻撃が飛び出すのか気になったから、氷妖樹に邪魔されないように、僕たちはひたすら回避と攻撃を繰り返す。
ユキマルの謎光線スキルで、毒状態にできたのは幸運だった。
「【炎爆裂】!」
僕の火魔術で氷妖樹が一瞬炎に包まれて、爆発するような音が響いた。さすがよく効く属性なだけあって、大ダメージを与えられたみたいだ。やったね!
そのすぐ後に、ヤナの詠唱が終わったらしい。なんか怪しげな黒いモヤがヤナから溢れてる気がする……
「【闇霊の行進】!」
ヤナから溢れた闇がブワッと膨れ上がり、氷妖樹に放たれ、全体を覆い尽くした。
「……ヒエー……ヤナこわい……」
氷妖樹の体力が四分の一ほど減ったのを見て、ちょっとおののいちゃったよ。
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