もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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9章 もふうさフィーバー

342.不思議な場所です

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 門扉を大きく開けると、そこには白い闇があった。
 ここに飛び込めばいいのかな。行っちゃうよ?

「……みんなで一斉に行こうね!」

 ちょっとビビってるとかじゃないんだよ。ほんとだよ。
 心の中でそんな主張をしても誰にも伝わらないけど、そもそも僕をビビりと揶揄するような人はここにはいないし、問題ない。

「きゅぃ(わかった!)」
「ぴぅ(ちょっと怖いけどね……)」

 スラリンとユキマルがぴょんと跳ねる。
 オギンとヒスイは『いつでもどうぞ』と言いたげな泰然とした雰囲気だ。オギンはともかく、ヒスイも意外と肝が据わってるなぁ。

「三、二、一……ゴー!」

 気合いを入れてカウントして、ぴょんと白い闇に飛び込む。
 パチン、とシャボン玉が割れるような微かな衝撃があって、一気に視界が鮮やかに色づいた。

「——ふあ……すごい、綺麗……!」

 見渡す限りに続く花畑。様々な種類のカラフルな花が風に吹かれて揺れている。
 空は薄黄色で、時々オーロラのような光の帯が現れては消えていった。

 不思議な場所だ。僕たちがさっきまでいた霊峰とは空気からして違う気がする。

「きゅぃ(ちょっと怖いところだね)」
「そう? 想像してたより、平和な感じだけど。楽園ってこんな感じかなー」
「ぴぅ(楽園って怖いところなの……?)」
「え、そんなに怖い?」

 スラリンとユキマルが『怖い、怖い』と身を寄せ合っている。
 僕はそんなの感じないけどなぁ。

 オギンとヒスイは怖いとは思ってなさそうだけど、「キュオ(あまり長居はしたくないわねぇ)」「にゃ(相性がよくない感じがするにゃ)」と語り合っていた。

 この感覚の差、なんだろうね? 僕は居心地よく感じるよ。
 うーん、と首を傾げながら、全鑑定スキルを使ってみる。

——————
天界花アンジュフラワー】レア度☆☆☆☆☆☆
 時空が異なる場所に咲くと言われている花
 光属性の魔力が含まれている

天界石アンジュストーン】レア度☆☆☆☆☆☆
 時空が異なる場所にあると言われている白い石
 光属性の魔力が含まれている
——————

「……なるほど? ここって、もしかして、天界?」

 天界って、天国とか楽園とかがある場所なのでは? え、僕たち昇天しちゃった?

 驚きのあまりちょっぴりパニックになったけど、いつも通りに採集した。折角来たんだから、成果欲しいもんねー。どんなアイテムを作れるかな。

「キュオ(恐れないで採集できるモモはすごいわ……)」
「え、誰かに怒られちゃう?」

 オギンに引かれた気がする。まさか、採集ダメだった!?
 キョロキョロと周囲を見渡してみる。僕たち以外には誰もいなさそうだけど——

『あら、あなた、ここで何をしているの?』
「ふにゃっ!?」

 いきなり目の前に花のドレスを着た小人が現れた。透明感のある羽で飛んでる。ファンタジー系の作品でよく見る妖精みたいな見た目だ。

「——え、君、何?」
『集まりに遅れちゃうわよ。ほら、みんなもう向こうにいるわ』
「は? みんなって……?」

 僕が質問をしても、小人さんは何も答えてくれなくて、『急いで。そろそろ始まるわよ』と急かされる。
 まずは説明してくれないかな!

 グイグイと背中を押されて、しかたなく従って歩く。
 これ、どこに向かってるの? 誰が集まってるの?
 よくわかんないけど、とりあえず小人さんを鑑定しよう。

——————
花精霊フラワーフェアリー
 木属性のモンスターで、精霊の一種
 基本的に戦いを挑むことはなく、世界を花で満たそうと各地を飛び回っている
 普段は不可視の存在であり、姿を見られるのは限られた場所だけ
——————

 妖精じゃなくて、精霊だったかぁ。違いはよく知らないけど。
 世界を花で満たそうとしてるなんて、凄く平和的で素敵。

「きゅぃ(これ、僕たちも行っていいの?)」
「キュオ(何も言われてないからいいんじゃないかしら?)」

 スラリンたちが僕について来ながら話していた。
 急かされてるのは僕だけで、花精霊フラワーフェアリーはスラリンたちが見えてないみたいにスルーしてるし、不安になるのは仕方ない。
 急かされてる僕も、目的地がわからなくてちょっぴり怖いです。

 そんなことを思いながら花畑をテクテクと歩いていると、ようやく花精霊フラワーフェアリーが止まった。
 目の前に大きな泉がある。その周囲をたくさんの天兎アンジュラパが囲んでいた。

「えっ、天兎アンジュラパがいっぱい!?」
『あなたも天兎アンジュラパでしょ? ——みんな、遅れていた仲間が来たわよー』

 花精霊フラワーフェアリー天兎アンジュラパの集団に声を掛ける。天兎アンジュラパたちが一斉に僕たちを振り向いた。

 はわわ……仲間じゃない、って言われたらどうしよう。
 僕、仲間だって嘘ついたわけじゃないんだよ。花精霊フラワーフェアリーが誤解して、勝手にここにつれてきたんだよ。

 心の中で言い訳し、緊張しながら天兎アンジュラパたちを見つめる。
 前にイグニスさんに乗って出会った天兎アンジュラパはいるかな? 個体の区別がつかないや……

『あの子、どこの子?』
『知らなーい』
『でも、僕たちと一緒』
『んー、一緒かなー?』
『桃色……モアの友だち?』
『色が似てるだけでしょ』
『仲間にしちゃえばいいじゃん』

 天兎アンジュラパたちが話してるー!
 前は全然会話ができなかったのに。この場所限定なのかな。ワクワクしちゃうよ。
 不思議そうだけど、怪しまれてる感じではないから、不安より期待が上回って気分が上がってきた。

「ねぇ、僕も仲間に入れて!」
『えー……まぁいっか』
『おいでおいでー』
『モア、友だちが来てるよー』
『だから、色が似てるだけで、初対面よ』

 天兎アンジュラパの集団から、桃色の子が押し出されてきた。僕より淡い色合いだ。
 その子はちょっぴり不満そうにしながらも、頭につけている花冠から白い花を取って僕に渡してくる。

「もらっていいの?」
『あなた、参加証を持っていないみたいだもの。忘れん坊さんなのね』
「……参加証?」

 よくわからないけど受け取って、鑑定してみた。

——————
光花ライトフラワー
 一ヶ月に一度だけ咲く花
 天兎アンジュラパが保護しているため、勝手に採集すると集団に襲われる
——————

 特別なお花らしい。参加証の意味は相変わらずわからない。

『私はモアよ。あなたの後ろの子たちは見学者ってことでいいの?』
「僕はモモだよ。スラリンたちはそこで見てるだけ。でも、これから何があるの?」

 僕が尋ねると、モアはきょとんと目を丸くして、首を傾げた。

『知らないで来たの?』
「うん。この場所に着いたら花精霊フラワーフェアリーに出会って、説明がないままここに連れてこられたんだ」
『あらまぁ』

 モアは呆れたように花精霊フラワーフェアリーを見た後、泉を振り向いて指した。

『——これから始まるのは花月かげつの祝いよ』

 花月の祝い? それなぁに?
 わからないことだらけだけど、なんか凄いことが起きる気がしてワクワクするー!

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